核磁気共鳴分光(I)

核の磁性
原子核が磁気モーメントを持つことを活用し、磁石と電磁波を用いて分子を
調べる分光法が核磁気共鳴(NMR, Nuclear Magnetic Resonance) 分光法
です。
核磁気共鳴分光(I)
1. 磁気共鳴概要
(分子科学研究所)
飯島隆広
磁場
H0
原子核の多くはスピンに基づく磁気モーメントを
もっており、磁石と相互作用する。
エネルギー E
核磁気共鳴の原理
量子化
されている
E
磁場 H
H=0
波長(m)
周波数(Hz)
108
3×10
106
3×102
104
3×104
102
3×106
1
3×108
10-2
3×1010
10-4
3×1012
10-6
3×1014
10-8
3×1016
10-10
3×1018
NMRの装置
超電導磁石
(H = 9.4 T)
超長波
長波
中波
短波
VHF
UHF
センチ波
ミリ波
赤外線
紫外線
H = H0
(~数T)
標準電波
船舶無線
AMラジオ
航空無線
FMラジオ、NMR
携帯電話、電子レンジ
衛星テレビ
レーダー、ESR
超伝導磁石
暖房器具
試料
NMRプローブ
可視光線
X線
X線撮影
γ線
10-12
NMR分光器
電波
E = h
共鳴
電磁波エネルギー
の吸収・放出
ワークステーション
NMR分光器
NMRプローブ
核磁気共鳴(NMR, Nuclear Magnetic Resonance)
NMRの測定
磁場
H0
z
z
サンプル全体
の磁化
90°
倒す
x
コイル
z
螺旋運動
(周波数’の回転
+緩和)
y
電磁波
の照射
磁気共鳴の種類
平衡状態
に戻る
y
x
y
• 核磁気共鳴(Nuclear
Magnetic Resonance)
• 外部磁場あり
• 核スピンを利用
• 物理、化学、情報等の
分野で用いられる
• 磁気共鳴イメージング
(Magnetic Resonance
Imaging)
• 外部磁場あり
• 核スピンを利用
• 医療、顕微鏡等の分野
で用いられる
• 核四極共鳴(Nuclear
Quadrupole Resonance)
• 外部磁場なし
• 核スピンを利用
• 物理、化学等の分野で用
いられる
• 電子スピン共鳴(Electron
Spin Resonance)
• 外部磁場あり
• 電子スピンを利用
• 物理、化学等の分野で用
いられる
x
誘導起電力の測定
NMR信号
t
NMR
スペクトル
Fourier
変換
時間t (s)

’
周波数 (Hz)
’は核の置かれた環境により変化するため、
NMRで分子の構造を見ることができる。
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磁気共鳴の活躍の場:医療
磁気共鳴の活躍の場:化学
NMR装置(JEOL社)と分子構造解析
の研究例(JACS 134, 9022 (2012)).
MRIの装置と画像診断の例
(日立メディコ社).
MRI (Magnetic Resonance Imaging)は、磁気共鳴を画像解析に応用したもので、病院等で
用いられています。磁場の勾配を作ることにより、3次元空間を認識します。
磁気共鳴の活躍の場:物理
反強磁性の不整合構造の研究例
(JPSJ 80, 033705 (2011)).
スピンフラストレーションの研究例
(PRB 82, 094430 (2010)).
物理の分野では、主に物質の電子の構造を調べるにためにNMR・ESR・NQR
が用いられています。
磁気共鳴の活躍の場:顕微鏡
化学の分野では、主に分子の構造解析にNMR・ESR・NQRが用いられて
おり、これらの装置は多くの大学等の研究機関に設置されています。
磁気共鳴の活躍の場:情報
7qubitのNMR量子計算
(Nature 414, 883 (2001)).
多qubit型のNMR量子計算
機のモデル(Nature 393,
133 (1998)).
次世代の計算機として量子計算機が注目されています。これに磁気共鳴を
利用するものが提案されており、実用に向けた研究が進められています。
磁気共鳴の活躍の場:探知機
磁気共鳴顕微鏡のプローブ
の概要と測定例(IBM社).
NQRの技術を取り入れた地雷
探知機(米ONR).
磁気共鳴とAFM (Atomic Force Microscope)の技術を組み合わせた
ナノスケールのMRIです。
NQRは外部磁場が必要ないため、フィールド活動にも応用されています。
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