第 26 回万有仙台シンポジウム Poster 発表要旨 核内受容体を介したウアバゲニンの機能解析 Elucidation for Bioactivity of Ouabagenin through Nuclear Receptor 大石 悠 1、田村 理 1、阿部哲郎 1、岡田麻衣子 2、上田 (東北大理学研究科 1、聖マリアンナ医科大 2) 実1 鬱血性心不全の治療には、ゴマノハグサ科やキョウチクトウ科植物などから見出された強心配糖 体が用いられる。これらは、近年ヒトの体内にも微量成分として存在していることが示唆されてお り"内因性ジキタリス様物質"と呼称されていた。そして 1990 年代に副腎組織から内因性ジキタリ ス様物質としてウアバインが初めて同定され、現在では血圧調節に関わる内因性リガンドであると 考えられている 1)。ウアバインの標的分子は Na+/K+-ATPase であり、その親和性獲得には糖部が重 要であることが示されている 2)。一方、ウアバインのアグリコンであるウアバゲニンについては殆 ど研究例がなく、標的分子や生理活性について全く知られていない。そこで、我々は、ウアバゲニ ンがウアバインとは異なる機能を生体内で担っていると推察し、その標的探索および機能解明に着 手した。 ウアバゲニンはステロイド骨格を有していることから、その標的は核内受容体である可能性が高 いと考えた。そこで、種々の核内受容体に対するウアバゲニンのリガンド活性を、デュアルルシフ ェラーゼレポーターアッセイによって評価した。その結果、ある核内受容体 NR-X に対して既知の リガンドとほぼ同程度のアゴニスト活性を示すことが明らかと なった。また、NR-X を定常的に発現している動物細胞株に対し てウアバゲニンを作用させたところ、血圧上昇を促すタンパク A HO HO HO の発現量を減少させる活性が認められたことから、ウアバゲニン は血圧降下を誘導する内因性リガンドであることが示唆された。 さらに、本細胞に対して siRNA によって NR-X を選択的にノッ クダウンした条件下でウアバゲニンを作用させたが、コントロー RO 3 O O O ) H H OH OH ルと比較してタンパク A の発現量に変化は認められなかった。 ouabain (R = HO このことから、ウアバゲニンは NR-X のアゴニストとして作用し ouabagenin (R = H) HO OH た結果、 タンパク A 発現抑制活性を示すことが明らかとなった。 今回の結果から、ウアバゲニンは血圧降下を誘導する内因性リガンドであると推察されるが、そ の配糖体であるウアバインは Na+/K+-ATPase を介して血圧上昇を促す内因性リガンドである。すな わち、ウアバイン/ウアバゲニンは、3 位水酸基上のラムノースの存在によってその作用が逆転す るユニークなリガンドであることが示唆された。 <参考文献> 1)Hamlyn, J. M. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1991, 88, 6259-6263. 2)(a) Paula, S. et al. Biochemistry 2005, 44, 498-510. (b) Ogawa, H. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2009, 106, 13742-13747. 発表者紹介 氏名 大石 悠(おおいし 所属 東北大学 学年 D2 研究室 有機化学第一研究室 はるか) 大学院理学研究科 化学専攻
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