「鼻出血 鼻血が出たときの応急処置」

平成 27 年 5 月 19 日放送
「鼻出血 鼻血が出たときの応急処置」
JAとりで総合医療センター
耳鼻咽喉科 井上 剛志
司会者:今回、鼻血という身近な話題ですが、子供から大人まで鼻血が出たことがない人はい
ないかと思います。
井
上:実際誰もが経験するので、鼻血が止まらないということで耳鼻科にいらっしゃる方も
多く、耳鼻科の中でも身近な病気です。特になにも基礎疾患のない普通の鼻血の場合
でもかなり出血する場合もありますので、落ち着いて病院にいらっしゃってください。
司会者:鼻血がでやすい時期などはありますか。
井
上:季節としては寒くなって乾燥する冬、12 月∼2 月に多いですね。
なぜかというと、空気が乾燥して、鼻の粘膜がダメージを受けやすい時期だからです
ね。また、寒くなった刺激で血圧が上がりやすいというのも考えられます。
司会者:鼻血が出る原因は乾燥以外にありますか。
井
上:大きく分けると、乾燥と同じように鼻の粘膜にダメージを与える疾患、全身的要因、
薬剤性、腫瘍性があります。鼻の粘膜にダメージを与えるものとしては、アレルギー
性鼻炎、花粉症や、ウイルス性―上気道炎、いわゆる風邪などがあります。内科的疾
患としては、高血圧が一番多いです。
また、白血病や血友病、紫斑病などの血液の疾患が原因の場合もまれにあります。ま
た、心臓や脳梗塞の病気の予防や治療のために、たとえばワーファリン、バイアスピ
リンなどの抗血小板薬、抗凝固薬という種類の血が止まりにくくなる薬を内服されて
いるため、鼻出血が止まりにくい場合があります。
その場合には、薬を処方されている先生と相談して、降圧薬の調整や、一時的に抗血
小板薬の中止などをすることがありますが、自分の判断で中止することは危険なので
絶対にやめてください。続く場合には内科や耳鼻科を受診して一度確認してもらって
ください。
司会者:では、鼻血が出た場合はどうしたらよいのでしょうか。
井
上:まずは、鼻血を飲まないように、顔を少し下向きにして、ぽたぽたたれてもよいので、
ティッシュを鼻の前にあてておきます。血が出てもったいない気がしますが、飲み込
むと気持ちが悪くなって、吐きそうになったりして血圧が上がってもっと出てしまい
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ます。それで、鼻の横のふくらみを両側からつかむように真横から押して圧迫してく
ださい。
その状態で軽く手前にティッシュをあてるように置いておいて、安静にしてください。
そうすれば、多くの鼻出血は止まります。この方法を鼻翼圧迫法といいます。
司会者:なぜそこを圧迫するのでしょうか。
井
上:なぜかというと、鼻の真ん中の壁の前下部に Kiesselbach 部位という血管が集中して
いる部分があり、80-90%の鼻血はここから出ることが多いのが理由です。
ティッシュを押し込むのも悪くないのですが、押し込みすぎないようにしてください。
ティッシュで鼻の粘膜を傷つけてしまって帰って鼻血の原因を作ってしまったり、と
れなくなってしまう場合があります。また、ティッシュを浅く入れた場合も、鼻翼圧
迫法は行ったほうがいいでしょう。
司会者:止まらない場合にはどうしたらよいでしょうか。
井
上:しばらく様子をみて、耳鼻科にいらっしゃってください。止まるのであれば、止まっ
た後でも鼻は傷ついた状態なので、何度が繰り返しますので、いきんだり、お酒を飲
んだり、タバコを吸ったり、激しい運動は避けたほうが無難です。多くの場合はしば
らくして止まるのであれば問題ないことが多いです。
司会者:鼻血がしばらくして止まるけれど繰り返す場合にはどうしたらよいでしょうか。
井
上:数週間続く場合には、一度鼻の中を確認しておいたほうがよろしいかと思います。
先ほど説明したように、アレルギー性鼻炎が原因であれば、抗アレルギー薬の投与で
鼻の粘膜が落ち着けば鼻血も落ち着きます。また、まれではありますが、悪性腫瘍に
よる出血などもありますので、他の症状とあわせて耳鼻科に受診していただけたらと
思います。
司会者:病院ではどんな風にして鼻血を止めるのでしょうか。
井
上:止血の基本は圧迫止血ですので、通常の鼻血であれば、先ほど説明した鼻翼圧迫法を
患者さんにやってもらうように指導します。また、それで圧迫が難しいのであれば、
鼻の中にガーゼをつめてしっかりと圧迫して止血します。
出血部位がピンポイントで処置できる部分であれば、電気メスなどを使って粘膜と血
管をやいて止める粘膜焼灼術、硝酸銀による化学焼灼術を行います。
Kiesselbach 部位以外の出血の場合は、血液が鼻から口のほうに回りこんでしまう場
合もあるので、
そうならないように Belloq タンポンという特殊なタンポンをつめて、
鼻の奥をふさいで血液がたれこまないように処置する場合もあります。
治療に難渋する場合もあり、鼻の中にガーゼをつめたり、電気メスで焼いたりなどす
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る処置を何十分もやる必要になる場合もあるので、患者も医者もお互いに忍耐が必要
です。
特にご高齢の方の場合は、出血部位が通常と異なり鼻の奥のほうや上のほうであった
りして、圧迫が難しかったり、先ほどいった血がとまりにくくなる薬を飲んでいる方
も増えてきますので、治療のために入院になる場合もあるので、鼻血と思っても難し
い場合は難しいので甘く見すぎないようにしてください。
司会者:予防方法はありますか
井
上:鼻の粘膜を健康に保つために、適度な湿度をたもつ。強く鼻をかみすぎない。鼻をい
じらないことですね。あと、喫煙はどんな場合もおすすめしませんが、鼻血が出たと
きは飲酒や喫煙はさけておいてください。
司会者:今回は、貴重なお時間をいただきありがとうございました。
井
上:こちらこそありがとうございました。
鼻血の大半は心配のいらないものですが、治療が必要なもの、全身的な病気の発見す
るきっかけになることがありますので、止まらない場合や繰り返す場合には遠慮なく、
お近くの耳鼻咽喉科のほうにご相談にあがってください。
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