米国株式の投資環境について - ニッセイ アセットマネジメント

2015年11月30日
投資情報室
米国経済・株式市場情報
米国株式の投資環境について
 米国株式市場は長期間にわたり企業利益の伸びと共に上昇を続けており、この傾向は過去10年間においても同様
 米国株式の予想PERは長期平均並み。今後は、企業収益の回復が株式市場のけん引役となるものと期待
 2016年以降の米国企業の利益は増益が見込まれており、企業収益の改善が米国株式市場を下支えすることを期待
 米国企業は潤沢なキャッシュ残高を有し、今後も増配や自社株買いを通じた積極的な株主還元策を期待
図1:米国株式の株価と利益の上昇率の推移
2015年初からの米国株式は、概ね底堅く推移
2015年の米国株式市場は、原油価格の下落に対する
警戒感や中国の景気減速懸念の高まりなどを背景に、夏
場以降大きな調整を強いられました。しかし、その後、投
資家心理の改善や米国景気の回復などを背景に、株価
は下げ止まり、年初からの米国株式市場は概ね底堅く推
移してきました。ここで、今後の米国株式市場の動向を考
える上で、長期的な米国株式の推移と利益を照らし合わ
せて、1960年末から一度振り返ってみることとします。
12,800
6,400
3,200
予測
1960年 2015年
上昇率
末
10月末
S&P500
指数
一株当たり
利益(EPS)
58.1 2,079.4
3.1
111.8
35.8倍
35.9倍
1,600
一株当たり利益(EPS)
800
400
S&P500指数
長期間、米国株式は利益の成長と共に上昇
200
図1は、1960年以降の米国株式の値動きを、値幅(実
数)ではなく上昇率(対数)で見たものです。米国株式市
場は、1987年のブラックマンデー、2000年代初頭のITバ
ブル崩壊、2008年のリーマンショックなど、過去の幾多の
危機を乗り越えて、長期間にわたって企業利益の成長と
共に上昇し続けてきました。
100
1960年末から2015年10月末までのS&P500指数の
上昇率は35.8倍で、一株当り利益の上昇率(35.9倍)と
ほぼ同程度の上昇率となっており(図1)、株価と企業業
績の連動性は高いことがわかります。
※1960年12月末を100として指数化
50
1960
1970
1980
1990
(出所)ブルームバーグ(対数グラフで表示)、1960年12月末~2015年
10月末。一株当たり利益は年次。2015年末、2016年末、2017年末の
一株当たり利益の予測値は市場コンセンサス(2015年11月26日時点)
図2:一株当たり利益(EPS)・配当(DPS)と株価の比較
(S&P500指数、過去10年間)
250
2004年
2014年
過去10年間においても、米国株式の株価と利益
は共に約70%上昇
こうした上昇傾向は、過去10年間においても同様で、
S&P500指数の一株当たり利益(EPS)は約70%上昇する
と共に、株価も同程度上昇しています(図2)。また、企業
業績の向上に伴い、同指数の一株当たり配当(DPS)も約
100%上昇しており、米国企業の株主還元に対する姿勢
も高まっています。
上記のように、米国株式の株価と利益は共に同程度上
昇していることから、株式動向をはかる上で企業業績を
把握することが重要であることがわかります。
2010 (年)
2000
201 200
172 150
100
+72%
170 +101%
100
+70%
100
100
50
0
EPS
DPS
株価
(出所)ブルームバーグ、2004年末を100として指数化
●当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、レッグ・メイソン・アセット・マネジメントの情報を基に、ニッセイア
セットマネジメントが作成したものであり、特定の有価証券等の勧誘を目的とするものではありません。 ●当資料は、信頼で
きると考えられる情報に基づいて作成しておりますが、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。●当資料の
グラフ・数値等はあくまでも過去の実績であり、将来の投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。また税金・手
数料等を考慮しておりませんので、実質的な投資成果を示すものではありません。●当資料のいかなる内容も将来の市場環
境の変動等を保証するものではありません。
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〈審査確認番号H27-TB135)
米国経済・株式市場情報
図3:S&P500指数の12ヵ月先予想PER
(倍)
企業収益の成長が、今後の米国株式市場の上昇
をけん引
S&P500指数の予想PERは、1991年以降の長期平均
並みの水準で推移しています(図3)。バリュエーション面
からみた割高感が目立っていないことから、企業収益が
順調に伸びていけば、米国株式市場は好業績を反映し
上昇することが考えられます。
米国株式の利益成長は堅調な見通し
エネルギー価格の下落や米ドル高の影響などにより、
2015年の米国企業の利益成長見通しは鈍化していま
す。2015年のS&P500指数の一株当たり利益の成長率
は、-0.5%と予測されています(図4)。
(年)
(出所)ブルームバーグ、1991年1月初~2015年10月末
※12ヵ月先予想PER=株価/12ヵ月先予想EPS(一株当たり利益)
図4:S&P 500指数の一株当たり利益(EPS)の成長率
しかし、米国企業のファンダメンタルズは引き続き堅調
12.0
に推移していくことが予想されています。さらに2016年以
10.0
降においては、エネルギーセクターの業績底打ちや米国
8.0
景気の回復などを背景に、企業業績は再び拡大基調に
6.0
転じる見通しとなっています。2016年のS&P500指数の
4.0
一株当たり利益の成長率は+8.2%で、2017年は
+12.5%と予測されていますので、今後、企業収益の改
善が米国株式市場を下支えしていくことが考えられます。
(%)
14.0
12.5
11.0
S&P500指数
S&P500指数(エネルギー除く)
6.3
8.2 8.5
7.2
6.2
2.0
0.0
-0.5
-2.0
2014年
2015年予測 2016年予測 2017年予測
(出所)ファクトセット
予測値は2015年11月24日時点の市場コンセンサス
米国企業のバランスシートは健全な状態で、米国
企業は財務面でも柔軟性を有している
世界金融危機後、米国企業はバランスシートの改善に努
図5:米国企業の手元資金と株主還元策
(億米ドル)
(兆米ドル)
3,000
めてきました。米国企業のバランスシートは過去数十年で
最も健全な水準となっており、2000年以降の手元資金
2,500
残高も増加傾向で、過去最高水準となっています(図5)。
2,000
また、米国企業の配当総額は右図に見られるように、
2015年第2四半期に過去最高額を更新しています。
このような健全なバランスシートと潤沢なキャッシュ残高
を背景に、増配や自社株買いを通じた株主還元策に加
えて、設備投資や合併・買収(M&A)などの成長戦略が、
今後、市場の注目材料となっていくものと思われます。
1.8
手元資金残高
( 現金・短期証券、右軸)
1.6
1.4
1.2
自社株買い(左軸)
1.0
1,500
0.8
1,000
0.6
0.4
500
0.2
配当( 左軸)
0
2000
0.0
2003
2006
2009
2012
2015
(年)
(出所)ファクトセット、2000年第1四半期~2015年第2四半期
※米国企業:S&P500指数採用企業
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