「FX特別レポート」(5/11) ドル売り転換の目安とは? ㈱マネー&マネー社長・吉田 恒 なかなかドル売りが止まらない状況が続いている。このドル売りはいつまで続くのかに ついて、今回は考察してみたい。 ◆「売られ過ぎ」になってきたドル シカゴIMM統計によると、ドル売り持ち高(非米ドル主要 5 通貨買い持ち)は、5 月 2 日現在で 11.5 万枚に拡大した。10 万枚の大台を売り持ちが超えたのは 2004 年 12 月以来 のこと。 ところで、この 2004 年 12 月とは、同年 11 月の米大統領選挙を前後してドルが一段安に 向かった局面であり、この時、ドル売り持ちは最大で 20 万枚まで拡大した。単純にそれと 比べると、今回の場合まだドル売り持ちの拡大余地はありそうだということになる。 しかし、この 2004 年 12 月当時の米政策金利はまだ 2%程度で、その意味でドルはまだ 「低金利通貨」だった。一方で、現在の米政策金利は今週のFOMCでついに 5%まで引き 上げられる見通しとなっており、もはやドルは「低金利通貨」ではない。 要するに、2004 年 12 月と比べると、すでに「高金利通貨」であるドルの売り持ちを一 段と拡大することはもちろん、それを維持することだけでもかなり制約はありそうだ。2004 年は、10 万枚を超えるドル売り持ちが、10 月下旬から 12 月初旬にかけて 3 ヶ月弱続いた。 今回の場合、ドル売りの持続力はそれほどではないのではないか。 ◆「高金利」ドル売りの限界とは? では、今回のドル売り持続力限界をどのように考えたらよいだろうか。一つの目安はド ル下落の減速ということだ。 「高金利通貨」ドルは、確かに金利差の観点では優位性が強いが、最近にかけてはそれ 以上に為替の下落ピッチが早い。たとえば、円やユーロなど主要通貨に対する下落率は、 過去 1 ヶ月で 5%を越えている。これでは、ドル売りも金利差を埋めて余りある状況といえ るわけだ。 逆にいえば、ドル下落のピッチが鈍化すれば、いよいよ高金利通貨ドルの売りは不利と なる。たとえば、欧米の政策金利差は現在 2%程度のドル優位だが、そんなドルの対ユーロ での下落率が 2%以下になるようなら、ドル売り・ユーロ買い取引は、総合的に見ると損失 ということになってくる。 シカゴIMM統計によると、ユーロの買い持ちは 5 月 2 日現在で 7.4 万枚と過去最高を 大幅更新している。要するにユーロは空前の「買われ過ぎ」になっているわけだ。それが いつまで続くか、とくに金利の面で不利な米ドルなどに対するユーロ買いの持続性には、 自ずと限界がありそうだ。 それでもまだテンポの良いユーロ上昇が続いている限りは問題ないが、そのペースが鈍 くなるようなら、いよいよユーロ買い取引見直しの行方も注意する必要が出てくるのでは ないか。(Y) 参考:非米ドル主要通貨のネット持ち高推移 250,000 200,000 ↑ ドルショー ト 150,000 04.4月中国引き締 め 100,000 05.3月GMショック 50,000 0 -50,000 -100,000 -150,000 ↓ ドルロング 06/04/18 06/02/28 06/01/10 05/11/22 05/10/04 05/08/16 05/06/28 05/05/10 05/03/22 05/02/01 04/12/14 04/10/26 04/09/07 04/07/20 04/06/01 04/04/12 04/02/24 04/01/06 -200,000
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