危険な心電図の鑑別②

モーニングレクチャー
危険な心電図の鑑別 2
検査第一課
青木 駿
不整脈
上室性(心房性)
心室性
・洞頻脈
・心房性期外収縮(APC)
・心房頻拍(AT)
・発作性上室性頻拍(PSVT)
・心房粗動(AFL)
・心房細動(AF)
・心室期外収縮(VPC)
・心室頻拍(VT)
・心室細動(VF)
・房室ブロック
・1度房室ブロック
・2度房室ブロック
・Wenckebach型
・Mobitz型
・3度房室ブロック(完全房室ブロック)
・洞不全症候群(SSS)
・QT延長症候群(LQTS)
・WPW症候群
・LGL症候群
完全房室ブロック
(complete A-V block)
1.P波とQRS波が全く
無関係に出現している
2.PP間隔、RR間隔一定
完全房室ブロック
(complete A-V block)
• 心房から心室への興奮伝導が全く途絶している状
態
• 心房と心室の収縮がお互いに全く無関係に起きて
いる
【心電図所見】
P波とQRS波のつながりが全くない
P波、QRS波は一定の間隔で出現(PP間隔、RR間隔一定)
RR間隔
QRS幅
長い
広い
短い
狭い
危険
完全房室ブロック
(complete A-V block)
心房細動
(Af)
P波とQRS波が
無関係に出現
P波消失
PP間隔、RR間隔一定
f波が出現
QRS幅の延長
P波(-)f波(+) RR間隔一定 QRSがwide 徐脈
心室期外収縮(VPC)
予想される心室の興奮よりも早期に心室から異所性の興奮
が発生するもの
【心電図所見】
・先行するP波を欠く
・正常と異なる幅広いQRS波を認める
心室期外収縮のポイント
•
•
•
•
•
出現頻度
連発の有無(最大何連発か)
形
規則性
連結期の長さ
出現頻度
• 散発性(<1/分または30/時間)
• 多発性(>1/分または30/時間)
連発の有無
2連発
(Couplet)
3連発
Short run
4連発
Short run
連発の有無
2連発
心室期外収縮の連発の危険性
(Couplet)
2連発
3連発以上
30秒以上
VT・VFに移行する確率:1%
3連発
Short run
VT・VFに移行する確率:5%
VT・VFに移行する確率:10%
4連発
Short run
5倍
形
単源性(一源性)
多源性(多形性)
単源性
多源性
危険性
多源性>単源性
規則性
規則性なし
規則性あり
心室期外収縮二段脈
心室期外収縮三段脈
規則性
規則性なし
規則性あり
心室期外収縮二段脈
規則性
規則性なし
VPCの数が多い=危険
規則性あり
規則性がなく頻発しているもの=危険
心室期外収縮二段脈
連結期の長さ
連結期
RonT型
・心室期外収縮のR波が先行するT波の下行脚に重
なったもの
・T波は心室筋の再分極相で不安定な時期にある
ため非常に危険性が高い
・特に、虚血があるときに発生すると心室頻拍や心
室細動を起こす恐れが高い。
危険度の低いVPC
2連発
(Couplet)
2段脈
(Bigeminy)
3段脈
(Trigeminy)
危険度の高いVPC
3個以上連続するもの
(ショートラン型)
形が変わるもの
(多源性or多形性)
直前のT波に重なって
発生するもの(R on T型)
非常に頻発するもの
心室頻拍(VT)
心室頻拍(VT)
・心室期外収縮(VPC)が連続して発生し、頻脈を呈す
るもの
・VTは危険な不整脈であり、無脈性となったり、心室
細動(VF)に移行する可能性があるため、緊急処置を
要する
【心電図所見】
幅広いQRS波が規則正しく連続して出現する
心室頻拍(VT)
発作性上室性頻拍(PSVT)
心室頻拍の診断
1.房室解離を認める
2.心室捕足を認める
房室解離とは
1.心房の興奮が心室に伝わっていないとき。
例)完全房室ブロック
2.心室のレートが心房のレートを上回るとき。
例)心室頻拍
心室細動
房室解離とは
1.心房の興奮が心室に伝わっていないとき。
例)完全房室ブロック
QRS波形と全く関係なく
P波が出現していることを確認
2.心室のレートが心房のレートを上回るとき。
↓
例)心室頻拍
心室細動
心室頻拍
心室頻拍(VT)
心室捕足とは
・心室頻拍の間に、心室の不応期が消失した瞬
間に上室からの伝導が心室に伝わることがあ
りこのときQRS幅の狭い収縮が入り込む形とな
ることがある
↓
幅の広いQRS波形の中に幅の狭いQRS波形が
入りこむこと
心室頻拍(VT)
心室頻拍の危険性
持続性心室頻拍
持続時間
心拍数
30秒以上
150/分以上
早急に治療が必要
30秒以内
150/分以下
原則として治療しない
非持続性心室頻拍
Torsade de pointes(トルサード・ド・ポアンツ)
心室頻拍(VT)・心室細動(VF)
へ移行する可能性のある心電図
QT延長症候群(LQTS)
• 失神発作を繰り返し、突然死に至ることもあ
る。
• Torsade de pointes(TdP)という特殊な多形性
心室頻拍をきたす
【心電図所見】
非発作時にQT延長(補正QT間隔が0.48を超
える)を認める
QT延長症候群(LQTS)
【原因】
・先天性(遺伝性)
𝐾 + やNa+ チャネルの機能異常を伴う遺
伝性疾患が原因となる
・二次性(後天性)
抗不整脈薬(Ⅰ群、Ⅲ群など)
低K血症、低Mg血症、低Ca血症(電解質異常)
Brugada症候群
• 心室細動(VF)の原因になり、若年者~中高年(男
性に多い)の突然死を引き起こす
• Na+ チャネルの先天的な異常が指摘されている
【心電図所見】
• 完全あるいは不完全右脚ブロック様波形、すなわち
V1~V3にJ波を有すること
• 右側胸部誘導(V1~V3)ST上昇
特徴的なST上昇
coved型
saddle back型
V1~V3を通常の肋間より1肋間上で記録
御清聴ありがとうございました