女子学生における一般性Seーf-efficacy と

女子学生における一般性self-efficacyと
Locus of controlの関係*
藤 田 正 (心理学教室)
笹 川 宏 樹" (奈良県中央児童相談所)
要旨:短期大学女子学生281名を対象に、一般性セルフ・エフイカシー尺度、
主張行動のセルフ・エフイカシー尺度、自己統制尺度、およびタイプA行動測
定尺度を実施し、 self-efficacyとLocus of controlの関係について検討し、
タイプA者の行動の先行要因について調べた。その結果、一般性self-efficacy
とLocus of controlには低い相関があったが、主張行動のself-efficacyとLocus of controlでは相関の有意性はなかったO また、タイプÅ者は、 self-efficacyを高く認知していた。
キーワード: self-efficacy locus of control タイプA 主張行動
Bandura (1977a)が提唱した社会的学習理論では、人間の行動を決定する要因として先行要
因を重視しているoこの先行要因は大きく2種類の予期にわけられる0 1つはある行動をどの程
度うまく行うことができるかという効力予期であり、もう1つはある行動がどのような結果を引
き起こすかという結果予期である。この結果予期についての一般的な信念を反映するものとして、
Rotter (1966)のLocus of controlの概念がある。彼は、 「自分におこることは自分の能力や
努力によって統制された結果であると信じる人」を内的統制型(internal control)とし、 「自分
におこることは、運や偶然、有力な他者によって統制された結果であると信じる人」を外的統制
壁(external control)として、その測定のためにInternal-External control尺度(以下はト
E尺度)を作成した。内的統制型の者は外的統制型の者に比べて、行動によって引き起こされた
結果を自分自身に随伴しているとしてとらえているために、周囲の環境に対して統制可能感をい
だいている。これまでの研究では、内的統制型の者の方が情緒的な安定や社会的適応が良好であ
ることが報告されている(Joe, 1971 ;次郎丸, 1985;藤田・笹川, 1989)。
もう1つの先行要因である効力予期をBandura (1977b)はself-efficacyと呼んでいる。彼は、
このself-efficacyを個人がある行動に先立って認知する遂行への自信であり、それが高く認知
されることによって実際の行動が発現すると主張しているo これまでにself-efficacyが不適応
行動の改善の予測因となることやself-efficacyを高める治療操作が有効であることが確かめら
* The Relation of General Self-efficacy and Locus of control in Women Students
"Tadashi FUJITA (Departrne,柁t of Psychology, Nara University of Education, Nara)
Hiroki SASAKAWA (Nara Prefectural Child Guidance Center, Nara)
-115-
れている(前田・坂野・東候, 1987;笹川, 1987)。また、長期にわたる行動やいくつもの行動
にわたって広がる、いわゆる一般性selLefficacyを高く認知している者は、社会的状況の中で
の克服努力が大きく、自己防衛的な行動が減少すると指摘されている(Bandura 1977b,バンデュ
ーラ 垂久訳1985)。坂野ら(1986)は、この一般性self-efficacyを測定する尺度(General
Self-Efficacy Scale :以下はGSES)を作成し、抑うつ神経症患者のGSES得点は健康な者より
低いことを兄いだしている。
これまでにself-efficacyとLocus of controlの関係について、 Sherer et al. (1982)は、一
般性self-efficacyとLocus of controlに弱い相関を兄いだしている。しかし、 Manning &
Wright (1983)の研究では、痛みのコントロールなどの特定の行動のself-efficacyとLocus of
controlには相関が見られなかった。また、 self-efficacyの認知の程度や内的か外的かの統制型
efficacyとLocus of controlの関係は明らかにされていない。このようにself-efficacyとLocus
of controlはいずれも行動の先行要因でありながら、その関連性について「分に検討されてい
ない。本研究では、一般性self-efficacyと特定の行動ではあるが比較的にE]常的な主張行動の
self-efficacyの二者とLocus of controlの関連性について検討することを目的とした。
ところで、虚血性心疾患に関連深い行動特性として、 A型行動パターン(Type A behavior
pattern,以下タイプA)がある。これは1950年代末にFriendmanやRosenmanによって提唱さ
れた概念である。タイプAは、 r性急でいらつきやすい」、 「いっも時間に追われている感じが強
い」などの行動特徴を示し、虚血性心疾患になりやすい独立した危険因子とされている(五島,
1982)。このようにタイプAは精力的で攻撃的な行動を示しているが、それらの行動の先行要因
を探ることは予防的観点から重要であると考えられる。本研究では、先の目的とあわせてタイプ
Aのself-efficacyとLocus of controlの特徴を検討した。
方 法
調査対象 2つの女子短期大学の保育科と幼児教育科の1 、 2年生289名。
調査内容 (1)一般性セルフ・エフイカシ-尺度(GSES) :坂野・東候(1986)が作成し
た16項目からなる尺度を用いた。この尺度は、日常生活の様々な状況における個人の一般性セル
フ・エフイカシ-の強さを測定するものである。各項目は、 "何か仕事をするときは、自信を持っ
てやるほうである。〟のように記され、 Yes, Noのいずれかを選択するよう作成されている。得
点の範囲は0-16点であり、得点が高いはtL一般的なself-efficacyが高く認知されている。
(2)主張行動のセルフ・エフイカシー尺度(Self-Efficacy of Assertive behavior Scale :以
下はSEAS) :坂野ら(1987)によって作成されたものを用いた。この尺度は、主張行動を行う
ことが適切である25の貝体的な場面について、どのくらい確実に望ましい主張行動を行うことが
できるかというself-efficacyを測定するものである。
各場面は、 "狭い部屋で、換気もせずにタバコを吸っている男の子たちに対して、窓を開けて
くれるようにたのむことができる。′′ というような主張行動からなる. 25の各々の場面について、
911慧-
、し・II・J. ← J ,-*.A- -I-.-ォ A
によって様々な行動特性を示すといわれているが、ある傾向の行動特性を実際にしめす者のself-
a
0点(全くできないと思う) -10点(確実にできると思う)の11段階評定であり、坂野ら(1987)
にしたがって25場面の個人内平均得点を主張行動のself-efficacy得点とした。従って得点の範
閑はO-10点であり、得点が高いほど主張的行動が確実にできると認知している。
(3)成人用・自己統制尺度(I-E尺度) :Rotter (1966)のI-E (Internal-External) scaleを次郎丸(1980)が日本語訳して作成した質問項目を用いた。質問項目は29項目から
なり、 6個のfiller項目を含んでいる。各項目は、 "a.人生の不幸の多くは、なかば不運による
(External)。 , b.人間の不幸は、自分が犯した誤りの結果から生まれる(Internal)。′′ のよう
な2つの文が対提示され、いずれかを選択するよう作成されている。得点の範囲は、内的統制の
最大値0点から外的統制の最大値23点である。
(4)タイプA行動測定尺度(以下はタイプA尺度) :桜井(1989)が学生用ジェンキンス活動
性調査の日本語版(橋本・佐藤、 1981)などを参考にして、日本の文化に適するよう作成したも
のを用いた。この尺度は22項目からなり、各項目は"相手の話が終わらないうちに、話し出して
しまうことが多い。"などと記されている。回答は、各項目に対して「はい」、 「どちらかといえ
ばはい」、 「どちらかといえばいいえ」、 「いいえ」の4段階評定であり、順に4、 3、 2、 1点と
得点化されている。得点の範囲は、タイプA行動が全くない最小値の22点から、多い最大値の
88点である。
lr-† - 丁 '・
調査手続き 調査は各クラス毎に体育の講義中に集団で実施した.氏名などの記入後、調査
用紙に記載された教示を読みあげた後に回答させたO調査順序は、 GSES、タイプA尺度、 I-E
尺度、およびSEASの川副こ行った.
実施時期 1990年4月下旬より5月上旬。
結 果 と 考 察
結果は、記入漏れなどの8人を除く281名を分析の対象とした。表1は、それぞれの尺度の平
均点、標準偏差、最大値、・および最小値を示したものである。
本調査は、女子学生が調査対象者であるため男子が含まれる標準化データと比較した。その結
果、 GSES (坂野・東低, 1986)とI-E尺度(次郎丸, 1980)の2つの尺度と本調査結果には有
表1 各尺度の平均、標準偏差、及び最小値、最大値
平均 標準偏差 最小値 最大値
一般性を叩エフイカシ 6. 82 3. 54
0.00 15.00
主張行動セルフエフイカシ 6. 66 1. 22
2.92 9.88
- E 10.30 3.12
3.00 19.00
タイプ Å 50.93 9.10
28. 00 75. 00
-117-
意な差が認められなかった(GSES ; 」-.42, d/-557,花.SリトE尺度」-.86, d/-1576, ra.s.)c
従って、以下の結果は女子学生に特有なものではなく大学生の一般的な特徴を示していると考え
られる。
表2は、各尺度間の相関係数を示したものである。これらの相関係数の有意性の検定を行った
ところ、次のような結果を得た。まず、 GSESとSEASでは有意な相関が認められた(£-8.58,
d/-279, p<.001)cっまり、主張行動といった特定行動のself-efficacyには、個人のもつ長期
的で広範囲な行動にわたる一般的なself-efficacyが大きく関連していることが伺われる。
次に、 self-efficacyとLocus of controlの関係において、 GSESとトE尺度ではかなり低い
相関であったが有意であった(」-2.22, d/-279, p<.05)。しかし、 SEASとトE尺度とでは、
有意性は認められなかった(4-1.92, df-219, rc.s.)c これらの結果より次のことが考えられるO
両者は関連している。しかし、その相関係数が非常に小さいことは、 GSESが個人的なものを測
定しているのに対して、トE尺度は個人的な事象の他に社会・政治的な事象までも含んでいる
ことによると考えられる。そして、特定の行動と一般的な行動というように行動のレベルが異な
れば、効力予期と結果予期は同じ行動の先行要因であっても関連性はなくなる。
タイプA行動とセルフ・エフィカシー、 Locus of controlの関係をみると、タイプA尺度は
GSES、 SEASの両方に有意な相関が認められた(GSES ; 」-3.25, d/-279, p<.05, SEAS ; t5.23, d/-279, p<.001)c しかし、タイプA尺度とI-E尺度のそれは有意ではなかった(i.89, #-279, ra.s.)c これらの結果は、タイLプA行動のようなある種の行動パターンを実際に
示している者は、結果予期に対する一般的な信念よりも、う・まく行動を遂行できるという一般的
な自信や対人場面における主張行動を行うことができる確信といった効力予期との関連性が高い
ことを示しているo
表2 尺度間の相関
* pく.05 ** p<.Ql *## p<.QQl
-118-
ん . - - t - て ー
すなわち、行動の先行要因である効力予期と結果予期が、いずれも一般的な行動レベルにおいて
タイプ
図2 タイプAとBの
主張行動セルフエフイカシー
図1 タイプAとBの
一般性セルフエフイカシー
l
タイプA尺度の平均得点より+1 SD以Lの51名
一
をタイプA者とし、 -1SD以下の46名をタイプB
丁
として、両者のGSES、 SEAS、およびトE尺度を
▼
比較した。図1はタイプA者とタイプB者のGSES、
図2はSEAS、図3はI-E尺度の平均得点を示し
たものである。各尺度ごとの平均得点についてt検
定を行った。その結果、タイプA者はタイプB
者に比べて、 GSESとSEASが有意に高かったが
(GSES : 」-2.64, df-%, p<.05, SEAS : i-3.16,
d/-95, p<.01)、 IIE尺度では有意な差はなかっ
た U-1.70,df-%, n.s.)。これらのことより、
極端に精力的で攻撃的な行動を示すタイプA者は、
そうでないタイプB者よりも行動の先行要因の効
力予期が一般的な行動と特定の行動のいずれにおい
ても高いことが示された。しかし、それらの行動は、
同じ先行要因であっても結果予期の影響は認められ
なかった。すなわち、タイプA者は、行動の結果
によって引き起こされる事態を考慮して実際の行動
図3 タイプAとBの自己統制(I-E)をとるのではなく、その行動の自分白身の遂行可能
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性によって行動を発現していると考えられる。
本研究では、一般性self-efficacyとLocus of controlに非常に低い相関が見られたが、特定
行動のself-efficacyとには関連性がなかった。今後の検討課題として、より個人的な結果予期
を測定する尺度を用いることによって両者の関連性をより明らかにする必要がある。また、一般
性self-efficacyを高く認知している者は適応的であるとされているが、虚血性心疾患の危険因
子であるタイプA行動パターンとの関連性が高いという結果を得たことより、・適度の高さの一
般性self-efficacyについて検討する必要がある。
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<付記> 本研究の資料の収集にあたり近畿大学九州短期大学の鐘ケ辻淳一先生の協力を得た、
ここに記して厚く感謝の意を表します。
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