原子構造 復習と基本問題1

電子、原子、原子構造 復習と基本問題 1
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1)●周期表の発表
元素(英語 1):錬金術時代から分析化学的手法により、18世紀末まで約30種の
元素が知られた。19世紀に入り、電気化学的分析(2
2 実験主導者の名前と発見
した元素のうち3種を記す)、発光スペクトル分析(炎色反応、3
3 実験主導者2名と
2種の元素を記す)により、半世紀強の間に、それまでに知られたものとほぼ同数
の未知元素が発見された。元素を原子量の順にならべると(4
4)ごとに類似の性質
が現れ(オクターブの法則)、周期性が確認された。
1869年には、ロシアの化学者(5
5)により62種元素の周期表(6
6英語で)が発表された。
2)周期表の完全化2)周期表の完全化-1
周期表には、埋められていない元素の欄のいくつかが発見された(エカ-ケイ素→
Ge、エカ-ホウ素→Sc、エカ-アルミニウム→Ga)。ついで、周期表には無かった
第(7
7)族元素(不活性ガス、希ガス)がイギリスの化学者(8
8)と物理学者(9
9)により
発見された。この発見は気体の液化技術と分別蒸留技術の成果でもある。空気
から酸素と窒素を化学反応で取り除いた残留気体の分光によりAr(10
10英語)を、
10
空気を液化するなどしてNe(11
11英語),
Kr(12
12英語),
Xe(13
13英語)を発見した。もっとも
11
12
13
軽い不活性ガスの(14
14元素記号と英語)はすでに太陽の輝線スペクトル中の未知
14
元素に命名されていた元素で、これをウラン鉱に含まれる窒素の中に発見した。
この元素は常圧では低温にしても固体にならず、その沸点は(15
15)Kである。
15
2 デービー
3ブンゼン、キルッホ
K,Na,Mg,CSr,Ba,Ca
フCs, Rb
5 メンデレーフ
6 periodic table
7 18
8 ラムゼー
9 レーリー
10 argon
11 neon
12 krypton
13 xenon
14 He helium
15 4
1 element
4 8番目
3)周期表の完全化3)周期表の完全化-2
ランタノイド元素(La-Luの15元素)、アクチノイド元素(Ac―Lrの15元素)は、各15元
素の化学的性質が極めて類似しており、化学分析による分離は困難であったが、元
素の特性X線を測定することにより原子番号(16
16英語)と特性X線の波長(
l)に良い相
16
関関係をイギリスの(17
17人名)が見出して以来、周期表の完全化が以下のように進
17
んだ。
あ)原子量順の不備を原子番号順で適正化:原子番号は原子核中の陽子(18
18英語)
18
の数であり中性元素の電子(19
19英語)数に等しい。周期表は原子番号順に元素を並
19
べた表である。原子量は同位元素(20
20 英語)の存在比(たとえば水素に3種類存在
する。1H (21
21),
22),
23)の英語名と陽子数、中性子数、電子数を記す)の存
21 2H (22
22 3H (23
23
在比により原子量は変化するが、原子番号はすべて1である。
い)原子番号92のウラン(24
24 元素記号)より前にある周期表
の空白部分の元素の発見(Tc, Pm, Hf, Re, At, Fr)。陽子と中性
子(ともに質量はほぼ同じ、電子はその1/1840)が元素の
-極
+極
質量をほぼ決め、陽子の数+中性子の数を(25
25)という。
25
う)ランタノイド系列の確定が行われた。
16 atomic number
17 モーズリー 18 proton
19 electron
20 isotope
21 hydrogen 陽子数 1、中性子数 0、電子数 1
22 deuterium 陽子数1、中性子 23 tritium 陽子数 1、中性子数 2、電子数 1
数1、電子数 1
24 U
25 質量数
4)周期表の完全化4)周期表の完全化-3
ウラン以降の元素を(26
26)という。原子核への放射線
a線, b線, g線の照射、加速器に
26
より人工的に得た高エネルギー粒子(中性子、陽子、他)の照射などにより、原子番
号93-114元素が発見された。α線とは(27
27簡単に説明)
β線とは(28
28簡単に説明)
27
28
γ線とは(29
29簡単に説明)右図中の空欄にこれらを記入する(+、-は電場の符号)
29
26 超ウラン元素
28 電子
27 ヘリウム原子核 He2+
29 高エネルギー電磁波
アルカリ金属(alkali metal) 1族 Hを除いた6元素、+1になる
Li(リチウム30
30英語)、Na(ナトリウム31
31英語)、K(カリウム32
32英語)、Rb(ルビ
30
31
32
ジウムrubidium), Cs(セシウムcesium、Fr(フランシウムfrancium)
アルカリ土類金属(alkaline-earth metal) 2族 Be(ベリリウムberylium), Mg(マグネシ
ウムmagnesium)を除いた4元素(Caカルシウム33
33 英語,
英語 Srストロンチウム
strontium, Baバリウムbarium, Raラジウムradium) +2価になる。
12族:Zn(亜鉛zinc), Cd(カドミウムcadmium), 34元素記号
液体の金
34元素記号(水銀mercury
元素記号
属)。+2価になり易い
13族:ホウ素族元素 Bホウ素boron, Alアルミニウムaluminum, Gaガリウムgallium,
Inインジウムindium, Tlタリウムthallium +3価になる。
14族:炭素族元素 C 炭素 35英語,
Siケイ素silicon, Geゲルマニウムgermanium,
35
Sn錫tin, Pb鉛lead イオンにならない
36英語,
Pリン37
37英語,
Asヒ素arsenic, Sbアンチモン
15族:窒素族元素 N窒素36
36
37
antimony, Biビスマスbismuth -3価になる
16族:酸素族元素 O酸素38
38英語,
S硫黄39
39英語,
Seセレンselenium, Teテルル
38
39
tellurium, Poポロニウムpolonium -2価になる
ハロゲン元素(halogen): 17族中の5元素(F(フッ素fluorine, 40元素記号
41英語,
40元素記号塩素41
元素記号
41
Br臭素bromine, Iヨウ素iodine, Atアスタチン) ―1価になる。
希ガス元素(rare gas):18族中の6元素(He42
42英語,
Ne43
43英語,
Arアルゴンargon, Kr
42
43
クリプトンkrypton, Xeキセノンxenon, Rnラドンradon)。イオンにならない。
30 lithium
34 Hg
38 oxygen
42 helium
31 sodium
35 carbon
39 sulfur
43 neon
32 potassium
36 nitrogen
40 Cl
33 calcium
37 phosphorus
41 chlorine
6)原子量
アボガドロ数(6.02×1023)個の原子集団の質量(g単位)が原子量になる。アボガド
ロ数個の原子、分子などの集団を(44
44数字+化学用語)という。気体(44
44)は種類
44
44
に関係なく1気圧、25℃において22.4Lの体積である。原子量は12Cの質量を12と
定義して、各原子の相対的な質量を決める。天然の原子は同位体の混合物であ
り、各同位体の存在比を考慮した加重平均で原子量を決めるため、小数点以下
の数値が出てくる。
7)電子配置
1)殻
1)殻shell
元素中の電子配置が元素の性質を決定する。原子核を中心とし、球殻状の形で
層状に電子殻(K殻(n = 1, 2個の電子)、L殻(n = 2, 8個の電子)、M殻(n = 3, 18個
の電子)、N殻(n = 4, 32個の電子)があり、電子が詰まる。この番号nを(45
45科学用
45
語)と言い、電子殻の種類、電子殻のエネルギー、各殻中に含まれる最高電子数
(2n2)を決める。
44 1 mol
45 主量子数
2px, 2py, 2pzの形を描く
p軌道の形をpx、py、pzの順に記す
M殻は3s + 3p + 3d(5種類の軌道)
N殻は4s+4p+4d+4f(7種類の軌道)
p軌道、d軌道、f軌道は各々形が異なる3種、5種、7種の軌道で出来上
っているが、それらは互いにエネルギーが等しい。これを(46
46科学用語)とう。
46
3) 電子の入り方
➀低いエネルギーの軌道から、➁一つの軌道にスピン逆向きで2個(パウリの排他
原理)、③(46
46科学用語)の場合はスピン平行(フントの規則)
46
右表は水素原子からネオン原子までの電子配
置である。1個の軌道に1個で入っている電子
(赤く示す電子)は相手がいないため、反応性
が高い。このような電子を不対電子(unpaired
electron)または(47
47科学用語)という。
47
これらの電子は共有結合(covalent bond)の形成に重要である。このような状態の軌
道にさらに1個の電子が入ると2個の電子はスピンを逆にして電子対を形成する(図
中の青い2電子)。窒素原子は3個の不対電子、酸素原子は2個の不対電子を持つ
。すべての電子殻が電子で満ちた状態(He, Neなど不活性ガス)を閉殻(closed shell)
構造、満杯でない状態を開殻(open shell)構造という。
電子の入っている一番外側の殻(H,HeではK殻、Li~NeではL殻)を最外殻といい、そ
の下の殻を内殻という。化学反応は最外殻にある電子が関与するので、電子状態を
内殻+最外殻で示すとき内殻がびっしりならHe、Ne, Arと略記する(例、酸素の電
子配置 (He、2s2, 2p5))。最外殻のうち、最も高いエネルギー軌道にある電子対を
非共有電子対または 孤立電子対(lone pair)という(Nは1個、Oは2個、Fは3個の非
共有電子対を持つ。B, Cは持たない)。これらの電子対は配位結合(coordinate
bond)の形成に重要である。
開殻構造の原子は、閉殻構造の電子配置になるために、電子を失って陽イオン(カ
チオン、cation)、または電子を得て陰イオン(アニオン、anion)になる。失ったり、得た
電子の数を価数といい、イオン反応では極めて重要である。
最外殻中の不対電子を価電子(valence electron) (非共有電子対を加えることもある
)といい、反応、構造、物性を支配する。Na+の電子配置(48
48),
49),
48 Mgの電子配置(49
49 Al
1‒の電子配置(52
の電子配置(50
50),
51)、Cl
52)を記す。
50 Sの電子配置(51
51
52
4) Ar
Ar以降(第4周期)元素の電子の収容の順序
水素から18Arまで、素直に1s2, 2s2, 2p6, 3s2, 3p6と18電子が詰まる。次は3dの順であ
るが、原子中に多くの電子が存在することなどにより、4s軌道のエネルギーの方が
3d軌道よりも低くなり、53
53元素記号(Z=19),
Ca(Z=20)では4s軌道に入る。ついで、
53
4s軌道 → 3d → 4p → 5s ・・・のように、図に示す順序で電子が詰まる。
Sc(Z = 21)からCu(Z=29)は最初の遷移金属系列では3dが順次満たされる。フント則
にのっとり、エネルギー同一の(54
54 数字)重縮退軌道にスピンを同じ向きにして詰
数字
まる。これらは、種々の原子価を取り、強く着色した化合物を作る。単体は硬く、高
融点の重金属で、多くは磁性、触媒機能を示すなどの共通点を持つ
46 縮退 縮重 47 ラジカル電 48 1s2, 2s2, 2p6
子
49 1s2, 2s2, 2p6, 3s2 50 1s2, 2s2, 2p6, 3s2, 3p1
51
52
1s2, 2s2, 2p6, 3s2, 3p4
1s2, 2s2, 2p6, 3s2, 3p6
53
K
54
5
左肩上がりの矢印に沿ってs, p, d, f軌道に2
個, 6個, 10個, 14個づつ詰まる
電子、原子、原子構造 基本問題 2
1)周期表(続き)次の元素記号または元素名を記す
周期表
A
銀Ag
B
ホウ素 B
C
炭素 C コバルト Co 銅 Cu 塩素 Cl Cd カドミウム セシウム Cs クロム Cr Ca カルシウム
F
F フッ素
G
Ge ゲルマニウム
H
水素 H
He ヘリウム
I
ヨウ素 I
インジウム In
K
K カリウム
Kr クリプトン
M
Mg マグネシウム
N
窒素 N
P
リン P
R
ルビジウム Rb
S
硫黄 S
T
Tc テクネチウム
他
U ウラン
金 Au
Al アルミニウム
Ar アルゴン
As ヒ素
Ba バリウム Be ベリリウム Br 臭素 Bi ビスマス
鉄 Fe
Fr フランシウム
Ga ガリウム
Hg
イリジウム Ir
Mo モリブデン
ナトリウム
Na
白金 Pt
Mn
ネオン
マンガン
Ne
鉛 Pb
ラドン Rn
シリコン Si
錫 Sn
Ta タンタル
V バナジウム
水銀
ニッケル Ni
パラジウム Pd
ラジウム Ra
Sb アンチモン
Te テルル
W タングステン
Sr ストロンチウム
Tl タリウム
Xe キセノン
Zn 亜鉛
Zr ジルコニウム
2)光、物質波
光は光子という(1)と考えることも、電磁波という(2)として考えることもでき
る(ドブローイの提案)。一個の原子や分子に1個の光子を当て、電子を励起する
ことができる。この時の、光は個数を数えることができる(1)である。一方、光
のエネルギーは振動数に(3)し、波長に(4)する。この場合の光は(2)である。
電子や物質も同様に(1)と(2)の二重性を持ち、ドブローイは物質波の概念を提
案した。光を粒子とすれば, そのエネルギーEは(
5
)であり、波とすれ
ば ( 6 )の式が成り立つ。
両者の性質を持つ物質波の波長λは
λ = ( 7
) = ( 8
) = ( 9
)
(1)
となる(7は振動数 ν 、8は速度 v ・・光の場合は光速 c,
9 は運動量 p を用いて表
す)。
式1を用いて、体重60 kgの人が時速3.6 km(秒速1m)で歩く時の波長λは
λ= h(=6.6×10‒34 J•S)/(質量 kg × 速度 秒速)= ( 10 m)
この波長は原子直径のオーダーである10‒10 mに比べてあまりにも小さく、波と
して認識できるものではない。
1 粒子
2 波
3 比例
4 反比例
5 E = mc2
6 E = hn
7 c/n
8 h/mc
9 h/p
10 1x10-35
3)水素原子の発光スペクトル
水素分子H2は最低の軌道(この場合は分子軌
道)に2個の電子をもつ。この状態に外部から
エネルギーを与え(放電など)原子状水素(H•,
水素原子)にし、1s軌道の電子を上にあるエ
ネルギー準位に叩き上げる(励起11
11 英語)。
英語
与えるエネルギーの大きさにより、電子は上の
L殻、M殻、N殻、O殻、さらに原子の外部に叩
きだされる。叩き出すために必要な最小のエ
ネルギーをイオン化エネルギー(12
12 英語)I
英語 Pとい
う。IPの大きさは原子、分子(13
13 英語)の種類に
英語
より異なる。
H•
IP
→ H+ + e‒
(2)
イオン化エネルギー以上のエネルギーを得ると、原子、分子の最外殻から電子が
叩きだされイオン化し、電子は原子に束縛されない自由電子(14
14 英語)となる。上に
英語
励起された電子は、より低い軌道に落ちる。その時余分なエネルギーを熱または光(
発光: 蛍光と燐光)として外に出す。電子がエネルギー準位間を移動(上にも下にも)
することを遷移といい、エネルギーのもっとも低い状態を基底状態(ground state)そ
れよりエネルギーの高い状態を励起状態(excited state)という。上図の右は、E1状態
からE2状態へ励起された電子が、下のE1状態に戻るときの様子を示し、発光の振動数をn, 波
長をlとすれば
E2 ‒ E1 = hn = (15
15 c、λで記す)
(3)
より
(5)
である。この式を主量子数
nで書き直したのが初期の実験結果である(主量子数n2からn1への
発光)。
1/l = R(1/n12 ‒ 1/n22)
(4)
以下 4式を、ボーアの原子模型と角運動量Lの量子化という仮定に基づき証明する。
11 excitation
12 ionization energy
14 free electron
15 hc/λ
13 molecule
4)ボーア模型
水素原子のボーア模型
中心に陽電荷の原子核があり、半径rの軌道(n = 1、K殻)を電子が回転
する。この外側にn=2(L殻),3(M殻)•••の軌道がある。水素以外の原
子では、中心の原子核が+Ze(Z:陽子数=原子番号)の電荷をもつ。
電子(質量m)が、原子核の周囲を半径rの位置で回転している安定な状態を考える
(定常状態)。この時、電子の遠心力(mv2/r)と電子―原子核間クーロン引力
Ze2/4πε0r2は釣り合っている。従って、
mv 2
Ze 2
=
r
4πε 0 r 2
より
(5)
Ze 2
r=
2
4πε 0 mv
(6)
A
(5)または(6)式に、Bohrが提案した角運動量の式
L = mvr = n ħ
(7)
を入れる。つまり(mvr)2 = (mv2/r)×mr3であるから
(n ħ)2 =(Ze2/4πεor2)×mr3
となり、これを変形すると定常状態における半径(rn)が得られる。
4πε 0 h
rn = n
2
Zme
2
2
B
(8)
半径はn2に比例して大きくなる。水素ではZ = 1であり、一番小さなrはn = 1のときの、
4πε 0 h
r=
2
me
これをボーア半径
2
(9)
(a0 = 0.529 Å, 1 Å = 10-8 cm = 10-10 m = 0.1 nm)という。
5)軌道エネルギーと遷移エネルギー
半径が規定されると、その軌道エネルギーも決まる。
電子の全エネルギ-は、電子が持つ運動エネルギー(mv2/2)とポテンシャルエネルギー
(今の場合はクーロンポテンシャルで ‒Ze2/4πεor:上記の力の積分に相当する)の和で、
(1)式を利用して n番目の軌道のエネルギー En は
En = (mv2/2)+ (‒Ze2/4πεor)= (Ze2/8πεor)‒(Ze2/4πεor)=
Ze 2 1
Z 2 me 4
=
( − 1) = −
2 2 2
2
4πε 0 rn 2
32π ε 0 h n
C
と分母にn2を持つ。水素原子(どんな原子であれ)、原子中の電子に特定のエネルギー
を与え、電子軌道n1からn2へ電子を励起できる。そのエネルギーを遷移エネルギーと言
い、電子軌道n1からn2への遷移エネルcギーは プランク・アインシュタインの式
E = hν = hc/λ
(11)
を変形した1/λ = E/hc と 電子軌道n2(エネルギーEn2)からエネルギーの低い電子軌道n1
への発光スペクトルの波長λは、1/λ = (En2‒ En1)/hc となり、これに10式を入れると
1
λ
=
Z 2 me 4
(
1
8ε 0 h 3 c n1
2
2
−
1
n2
)
2
D
この係数 D はリュドベリ定数と言われ、理論値と実験値は一致する(R =
1.097×107 m−1)。水素原子の発光スペクトル実験の式4に相当する。
5)波動関数、
波動関数、シュレーディンガー方程式
Newtonは運動エネルギーkinetic energy( T)とポテンシャルエネルギーpotential
energy(U)の和を全エネルギー(E)とした。
E = T + U
質量m、速度vの物体は運動エネルギーT = mv2/2を持つ。
運動エネルギーを運動量momentum p = mvで示すとT = mv2/2 = p2/2mとなる。
運動エネルギーTを運動量の関数で、ポテンシャルエネルギーUを位置xの関数として
表した場合, TとUの和をハミルトン
ハミルトン(W.R.Hamilton
19世紀アイルランドの数学者)関数
関数
ハミルトン
という(13式)。
1 2
H ( p, x ) = T ( p ) + U ( x ) =
p + U ( x) = E
2m
(13)
上図ボーア模型のように電荷Zeの原子核から距離r離れた電子
(電荷e)は
クーロン力、F = −Ze2/4πεor2 A
を受ける。そのポテンシャルエネルギー(ポテンシャルエネル
ギーの勾配に負号をつけたものが力である)は
U(r)=−∫Fdr =− Ze2/4πεor
となり、
である。
2
1
Ze
2
2
2
H=
( px + p y + pz ) −
2m
4πε 0 r
(14)
電子波の運動を扱うため、波動
波動を考える。空気中で振動する音叉は時間および空間
波動
で周期的に変化する音波を出し、振動している電気的双極子は空間中に電磁波を出す
(図2.9)。時間および空間で周期的に変化する波が波動である。
このような波動は、サインまたはコサイン関数で記述できる。フックの法則(1章の
付録 研究者業績等参照)に従うバネにつながれている粒子(調和振動子:これは、古
典力学でも最も基本的な振動運動であるが、量子力学でも同様である。基本的である
だけでなく、例えば、電磁場は調和振動子の集まりとして理解できる)の運動は15式で表
せる。
図2.9 電磁波は電場と磁場を持つ。
図はその振動の様子
x
φ = A sin 2π ( − vt )
λ
(15)
ν
単位の長さに含まれる波長の数は波数(wave number)である(k = 1 / λ , 速度v = νλ = )。
k
15式を振動数、波数を用いて表すと16式となる。
φ = A sin 2π (kx − νt )
(16)
図2.10は φ1 = A sin 2π (κx − νt ) と φ 2 = A sin[ 2π ( kx − νt ) − δ ]
B
の2つの波で、
図2.10
位相の異なる二つの波動
C
φ2はφ1にくらべx方向にδ/2πkずれている。これを、φ1とφ2は位相
位相(phase)が
δずれてい
位相
同一位相の波といい、
δがπの奇数倍なら逆位相
逆位相と
るという。δ = 2πn (n = 1,2••)ならば同一位相
同一位相
逆位相
D
いう。逆位相の波を重ねると合成された波の振幅は零である。
16
2.22式の波はx方向に速度ν/kで進む進行波である。前方にも後方にも進まない定在波
定在波は、
定在波
φ = A sin 2π (kx − νt ) + A sin 2π (kx + νt ) または
φ = 2 A sin 2πkx cos 2πνt
(2.23) →17
F
17
となる。2.23式を
φ(x,t) = ϕ(x) cos2πνt として時間を含まない波動 ϕ(x)を考え,
2.23式をxで二回微分した2.24式は時間を含まない波動方程式
時間を含まない波動方程式である。
時間を含まない波動方程式
17
18
∂ 2ϕ
2
+
(
2
π
k
)
ϕ =0
2
∂x
(2.24) →18
p
)を入れると電子の波動方程式であるシュレ
シュレ
λ h
13
ディンガー方程式
2.19式から p2 = 2m(E − U)を得、
ディンガー方程式が得られる[
方程式
18
2.24式にドブローイの関係( k =
1
=
∂ 2ϕ
∂ 2ϕ
p 2
∂ 2ϕ
2
2 2m( E − U )
π
ϕ
π
ϕ
π
ϕ=
+
(
2
k
)
=
+
(
2
)
=
+
4
h
∂x 2
∂x 2
∂x 2
h2
∂ 2ϕ 8π 2 m( E − U )
+
ϕ =0
∂x 2
h2
より、
−
∂ ϕ
ハミルトン演算子を
ハミルトン演算子
+ Uϕ = Eϕ となりハミルトン演算子
2
2
8π m ∂x
h
2
2
∂2
H =− 2
+U
2
8π m ∂x
h2
19
と定義すると、一次元のシュレディンガー方程式(2.25式)となる]。
Hϕ = Eϕ
つまり、
F
∂2
Hϕ = ( − 2
+ U )ϕ = Eϕ
2
8π m ∂x
h2
(2.25→19)
(2.26 → 20)
結局、量子力学では、19 式, 20 式のシュレディンガー方程式を解き、一定値Eを与
える波動関数ϕを求める。エネルギー値Eを系の固有値
固有値(eigen-value)、これに対する
固有値
波動関数を固有関数
固有関数(eigen-function)という。
固有関数
G
H
電子がxとdxの範囲内に存在する確率は|ϕ(x)|2dxで与えられる。また、ϕ(x)は「有限
有限・
有限・
ϕ(x)は一つの値のみを持ち(一
一価・
一価 ・ 連続」であり、「一つの位置座標xに対して
連続
価)」、「|ϕ(x)|2をxの定義された全空間で積分できる(有限)」、「定義された全空
間で連続」な関数である。有限の条件において、積分値が1(全空間を見た場合粒子
を見出す確率が必ず1であることを示す)ならば、 ϕ(x)は規格化
規格化されているという
規格化
(21式)。
21
2
∫ ϕ ( x) dx = 1
(2.27 → 21)