UV application data 新しい紫外可視分析情報 Date 2015/01/28 210-UV-0029 カイネティクス解析~ALP 活性の測定 薬品や食品など幅広いライフサイエンス分野では、酵素-基 質の親和性や酵素活性を調べるために、酵素-基質反応の測定 と解析が行われています。V-700 series では、温調可能な特別 付属品と [カイネティクス解析] プログラムを組み合わせること で、酵素活性値、Michaelis 定数 (Km)、最大速度 (Vmax) 、阻害物 質定数の解析、および日本薬局方で定められているカリジノゲ ナーゼの活性値テーブルを作成することができます。ここでは、 代表的な酵素-基質反応を例に、V-700 series による酵素活性の 測定・解析方法をご紹介します。 <Keyword>カイネティクス、Michaelis-Menten、Lineweaver-Burk、 Hofstee、Eadie、日本薬局方、カリジノゲナーゼ 概要 酵素 E と基質 S とが酵素基質複合体 ES を作り、生成 物 P を生じ、生成物 P を分離した酵素は再生する反応モ デルを考えます。 酵素 (E) + 基質 (S) 酵素基質複合体 (ES) ここで P が生成する初速度 v は Vmax V × [S ] v = max 式1 図 1 上) V-730+STR-773+CSP-909 下) [カイネティクス解析] プログラム 酵素 (E) + 生成物 (P) K m + [S ] で表されます。この式は、MichaelisVmax/2 Menten の式と呼ばれ、Vmax は [S] が無限 大の時の反応速度を示し「最大速度」、 Km は v が Vmax の 1/2 になる基質濃度を示 し「Michaelis 定数」と呼ばれています。 (1) 式に基づき、[S] に対し v をプロット したものを Michaelis-Menten プロットと Km 呼び、このプロットから Vmax や Km を求め 図 2 Michaelis-Menten プロット る事ができます (図 2)。Vmax が大きいほど 最大活性が高いことを示しています。また、Km は酵素と基質の親和性を示し、Km が小さいほ ど酵素と基質の親和性は高く、素早く複合体形成することを意味しています。一方、Km が大き いほど酵素と基質の親和性は低く、ゆっくりと複合体形成することを意味しています。 具体的には、これら Vmax や Km を求めるために、分光光度計を用いて次の測定を行います。 ① ある一定濃度の酵素溶液にある濃度となる様に基質を加え、反応生成物または基質の吸光 度の時間変化測定を行います。 ② 反応開始時の傾きを初速度 v として求めます。 ③ 基質の濃度を変えて同様に①②を行い、[S] vs v をプロットします。 図 2 のように Michaelis-Menten プロットから目視で Vmax や Km を求めると目視による誤差を 生じやすいため、通常は (1) 式を変形した直線プロットを用います。直線プロットとして Lineweaver-Burk、Hofstee、Eadie プロットが知られており、Vmax や Km はこれらプロットの傾 き、縦軸または横軸の切片から求める事ができます。 本社・工場 192-8537 東京都八王子市石川町 2967-5 TEL 042(646)4111 代表 FAX 042(646)4120 東京 03(3294)0341/北海道 011(741)5285/北日本 022(748)1040/西東京 042(646)7001/筑波 029(857)5721/ 神奈川 045(989)1711/名古屋 052(452)2671/大阪 06(6312)9173/広島 082(238)4011/九州 092(588)1931 Lineweaver-Burk プロット: 1/[S] vs 1/v 1 Km 1 1 = × + v Vmax [ S ] Vmax 式2 傾き=Km/Vmax 式 2 に基づいて、1/[S] vs 1/v をプロットします (図 3)。 最小二乗法により直線の傾き (a) と切片 (b) を求め、 式 3, 4 から Vmax および Km を算出します。最もよく 1/Vmax 用いられるプロットで、 [S] の小さい領域でのプロッ トに有効です。 Vmax = 1 b -1/Km 式3 図 3 Lineweaver-Burk プロット K m = a × Vmax 式4 Hofstee プロット: [S] vs [S]/v K [S ] 1 = × [S ] + m v Vmax Vmax 式5 式 5 に基づいて、[S] vs [S]/v をプロットします (図 4)。最小二乗法により直線の傾き (a) と切片 (b) を求 め、 式 6, 7 から Vmax および Km を算出します。[S] の大きい領域でのプロットに有効です。 1 a K m = b × Vmax Vmax = Km/Vmax -Km 傾き=1/Vmax 式6 図 4 Hofstee プロット 式7 Eadie プロット: v/[S] vs [V] v = −K m × v + Vmax [S ] 式8 式 8 に基づいて、 v/[S] vs [V] をプロットします (図 5)。最小二乗法により直線の傾き (a) と切片 (b) を求 め、式 9, 10 から Vmax および Km を算出します。広 範囲の[S] のプロットに有効です。 Vmax = b 式 9 K m = −a 式 10 Vmax 傾き=-Km Vmax/Km 図 5 Eadie プロット 測定の概要 P-ニトロフェニルリン酸に酵素 (ALP:ホスファターゼ) を作用させると、無機リン酸と p-ニトロフェノールが遊離します。この遊離した p-ニトロフェノールは、アルカリ性 (pH10) で安定な黄色を呈するので、その吸収極大において時間変化測定を行い、基質濃度 [S] に対し初速度 (傾き) v をプロットし、ALP 活性を求めます。 装置 V-730 STR-773 CSP-909 紫外可視分光光度計 スターラー付恒温セルホルダー シリンジポート付き試料室カバー 測定・解析プログラム 測定:[時間変化測定] プログラム 解析:VWKN-772 [カイネティクス解析] プログラム 試料 酵素液 ・ 0.1 M 炭酸緩衝液 (約 pH10), ・ 10 mM 塩化マグネシウム液 ・ 酵素液:アルカリホスファターゼ (ALP) の生理食塩水液 0.0004 ug/mL 基質液 ・ p-ニトロフェニルリン酸 2 ナトリウム水溶液:0.067, 0.167, 0.333, 0.667, 0.833, 1.11, 1.67, 3.33 mmol/L (酵素液との混合による終濃度:0.0067, 0.0167, 0.0333, 0.0667, 0.0833, 0.111, 0.167, 0.333 0.7 mmol/L) 402 nm 0.6 スペクトル測定によるピーク波長の検出 酵素液に 0.667 mM の基質液を混合してから 2000 sec 後にスペクトルを測定したところ、 402 nm に p-ニトロフェノールの吸収ピークが 見られました (図 6)。そのため、この波長で ALP 活性の測定を行うことにしました。 0.4 Abs 0.2 0 300 400 500 600 Wavelength [nm] 700 780 図 6 2000 sec 後の吸収スペクトル 測定の流れ ① 0.1 M 炭酸緩衝液 1.5 mL, 10 mM 塩化マグネシウム液 0.3 mL, 酵素液 0.9 mL を 10 mm 角セルに入れて、ブランク測定を行いました。 ② ①の試料の時間変化測定を開始した後、0.067 mmol/L 基質液 0.3 mL を①に添加し、 そのまま時間変化測定を続けました。 ③ 他の濃度の基質液で①②を繰り返しました。 測定条件 測定範囲 データ取込間隔 UV/Vis バンド幅 レスポンス 測定波長 温度 0 - 2000 sec 1 sec 1 nm 0.96 sec 402 nm 37 度 結果 各基質濃度の時間変化測定結果を図 7 に示します。各濃度の時間変化データに対し、反 応開始直後の各時間変化データの傾き (abs/min) を初速度 v として求めた結果が表 1 です。 1.6 1 表 1 基質濃度 [S] と速度 v 反応開始 Abs 0.5 -0.1 0 500 1000 Time [sec] 1500 [S] mmol/L 0.0067 0.0167 0.0333 0.0667 0.0833 0.111 0.167 0.333 ― ― ― ― ― ― ― ― 2000 v abs/min 0.004 0.010 0.018 0.028 0.034 0.039 0.048 0.061 図 7 各基質濃度の時間変化データ この結果を Michaelis-Menten, Lineweaver-Burk, Hofstee, Eadie でプロットし、プロット 法から Vmax, Km を求めました。なお、Michaelis-Menten プロットでは、はじめに Vmax と Km を Eadie プロットから算出し、その値を初期値にして、実測した v と (1) 式から計算さ れる v とを最小二乗法でフィッティングを行い Vmax および Km を算出しました。 表 2 計算結果 Vmax Km MichaelisMenten 0.0835 0.1238 式 - 計算方法 Lineweaver-Burk Hofstee Eadie 0.0815 0.1179 1/v = 1.447×1/[S] + 12.27 0.0828 0.1212 [S]/v = 12.0721×[S] + 1.4632 0.0818 0.1187 v = -0.01187×v/[S] + 0.08185 0.07 230 0.06 200 0.04 v 1/v 100 0.02 0 0 0.1 0.2 [S] 0.3 0 -10 0 0.4 50 100 150 1/[S] 図 8 a) Michaelis-Menten plot 図 8 b) Lineweaver-Burk plot 6 0.09 0.08 4 0.06 [S]/v v 0.04 2 0.02 0 -0.2 0 0.2 [S] 図 8 c) Hofstee plot 0.4 0 0 0.2 0.4 v/[S] 図 8 d) Eadie plot 0.6 0.7
© Copyright 2024 ExpyDoc