ケーブル技術ショー 2015でのNG-PON2の動態展示。 10G-PONの下り10Gbps×4波・上り10Gbps×4波、 GPONの下り2.5Gbps・上り1.25Gbpsの合計10波を 1芯の光ケーブルに多重させた。 伊藤忠ケーブルシステム(ICS)が「ケーブル技術ショー 2015」 (6月10日~11日、東京国際フォーラム)で紹介した「FTTH40G 波長多重(NG-PON2)デモ」は、来場者に最も大きなインパクト を与えた展示の一つだ。その理由は、NG-PON2による高速通信 の動態展示がイベントに登場したのは世界初であることはもちろん、 将来のケーブルテレビビジネスに新たな可能性を指し示すものであ ったからに他ならない。また今回の展示では、GPONの802.11ac を搭載したWiFi ONUのデモも行われている。10GE-PONを上回 るNG-PON2の性能と、NG-PON2によって可能になるケーブル テレビのB2Bビジネスについてレポートする。 伊藤忠ケーブルシステム/日本アルカテル・ルーセント 40GbpsのNG-PON2を動態展示 10GE-PONを超える速度と信頼性 下り・上り10G×4波など 合計10波を周波数多重 ICSの提案が今回、大きな注目を集めるに至っ もって示すことができて た背景には、大きく2つの要因が挙げられる。 一つは、上記の10波をNG-PON2で1芯に通 いたという点だ( 図2)。 アルカテル・ルーセント社製NG - PON2 FTTH すなどの技術的にみて高い能力を動態展示の形 なわちケーブルテレビ事 ソリューションを中心に構成されたケーブル技術 ショー 2015での動態展示は、10G-PONの下り で示すことができたということ。小型化された 業者による「回線貸し」の 示された将来像とは、す OLTとONUの筐体も含め、机上の空論ではなく ビジネスモデル。トラフィ 10Gbps×4波・上り10Gbps×4波のほか、GPON 実現している技術として示せたことは来場者に ック量のさらなる増大が の 下り2.5Gbps・上り1.25Gbpsの 合 計10波を NG-PON2で1芯の光ケーブルに多重させた。 強 いインパクトを与えた。なお 下り40Gbps 予想される中で、通信キ (10Gbps×4波)・上り40Gbps(10Gbps×4波)の 波長多重はNG-PON2ならではの特長で(図1)、 ャリア各社を「ユーザー」 NG-PON2のOLTとONUの送受信だけでなく、 Wi-Fi ONU、μCMTSを介した集合住宅への 10GE-PONでは下り10Gbps・上り10Gbpsの2 平田清高 伊藤忠ケーブルシステム (株)ネットワークソリュ ーション本部 技術・サ ポート部長 兼 CATVグ ループリーダー として捉えた具体的提案が心に響いたというケ ーブルテレビ関係者も少なくないと聞く。 接続など、システムの高速性と多様性を活かし 波が限界だ。 「40Gへの理解が深まり、その必要性も理解し た新たなサービスの可能性を示した内容だ。 てもらえるようになってきたと実感しています」 数年前から他社に先んじ10GbpsのGPONシ もう一つは、ソリューション導入によって得ら れる恩恵、つまり「NG-PON2を採用することで (伊藤忠ケーブルシステム (株)ネットワークソリ ステムを紹介し、GPONによるケーブルテレビ ケーブルテレビビジネスにどのような未来を切り ューション本部技術・サポート部長兼CATVグ 事業者の高速通信整備の必要性を訴えてきた 拓くことができるか」という見通しを、具体性を ループリーダー・平田清高氏)という言葉からは、 NG-PON2の企業向けONU。 輻輳時やOLT側PONポートや ラインカードの障害時、自動 的に別の波長にONUを移動で きる。NG-PON2はこの信頼 性によって、B2Bビジネスモ デルにも活用できる。 アルカテル・ルーセント社製のNG-PON2プ ラットフォーム「Alcatel-Lucent 7360 ISAM FX-4」。ラインカードからの10波をネットワ ークカードでまとめて1芯の光ケーブルに混合 している。 42 8-2015 10波のうち、10G-PONの下り10Gbps× 3波・上り10Gbps×3波の合計6波のビッ トレートを計測。画面には「59.02Gbps」 と表示されている。 ⃝取材:渡辺 元・本誌編集部 ⃝文:高瀬徹朗・放送アナリスト ⃝写真:森下泰樹 時勢の変化による影響が大きいようにもうかが 図1 NG-PON2は下り10Gbps×4波・上り10Gbps×4波を波長多重 えるが、これまで同社が積み重ねてきた努力が (伊藤忠ケーブルシステム/日本アルカテル・ルーセントの資料より) 特長を紹介しよう。 1605 1595 1580 1560 1575 1540 10/x NGPON2 NGPON2 10G-EPON T WDM TWDM CATV DS DS US 1550 1500 1480 1G EPON DS 1360 1320 WB 1G EPON US 1330 1290 改めて、今回動態展示を行ったNG-PON2の NB 1G EPON US 1300 1260 波長多重を用いた冗長性で 携帯電話基地局に回線貸しも 1280 10/X 10G-EPON US 1520 花開き実を結んだ、と捉えるのが正解だろう。 (in nm) 図2 NG-PON2の波長多重を使ったB2C・B2Bの「サービス多重」 その最大の特長の一つと言えるのが、波長多 (伊藤忠ケーブルシステム/日本アルカテル・ルーセントの資料より) 重を用いた冗長性によって生まれる、高い信頼 性だ。仮に4つの波長のうち1つが輻輳したとき ODN: Optical Distribution Network ( ) は、自動的に別の波長にONUを移動。OLT側 PONポートやラインカードに障害が起きた場合 は、自動的に別のラインカードの波長にONUを 移動できる。このようにトラブル発生時もサービ 10G/2.5G 10G/10G 2.5G/2.5G 2.5G/2.5G スを止めることなく安定した運用が可能なことか ら企業、金融、病院、自治体、官公庁などに最 適だ。ケーブルテレビ本来のコンシューマ向け GPON ビジネスだけでなく、ケーブルテレビによるB2B ビジネスモデルにも活用できるのだ。この自動 TWDM PON OLT 的に周波数を変える機能はチューナブルレーザ ーを使ったもので、アルカテル・ルーセントのベ ル研が開発した独自技術。10GE-PONにはでき ない機能だ。さらにNG-PON2は通信キャリアの 基地局回線にも適している。NG-PON2は固定 長フレームを採用しているため、10GE-PONよ き、10G加入者の増加に応じて2〜4 波目を順 り極めて高精度に親局・子局間の同期を取れる に追加できる点も効率的だ。 (日本アルカテル・ルー からだ。実際にボーダフォンや北米携帯電話事 セント (株)新規事業開 業者は携帯電話基地局回線にアルカテル・ルー セント社製NG-PON2システムの導入を検討し ており、実証実験も実施している。ケーブルテ また10Gの1波長目を4分岐してエリア提供で ケーブル技術ショー後に 事業者から多数の引き合い 品を安価で小型にする 形で商品化できました」 発本部ワイヤライン事業 開発部シニアソリューシ ョンマネージャー・原孝 レビにとっては、通信キャリアに基地局回線と 提案の中心となっているのが、アルカテル・ 成氏)というFXシリーズ して貸し出すというB2Bビジネスが可能になる。 ルーセント社製のNG-PON2プラットフォーム 「Alcatel-Lucent 7360 ISAM FX」シリーズだ。 は、現時点で唯一無二 状況に応じた柔軟な拡張性も大きなメリットだ。 の存在と言えるだろう。 10G加入者の状況に応じて少しずつ投資すること ネットワークカードとラインカードから構成さ ケーブル技術ショー ができる。基本的にはヘッドエンド側に手を加え れ、ネットワークカード側にラインカードのトラフ 2015で の 展 示 を 受 け、 るだけで新たなサービスを展開していくことが可 ィックを集約してL2 / L3機能を提供する同シ すでに大きな反響へと 能で、フィールド上には手をつける必要がない。 リーズの仕組みは、豊富なIP機能や実績ある信 つながっているそうだ。 設備構築時のイニシャルコストを抑える効果は、 10GE-PONと比較してかなり大きい。GE-PON 頼性とあいまって高い評価を得ている。 「4K/8Kの追い風もあ 今回の動態展示では、そのコンパクト設計も り、すでに多くのケーブ OLTを廃 棄して新 規に用意する必要がある ルテレビ事業者様から詳 10GE-PONに対し、NG-PON2はGPON/10G- 話題を集めた。「アルカテル・ルーセントは ITU-TでNG-PON2の仕様が承認されてからい PONのOLTをそのまま使い続けることができる。 ち早く開発に取り組み、ONUの波長可変型光部 わせをいただいていま 細な説明を求める問い合 す」 (伊藤忠ケーブルシ ステム (株)ネットワークソ リューション本部CATV・ 原 孝成 日本アルカテル・ルーセ ント (株) 新規事業開 発本部 ワイヤライン事 業開発部 シニアソリュ ーションマネージャー 福井恵之 伊藤忠ケーブルシステム (株) ネットワークソリュー ション本部 CATV・ネット ワーク営業部 部長 兼 営 業グループリーダー ネットワーク営業部部長 兼営業グループリーダー・福井恵之氏)。 動き始めたNG-PON2による40Gbpsサービス が今後、ケーブルテレビ業界にどのような旋風 アルカテル・ルーセント社製のNG-PON2プラットフォーム「Alcatel-Lucent 7360 ISAM FX」シリーズ。左から「FX-16」「FX-8」「FX-4」。 をもたらすのか、大きな期待が集まる。 8-2015 43
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