大浦 泰嗣 - 公立大学法人首都大学東京 産学公連携センター

013 環境・都市基盤
都市教養学部 化学コース
http://www.comp.tmu.ac.jp/cosmochem/
大浦 泰嗣
宇宙・地球環境における放射性核種の分析
研究テーマ
【キーワード】 放射化分析、宇宙線生成放射性核種、隕石、環境放射能、宇宙化学
不安定化した原子核が放射するガンマ線を活用
原発事故当時の福島県における
研究概要
ヨウ素 131 の被爆実態を明らかに
時間がかかって地球に到達したか等を研究するこ
とだ。
東北大震災の福島原発事故で当時、大気環境中
おお うら やす じ
大浦 泰嗣 准教授
主たる研究分野は放射化学である。放射性核
へ放出された放射性セシウム量等を再現するため
種や放射線について研究し、宇宙化学や環境化
の分析も行なっている。方法として、全国の自治
然学類卒、1995 年金沢大学
学など様々な分野へ応用するための基礎研究を
体が設置している大気環境常時測定機によって
科物質化学専攻修了、日本原
している。
テープ状のろ紙上に自動捕集された浮遊粒子状物
高校生の時から漠然としていたが、放射能に興
質中に残存する放射性核種量を測定している。こ
都立大学大学院・理学研究科
味を持ち始め、進学時も関係する大学を選んで、
れまでに東日本の自治体から約百測定局において
都市教養学部 / 大学院・理工
放射化学の研究室へ入り、以降、環境中の放射性
事故発生直後に使用されていたろ紙の提供をう
学研究科助教授、2007 年准
核種を測る研究からスタートし、原子核反応の研
け、当時の放射性物質の拡散状況を検証した。
(*
学)
。
究、放射性核種を利用した元素分析の研究などを
76 局 分 は 環 境 省 と 原 子 力 規 制 庁 が 公 表=
行ってきた。
https://www.env.go.jp/air/rmcm/
具体的には、放射性核種から出るガンマ線を測
misc/report-201303.html、http://radioactivity.
ることで放射性核種を定量化して様々な考察をし
nsr.go.jp/ja/list/506/list-1.html)
ている。
同研究は東京大学大気海洋研究所、国立環境研
例えば、宇宙から地球に到達した隕石を粉末に
究所と共同で実施中だが、2015 年度から東京大
して数十∼数百 mg 程度を原子炉内に入れて原子
学工学系研究科、東京医療保健大学も加わり、人
炉内の中性子との間で核反応を起させると、隕石
体の被爆量を研究する新プロジェクトが始まる。
内の安定な原子核は中性子と結合し、不安定な放
半減期が約 8 日間と短いが甲状腺に影響を与える
射性核種に変わる。この放射性核種が放出するガ
というヨウ素 131 による被爆量を推計するための
ンマ線を測ることで隕石に元々あった微量元素の
手法を研究する予定である。
量を調べている。また,加速器質量分析法という
産学公連携については、放射線を測って分析す
大型機器を用いて,隕石に元々含まれている放射
るようなテーマならば、何でも協力したいという
性核種を分析している。
想いを持っている。放射化分析は溶解しがたい試
目的は、隕石が地球へ到達するまでの宇宙空間
料の分析も可能である。中小企業からの相談も、
でどのような宇宙線環境にあったか、どれだけの
もちろん大丈夫である。
今後の展望
隕石中の微量元素の分析を本格化させたい
1987 年筑波大学第一学群自
大学院博士課程自然科学研究
子力研究所 アイソトープ部 専
門研究員を経て2003 年東京
助手、2005 年首都大学東京
教授、現在に至る。博士(理
大気環境常時測定機に
備えられたテープ状のろ紙
東北大震災、各地の原子炉や加速器が停止した影響で滞ってしまったが、今後は隕石にお
ける放射性核種の分析に本格的に取り組むことで、隕石中の微量元素の解明ができればと
思っている。世界でも研究者が少ない分野であり、遅れている研究を取り戻し、加速化して
いきたい。
産業界や自治体の課題
のうちで、適用可能な例
大気環境中の放射能の分析、様々な試料の元素組成分析等
[お問い合わせ] 首都大学東京産学公連携センター 連携係 〒192-0397 東京都八王子市南大沢1−1 首都大学東京南大沢キャンパス プロジェクト研究棟 2F
TEL : 042-677-2729 FAX : 042-677-5640 E-mail:[email protected] URL: http://www.tokyo-sangaku.jp/