この回の予稿

応用物理学特別演習
平成 28 年 10 月 4 日
極限量子光学研究室
小林 史明
Structural analysis of strained quantum dots
using nuclear magnetic resonance
E. A. Chekhovich1, K. V. Kavokin2, J. Puebla1, A. B. Krysa3, M. Hopkinson3, A. D. Andreev4,
A. M. Sanchez5, R. Beanland5, M. S. Skolnick1, and A. I. Tartakovskii1
1
Department of Physics and Astronomy, University of Sheffield, UK, 2A. F. Ioffe Physico-Technical Institute,
Russia, 3Department of Electronic and Electrical Engineering, University of Sheffield, UK, 4Hitachi Cambridge
Laboratory, Cavendish Laboratory, UK, 5Department of Physics, University of Warwick, UK
Nature Nanotechnology 7, 646–650 (2012)
核磁気共鳴 (Nuclear Magnetic
Resonance: NMR)は化学や生物などの
分野において非破壊的に原子核の内部
構造や化学結合状態を調べることので
きる技術である.光励起・光検出と組
み合わせることで(ODNMR),本研究
で扱うような構成する原子核数が
104~106 個と少ない半導体単一量子ド
ット(QD)に対しても応用ができる.し
かしながら,QDを構成するGa, In, As
などの原子は核四極子モーメントを有
するため,残留格子歪がもたらすピエ
ゾ電場と相互作用し,NMRスペクトル
Fig. 1 NMR 信号(InP QD)で黒の実線が従来の NMR,赤
および青の実線が inverse NMR による信号である.
幅を広げてしまう.そのため通常のODNMRは格子歪のないQDにしか適用できなかった[1, 2].
本研究では, inverse NMRという手法を開発してこの問題を克服し,歪を有する単一QD(自
己集合InP/GaInP QDとInGaAs/GaAs QD)でのNMRスペクトルを得ている.Fig. 1にInP単一QD
において測定された115In,69Ga, 71Gaのinverse NMRスペクトルを示す.縦軸は信号の強度,横
軸は周波数である.信号の検出には電子のゼーマン分裂エネルギーの変化(オーバーハウザ
ーシフト)を用いており,赤の実線が右回り円偏光励起,青が左回り円偏光励起に対応して
いる.この手法を用いることで,従来のSaturation methodによるODNMRの信号(黒の実線)
に比べて信号強度が強く微細な構造まで検出できており,信号強度比よりQDの組成比を評価
することができる(InGaAs QD:𝜌In ≈ 20%, 𝜌Ga ≈ 80%,GaInP QD:𝜌In ≈ 65%, 𝜌Ga ≈ 35%).
また,矢印(± 3⁄2 ↔ ±1/2)で示す歪に敏感なピークの幅よりQD中の歪の大きさに関する
情報を得ることができた.
[1] M. Makhonin et al., Nature Mater. 10, 844–848 (2011)
[2] M. Makhonin et al., Phys. Rev. B 82, 161309 (2010).