パンニュース社 iba 視察報告書 今回2015年9月12日から18日まで、パンニュース社主催の iba 視察ツアーにドイ ツ・ミュンヘンへ行ってきました。参加者はおおよそ20人ほどで製粉会社からパン屋さ ん、パン工場、機械メーカーなど幅広く参加していました。 Iba 展示会は2日間で見て回ったのですが、まず感じたこととしてはヨーロッパらしく先 鋭的なデザインを施したブースが多かったこと。元々の顧客や同業者などと挨拶含め飲み 食いが出来る場所が多く設けられ、展示50%飲食スペース50%ぐらいで日本との違い を感じた。マスダック社も出展していたが、モバックショウやシンガポール展示会と変わ りないスタイルで展示していたが、元々欧州スタイル寄りだったので今回の iba でも盛況だ った。 また今回中国勢も組合で参加していたようだが、包装材がメインの出展で機械メーカー は数えるほどだった。小さなブースでただ飾るだけの中国スタイルそのままで出展してい たので、どのブースも客足は少なく注目度は低かった。また今回出展して関西にある機械 メーカーの方にお話しを聞いた所、機械系も出展しているものの、そのレベルが低いので お客さんは見向きもしない。見た目は欧州の真似事をしているが、中身の品質がまだまだ 欧州レベルには達してはいない。とおっしゃっていました。確かに見せ方もそうだが、展 示品でもアラが目立つ機会が多く、やはり中国製で買うとするならば、品質の誤差が少な い包装材などに限ってしまうと私も感じた。 次に石窯系統がどれだけ出展しているかに注視していたが、iba は個人店がメインターゲ ットではなく、工場規模で品質の高いパンをいかに大量生産出来るかに重きを置いた機械 が多く、個人店向けや石窯の出展は数える程度だった。大手の個人店サイズの窯もあるが どれも欧州式の窯でどこを見ても同じという所感だった。そして、本物のレンガを貼って いる窯はひとつもなく、かなり目を引くという意味でシンガポール展示会での反応の良さ も納得だった。 数少ない石窯出展ブースの中で面白いと感じるものはピザ窯で、薪でも焼けることを宣 伝していたり、どこにニーズがあるかは日本と似ていた。また炉床回転式ピザ窯の出展が 目を引き、中華系のお客さんが多かったのも気になる点だった。回転式だが駆動装置も大 きくなく、小中規模のレストランでも導入出来るような窯だった。 別途写真レポート スイス駐在松金さん同行ツアーレポート 今回パンニュース社主催のツアーということもあり、私の B&C 連載を前任していて現在も スイス在住で肉まん店を運営している松金さんがコーディネートしたツアーにも参加した。 松金さんはスイスで仕事する前にドイツで修行しており、パンのマイスターの資格も持っ ています。そのツアーでは工場から個人店まで見学したのでいくつか紹介する。 パン工場ではほとんど撮影禁止なので写真はないが、印象に残ったのは工場規模でもイン スタントの物は使わず発酵種も自家発酵酵母を使用していることや、ドイツでは全て均一 な製品は好まれないそうで、焼成前に手作業を残しあえて形がバラバラの物を作っている ことです。ヨーロッパの国民食プレッツェルもあの複雑な形を成形する機械はまだなく、 成形は全て手作業で大量生産していたのも、印象に残った。ただ衛生管理が日本とは違う もので、あえて不均一商品を作ることなど日本と比べられない部分も多々あった。 次に個人店のリテールベーカリーも見学した。そのパン屋さんは日本人のマイスター研 修生も多くお客さんからも業界内からもとても評判が良いお店で工房もそこまで大きいわ けではないが、年商1億5千~2億円ほどを売る。やはりパン屋さんは接客だな思わせる 一面としてお店の紹介をオーナー自らにやって頂いたのですが、ものすごく人柄の良さそ うな感じを出していて質問にも真摯に答えていて、研修生に人気なことにも納得した。 デッキオーブン1台ラックオーブン3台体制で焼成していた。パンの種類はそこまで多 いわけではないが品質が良く、またケーキ類も専属スタッフが作っているのでクオリティ が高かった。 また今回最も印象に残ったのは、Kuchentratsch(ケーキの井戸端会議)という場所で若い 女性の方が運営しているのだが、ドイツの文化の中でどんなに美味しいケーキ屋さんのケ ーキよりおばあちゃんの作るケーキが美味しいというものがあり、それを生かそうという ことで、せっかく美味しいケーキが作れるのに振舞う場がないことやお年寄りのコミュニ ティになる場を作るということで設立したものです。 そこのケーキ屋にレシピはなく、おばあちゃん達の頭の中にそれぞれのレシピが入って います。なので、同じアップルケーキでもおばあちゃんによって味が違く、それぞれの個 性がある。なので、商品を売る時は○○おばあちゃんのケーキといった具合で売るそうだ。 勤務体制も予定表はあるものの、おばあちゃんが来たい日に来て、勤務中も疲れたら仲 間とゆっくりコーヒーを飲みながら休憩と、とても穏やかな時間が流れていた。そして、 今までおばあちゃん達は子供やご近所さんのためにケーキを作っていたので設備に関して も、業務用のオーブンなど使ったことがなく、ミキサー類も含めて全て家庭用の物を使っ ている。なので利益を追求するのは難しいが、その場にいるスタッフ、おばあちゃん達の 笑顔がとても素敵で本当に素晴らしい場所だなと感じた。 別途レシピ本など 総評 展示会を見てやはり一番感じたのは、日本とのスタイルの違いです。お客さんの足が多か ったのは、欧州スタイルの飲食スペースかなり多く取られたブースかまたはデモンストレ ーションを行っているブースでした。そして、欧州のお客さんは疑問に思ったことはすぐ に質問していたのだが、やはり日本では作業中の人に声をかけるということは少々難しい ことである。なので、それらを踏まえデモンストレーションは講義式にしてある程度スペ ースを作り、商談は商談で別で行う方が客足が伸びやすいかなと感じた。中国の展示スタ イルを見て明暗がはっきり見えたように、敷居が高く、少し閉鎖的な感じがするのがアジ ア式展示会と思ったので、今後 iba 展示会を参考に開かれた展示が出来るようにしていきた い。 澤畠 雄哉
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