【澤愛香インタビュー】(PDF:378KB)

とくのしまの島唄を知ろう!!
澤愛香インタビュー
『民謡・民舞フェスタinとくのしま』へ出演予定の澤愛香さん。
安定した歌唱力と三味線の演奏で、
民謡の全国大会での優勝経験もある実力派だ。
そんな彼女の素顔に迫るべく、
自身や唄にまつわる話を語ってもらった。
左:日本一になった当時の様子。右:働いている介護施設の敬老会で唄う様子。
澤 愛香
鹿児島県徳之島町生まれ。幼い頃か
ら島唄や琉球舞踊に親しみ、中学 1 年
のとき、日本民謡協会が主催する「少
年少女民謡民舞全国大会」に出場し優
勝。現在も仕事の傍らで様々なイベン
トに出演し活動を続けている。
― 全国少年少女民謡大会で日本一を獲ったときの
様子を聞かせてください。
ひと言でいえば、遊んでました(笑)。
̶え!遊んでた !?
日本一になるなんて全然思ってなかったんです。東京の会
場がすごく広かったので、なんだか楽しくなって、大島紬
の着物を着てるのに、中学1年生にもかかわらず友達と追
いかけっこしてました(笑)。
̶日本一になれるかもしれない期待とかは?
歌ったり。私はまだまだ人生経験が浅いので「こんな感じ
んなプレッシャーから逃げたいと何度も思いました。楽し
かな?って妄想になっちゃうんですけど(笑)
。でもそれ
― 確かにそうですね。これまで歌ってきて
良かったと思うことは何ですか?
く歌っていたはずなのに、
「日本一だから上手く歌わなく
を聴いてくれていた方が話しかけてきてくれて。昔って電
ちゃ」とか、そんな気持ちにとらわれてしまって。聴いて
話もなければ、手紙だってすぐには届かない、そんな時代
いろんな人に声をかけてもらえるようになって、つながり
いる人の反応を気にして逆にうまく歌えなくなったり、唄
を経験した人が当時のことを「思い出した」って声をかけ
が増えたことですね。特に音楽的な人のつながりが広がっ
に感情を込められなくなってしまって。それで歌うことが
てきてくれて。とても嬉しかったです。まあそこからその
て、いろんなジャンルの人とコラボレーションしたりして。
嫌になった時期もありました。
方の昔話や武勇伝が延々続いたりもしたんですけど(笑)
。
そこから仲良くなってプライベートなことも相談できるよ
̶それはどうやって克服したんですか?
̶聴いている人が感動してくれると嬉しいでしょうね。
徳之島を出て私のことを誰も知らない街で生活したとき
嬉しいですね。お客さんに聞いたんですけど、私の唄ってそ
に、誰も「民謡日本一の澤愛香」として見ない、というか
のときの自分がそのまま出るというか、例えばプライベートで
うな人にも出会えましたし、悩んでたりしたら「よし、飲
み行こうか!」みたいな(笑)。
―いい出会いをされたんですね。
これからどんなふうに唄を歌っていきたいですか?
知らないので、そこで一度唄から離れて。でもそうなって
何かあったりしたら「今日は不調だね」とか、いいことがあっ
全くなくって(笑)。大会に出たのも記念的な意味合いが
しばらくすると、逆に歌いたくなってくるんですよね。そ
たら「何かいいことあったの?」とか聞かれて、
「なんでわか
何より楽しんで唄を歌っていきたいです。唄を仕事にする
強かったんです。本番でも間違えてしまって、
「落ちた!」っ
こで改めて歌うことについて考える時間ができて、楽しさ
るの!?」ってびっくりして(笑)
。でもどうやらその時の気持
のも素敵ですけど、悩んだり、辛かったりと、必ずしも楽
て思って。なのでもう気にせず会場で遊んでたら、自分の
を取り戻した気がします。
ちがそのまま唄に乗っているみたいで、自分が意識しなくても
しいことばかりじゃないだろうなと思ってて、やっぱり自
唄で伝わってるんだと知って、気をつけなきゃって思いました。
由に歌うのが自分らしいのかなって思います。今は介護関
番号が呼ばれて、母に「あんた呼ばれてるよ!」って言わ
れて(笑)
。とにかくびっくりしました。なんだか他人事
みたいで、当時は日本一になった実感は全くなかったです。
―民謡を歌っているときって、
どんなことを考えながら歌っていますか?
̶舞台に立っているときはどんな心境ですか?
係の仕事をしているので、おじいちゃんやおばあちゃんに
唄を聴いてもらったりして。
民謡には物語やいろんな内容のものがあるんですけど、そ
とにかく楽しもうと思います。上手く歌おうとか、下手に
の内容を想像しながら歌ってます。例えば、
「らんかん橋」っ
取り繕って歌えば逆に間違えたりするので、自然体でまず
1 年経ったくらいですかね。どこに行ってもどれだけ時間
ていう唄は、橋が崩れて、好きな人に会いたくても会えな
自分が楽しんで歌います。そうすれば聴いてくれている人
そうですね。これからも飾らず普通に、楽しんで歌ってい
が経っても、自分が日本一になった事実は消えないという
いっていう唄なんですけど、その切ない気持ちを想像して
にも楽しんでもらえると思っているので。
きたいと思います。
̶実感し始めたのはいつごろでしたか?
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か、常に「日本一」とセットで見られていると感じて。そ
̶喜ばれるでしょうね。
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