脂肪細胞遺伝子治療 - 千葉大学医学部附属病院

脂肪細胞を用いた酵素補充療法の開発
ヒトの体内には血中ではたらく酵素・タンパク質が数多くあります。そのような酵素
がはたらかなくなると、体の色々な臓器に様々な障害が発生し、時には患者さんの
生命にかかわることがあります。
このような酵素を生まれながらに持たない患者さんにはその酵素を血液中に補充
する治療法(酵素補充療法)が有効です。
私たちは、古くから形成外科で臨床治療として脂肪移植が行われていることに着眼
し、患者さんの脂肪細胞から酵素を分泌する細胞を作り、患者さんに移植すること
でその酵素を持続的に体内で作り出し、症状を長期に改善できるような治療法の
開発を進めています。
これまでの研究成果に基づき、平成25年5月に厚生労働省より認可を受けて、難
病の一つである家族性LCAT欠損症の患者さんを対象とした世界で初めての遺伝
子治療臨床研究を開始することとなりました。
脂肪細胞を用いた酵素補充療法
低侵襲性(組織摘出)
の脂肪摘出技術。
必要脂肪組織 ~10g
低侵襲性(組織摘出)
の脂肪摘出技術。
1. 脂肪組織の摘出
2. 脂肪組織のコ
ラーゲナーゼ処理
自家移植による拒
絶反応の回避。
治療頻度を劇的に
減らす。
脂肪組織からの細胞
単離・培養が容易。
~109個
3. 天井培養による
ヒト前脂肪細胞の調製
不測の事態の場合、摘
出によるリスク回避。
7. 治療蛋白質産生
前脂肪細胞の自家投与
治療蛋白質の有効
発現量の確保。
6. 治療蛋白質
発現細胞の獲得
安全性と有効性を確
保する遺伝子導入。
5. 通常培養化での
Expansion
4. レトロウイルスベクター
による治療遺伝子の導入
家族性LCAT欠損症とは?
不要なコレステロールを排泄する善玉コレステロール(HDLコレステロール)のはたらきに
大切な酵素(レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ、LCAT)の欠損した遺伝性
の病気で、世界的にも治療法が無い難病です。
患者さんは、コレステロールを処理することができないため、目や腎臓などに蓄積します。
これらが原因で角膜が混濁(黒目が濁る)したり腎機能障害から腎不全を併発することが
あります。
患者数は国内に1000名未満と推定されていますが、原因不明の腎機能障害として見逃
されている場合もあると思われます。
典型的な家族性LCAT欠損症の臨床所見
• 蛋白尿(重篤な症例ではネフローゼ症候群)
• 低HDLコレステロール(10 mg/dL未満が多い)
• 角膜混濁
このような臨床所見に合致する、もしくは疑わしい患者さんがおられましたら、遺伝子解
析・病状解析等のお手伝いをさせて頂きますので下記までご一報ください。
連絡先:
千葉大学医学部附属病院未来開拓センター
黒田正幸
TEL: 043-226-2718
厚生労働省の認可を受けて家族性LCAT欠損症を対象とした
遺伝子治療臨床研究を進めています
脂肪細胞をもちいた酵素補充療法開発体制
医学部附属病院
未来開拓センター
医学部
セルジェンテック
健常人研究協力者(ボランティア)を募集しています!
千葉大学では脂肪細胞を用いた酵素補充療法を必要とされるより多くの患者さ
んのもとに届けられるように技術開発研究を進めています。
これまで20人程度の健常人の方から、形成外科で10~20g程度の脂肪組織を
頂き研究を積み重ねてきました。
今後も引き続き、人の脂肪組織から取り出した脂肪細胞を用い、多くの病気の
患者さんのお役に立てるような治療法の開発を進めるため、健常人の方のご協
力を求めています。
本研究の趣旨に賛同し、脂肪組織を提供いただける健常者の方、もしくは本件
に興味のある方はぜひご連絡を!
連絡先:
千葉大学医学部附属病院未来開拓センター
黒田正幸
TEL: 043-226-2718
脂肪細胞医薬技術の応用と展開
遺伝子導入ヒト前脂肪細胞
千葉大学/セルジェンテック
LCAT遺伝子治療臨床研究実施
ヒト前脂肪細胞
遺伝子治療用脂肪細胞
1. 既存技術の汎用性と医療貢献
・遺伝子異常疾患
- 血友病
- ライソゾーム病 など
・代謝異常・退行性疾患
- 糖尿病
- 神経変性・退行性疾患 など
2.汎用性技術・生産性向上の開発
・加工脂肪細胞性能向上
・他家移植研究・技術開発
再生医療・細胞医薬品
1. 再生医療・組織医薬品への新展開
・脂肪萎縮症(HIV治療障害)
・骨軟骨・筋・神経再生医療
2.細胞治療医薬品
・虚血・血管閉塞治療
・免疫制御細胞医薬品
3.技術開発の向上
・生着技術の向上
・擬似組織構築技術との融合
CellGenTech, Inc
国際競争力を持つ、脂肪細胞医薬品開発