編集・発行/信楽園病院検査科 B 型肝炎 臨床検査技師 伊藤 成広 ◆B 型肝炎と HBV B 型肝炎は Hepatitis B virus(HBV)感染によって起こる肝炎です。HBV は感染した時期、感染したと きの健康状態によって、一過性の感染に終わるもの(一過性感染)とほぼ生涯にわたり感染が継続するもの (持続感染)とに大別されます。 思春期以降に HBV に感染すると、多くの場合一過性感染で終わります。一過性感染の原因としては、 多くの場合、HBV 慢性感染者との性的接触によるものと考えられます。また、確率は低いですが、輸血・ 臓器移植・入れ墨・針刺し事故等でも感染することがあります。HBV 感染後、一過性の急性肝炎を起こす ことがありますが、 その後大部分の人ではHBV は排除され慢性化しません。 またHBV に感染しながらも、 急性肝炎の症状が出現せず、気づかないうちに HBV が排除される人もすくなくありません。しかし稀に 劇症肝炎を発症し亡くなられる場合もあります。 一方 HBV が慢性感染している人の大部分は、母親が HBV の持続感染者の場合に母から児に感染してし まう母児感染です。また、成人でも免疫力が低下した状態で感染を起こすと HBV が排除できず、慢性化 することがあります。思春期以降の感染でも、ジェノタイプ A 型と呼ばれる外来種の HBV に感染すると、 比較的高率に慢性感染を起こすことがあります。母児感染による持続感染の場合、80〜90%の人が思 春期以降に一過性の急性肝炎を起こした後に、増殖性の低い HBV の持続感染となります。残りの10〜 20%の人は慢性肝炎へと移行し、その中から肝硬変、肝臓癌になる人も出てきます。 ◆HBV 検査 HBV の感染を調べるには、HBs 抗原の血液検査を行います。HBs 抗原が陽性の場合、ほぼ 100%HBV に感染していると考えられます。HBs 抗原陽性の場合、次に HBe 抗原と HBe 抗体を調べます。一般的に HBe 抗原陽性、HBe 抗体陰性の場合、HBV の増殖力が強く、肝炎の程度が強く、他の人への感染の可能 性が高いと考えられます。一方で HBe 抗原陰性、HBe 抗体陽性の場合は、HBV の増殖力が弱く、肝炎は 沈静化し、他の人への感染が低いことが多いです。しかしこの場合にも例外があり、仮に HBe 抗体陽性で あっても肝炎が徐々に進行し肝硬変や肝臓がんになる場合があるため注意が必要です。 ◆HBV 検査はどこで受けられるのか お住まいの市町村における住民基本検診などで、無料で検査を受けることができる自治体もあります。 また、お住まいの都道府県等の保健所でも検査を受けることができます。新潟市の場合、過去に一度も検 査を受けたことのない方は肝炎ウイルス検診を無料で受けることが可能です。新潟市の肝炎ウイルス検診 では HBV と HCV の感染を調べます。信楽園病院でも新潟市肝炎ウイルス検診を受けることが可能です。
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