第5章 私たちが目指す新発田のまちづくり 1.目指す

第5章 私たちが目指す新発田のまちづくり
1.目指すべき新発田のまち
『未来を切りひらくひとづくり』
~将来に向けて子どもの夢をサポートし、子どもが“生きる知恵と実力”を身につけるこ
とのできる“まち”をめざす~
2.将来ビジョンの目指す都市像
新発田の将来を担うこども達が夢をかなえることのできるようなまちづくりを進めるた
めに新発田の将来ビジョンでは以下の7つの都市像を掲げることとする。
(1)安心して子育てのできるまち(子育てのしやすいまち)
核家族化が進み、子育てにおいて同居家族の手助けを受けることのできない世帯では、
特に女性の負担が大きくなっている。このため、女性が安心して出産し、保護者などが安
心して子育てのできるまちをめざす。そのためには、保護者の子育てにおける負担を軽減
するための施策を実施するとともに、働く女性が仕事と子育てを両立できるような制度の
充実を図る。
→育児サポートとして、延長保育・病児保育・放課後児童クラブの充実をはかる。併せて
育児コンシェルジュの設置・育児サークルの活性化についても検討する。
→企業内保育を実施する企業に対する支援制度を創設する。
→保育園の保育料の無料化、高校までの医療費の無料化により、子育て世帯の経済的負担
を軽減する。
(2)産業・活力のあるまち
市内に就業の場を得ることで、若者が定住できるように産業の振興を図るとともに、商
業機能の強化や農業の振興によって新発田発の地元農産物のブランド化などを進めること
により、産業を支える労働力面と持続可能な自治体経営を可能とする財政力の面からも活
力のあるまちを目指す。このため、産業・活力のあるまちを目指すための施策が下記のと
おり各分野において求められる。
①農業の振興
新発田ブランドの農産物の販売を促進するため、小ロットでも流通が可能なシステムを
構築し、規格外品の流通を可能とすることで地元農産物を市内の消費者が購入できる地産
地消に取り組む。
また、就農者が減少し、遊休地の増加が続いていることから、就農希望者や農地を借り
たい人と遊休地の保有者をマッチングさせることによって、農業を振興し、田園に恵まれ
ていることのメリットを享受できるようにする。
61
新発田は、自然や農産物が豊かであり、食べ物にまつわる食文化が培われてきた。しか
し、近年はこうした新発田の食文化を知らない若者が増えている。
食文化、農業の必要性を伝えるための資料館、民族資料館を整備し、昔から伝わる郷土料
理の普及を促進する。
→新発田の産業の特徴である食品産業においては、地元農家で生産される「メイド・イン・
新発田」の農産物等を農家自らが加工・販売する6次産業化や、食品製造業や流通業者
との協同によって加工・販売する農商工連携を進める。
→農地を希望する就農・農地借希望者と遊休地となっている農家・非農家の農地をマッチ
ングさせるための制度をつくる。
→新発田市の顔である中心商店街に近隣農家が持参する直売所を設置・運営し、農家と市
民が交流できる賑わいの拠点とする。
②食と食品加工関連産業の振興
(ア)6次産業化・農商工連携の推進
当市では農業畜産が盛んであるうえ、合併により松塚漁港など水産業にも地元食材の調
達先を広げている。これらの1次産品の食資源を有効に生かし、農業者が食品加工・販売
まで手がける6次産業化を進めるとともに、食品製造業、卸売業、小売業、飲食店サービ
ス業などとの連携機能を充実させ生産加工から販売まで一貫した体制を構築する。
→域内の農畜産品等のブランド化の可能性を検討し、アスパラ農家での取り組み経験を活
かして商品化を進める。
→直売所での販売や消費者への直販を含め、市場調査を実施
(イ)地産地消と食育・健康関連食品の推進
地場産の豊富な食材を集約し、食品に関する安全性を高め、地場産食品に対する市民の
愛着を高め、他に自慢できる食育・健康の食関連産業の振興を図る。
→現在、市および商工会議所で推進している「高機能性食品」の発掘と産地化への取組な
ど、それら「高機能性食品」や「特産品」を使った加工食品の開発・販売支援の推進
→産地化にあたっては「阿賀北地域連合」との協力によって進める。
(ウ)ブランド力の増強と、市外県外海外への販路拡大
食の安全性を高めることはもとより、食味・栄養価などで優位性を確立し、より高い「新
発田ブランド」を構築し、県外はもちろんアジア諸国はじめ、海外への販路拡大を目指す。
→新発田の4つの蔵元との横連携、職能短大・敬和学園大学・新発田農高・新発田商高や
市内外の研究機関等など、産学官の連携によって新発田ブランドの構築を進める。
→実現可能でありながらより話題性の高い商品開発と販売促進に取り組む。
→新発田市内および大消費地での「ブランドショップ」を設置する。
62
(エ)市民や企業が参入しやすい新しい農業振興の仕組みづくり
個人・企業の農業への新規参入を推進するため、技術営農指導を強化し、生産技術を発
展させて農業の振興を図る。
→市・県はもちろん既に先進的な生産技術・営農技術で成功している農業者や農業企業の
指導を受けやすくするための受け皿を設置する。
→資金的な支援を行う仕組みの整備
③中心市街地の活性化
消費者の生活の質を向上するとともに、地域コミュニティの核となり、地域に頼りにさ
れる商店が集積する中心市街地を目指す。これにより、新発田市がコンパクトシティを進
めるうえで人々が集う空間を提供し、生活情報・観光情報・地元特産品情報などの情報提
供、魅力的な物品・サービスの提供によって市民生活に資するよう機能性を高める。
→商店街を構成する各店舗の販売集客力の向上(名品の発掘、POP・販売方法の工夫)
→各店舗による魅力ある店舗づくり
→後継者の育成、新規出店者支援、空き店舗対策
→集客につながるような各種イベントの企画・実施
→新庁舎を核とした周辺の活性化への取り組み(ハード・ソフト両面)
→商店街全体で取り組む統一コンセプトの形成と情報発信力の強化
→公共交通で各種施設をめぐる交通アクセスの工夫(民間循環バスの運営強化)
→中心市街地への居住空間(賃貸マンション・賃貸型集合住宅等)の確保
→大学寮の誘致と学生との交流拠点の設置
→農産品等の直売所の設置
→まちづくり会社の設立による中心市街地の活性化の具体的な取り組み
④観光関連産業の振興
観光産業分野は多くの産業に関連する、いわゆる「裾野」の広い分野である。交通に関
連する運輸業、宿泊に伴う旅館業・サービス業、飲食に伴う農林水産業や食品加工業、土
産・小売業、旅行サービス業、さらにそれらの施設建設には建設業が関係する。観光資源
とサービスを幅広く国内外に発信する広告業やインターネットを利用した情報発信では情
報サービス業など多くの産業に経済効果が波及する。従って、この分野を発展させること
は、交流人口の増加・雇用拡大・外貨獲得に直結する。
(ア)当市に存在する観光資源を最大限に活用した観光振興
城下町と堀部安兵衛をキーワードとする歴史と文化、春夏秋冬の自然(海・山・川・森
林・田園風景など)
、全国的に有名な月岡温泉をはじめとする豊富な温泉群、さらにゴルフ
場、
・スキー場・海水浴場・充実した各種スポーツ施設を持つなど、観光資源には恵まれて
いる。市内に存在する観光資源を最大限に活用して観光振興を進める。
→市による歴史ゾーンのインフラ整備(城址公園前の整備・歴史資料館の建設など)計画
を利用して観光客誘致を図る。
63
→まずは市民自身が新発田の観光資源の優位性を再発見することが重要なことから、市民
に対する啓発作業を行う。
(イ)交通アクセス延伸の促進とこれらを利用した観光客誘致
日東道延伸を利用して山形県以北、新潟空港を利用した近隣アジア諸国などへ、当市の
観光資源を有効に紹介し海外観光客の誘致を図る。
→新潟-アジア諸国との航路を利用しての観光商品の開発・観光宣伝に努める。
→JR白新線・羽越本線の結節点である優位性を有効に生かし、新潟や山形方面からの観
光客の誘致を図る。
(ウ)新しい観光メニューの企画開発・販売
観光地としての受け入れをするために、新しい観光メニューの企画開発を進め販売する。
→市と連携し、食体験型観光、歴史体験型観光、農山村交流型観光、医療体験型観光、
スポーツ体験型観光など、さまざまな観光資源を利用しニューツーリズム商品を企画
開発し、旅館・ホテル等観光関係者と連携して販売する(着地型観光商品の推進)。
→農業体験型、まちなか探検、歴史・行事、医療ツーリズム、スポーツツーリズムの企
画などの個々のメニューでは農家・和菓子製造業・城下町・武庸会・検査医療施設や
医師会・地元スポーツ団体などとの連携を構築する。
→特に、高度医療・スポーツなどハイレベルなものを提供する場合、その環境を補完す
るための人材、設備、情報収集等を進める。
(エ)ホスピタリティ(おもてなし)の意識向上
リピーター獲得や口コミによる宣伝効果を上げるためには、観光関係者のみならず市民
による「心のこもったおもてなし」
「ホスピタリティの意識の向上」が不可欠である。
その対策を立案し、確実に実行(=人づくり)する。また、
「ホスピタリティの意識の向
上」は、すべての分野で追及すべきものであるため、社会人・企業レベルのみならず、義
務教育の課程においても取り組むことができれば、誇れる新発田市民を多く輩出すること
ができるものと思われる。
→タクシー乗務員への研修・啓発
→まちなか観光ガイドの育成
→中学校の総合学習における職場体験学習
→新発田の歴史・文化、産業などに関する新発田検定の実施
64
⑤新産業の創出
既存産業の強化とそれを基にした新分野への進出は大切であるが、それだけでは不十分
であり、新発田でも、グローバル化に対応した新たな成長戦略が必要である。それは、新
発田市の歴史・地政学的立地・既存の産業構造を踏まえながらも、新たなるイノベーショ
ンによる新産業育成を大胆に促進し、新たな需要を創造し、新産業を起点とした雇用促進
を図り、産業振興を通じて都市の活性化を図ることにある。
(ア)技術シティ新発田の創造
産学官民の連携により、新たな新産業を興すためバイオテクノロジー研究など技術研究
開発系機関や先進技術研究者を受け入れ、世界に対応できる技術の開発拠点とし、技術に
よって日本または世界の中心となる技術シティ新発田を創造する。
→バイオテクノロジー研究など技術研究開発系機関の受け入れ
→産学間連携による先進技術の研究と技術者の受け入れ
→技術開発型企業の誘致
→機能性食品の開発・研究への助成制度の創設
(イ)人脈・経験知の活用
技術開発研究機関・企業ならびに、先進研究者を誘致するにあたり、あらゆる人脈・経
験知を活用するため、徹底した情報収集に努める。
→新発田市出身の著名人ならびに有能な人材との交流と幅広い人脈・専門家との連携
→常設機関(会議)
→必要な予算措置
(3)歴史・文化の香るまち
溝口候入封以来、400 年以上の城下町としての歴史ある新発田市の由緒ある街並みや、街
中を流れる新発田川、歴史的建造物のたたずむ歴史・文化の香るまちをめざす。
また景観としても新発田城下町を再生することで、まちの魅力を高め、住みやすさとと
もに、観光資源としても市外からの来訪者による交流人口を受け入れるためのまちづくり
を進める。
→景観維持、復元・修景により、街全体の個性を城下町のコンセプトで統一し、内外に
アピールする。
→新発田城の掘割を復活する。
→歴史資料館や堀部安兵衛の記念館の整備(一体でも可)により、まちなか観光のスポッ
トとする。
(4)女性が活躍できるまち
人口減少時代には、若年層である年少人口(0~14 歳)が減少するとともに、労働力の担
い手となる生産年齢人口(15~64 歳)が大きく減少する。結婚・子育てによって、仕事を
65
辞めることなく、男女が共に仕事と家庭を両立し、子育てに参加できるように当事者のみ
ならず家族・地域・職場の意識を醸成する。さらに、職場・家庭を両立できるような環境
の整備を進めるほか、女性の起業・就業を支援する。
→女性の雇用確保ために、成功事例を紹介しつつ、起業支援や女性就業補助制度等を設け
る。
→男女共同参画推進条例の制定、女性の起業支援制度、女性・高齢者の就業補助金制度
→1/4 条例(市職員管理職・市議員の 1/4 を女性とする)の制定
(5)子どもが夢を実現できるまち
新発田の将来を担う子どもたちの成長を支援することにより、成人後、新発田に定住す
ることを望むような魅力的なまちにする。また、進学・就職によって、いったんは新発田
を離れた若者たちも、いずれ就職・定住の地として新発田に戻りたいと思えるようなまち
にする必要がある。そのためには、子ども達が夢を実現するための基礎となる学力・スポ
ーツ能力を高められるよう、教育の一層の充実を図るための各種施策が必要である。
→学校のスポーツ指導では、専門の外部指導者を活用し、子どもたちの育成を図る。
→教育面で、将来の進学希望が叶うように図書館を整備し、学習機能を充実させる。まち
なか図書館・駅前図書館の設置により、絵本による保護者と子どものふれあいの場、知
育・学習の場、学生の教育面での支援を実施する。
(6)地域コミュニティの元気なまち
中心市街地の人口減少と郊外住宅街の広がり、核家族化の急速な進展により、地域コミ
ュニティといえるつながりが弱まっている。市民が安全で安心して暮らせ、子どもを育て
やすいまちとするため、年代を越えた多くの人々の交流を生み、地域コミュニティの元気
なまちをめざす。
→市中心部への移住者に対する助成制度
→敬和学園大学等の学生寮を市街地に誘致することにより、まちなかに若者の活気が感じ
ることのできるようにする。
→若者や、高齢者など交通弱者が市内を自由に移動できるように大学とまちなか、郊外と
まちなかの公共交通アクセスを改善する。
→公共施設の建設・運用を企画し、運用できるような官民一体となった組織を作ることを
提案する。
(7)市民が健康で安心して暮らせるまち
新発田市の今後の高齢化の進展を考慮すると、市民が何歳になっても健康で安心して暮
らせるようなまちづくりが求められる。
心身共に健康であることは、すべての人類の願いである。健康福祉に関連する産業は、
66
医療・福祉サービス、健康器具、健康補助・医療食品、バリアフリー施設など、今後ます
ます進む高齢化に伴って重要さを増すと同時にビジネスとしても大きな需要が見込まれる。
また、病気に至る前の予防によって、市民が健康を維持していけるようなまちづくりが
望まれる。
(ア)健康関連産業の振興
当市は大型総合病院があり個人医院も多数ある。また、大学もある。このような立地条
件を生かし、産学官との連携を通じ、最新の健康サービス研究機関を誘致・創設・開設す
るなど、企業と研究者で新技術を開発し高度化をはかる。また、新しい健康サービスを健
康都市・新発田から発信し、健康ビジネスとして開発する。
→「機能性食品」の開発支援、健康をテーマとした各種ビジネスの振興により、市民の健
康予防の促進
→医療機関・温泉地・街なか観光施設の連携による医療ツーリズムの工夫
(イ)治療から予防・未病へ
現在治療は医療分野で行われているが、最近は病気にならない心身をつくること、健康
増進の観点にも重きが置かれ始めている。前述の「機能性食品」や「温泉」の利用、
「健康
体操」「呼吸法」「ミュージックセラピー」など各種のメニューを利用した健康づくりを推
進することにより、市民の健康増進を図る。
→健康サービス研究機関の誘致、健康サービス産業の集積・創設・開設の促進
→健康セミナーの開始、体操教室
→まちなか散策コースの設計と、市民参加による健康増進
→市内散策コースのリーダー(街歩き散策ガイドなど)の養成
(ウ)高齢者が健康でいられるまちづくり
高齢者世帯・高齢者単身世帯が増加している。高齢者が長寿であることを心から喜べ、
安心して暮らせるまちにするための安否確認などの仕組みを進める。
また、若い世代に新発田歴史・文化などの知識を伝えるなど高齢者と子どもや若者など
世代を超えた交流が生まれるまちづくりを進める。
→高齢者世帯・高齢者単身世帯の見守り・訪問
→図書館や駅前交流施設における、各種セミナーの開催
→公園などでのラジオ体操の実施
67