2015年9月号 - 学校法人愛徳学園

愛徳学園宗教部通信
第 313 号
○ 今月のみことば
2015 年
9月
“ 好きなことを続けることが大切”
H.O
英語科
彼らが愚かなふるまいに戻らないように
T.S
今年の夏、故郷種子島に帰省し、かつて中高時代
『わたしは神が宣言なさるのを聞きます。主は平和を宣言されます。
……
生徒の心に語り掛けたいこと
』
詩編85番9節
「戦後 70 年」を記念するこの夏、妻と二人で、ヒロシマ・ナガサキ同様、第 2 次世界大
戦の悲惨な現場となり、負の世界遺産とも言われる、ポーランド・アウシュビッツ強制収
容所を訪ねる旅に出ました。ポーランドは皆さんのよく知る人では、コペルニクス・キュ
に使っていた本棚を整理していた時、偶然中 3 の時
の作文を見つけました。主題は、「将来の私の夢」で
した。当時の自分にタイムスリップしたような不思
議な感じがしました。
リー夫人・作曲家でピアニストのショパン・そして宗教で学ぶコルベ神父さん達の故郷です。
中学生になって初めて英語に出会ってから、私自
夕刻、首都・ワルシャワについて、ショパン記念の公園を散歩して、翌日9日にはす
身は大きく変わったように思います。英語を聞き、
ぐ、お隣の国リトアニア・ヴィリニュスに向かいました。この町では、ヒトラーの迫害か
読み、書き、そして話すことにとても興味を持ち始
ら逃れ、国を脱出しようとした 6.000 人のユダヤ人の命を救うべく、自らの良心に従っ
て日本通過ビザを発行し続けた日本人外交官『杉原千畝の記念碑』を訪ねて祈りました。
めました。私は毎日、教科書の英文を「大きい声で」
日本から遠く離れた異国の地で、今も多くの人々から尊敬され、感謝され続けている日本
人の存在に、大きな勇気をいただきました。
何回も音読し、何回も書きました。英語を発音することが楽しかったのです。学年が
上がるにつれて、長文の内容の難しさにつまずいて、途中で投げ出したくなることが
翌日はワルシャワに戻り、今度は、コルベ神父が聖母マリアに捧げるために苦労して
何回もありました。しかし、そんな時、自分から英語をとったら何が残るのか、とに
建設した『修道院』ニエポカラノフを訪ね『コルベのチャペル』で祈りました。そして午
かく頑張るしかないと自分に言い聞かせていたように思います。ただ自分が好きなこ
後には、ワルシャワ・セントラル駅から電車で約2時間半南に位置する都市・クラクフに
とを続けようと必死になっていたのです。
向かいました。ヒトラーが活動の拠点を置いたことで、昔の町並みが破壊されずに済み、
信じられないかも知れませんが、小学生の時まで私は目立たないごく普通の男子で
中世の姿のまま残るクラクフは、日本の京都に匹敵する本当に美しい古都でした。
した。そんな私を英語が変えてくれたのです。英語科の教師として学園にお世話にな
翌 12 日は、一日かけてアウシュヴィッツ強制収容所を見学しました。中学 3 年生のと
き、住んでいた寮の薄暗い図書室で、V・フランクルという強制収容所を生き延びた精神
ってから、もう35 年以上の年月がたちます。私自身改めて不思議な運と縁を感じています。
医学者の著書『夜と霧』に出会い、初めてこの場所での悲劇を知って以来、これまでたく
さんの本を読み、学んできた私には、本当に感慨深い訪問となりました。ここでは同じ部
屋の囚人の身代わりになって『餓死室』に送られ、食べ物はおろか、水さえ与えられずに
あなたが時間を忘れるほど熱中していること、本当に好きなことが将来のあなた自
身につながることは“確かに”あると思います。あなたが抱いている夢は実現しない
と思って、最初からあきらめないことです。
殉教した『マキシミリアノ・コルベ神父』が亡くなった『餓死牢』の前でも祈ることが出
今、好きなことがこれといってない人もいるかも知れません。好きなことを一つに
来ました。この偉大な聖人は日本との関係が深く、戦前、長崎に来て、日本の人達に“聖
絞ることはないと思います。好きなことが子どもの時から変わらないという人はあま
母マリアやイエスの教え”を熱心に説いた人です。
りいないと思います。最初から決めつけてしまわないことが大事です。
それぞれが家庭では良き夫・良き父親であった、ヒトラーやその部下達。ごく普通の
人間に見えた彼らに、どうしてこんなにも残酷な大虐殺が出来たのか。自分を含むすべて
の人間の心の奥底に巣くう『悪の力』を痛感させられました。アウシュヴィッツではユダ
ヤ人を中心に、ポーランドの政治犯や、同性愛者・ジプシーと呼ばれ差別された、ロマの
人たちなど、少なく見積もっても 150 万人が犠牲になったと言われます。帰りには聖ヨハ
ネ・パウロ 2 世の故郷・ヴァドヴィツェにも立ち寄り、生家の隣の教会で祈ることが出来
ました。
また自分一人だけで考えず、周囲の人の意見を聞いてみることも大事なことです。
自分で意識していなくても、あなたの近くで一緒に活動している人からあなたの良い
ところを引き出してもらえるかも知れないからです。自分の内面的なところに気づか
されることもあるかも知れません。どんなに困難だと思われていることであっても、
あなたが諦めずに頑張れば、今まで気づかなかった「力」に気づくことがあるかも知
れません。強い意欲を持ち続けていれば、夢が実現できることがきっとあるはずです。
今も世界各地で、毎日のように繰返される戦争の悲劇が絶えません。私たちも歴史を
10 年後、20 年後の自分がどこにいてどんな仕事をしているのか、今は、まだ分か
しっかり学び、愚かな戦争を繰返さないために、グローバルな視野を持って、自分の頭で
らないことですが、将来の自分を夢にみながら、あなたが好きなことを続けることが
しっかり考え、世界平和の建設に向け、出来ることから誠実に取り組んでいくべく、決心
大切なことだと思うのです。
を強めましょう。