IRT 導入のベスト・プラクティス:

IRT
導入のベスト・プラクティス:
APAC入門書
記事
www.almacgroup.com
執筆者:Matt Do
Client Development Lead、
Asia Almac
2013年には全世界の治験の
16%がAPACで実施されて
おり、この数値が増加する
ことは必至です。
アジア太平洋(APAC)地域で治験を実施する製薬会社の治験依頼者様は、まれな
機会に直面しています。それは、自動応答技術(IRT)を採用することで、治験に
おける最後の砦の一つとも言える手作業での記録保持を自動化して生産性と
データの完全性の著しい向上を実現できる、ということです。
治験参加者への治験薬の無作為化や交付のプロセスと情報を統合するソフトウェ
アプラットフォームが治験薬を開発する主要国で使用されるようになってか
ら、10年が過ぎました。しかしながら、APAC地域ではそのようなソフトウェ
アプラットフォームはあまり広く普及しておらず、治験マネージャー、治験
医師、およびサプライチェーンマネージャーが、無作為化、被験者様の追跡、
在庫のモニタリングを手作業で行うことがいまだに多いと言えます。
2013年には全世界の治験の16%がAPAC1で実施されており、この数値が増加す
ることは必至です。この地域の治験チームが他地域で広く使用されているのと
同じ自動化と効率性を取り入れるのは、非常に理にかなったことと言えます。
幸い、APAC地域のユーザーは他地域のユーザーの「双肩に頼って」、過去数
年間に数千件もの治験から開発されてきた機能・特徴の恩恵を自動的に受ける
ことができます。
IRT: 動物、植物、または鉱物?
それでは、IRTシステムとは実際には何でしょうか、何ができるのでしょう
か? 約20年前に初めて導入されたIRTシステムは、治験期間全体を通じて、
被験者様とのやり取りや治験薬の供給管理のための広範なアプリケーションを
提供します。治験依頼者様、治験薬デポ、および治験実施施設様へのサービス
提供において、IRTシステムは以下を自動化します。
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Clinicaltrials.gov
被験者様の無作為化(物理的な封筒またはスクラッチカードに代わる無作
為化法)。IRTシステムは、治療群間のバランスをとりつつ、盲検性を維
持し複雑な層別化や無作為化デザインが可能となるように被験者様を治療
群に割り当てるよう、あらかじめプログラミングされています。
治験薬在庫管理:サプライチェーンマネージャーは、治験薬のサプライレ
ベル、所在地、有効期限、保管状況のリアルタイムで見て正確に予測を行
い、無駄を減らすことができます。自動リサプライ配送の開始、有効期限
の過ぎた治験薬やダメージとなった治験薬のシステムからの削除、被験者
登録速度に基づいた予測の更新、保管条件と治験薬の要件に基づいた配送
の調整、治験薬の追跡(個別のキット番号の有無を問わず)を行うことが
できます。
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被験者様の追跡:治験マネージャーが治験の進行状況をモニタリングし、
最終的には供給状況に影響を与えることになる来院計画を調整することが
できます。
治験報告:治験薬と被験者様に関するデータが、治験実施施設様とデポ
から効率的に収集できます。アクセスが認められた関係者は、最新の治験
メトリクスをリアルタイムで見ることができる上、あらかじめ定義済みの
閾値に達した場合にはアラートを受信することができます。
治験薬の出納管理と調整:治験薬の出荷、受領、回収、廃棄に関する記録
を収集します。
基本的には、IRTは治験実施施設様用にデザインされた機能ですが、治験管理
者様およびサプライチェーンマネージャーを通して、最適な被験者治療に必要
なサプライが治験実施施設様に確実に供給されるための業務および意思決定を
すべてサポートします。(図1を参照)
図1: 閉ループテクノロジーソリューション
自動応答技術は、治験実施施設様への治験薬の供給と関連リスクの軽減に関係する、複雑なすべての活動を調整する
上での情報の好循環を生み出します。
正味予測で検討される
実際の患者イベントデータ
初回予測
· 予想される患者需要
· 来院スケジュール
· 治験実施計画書の変数
· シナリオ比較
正味予測のための入力データ
· 治験実施施設の在庫
· 患者への調剤イベント
· 有効期限
統合された応答システムとのデータ統合
在庫のリリースファイル
治験薬注文書
製造計画
詳細なコンポーネント計画
物流
デポおよび
治験実施施設
患者イベントデータ
資材要件計画 (MRP) は、以
下に基づき計画された生産
注文書を作成します:
· 予測
· 安全在庫
· 未決の生産注文
· 現在の在庫
· 項目部品表
MRPが検討するアルマック
およびデポの在庫
正味予測で検討される、治験実施施設にある
在庫または治験実施施設に移動中の在庫
患者への調剤
治験薬の割当と交付状況をきちんと把握できるようにすること
優れたデザインの技術プラットフォームは、効率とパフォーマンスに関する
眼識を提供することで、治験依頼者様がタイムリーかつ予算内で円滑に治験
を完了できるようにいたします。IRTは一般的に、治験依頼者様に以下の利点
を提供いたします。
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規制コンプライアンスの向上:IRTシステムは、盲検化、データの完全
性、治験薬の取り扱い、および出納管理を向上いたします。またIRTシス
テムは、治験が標準業務手順書に従って実施されたことを証明する文書を
規制機関に提供いたします。
被験者様の安全性と治験性能の改善:
IRTは、被験者様が正しく無作為化され正しい治験薬を受けていることを
保証いたします。治験実施施設様で正しい製品が確保されるようにするこ
とで、IRTは被験者様の治療や治験への継続的参加に支障を与えうる治療
の遅れを最小限に抑えることができます。
スピードと効率:データの収集、分析、報告を自動化することで、IRTシ
ステムはこれまで手作業に頼っていたデータの入力と操作の所要時間を短
縮します。データ収集が自動化されるため、治験依頼者様はデータ入力担
当者の手配や、人為的な入力エラーを修正する必要がありません。
データ完全性の改善:情報が電子的に取り込み・追跡されるため、人為的
エラーの可能性が低下します。そのうえ、自動アラートやチェックポイン
トを設定した意思決定の支援も可能となります。
治験薬の無駄の削減:サプライチェーン全体をきちんと把握できること
で、サプライマネージャーは正確に治験薬の需要を予測し、その有効期限
切れに備えて在庫が切れないように管理することができます。
目的にかなったシステムのデザイン
IRTは、単純な治験から複雑な治験までほぼ全てのタイプの治験にも対応でき
ます。重要な点は、治験依頼者様やそのサプライサービスパートナー企業内
の利害関係者全員からの意見に基づく、丹念に考え抜かれたデザインに従う
ことです。基本目標は、治験実施計画書の内容を実施し治験チームの機能面
のニーズをサポートできる、最も単純なシステムを設計することです。
IRTシステムの利用経験が全くないお客様には、この技術を本格使用する前
に、パイロットスタディとして比較的単純な治験用にシステムを採用してみ
られることをおすすめしています。
この技術があまり浸透していないAPAC地域においてIRTを開発するためのベス
トプラクティスに基づくアプローチを、以下に示します。この方法でシステム
の開発を進めた結果得られるツールは、お客様の治験に適しており、開発時間
とコストを最小化できます。
1. プロジェクトデザインチームを集結させます。プロジェクトデザインチーム
には、治験依頼者様からは、通常、臨床チーム、治験薬サプライチーム、
生物統計担当者、データマネージャーが参加します。ベンダー側からは
通常、開発者、テスター、品質保証専門家から構成されビジネスアナリスト
が率いるチームが参加します。効率的で明確なコミュニケーションができる
ように、プロジェクトリーダーを指名して、関係者からの情報をベンダーに
伝えるようにします。
2. プロジェクトを開始する前にワークショップを実施して、IRTシステムによ
って何が可能なのかをプロジェクトデザインチームに紹介します。システム
機能について、順を追って説明し、チームメンバーにサンプルシステムのデ
モをお見せします。このステップにより、何が必要かを決定する作業に取り
掛かる前に、何が可能なのかについて関係者全員が同じことを理解した状態
となります。
3. 系統立った方法でIRTの詳細情報を収集します。ユーザー要件仕様書(URS)に
沿って、プロジェクトの適用範囲と必要事項を定義します。システムを適切
に構成するには、開発者は以下を含む多数の治験要素についてのインプット
を必要とします。
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治験の適用範囲:これには通常、治験デザイン、治験実施施設数と国、
被験者募集計画と被験者数、治療期間、予定来院回数、および治験薬
使用フェーズが含まれます。
無作為化デザインとキットリスト:治験に使用する無作為化デザイン
戦略は何か(中央化、層別化など)? 適応的無作為化またはコホート
を必要とするか?
製剤とキットの内容:製品は錠剤、バイアル、またはデバイスのどの形
で交付されるか? キットには何を含めるか? キットはどのようにラベ
ル貼付するか?
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治験薬の出荷と追跡要件:どのような輸出入規制があるか? 何ヵ所の
デポを使用するか? 出荷および保管要件は何か?
データ読み込み要件:無作為化やキットリストにはどの形式を使用
するか? どのユーザーグループがどのデータにアクセスできるようにす
るか?
データの統合と転送ニーズ:IRTは電子データ取り込み(EDC)システム
や治験管理システム(CTMS)との間でデータをやり取りする必要がある
か? 盲検データと非盲検データの取扱いの違いは何か?
各国語への翻訳の必要性:参加国の言語にシステムを翻訳する必要があ
るか?
臨床および被験者データの取り込み:治験実施施設様ではどのような
人口統計学的情報を収集するか?
報告の必要性:どのようなメトリクスをモニタリングするか? 大半の
場合は、標準レポート形式とダッシュボードグラフィックスにより、
ほとんどのお客様のニーズを満たすことができます
システム構成要件:治験実施施設様では、妥当性確認をオーバーライド
できるか(例えば、来院期間外の来院の登録など)? 治験薬の追跡は、
キットレベルまたは用量レベルのどちらで行うか?
経験豊かな開発チームは、推奨されるアプローチが米国食品医薬品局(FDA)
連邦規制基準第21編第11部(21 CFR Part 11)などのすべての適用法規制を順
守していることを確認できます。
4. 標準機能のテンプレートを使用し、お客様の治験に特有の要素のみをカスタ
マイズすることで、システムを開発いたします。標準機能で十分であり設定
済みのテンプレートを使ってシステムを構築できる場合は、開発時間を大幅
に短縮できます。
5. システムのユーザー受入テスト(UAT)を実施いたします。通常は複数ステッ
プのプロセスで、ベンダーが初期UATを行い、続いて治験依頼者様がUATを
行います。治験依頼者様には、特定のテストケースとUAT実施方法の説明を
含むテスト計画が提供されます。
6. システムを立ち上げます。すべての治験実施施設様のユーザーがインベス
ティゲーターミーティングに招かれ、そこで各自の役割についてのトレーニン
グを受けるべきです。各ユーザーにシステムへのアクセス方法と使用手順を段
階ごとに示す、クイックリファレンスガイドを提供することが理想的です。
IRTシステムの究極的な性能や有効性は、立ち上げフェーズでの要件の最終決
定時、コードプログラム完了時、テスト完了後、そしてシステム稼働準備完了
時の実装プロセス中という4段階の厳密な品質検査を通して確保されます。
APAC地域で事業を展開し
ている製薬会社様は、IRT
ソリューションを採用する
ことで効率の飛躍的向上を
期待できます。
よくある落とし穴を避ける
他者が「学んだ教訓」に従うことは、新しい技術の導入を難しくするような落
とし穴を避ける上で役立ちます。以下のヒントは、世界中で数百件ものIRTの
ビルド・実装に関与してきた専門家のアドバイスを反映したものです。一般的
に、IRTは初めてというユーザー様は以下を避けるようにしてください。
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世界的な存在感:治験が単独国のみかグローバルなプログラムの一部かど
うかにかかわらず、開発者がグローバルな経験を持つ場合、システム構成
には数千件に及ぶ治験から学んだ教訓を活かすことができます。ベストプ
ラクティスを取り入れ治験依頼者様を導くというこの能力は、特にこの技
術になじみがなく、何が可能で何が不可能かをご存知ではない治験依頼者
様にとって不可欠です。この知識の広さもまた、システムが他地域の規制
当局の期待に沿っていることを確認する上で役立ちます。これは、治験薬
が国際市場向けの場合には重要です。
ローカルでの存在感:一面においては、これは便宜上の問題です。地域
にスタッフを配置しているベンダーは、ローカルのシステムユーザーに
その時間帯と言語でプロジェクト管理およびテクニカルサポートを提供
できます。
治験におけるサプライチームとの連携:1つの会社がこれらのサービス全
てを提供する場合、治験依頼者様は開発と実施フェーズの両方でのシーム
レスなコミュニケーションと調整を享受できます。
検証プロセス:システムは、HIPAA、CFR 21、第11部、医薬品の臨床試験
の実施に関する基準のガイドラインを含む、すべての適用規制当局ガイド
ラインを順守したものとして検証される必要があります。
手順とインフラの確立:IRTシステムのデザインには、サプライ管理の全
フェーズにおける相当な実務経験が必要です。
APAC地域で事業を展開している会社は、IRTソリューションを採用することで
効率の飛躍的向上を期待できます。幸運なことに、この技術は十分に検証さ
れ、長年にわたり成果を上げています。治験依頼者様が、グローバル規模で治
験をサポートできる経験豊かなベンダーと連携する場合には、治験依頼者様に
とっての、初めてのIRTシステム使用経験は、確実に円滑かつ生産的で実りの
多いものとなるでしょう。