福岡市のビッグデータ・ オープンデータの取組み

オープンデータの動向と
福岡市の取り組み
平成27年3月
福岡市 総務企画局 ICT戦略課長
加藤 陽介
1.オープンデータとは?
■ なぜオープンデータが必要なのか
疑問 我が市では、市民に必要な情報はホームページに掲載されており、
閲覧窓口も設置して情報公開を行っている。なぜオープンデータが
必要なのか。
情報公開
オープンデータ
行政機関の保有する情報を「公開」
行政機関の保有する情報を「開放」
⇒行政機関の活動を市民に説明する責務
が全うされるようにする
⇒行政機関の保有する情報を市民や企業
が自由に使えるようにする
⇒市民の的確な理解と批判の下で、公正
で民主的な行政を推進する
⇒市民の社会参加や企業の経済活動を促
し、社会全体が効率化される
市民による行政の監視や、行
政によるアカウンタビリティの
確保が目的
NPOやコミュニティによる行政
参加や、民間活力の活用等に
よる効率的な行政運営が目的
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■ オープンデータの世界的動向
2013年のG8サミットでは、各国がオープンデータに向けて取り組むことについて合意。
コミュニケにオープンデータについての項が入るとともに、オープンデータ憲章を採択。
G8サミット コミュニケ (2013 年,英国ロックアーン)
【仮訳】
オープンデータ
46. オープンな政府データは,情報時代の不可欠な資源である。データを公共の場に
移すことは,市民の生活を向上させ,また,これらデータへのアクセスを拡大するこ
とは,イノベーション,経済成長及び良い雇用の創出を促進し得る。政府のデータ
を原則として一般に入手可能とし,機械判読可能で,容易にアクセス可能かつ開か
れた形式にて無償で再利用可能とすること及び公衆がその内容や意味を容易に
理解できるようにこれらのデータを明確に説明することは,民間部門のイノベーター,
起業家,そして非政府組織によるイノベーションのための新たな原動力となる。
オープンデータもまた,国々によりどのように天然資源が使われるか,どのように
採取収入が使われるか,そしてどのように土地が取引され管理されるかについて
認識を高める。
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■ オープンデータの世界的動向
オープンデータ憲章【仮訳】
4.オープンデータは、政府と企業が何をしているかに関する透明性を高めることができる。オープンデータ
はまた、自国の天然資源がどのように使われ、採取産業の利益がどのように使われ、土地がどのように
取引され利用されているかに関する意識も高める。これらのすべては説明責任と良いガバナンスを促進
し、人々の議論を促進し、汚職への闘いを支援する。また、G8の開発援助における透明性のあるデータ
は、説明責任の点から不可欠なものである。
5.政府のデータへのアクセスを提供することは、保険、教育、安全、環境保護やガバナンスなどの公的
サービスにおいて、個人、メディア、市民社会及びビジネス界に、健康、教育、安全、環境保護やガバナ
ンスといった公共サービスを、より良く行わせるための機会を与えることとなる。オープンデータは、以下
によってこれを行うことができる
・公的資金がどこでどうやって使われるか示すことにより、これらの資金がより効果的に使われるよう
になるよう強いインセンティブを与える
・人々に、彼らが受けるサービスや彼らが期待する水準に関するより良い情報を踏まえた上での選択
を可能とする。
6.自由に利用できる政府のデータは、人々に現代生活をより簡単にナビゲートするのに役に立つツール
や製品を生み出すための革新的な手法に利用されることができる。このように用いられることで、オープ
ンデータは民間セクターにおけるイノベーションの触媒になり、新たな市場、ビジネスや雇用の創出を促
す。政府の範疇を超えて、これらの利益は、より多くの事業者を政府が形作ったオープンデータの取組
に適合させることができ、彼ら自身のデータを公的機関と共有させる取組を増加させるだろう。
5
■ オープンデータの世界的動向
2013 Lough Erne G8 Leaders' Communiqué
Open Data
46. Open government data are an essential resource of the information age. Moving data into the public sphere can improve the
lives of citizens, and increasing access to these data can drive innovation, economic growth and the creation of good jobs.
Making government data publicly available by default and reusable free of charge in machine-readable, readily-accessible, open
formats, and describing these data clearly so that the public can readily understand their contents and meanings, generates new
fuel for innovation by private sector innovators, entrepreneurs, and non-governmental organisations. Open data also increase
awareness about how countries’ natural resources are used, how extractives revenues are spent, and how land is transacted
and managed.
G8 Open Data Charter
4. Open data can increase transparency about what government and business are doing. Open data also increase awareness about
how countries’ natural resources are used, how extractives revenues are spent, and how land is transacted and managed. All
of which promotes accountability and good governance, enhances public debate, and helps to combat corruption. Transparent
data on G8 development assistance are also essential for accountability.
5. Providing access to government data can empower individuals, the media, civil society, and business to fuel better outcomes in
public services such as health, education, public safety, environmental protection, and governance. Open data can do this by:
- showing how and where public money is spent, providing strong incentives for that money to be used most effectively;
- enabling people to make better informed choices about the services they receive and the standards they should expect.
6. Freely-available government data can be used in innovative ways to create useful tools and products that help people navigate
modern life more easily. Used in this way, open data are a catalyst for innovation in the private sector, supporting the creation
of new markets, businesses, and jobs. Beyond government, these benefits can multiply as more businesses adopt open data
practices modelled by government and share their own data with the public.
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■ オープンデータの日本政府の動向
 世界最先端IT国家創造宣言(平成25年6月閣議決定
26年6月改定)
Ⅲ.目指すべき社会・姿を実現するための取組
1.革新的な新産業・新サービスの創出と全産業の成長を促進する社会の実現
(1)オープンデータ・ビッグデータの活用の推進
① 公共データの民間開放(オープンデータ)の推進
公共データについては、オープン化を原則とする発想の転換を行い、ビジネス
や官民協働のサービスでの利用がしやすいように、政府、独立行政法人、地方公
共団体等が保有する多様で膨大なデータを、機械判読に適したデータ形式で、営
利目的も含め自由な編集・加工等を認める利用ルールの下、インターネットを通
じて公開する。
(中略)
2014 年度及び2015 年度の2年間を集中取組期間と位置づけ、2015 年度末に
は、他の先進国と同水準の公開内容を実現する。地方公共団体については、その
保有する公共データ等の流通・連携・利活用を効果的に行うための技術の開発・
実証、観光等の公共データを一元的にオープン化する基盤の構築、地方公共団体
における取組に関する考え方の整理等により、オープンデータの取組を促進する。
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【参考】 政府のデータカタログサイト
Data.go.jp
◆平成26年10月1日に本格
運用を開始
◆各省庁のオープンデータを掲
載するとともに,各自治体の
オープンデータサイト等への
リンクも掲載
◆利用規約はCC(クリエイ
ティブ・コモンズ)を基本と
しつつ,日本政府独自の利用
規約を規定
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【参考】 「公共クラウド」
(総務省施策)
「公共クラウド」は、各自治体が保有するデータを集約、公開する仕組みであり、全国レベルでデータを集約する
ことで、複数自治体にまたがる情報であっても一度で情報収集することができる。
総務省にて用意する標準入力フォーマットを活用して自治体所有のデータを入力することで、公共クラウドデータ
を整備することが可能である。
【現状】
【公共クラウド】
■自治体単位でのデータ管理/情報公開
■自治体データを集約、公開情報として提供
○自治体所有データの情報提供は、各自治体に閉じ
て行われている。
○自治体所有データを集約し、公開することにより、
自治体横断での情報提供サイトが構築できる。
民間企業が複数自治体から情報収集をする
には莫大なコストが掛かる。
民間企業は複数自治体にまたがる情報であっても
公共クラウドから1度で情報収集できる。
A自治体
サイト
A自治体
情報
B自治体
サイト
B自治体
情報
C自治体
サイト
C自治体
情報
公共クラウド
データベース
A自治体
情報
B自治体
情報
C自治体
情報
各自治体ではデータ登録作業のみ発生
各自治体でデータ管理、情報公開が発生
(各自治体のポータルサイト等へのデータの自動取込みも可能)
26年度運用開始(観光情報)
※
※追加データについては調査研究(シーズニーズマッチング調査)の中で検討
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【参考】 地方公共団体オープンデータ推進ガイドライン
政府は、平成27年2月12日に「地方公共団体オープンデータ推進ガイドライン」を公表
□
地方公共団体オープンデータ推進ガイドライン
□
地方公共団体オープンデータ推進ガイドラインの概要
□
オープンデータをはじめよう
~地方公共団体のための最初の手引書~
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/densi/index.html
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■ オープンデータとは?
◆オープンデータとは?
(1) 機械判読に適したデータ形式
(2) 二次利用が可能な利用ルールで公開された(公共)データ
◆オープンデータ化した公共データの意義
(1) 行政の信頼性・透明性の向上
(2) 国民参加・官民協働の推進
(3) 経済の活性化・行政の効率化
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【参考】 オープンデータのイメージ
○PM2.5濃度地図(環境局)
○河川水位情報(市民局)
○ダム貯水量情報(水道局)
例えば、自治体が提供する
PM2.5情報や河川水位情報、
ダムの貯水量情報などを、
民間気象情報サイトなどで
利用
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■ オープンデータのルール
◆機械判読に適したデータ形式
• PDF形式、JPEG形式は? ➡ そのままでは二次利用できない
• オープンデータの5つ星
⇒ ①JPEG,PDF ②XLS,DOC ③XML,CSV ④RDF ⑤LOD
• 語彙の統一
◆二次利用可能なルール
• 第三者がデータを一部改変して利用することを、データ所有者
が予め許諾していることを明示することが必要
• 著作権の不行使を予め宣言も明示例
• CC BY 表示(クリエイティブ・コモンズ・ライセンスによる表記)
⇒ 原作者のクレジット(氏名、作品タイトルなど)を表示し、改変した場合には元の
作品と同じCCライセンス(このライセンス)で公開することを主な条件に、営利目
的での二次利用も許可されるCCライセンス
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【参考】 オープンデータの5つ星
二次利用が
保証された
データ(構
造化されて
いないデー
タ)
表にまとめ
たデータ
(構造化さ
れたデー
タ)
特定のアプ
リケーショ
ンに依存し
ないデータ
形式
WEBでの公
開に適した
データ形式
関連データ
がリンクさ
れた機械処
理しやすい
形式
例:LoD
例:URI,
RDF
例:CSV
例:EXCEL
例:PDF
Tim Berners-Leeが提唱する「オープンデータの五つ星」
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【参考】 クリエイティブ・コモンズ
クリエイティブ・コモンズとは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CC
ライセンス)を提供している国際的非営利組織とそのプロジェクトの総称
CCライセンスはインターネット時代のための新しい著作権ルールの普及を目指
し、様々な作品の作者が自ら「この条件を守れば私の作品を自由に使って良いで
すよ」という意思表示をするためのツール
出典クリエイティブコモンズ
ジャパンHP
→
http://creativecommons.jp/licenses/
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【参考】 ビッグデータとは
◆ビッグデータとは
 多様なメディアから生成される,文字情報や音声・画像・動画,セン
サーの収集するデータなど,あらゆる電子データの総体
 市販されているデータベース管理ツールや従来のデータ処理アプリケー
ションで処理することが困難なほど巨大で複雑な データ集合の集積物
を表す
文字情報:報告書,数値,統計,台帳,ホームページ,インターネット,メール,
SNS など
音
声:会議録,音楽,通話記録
など
画
像:写真(人物,風景,イベント),工事記録,グラフ,文化財
動
画:プロモーション映像,防犯カメラ映像,市政情報番組,文化財
センサー:雨量,河川水位,大気汚染物質,入退室
など
など
など
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2.福岡市のオープンデータ
に向けた取組み
■ 事業1:福岡市オープンデータサイトの構築
平成26年10月 福岡市オープンデータサイトを運用開始
①オープンデータを検索・ダ
ウンロード
②活用事例を紹介
③新着情報や参照ランキング
を表示
④データ形式や種類等の要望
を受け付け
他都市とのデータ共有を通じた
コンテンツの共通化も検討
http://www.open-governmentdata.org/
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■ 福岡市オープンデータサイトのねらい
オープンデータの活用により,利便性向上や経済活性化を実現
オープンデータサイト(行政)
行政機関の保有する様々なデータを,二次利用可能な
データとして提供
オープンデータに対する
行政 ニーズのフィードバック
市民
企業
市民
生活の利便性の向上や経
済の活性化による恩恵
City Wi-fi
PM2.5
緊急避難所
アクセスデータ
観測データ
の位置データ
マーケティング
人口統計
(経済)データ
データ
画像データ
CSV等のファイル
として提供
BODIK
より機械判読に適した
データベースや
分析ツールを提供
民間企業等
これらのデータを利用・分
析して,様々なサービス・ア
プリ等を開発
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■ 事業2:ビッグデータ・オープンデータ活用推進協議会
【目的】
ビッグデータ・オープンデータの具体的活用策に
ついて検討を行うとともに、その活用を推進する
ことで、市民サービスの向上及び市民主体のま
ちづくりの促進並びに産業の発展と経済の活性
化に寄与すること
【メンバー】
○推進協議会設立時(25年4月)メンバー
福岡市、千葉市、奈良市、武雄市
○26年度新規加入
三重県、室蘭市
26年度事業
・ オープンデータ活用事例等を協議会メンバで共有
・ オープンデータ活用のアイデア・アプリケーションコンテストの実施
・ 同コンテストの授賞式を兼ねたシンポジウムの開催
(福岡市 レソラNTT夢天神ホール (H27.1.25))
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【参考】 まちかど安全ガードアプリ「けいご君」
「ふっけい安心メール」の内容をリアルタイムに通知します
福岡県警から発信される「ふっけい安心メール」の情報を,メール本文と地図でわかりやすく通知します。
また、現在地付近の過去の事件を検索したり、ワンタッチで通報を行うことも可能になります。
ふっけい安心
メール
【メールの長所】
○近所で起きた事件を 一度に
大勢の登録者に一斉に配信す
るには便利
【メールの短所】
○過去の情報(メール)は廃棄
され、忘れられてしまう
○地名では正確な位置がわから
ない場合もある
「○○で事件か。帰り道
はいつもの道ではなくて、
回り道をして帰ろうかな」
「この辺では事件が何度
も起こっているみたい。
パトロールや登下校の見
守りのとき注意しよう」
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【参考】 Webまっぷ
概要
福岡市ホームページ上で,グーグルマップを基盤とした地域情報(市関連施設,災害時
避難所,観光スポット,Fukuoka City Wi-fiスポット等)を市民と共有するもの。
元のデータ(投票所)
Webまっぷイメージ(駐輪場や交番)
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■ 事業3:ビッグデータ&オープンデータ研究会 in 九州(BODIK)
概要
ビッグデータ・オープンデータに関する九州地域の
人材育成,地域経済の活性化,公共サービス向上を
目的として,平成25年12月に,ISIT・URC・福岡市が共
同で立ち上げた研究会(事務局はISIT)。
※ISIT((公財)九州先端科学技術研究所)
九州地域における先端科学技術等に係る産業の振興と経済
社会の発展に資することを目的として,平成7年に設立。
※URC((公財)福岡アジア都市研究所)
昭和63年設立の財団法人福岡都市科学研究所が前身。都市
政策に関する調査研究等の事業を通じ、地域社会の発展に寄
与することを目的としている。
26年度事業
・アプリ開発者が利用しやすい公共データ提供のあり方検討
→ データ形式,データ提供方法,提供者(行政)の役割分担など
・データサイエンティストなどの人材育成の検討
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■ 事業4:オープンデータに関する実証実験
概要
国が進めるオープンデータ実証実験のため,福岡市と企業との共働のもと,福岡市
の公共データを利用した実証を行い,活用方法を検証するもの。
26年度事業
・通学路安全情報共有サービスの継続,同サービスの拡充
・協議会でのサービスの共有
事業のねらい
①企業との連携による
活用事例の創出
②実証実験結果の国への
フィードバック
③オープンデータ活用方法の
ノウハウ蓄積
通学路安全情報共有
(PCサイト・アプリ)
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3.今後の課題
■ 今後の課題
オープンデータに取り組む上での今後の課題
○市民や企業に期待されるデータはどういったものか
・オープンデータサイトからのフィードバック
・先行他都市等との情報共有
○福岡市だけで行うことの限界
・データやアプリの共有化をどうやって実現していくか
・コストの最適化
○庁内各部局の理解と協力をいかにして得るか
・データ作成方法の検討(CMSの利用等)
・リアルタイムデータの収集方法(システム化)
・責任の所在の在り方
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ご清聴ありがとうございました
写真 「シーサイドももち(2010)」(提供:福岡市)
http://showcase.city.fukuoka.lg.jp/photo/img0091.html