数理生態学に現れる反応拡散系と進行波解

応用数理特別講義 III
7 月 8 日 (月)∼7 月 12 日 (金)
14:40 - 16:40 数理科学研究科 (駒場)123 室
細野 雄三 氏(京都産業大学工学部)
数理生態学に現れる反応拡散系と進行波解
反応拡散方程式系は、生物学に現れる多様な現象を理論的に理解するために
重要な役割を果たしてきた。本講義では、主として数理生態学に現れる反応拡
散モデルを取り上げ、生物多様性に影響を与える生物種の侵入と伝播および生
存領域のパターン形成過程の様相を、進行波解を通して議論する。
まず、単独方程式について、種の空間的な広がりが進行波解を用いてどのよう
に解析できるかを述べる。
その後、2種系モデルについて、進行波解の存在とその性質を解析し、その結
果に基づいて、定着種がいる領域への他種の侵入、開放空間への2種の同時侵
入等の現象がどのように理解できるかを述べる。
また、数理生態モデルと密接な関係のある化学反応系についても可能な限り言
及する。進行波解の解析における数学的手法としては、相平面解析と特異摂動
法を用いる。
1. 序 ― 拡散と種間相互作用
2. 単独方程式 ― Fisher 方程式と進行波解、密度依存拡散
3. 進行波解の速度はどのようにして決まるか ― 線形予測
4. 2 種競争 Lotka-Volterra 系
5. 2 種餌食捕食者 Lotka-Volterra 系
6. Kermack-McKendrick 伝染病モデル
参考書
[1] J.D. Murray, Mathematical Biology, Springer-Verlag, Berlin, 1989.
[2] N. Shigesada and K. Kawasaki, Biological Invasions: Theory and Practice,
Oxford UP, Oxford, 1997.
[3] A. Okubo, Diffusion and Ecological Problems: Mathematical Models, Springer
-Verlag, New York, 1980.