心理的ストレスへの対応について

平成 27 年 3 月 25 日放送
「心理的ストレスへの対応について」
茨城西南医療センター病院
臨床心理士 木村 泰博
司会:ストレスとは何ですか?
木村:ストレスは、元々物のゆがみを意味する言葉で、それが医学や心理学に取り入れられ
たものです。ストレスは大きく分けると、ストレスの原因と、ストレス反応に分ける
ことができます。
私たちが普段よく耳にするストレスという言葉はこの両方を含んで
使われています。
司会:ストレスの原因にはどんなものがあるのですか?
木村:自分が病気になったり、親しい人と別れたりなど、悲しい出来事はストレスとしてわ
かりやすいかと思います。また、結婚や昇進、入学といった一見うれしいことのよう
に見える出来事もストレスの原因に含まれます。
司会:うれしいこともストレスなのですか?
木村:人生の中で経験する大きな出来事という意味では、ストレスになります。今までの生
活から新しい生活に変わると、慣れるのに時間がかかることがあると思います。この
慣れるまでの期間というのがストレスを感じる期間になります。
その期間が過ぎて以
前のように生活できる場合もあれば、慣れることができない場合もあります。
司会:他にはどんなストレスがありますか?
木村:人間関係や仕事、勉強、満員電車といったものもストレスとなります。これらは大き
な出来事ではありませんが、
少しずつ毎日経験するため気づかれにくいという特徴が
あります。
司会:身の回りにはたくさんのストレスがあるのですね。
木村:私たちは誰もがストレスに囲まれて生活しているといってよいと思います。そういう
意味では生きているとストレスがあるのは当たり前ということになります。
ストレス
の原因がないという人はいないのではないでしょうか。
ストレスがないという人はス
トレス反応が小さい人ということができます。
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司会:ストレス反応とは何ですか?
木村:ストレス反応というのは、私たちの体や気持ちに起こるいろいろな変化のことです。
人間はストレスを感じると体の中でさまざまなことが起こります。自分でストレスに
気づかないで過ごしている場合でも体の中では反応が起こっているため、
ストレス反
応には目にみえないレベルのものから、
生活に影響をもたらすレベルまでさまざまな
ものがありますが、一般的には目に見える、感じられるレベルからが問題になってき
ます。
司会:ストレスによって病気になったりするのでしょうか?
木村:体の病気としては高血圧や心疾患、胃潰瘍などがあります。精神的な病気としては、
うつ病が代表的なものです。
司会:体の病気になることもあるのですか?
木村:心身症や身体症状症と言われます。体の病気の中でその経過や発症に心理社会的な原
因が関係している病気のことです。こころと体は密接に関係しており、心理的な不調
が体の症状として現れることは珍しいことではありません。
いずれにしてもストレス
の溜め過ぎが、こころや体の病気のリスクになることは間違いないと思います。
司会:心が弱い人は病気になりやすいのでしょうか?
木村:そんなことはありません。強いストレスがかかれば誰でも病気になる可能性はあり得
ます。ストレス性の疾患に限って言えば、ストレスの強さと、ストレスへの対応のう
まさとの両方が関係しています。
司会:病気にならないためにはどうしたら良いのでしょうか?
木村:これまでの研究から、同じストレスを経験しても、人によって感じ方が違うことが分
かっています。このストレスの感じ方を変えることが重要です。ストレス自体は無く
せないとしても、感じ方が変われば病気にはなりにくくなります。
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司会:具体的にはどうしたらよいのですか?
木村:まず何よりもストレスについて知ることがとても大切です。自分がどんなことをスト
レスだと感じるのか、ストレスを感じた時に自分がどうなるのか、自分のストレス解
消法は何なのか。自分のことは自分が良く知っていると思いがちですが、意外に思い
こみであることも多くあります。ストレスの問題で相談にいらしたほとんどの方は「ま
さか自分が」とおっしゃいます。2015 年の 12 月から、50 人以上の従業員がいる事業
所はストレスチェックが義務化されますので、その結果を利用できる方もいらっしゃ
ると思います。ただ、主婦の方や自営の方、小規模事業所で働かれている方、お子さ
んの場合にはご自身で気をつけていただく必要があるかと思います。
司会:自分でできることがあるのですね?
木村:普段の生活の中にストレスがあるのは普通のことなので、適度なストレスは必要です。
ストレスが強くなりすぎると健康を崩してしまいます。健康な生活を送るためにもご
自身で自分のケアをされることは大変重要です。体の健康だけでなく、精神的な健康
にも気を向けてもらえたらと思います。
司会:自分でできるストレス解消法にはどのようなものがありますか?
木村:大きく分けるとストレスの原因そのものをなくしてしまうという方法と、ストレスの
原因には手をつけないで気分を変えるという方法があります。ストレスの原因そのも
のを無くす方法としては、たとえば仕事がたまっているとしたら、とにかく仕事を片
付ける、反対にその仕事を辞めたりすれば、ストレスの原因がなくなってしまうわけ
です。気分を変える方法としては、誰かと話したり、音楽を聴いたり、買い物したり、
おいしいものを食べたりといったことでしょうか。
こちらはみなさんよくなさってい
ることだと思います。
司会:何かポイントのようなものはありますか?
木村:できるだけいろんな種類のストレス解消法を持つことです。どんな時にも使える良い
方法というのはありませんので、いくつかある中から選べることが理想的です。また、
試してみて効果がなかったら他の方法に変えてみることも大事なことです。
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司会:自分だけではどうしようもなくなった場合はどうしたら良いでしょうか?
木村:その際は精神科、心療内科といった専門の医療機関を早めに受診されるか、かかりつ
けの主治医や通院先がある場合にはそちらで相談してみることをお勧めします。
特に
気分だけの問題の場合、
患者さんやご家族の方から話がないと気づかれにくいことも
多いと思います。最近まで、精神疾患のイメージもあって、相談することが敬遠され
やすい状況がありました。しかし、ストレスの問題も体の問題も早めに対応すること
で回復が早くなるのは同じです。
司会:ストレスについて臨床心理士にしてもらえることはありますか?
木村:ストレスに関する情報やストレスケアの方法をお伝えすることができます。何度か続
けて相談に来ていただければ、自分のケアをできるようになることをお手伝いするこ
ともできます。特にこれまでに自分のやり方ではうまくいかなかった方には、お役に
立てるのでなはないかと思います。
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