Akita University 氏 名 ・(本籍) 小林 芳生(長野県) 専攻分野の名称 博士(医学) 学 位 記 番 号 医博甲第 881 号 学位授与の日付 平成 27 年 3 月 22 日 学位授与の要件 学位規則第 4 条第 1 項該当 研 究 科 ・ 専 攻 医学系研究科医学専攻 学 位 論 文 題 名 Self-Efficacy as a Suicidal Ideation Predictor:a Population Cohort Study in Rural Japan (自己効力感は希死念慮の予測因子である:日本の地方における地域コホート研究) 論 文 審 査 委 員 (主査) 教授 村田 勝敬 (副査) 教授 美作 宗太郎 教授 後藤 明輝 Akita University Akita University 学位(博士―甲)論文審査結果の要旨 本論文の斬新さ、重要性、研究方法の正確性、表現の明瞭さは以下の通りである。 1)斬新さ 自殺念慮に関して、特定集団を研究対象として自己効力感との関連性を検討した報告 査: 村田 勝敬 はあるが、地域住民を対象とした研究は殆どない。今回の研究により、自己効力感の低 申請者: 小林 芳生 さが希死念慮を抱く要因の1つであること、さらにこの傾向は女性で強いことを見出し 主 た点が斬新である。 2)重要性 自己効力感の低いことと希死念慮との有意な関連が示されたことより、地域で自殺予 論文題名:Self-efficacy as suicidal ideation predictor: a population cohort study in rural 防対策をおこなうに当たって、特に自己効力感の低い女性に対してメンタルヘルスやヘ Japan(自己効力感は希死念慮の予測因子である:日本の地方における ルスプロモーションの場で支援する仕組みを構築すれば自殺の抑止力になりうる可能 地域コホート研究) 性を示した。 3)研究方法の正確性 本研究は、30~84 歳の秋田県の農村地域住民 2,191 人を対象として解析しており、質 問紙調査でしばしば問題とされるデータの信頼性を克服している。自己効力感の測定に 要旨 は General Self-Efficacy Scale 日本語版を用いたが、これに影響する可能性の高い性、年 著者の研究は、論文内容要旨に示すように「自己効力感の低下が自殺の希死念慮と関 齢、婚姻状況、就労状況、身体的健康状態、経済状態、うつ状態などを調べ、統計解析 連する」との仮説を検証するために、日本の田園地域における一般住民 2,191 名を対象 の中で調整した。また、研究初回時に希死念慮のあった者を除外し、その2年後調査の として自記式質問紙調査をおこなった。質問紙調査では基本的属性の他に、General 結果で希死念慮の発生(有無)を定義した。秋田県内の1つの農村地域しか扱っていな Self-Efficacy Scale 日本語版、K6 日本語版、希死念慮の有無を調べた。初回の調査で希 いことからやや一般化に際して幾許かの問題点はありうるものの、追跡研究であり因果 死念慮のあった者を除外し、2年後に再度希死念慮の有無を調査し、初回に調べた諸要 関係の時間的関係は明瞭となり、内的妥当性の高い研究であると考えられる。 因が2年後の希死念慮にどのように関連したのか分析した。希死念慮に影響する要因と 4)表現の明瞭さ して、既婚・同居の割合が低く、主観的健康観が悪く、世帯の暮らし向きにゆとりがな 本研究は、自殺の希死念慮と自己効力感の低さとの関連に着目し、これまでの問題点 く、うつ傾向が高く、かつ自己効力感が低かった。多重ロジステック回帰分析で可能な の所在(研究背景) 、研究目的、方法、結果、考察を簡潔、明瞭に記載していると考え 他要因を調整し、自己効力感の新規希死念慮に及ぼす影響を検討すると、自己効力感が る。 低いと希死念慮が 1.66 倍(Odds 比の 95%信頼区間 1.15~2.42)高くなることが示され た。男女別に見ると、女性の場合 Odds 比 1.84(95%信頼区間 1.10~3.08)と有意であ ったが、男性の場合 Odds 比 1.44(95%信頼区間 0.83~2.51)と有意でなかった。以上 より、自己効力感の低いことが自殺の希死念慮と関連すること、また女性でこの傾向が 高いことを明らかにした。 以上述べたように、本論文は学位を授与するに十分値する研究と判定された。
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