―エールリッヒ博士の生涯

中央図書館映画会 日本語字幕付き
―エールリッヒ博士の生涯
Dr. Ehrlich’ s MagicBullet
平成 27 年 10 月 11 日(日)
午後2時~4時 地下ホール
(1 時 30 分開場、50 名先着順)
1940 年度アカデミー脚本賞ノミネート作品
昭和 16 年文部省推薦映画 1940 年ワーナーブラザース制作
医学界の因習、偏見や反ユダヤ主義、自身の病等、幾多の困
難と果敢に闘い、パートナーの秦佐八郎博士と 共に梅毒の「魔
法の弾丸」サルバルサンを発見して近代医学の礎を築いた医学
界の巨人、パウル・エールリッ ヒ博士の伝記映画。真実を追求し
続ける博士の不屈の精神と共に描かれる家族愛、師弟愛、友愛
でも深い感動を呼ぶ秀作。
日本では昭和 16 年に新宿で封切られ、
内容の素晴らしさはもちろんのこと、日本
人が重要な役を演じることでも注目されま
したが、その後、上映の機会が全く失われ
ていました。今回、映画に日本人役でご出
演された俳優のご家族のご厚意により、
杉並区立図書館での上映となりました。日
本では販売のない大変貴重な映画です。
問合せ先 杉並区立中央図書館 3391-5754 杉並区荻窪 3-40-23 JR 中央線・丸ノ内線 荻窪駅南口から徒歩 10 分
「魔法の弾丸―エールリッヒ博士の生涯」
原案
ノーマン・バーンサイド
ジョン・ヒューストン
脚色
ハインツ・ヘラルド
ノーマン・バーンサイド
監督
ウィリアム・ディターレ
撮影
ジェームズ・ウオン・ハウ
音楽
マックス・スタイナー
配役
パウル・エールリッヒ博士・・・・・・エドワード・G.ロビンソン
エールリッヒ夫人・・・・・・・・・・ルス・ゴードン
エミール・フォン・ベーリング博士・・オットー・クルーガー
秦佐八郎博士・・・・・・・・・・・・ウィルフレッド・ハリ(堀内義髙)
本作制作当時、梅毒はタブー視されており、制作陣はその扱いに苦慮したと言われる。既にナチス政
権下にあったドイツではドイツ純血主義がおし進められ、ユダヤ人であるエールリッヒ博士の痕跡排除
が徹底的に行われていた。ドイツ政府への配慮から、脚本を再三修正して反ユダヤ政策批判色が薄めら
れたとされる。サルバルサン発見に中心的役割を果たした秦博士の扱いも軽いと言わざるを得ないが、
それでも、終幕、愛弟子たちを前に臨終の床で語る言葉などに、エールリッヒ博士が当時感じたに違い
ない思いが垣間見える。
近代医学の礎を築いた医学界の巨星 パウル・エールリッヒ博士(1854-1915)
ドイツの細菌学者、生化学者。血液学、免疫学、化学療法の近代医学の礎を築いた。ユダヤ系ドイ
ツ人の家庭に誕生し、ライプツィヒ大学の医学生であったころから微細な組織への染色に興味をもつ。
ベルリン大学講師、伝染病学助教授を 経て、1890 年にロベルト・コッホの研究室に招かれる。ベル
リン郊外シュテーグリツに私立血清研究所を設立し、1896 年に所長となる。友人のエミール・アドル
フ・フォン・ベーリングとともにジフテリアの研究を行い、「側鎖説」へのヒントを得る。フランクフ
ルトの実験治療研究所所長、ゲオルク・シュパイアー化学療法 研究所長などを歴任。1908 年にイリヤ・
メチニコフと共にノーベル生理・医学賞を受けた。細菌学や医化学方面に数多くの新技法を考案し、150
余篇の論文は多分野にわたるが、中でも近代化学療法の礎となった梅毒の特効薬サルバルサン発見で名
高い。
19 世紀後半、ある病気が特定の微生物の感染により引き起こされる感染症であることが明らかに
なり、そこから、感染症を引き起こす微生物を化学物質によって排除することで感染症を治す化学療法と
いう発想が生まれた。1901 年、エールリッヒ博士が最初の化学療法薬トリパンレッドを発見し、これが 近
代医学としての化学療法の始まりとなる。博士は、赤血球に感染したマラリア原虫を顕微鏡で観察する際
に、染色に使用したメチレンブルーが赤血球は染めず、マラリアだけを染めることに気付いた。この発見
から、ヒトの組織を侵さずに病原微生物だけに反応し、死滅させる化合物があるに違いないと考えるに
至り、これが化学療法の基礎である 選択毒性の概念の始まりとなる。さらに 1910 年には秦佐八郎博
士と協力し、「魔法の弾丸」として有名な梅毒の特効薬、有機砒素化合物サルバルサンを発見し、こ
れが最初の化学療法薬とされている。
日本における化学療法の父
秦佐八郎博士(1873-1938)
島根県美濃郡都茂村(現益田市)出身の細菌学者で医学博士。エールリッヒ博士とともに、当時難病
であった梅毒の特効薬「サルバルサン(救うという意味)606 号」の開発に成功して世界にその名を知ら
れている。1913 年にノーベル生理学・医学賞の候補となるが、 惜しくも受賞を逸する。