従業員エンゲージメント: 感情を動かすドライバー デール・カーネギー・トレーニング白書 デール・カーネギー・トレーニング Copyright © 2013 Dale Carnegie & Associates, Inc. All rights reserved. 感情の重要性 人間は合理的な思考を持っていると言われますが、現実には感情によっ て動かされており、自分の判断を他者に説明する際に、後から合理的な 理由をつけている場合が多くあります。何故全体の3分の1だけが高い エンゲージメントレベルの従業員なのか、何故残りはディスエンゲージ し組織を離れていくのか-これらの理由も例外なく理由の後付けから、 組織運営を行う経営層に一連の原因があるとされてきました。以前は採 用方針や従業員をエンゲージさせるための手段は、昇給、ボーナス、フ レックスタイム制など実利的な報酬が中心でした。しかし、感情に基づ いた人間関係こそが、エンゲージしている従業員が効果的に働き、組織 を離れることなく、組織の中心人物として働くために最も重要な要因だ ということが明らかになったのです。 「人と接する時は、人 間は論理的な デール・カーネギー・トレーニングは米国MSWリサーチ社に職場に おいての感情について調査を依頼しました。MSWリサーチ社は、独 自の手法(EMO*ダイナミック・バッテリー)を用いて、消費者の意 思決定において重要なポジティブな感情とネガティブな感情を含む 28項目の感情を明らかにしました。全米の1,500人の従業員を対象 とした画期的な調査で、28項目の感情のうち5項目がエンゲージメン トを高める感情であり、12項目がディスエンゲージメントを促がす 感情であることがわかりました。 生き物ではない ということを 思い出しなさい。 感情的な生き物に 相対している のです。」 - デール・カーネギー 2 ポジティブな感情が持つパワー やる気が ある 評価されて いる 熱意がある 従業員エンゲ ージメント エンパワー されている 自信がある 人はポジティブな感情を持っているときに、他者を助ける傾向が強いことが実験によりわかっていま す。笑顔は私達を明るい気分にさせてくれるだけでなく、周囲も笑顔にする力があります。ポジティ ブな感情で心を満たせば、ネガティブな感情から自分を守り、困難な時を乗り越えることができま す。これは職場だけに限らず私生活でも言えることです。 調査の分析結果から、「評価されている」「自信がある」「やる気がある」「エンパワーされてい る」という感情は高いエンゲージメントに結び付く重要な感情であることがわかりました。「評価さ れている」という感情は成果へとつながる第一歩です。調査では、46%の従業員が評価されていると 回答しました。評価されているという感情だけでエンゲージメントを高めることはできませんが、更 にポジティブな感情を増やしていく効果があります。従業員は、評価され、自信を持つことでエンパ ワーされ、自ら考え行動し熱意を持って仕事に取り組みます。その結果、従業員はより一層の努力を するようになります。働くことに喜びを感じ熱意を持って働く従業員は、給料や昇進のためだけに働 くのではなく、組織の事を一番に考え、目標を達成するために働くようになるのです。 次の質問は、従業員に自身の組織に対してどのように感じているのか回答してもらったものです。 自分が評価されていると感じていますか? 自分の働く組織のことを重んじていますか? 組織に対しての帰属意識がありますか? この3つの質問は、働きぶりや向上心に影響を与える従業員エンゲージメントレベルを図るうえで重 要になります。従業員は、自分が誇りに思う組織の一員であることを望んでいます。仕事に対する誇 りが従業員にエネルギーを与え、自ら進んで働き、組織の成功のために一層の努力を重ねていくので す。それこそが、エンゲージしている従業員なのです。 3 エンゲージメントレベルは、鍵となるポジティブ感 情(やる気がある、熱意がある、エンパワーされて いる、自信がある、評価されている)の数とともに 劇的に増加します。 調査対象の従業員の70%は鍵となる5項目のポジテ ィブ感情のうち少なくとも1項目を感じていました。 しかし、3項目を感じていた人は12%だけでした。 3項目を感じていたグループの中で、ディスエンゲー ジしていたのは5%の人たちだけで、半数以上は組織 のために働くことに対してポジティブにエンゲージ していました。 エンゲージメントとは楽しんで働くという事だけで はありません。幸福感は実のところ、エンゲージメ ントに大きな影響をあたえるものではありません。 むしろ、エンゲージメントは従業員と組織の個人的 なつながりや組織への責任感の度合いで示されま す。自分の組織を職場や取引先として第3者に推薦す るかどうかによって測ることができます。 11 29 エンゲージ メント 37 52 43 50 48 43 46 21 0 1 15 2 5 部分的エンゲ ージメント ディスエンゲ ージメント 3 ネガティブな感情は重要でしょうか? ネガティブな感情を持つ従業員 2 ポジティブな感情を持つ従業員 エンゲージメント エンゲージメント 部分的エンゲ ージメント 部分的エンゲージ メント ディスエンゲ ージメント 2 ディスエンゲ ージメント ネガティブな感情は、従業員のエンゲージメントレベルに直接関係します。ネガティブな感情を 持っている従業員がディスエンゲージしている割合は、ポジティブな感情を持っている従業員の 約10倍になります。約10人に3人の従業員が上司との関係に、12項目の重要なネガティブ感情 のうち少なくとも1項目を感じています。 4 ネガティブな感情を持つ従業員の約半数はディスエンゲージしており、エンゲージし ているのは10%のみでした。上司に対して一番ポジティブな感情を持っているグルー プのエンゲージメントレベルと比較(52%)するとその差は歴然です。 無気力 退屈 無関心 10% 不安 不快感 10% 苛立ち 12% 不安定 侮辱 威圧感 萎縮 混乱 恐怖 核となる3つのネガティブ感情(苛立ち、無関心、不快感)はディスエンゲージメント を促すものです。批判をされてよい成果を上げようとする従業員はいませんし、直属の 上司に侮辱されると心が離れ、ディスエンゲージメントを決定付けてしまいます。言い 換えれば、良い上司のもとで部下は評価されていると感じ、自信を持ちます。反対に良 くない上司は部下を苛立たせ、不快にさせます。 ネガティブな感情はポジティブな感情に比べ、人から人へと伝わりやすいため、このこ とはとても重要とです。ネガティブな感情はポジティブな感情より目につきやすく、1 人の従業員から同僚へ、組織全体へと影響を与え、更には職場を超えて顧客や潜在顧 客、求職者の間にも広まる可能性を持っているのです。 5 感情を動かすものは何か? 組織に対しての感情、特に上司に対して抱く感情は仕事に対する気持ちを大きく左右しま す。上司と組織との関連性について分析を行った結果、感情が大きく影響することがわか りました。エンゲージメントにかかわる職場での最大の感情的要因は直属の上司です。 84%が上司に対する感情がそのまま組織に対してのであると回答しています。幸福感の みが、直属の上司との関係からではなく、組織との関係から得られるという結果になりま した。 さらに分析の結果、従業員の感情と直属の上司に対する満足度には関連性があることがわ かりました。直属の上司の存在は、時に両極端な感情を引き起こします。ポジティブな感 情を生み出す上司は、部下に強い満足度をもたらすことができます。従業員をやる気にさ せ、熱意を生み、幸福感を与え、活気ある職場を作りだす上司は部下から高い満足度で評 価されます。反対に、直属の上司がネガティブな感情をもたらすと、満足度は平均点以下 となります。特に、部下を侮辱し、憤慨させ、苛立たせる直属の上司に対する満足度はと ても低くなります。ラインマネージャーに対する部下の満足度は、組織に対する満足度に 影響を与え、ひいてはエンゲージメントに影響を与えます。 組織内にポジディブな感情を作り出す 組織に対しての感情、特に上司に対して抱く感情は仕事に対する気持ちを大きく左右しま す。組織に対してポジティブな感情を抱いている従業員は、仕事に対する責任感を持ち、 組織を離れることなく、優れた仕事をより少ない時間でこなすことで、余計な人件費がか からないため組織に貢献します。デール・カーネギー・トレーニングは、生産性の高い職 場に不可欠なポジティブな感情を作り出す効果的な人間関係を構築し、従業員エンゲージ メントを高めるためのお手伝いをいたします。
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