(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 半導体素子の電流電圧特性における

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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 半導体素子の電流電圧特性における、測
定、シミュレーションまたはその他の方法により得られ
た離散的な電流値を、補間または補外し、連続的な電流
値を得るフィッティング方法において、
(1)変換関数y=f(x)により、離散的な電流値を
離散的な変換値に変換し、
(2)前記離散的な変換値に対してフィッティングを実
行し、連続的な変換値を得て、
(3)前記変換関数y=f(x)に対する逆変換関数x 10
=g(y)により、前記連続的な変換値を連続的な電流
値に逆変換する、というステップによりフィッティング
を行うことを特徴とする、半導体素子の電流電圧特性の
フィッティング方法。
【請求項2】 あるx1、x2に対して、x1<x2、
2
およびf′(x1)>f′(x2) ( f′(x)は
前記変換関数f(x)のxに関する微分を表す)、が成
立することを特徴とする、請求項1記載の半導体素子の
電流電圧特性のフィッティング方法。
【請求項3】 x0をある定数として、前記変換関数y
=f(x)として、y=log(x/x0)を用いるこ
とを特徴とする、請求項1記載の半導体素子の電流電圧
特性のフィッティング方法。
【請求項4】 x0をある定数として、前記変換関数y
=f(x)として、y=x/x0+log(x/x0)
を用いることを特徴とする、請求項1記載の半導体素子
の電流電圧特性のフィッティング方法。
【請求項5】 x0をある定数として、前記変換関数y
=f(x)として、y=x/x0−x0/xを用いるこ
とを特徴とする、請求項1記載の半導体素子の電流電圧
(2)
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特性のフィッティング方法。
【請求項6】 x0をある定数、mをある自然数とし
て、前記変換関数y=f(x)として、y=x/x0−
(x0/x)^mを用いることを特徴とする、請求項1
記載の半導体素子の電流電圧特性のフィッティング方
法。
【請求項7】 x=0となる付近では、前記半導体素子
の電流電圧特性のフィッティング方法が行われず、電流
値が電圧値の多項式で表されることを特徴とする、請求
項2乃至6のいずれかに記載の半導体素子の電流電圧特
性のフィッティング方法。
【請求項8】 x=0となる付近では、電流値が電圧値
の2次多項式で表されることを特徴とする、請求項7記
載の半導体素子の電流電圧特性のフィッティング方法。
【請求項9】 nをある自然数として、電圧値に対する
電流値、電圧値に対する電流値の1次微分、電圧値に対
する電流値の2次微分、・・・・・・、および電圧値に
対する電流値のn次微分が、連続関数であることを特徴
とする、請求項1記載の半導体素子の電流電圧特性のフ
ィッティング方法。
【請求項10】 前記半導体素子が電界効果型トランジ
スタで、ドレイン電流がドレイン電圧とゲート電圧の関
数であり、前記電流電圧特性が、出力特性(ドレイン電
圧に対するドレイン電流)および伝達特性(ゲート電圧
に対するドレイン電流)であることを特徴とする、請求
項1記載の半導体素子の電流電圧特性のフィッティング
方法。
【請求項11】 前記半導体素子が薄膜トランジスタで
あることを特徴とする、請求項10記載の半導体素子の
電流電圧特性のフィッティング方法。
【請求項12】 請求項1乃至請求項11のいずれかに
記載の半導体素子の電流電圧特性のフィッティング方法
を用いて作成した回路シミュレーション用モデルで回路
シミュレーションを行い、回路設計された電子回路。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体素子の電流
電圧特性のフィッティング方法に関するものである。特
に、回路シミュレーション用モデルとして用いられるも
ので、電流値のダイナミックレンジが広く、電流値の小
さい領域から大きい領域まで高精度が要求される、半導
体素子の電流電圧特性のフィッティング方法に関するも
のである。
【0002】
【背景技術】近年、半導体素子は、極めて広い範囲で、
多種、多様、大量に使用されている。これらの多くは、
結晶シリコン技術を基礎とした素子である。結晶シリコ
ン素子に関しては、永年の理論解析と構造、物性の単純
さから、その動作原理は、全く不明点が無いといってい
いほど、よく理解されている。このため、電流電圧特性
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は、様々なプロセス・構造に至るまで、定式化されてい
る。
【0003】半導体素子の回路設計を行う場合には、回
路シミュレーションが必須である。結晶シリコン素子に
ついては、回路シミュレーション用モデルとして、上記
の定式化された電流電圧特性が用いられる。
【0004】一方、新規な半導体素子の研究開発も盛ん
である。新規材料としては、アモルファスシリコン、多
結晶シリコン、化合物半導体、有機半導体等が挙げられ
る。あるいは、微細化、特性改善等を目的とした、全く
新規なプロセス、構造に関する研究開発も盛んである。
【0005】これらの新規な半導体素子では、未だ理論
解析が不十分であったり、その構造、物性が複雑であっ
たりすることから、動作原理から電流電圧の定式化に
は、至っていない部分が多い。また、材料、プロセス、
構造のささいな変化でも、電流電圧特性には、予想外の
大きな変化が表れることもある。
【0006】これらの新規な半導体素子に対しても、回
路設計を行う際には、回路シミュレーションは、極めて
便利で、必須に近いツールである。しかし、前述のとお
り、回路シミュレーション用モデルは、いまだ定式化さ
れていない。また、従来の半導体素子に対する定式にパ
ラメータを付加したものや、近似式、経験式を用いるこ
とによっても、完全な定式化は困難である。さらに、も
ともと連続した空間内での無限の物理法則の連立方程式
として得られる電流電圧特性を、ひとつの式で表すこと
は、不可能かもしれない。そこで、このような新規な半
導体素子の回路シミュレーション用モデルについては、
測定、デバイスシミュレーション等により得られた離散
的な電流電圧特性に対して、純粋にまたは部分的に数学
的なフィッティングを行うことも、ひとつの簡便、実用
的、かつ効果的な解である。本発明は、この数学的なフ
ィッティングについての新しいアイデアに関するもので
ある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】図6に、従来の半導体
素子の電流電圧特性のフィッティング方法を示す。離散
的な電流値2に対してスプライン関数フィッティング5
を実行し、連続的な電流値8を得る。なお、ここでは、
半導体素子の電流電圧特性として、低温多結晶シリコン
薄膜トランジスタの、ドレイン電流のドレイン電圧とゲ
ート電圧に対する特性を考えたが、他の半導体素子の電
流電圧特性でも、同様な議論が成り立つ。後述の実施例
に対しても然り。低温多結晶シリコン薄膜トランジスタ
は、新規な半導体素子であり、未だ理論解析が不十分で
あったり、その構造、物性が複雑であったりすることか
ら、動作原理から電流電圧の定式化には至っていない。
さらに、材料、プロセス、構造のささいな変化でも、電
流電圧特性には、予想外の大きな変化が表れる素子であ
る。
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【0008】薄膜トランジスタのドレイン電流は、ドレ
イン電圧とゲート電圧に対する関数であるから、フィッ
ティングの際には、2変数関数に対するフィッティング
を考えている。また、ここでは、フィッティングの方法
として、スプライン関数フィッティングを用いた。より
具体的には、スプライン関数入門(東京電機大学出版
局、桜井明著)、パソコンによるスプライン関数(東京
電機大学出版局、桜井明監修)を参照されたい。スプラ
イン関数フィッティングではなく、他のフィッティング
の方法でも、同様な議論が成り立つ。後述の実施例に対
しても然り。
【0009】また、このフィッティングは、電圧値に対
する電流値だけでなく、電圧値に対する電流値の1次微
分、電圧値に対する電流値の2次微分も連続であるよう
にしている。これを実現させるため、ここで説明する従
来の方法および後述の実施例の方法では、3次のスプラ
イン関数を用いた。回路シミュレーションに必要とされ
る、電圧値に対する電流値、電圧値に対する電流値の1
次微分、あるいはそれらのみならず、さらに電圧値に対
する電流値の多次微分が、連続関数であることにより、
回路シミュレーション時の収束性が向上している。
【0010】図7(a)に、従来の半導体素子の電流電
圧特性のフィッティング方法による、出力特性のフィッ
ティング結果を示す。各々の系列は異なるVg(ゲート
電圧:=−4∼14V)に対応し、横軸がVd(ドレイ
ン電圧)、縦軸がId(ドレイン電流)である。点は測
定により得られた離散的な電流値2であり、線はそれを
フィッティングした連続的な電流値8である。全領域に
わたって、うまくフィッティングできていることがわか
る。
【0011】図7(b)に、従来の半導体素子の電流電
圧特性のフィッティング方法による、伝達特性のフィッ
ティング結果を示す。各々の系列は異なるVd(=1∼
12V)に対応し、横軸がVg、縦軸が対数軸で表した
Idである。オン領域ではうまくフィッティングが実現
できているが、しきい値領域とオフ領域では、測定値間
の振動11が発生し、滑らかなフィッティングが実現で
きていないことがわかる。なお、本グラフの縦軸は対数
軸であるので、Idが負となっているところでは、プロッ
トされない。滑らかでないモデルにより回路シミュレー
ションを行うと、測定値間での値が不正確となるだけで
はなく、シミュレーションの収束性が悪くなる可能性が
ある。
【0012】図8に、従来の半導体素子の電流電圧特性
のフィッティング方法による、伝達特性のフィッティン
グ結果(線形軸)(a)とその拡大図(b)を示す。図
7(b)とは、縦軸が対数軸か線形軸かということのみ
異なる。従来のフィッティング方法では、オン領域、し
きい値領域およびオフ領域のいずれの領域でも、同じス
ケールにより誤差が評価される。これにより、オン領
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域、しきい値領域およびオフ領域のいずれの領域も同じ
スケールで描かれた線形軸のグラフ(図8(a))で
は、フィッティングは滑らかになっている。しかしなが
ら、拡大してみると(図8(b))、測定値間に微少な
振動が見られる。同様に、対数軸のグラフ(図7
(b))においても、この微少な振動が拡大して見られ
たわけである。すなわち、この振動の原因は、半導体素
子の動作範囲のダイナミックレンジが、10の−13乗
以上から10の−4乗以下と極めて広いため、値の大き
いところと小さいところとを同時にフィッティングしよ
うとすると、実際に発生する大きい値に対しては微少な
誤差が、小さい値に対しては無視できない誤差になるこ
とによる。
【0013】半導体素子では、オン期間(オン領域の電
圧が印加されている期間)に比べて、オフ期間(オフ領
域の電圧が印加されている期間)が、極めて長いことが
しばしばある。特に、ディスプレイの画素駆動用のトラ
ンジスタはそれが顕著で、その比は10の6乗ほどにな
ることもある。故に、例えば、オン期間の電圧変化と、
オフ期間の電圧変化とを、同じ程度に見積もるために
は、オフ期間の電流量は、オン期間の電流量の10の6
乗倍の精度でフィッティングされていなければならな
い。
【0014】そこで、本発明の目的は、回路シミュレー
ション用モデルを作成するときに用いられる、半導体素
子の電流電圧特性のフィッティング方法において、電流
値のダイナミックレンジが広い場合でも、電流量の小さ
い領域から大きい領域まで、測定、シミュレーションま
たはその他の方法により得られた離散的な電流値間での
振動が発生しない、高精度のフィッティングを実現する
ことである。
【0015】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の本発明
は、半導体素子の電流電圧特性における、測定、シミュ
レーションまたはその他の方法により得られた離散的な
電流値を、補間または補外し、連続的な電流値を得るフ
ィッティング方法において、(1)変換関数y=f
(x)により、離散的な電流値を離散的な変換値に変換
し、(2)離散的な変換値に対してフィッティングを実
行し、連続的な変換値を得て、(3)変換関数y=f
(x)に対する逆変換関数x=g(y)により、連続的
な変換値を連続的な電流値に逆変換する、というステッ
プによりフィッティングを行うことを特徴とする、半導
体素子の電流電圧特性のフィッティング方法である。
【0016】本請求項によれば、回路シミュレーション
用モデルを作成するときに用いられる、半導体素子の電
流電圧特性のフィッティング方法において、電流値のダ
イナミックレンジが広い場合でも、電流量の小さい領域
から大きい領域まで、測定、シミュレーションまたはそ
の他の方法により得られた離散的な電流値間での振動が
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発生しない、高精度のフィッティングを実現可能であ
る。
【0017】請求項2記載の本発明は、あるx1、x2
に対して、x1<x2、およびf′(x1)> f′
(x2) ( f′(x)は変換関数f(x)のxに関
する微分を表す)、が成立することを特徴とする、請求
項1記載の半導体素子の電流電圧特性のフィッティング
方法である。
【0018】本請求項によれば、相対的に、xの小さい
ところではyはそれを拡大したものとなり、xの大きい
ところではyはそれを縮小したものとなる。これによ
り、回路シミュレーション用モデルを作成するときに用
いられる、半導体素子の電流電圧特性のフィッティング
方法において、電流値のダイナミックレンジが広い場合
でも、電流量の小さい領域から大きい領域まで、測定、
シミュレーションまたはその他の方法により得られた離
散的な電流値間での振動が発生しない、高精度のフィッ
ティングを実現可能である。
【0019】請求項3記載の本発明は、 x0をある定
数として、変換関数y=f(x)として、y=log
(x/x0)を用いることを特徴とする、請求項1記載
の半導体素子の電流電圧特性のフィッティング方法であ
る。
【0020】請求項4記載の本発明は、 x0をある定
数として、変換関数y=f(x)として、y=x/x0
+log(x/x0)を用いることを特徴とする、請求
項1記載の半導体素子の電流電圧特性のフィッティング
方法である。
【0021】請求項5記載の本発明は、 x0をある定
数として、変換関数y=f(x)として、y=x/x0
−x0/xを用いることを特徴とする、請求項1記載の
半導体素子の電流電圧特性のフィッティング方法であ
る。
【0022】請求項6記載の本発明は、 x0をある定
数、mをある自然数として、変換関数y=f(x)とし
て、y=x/x0−(x0/x)^mを用いることを特
徴とする、請求項1記載の半導体素子の電流電圧特性の
フィッティング方法である。
【0023】請求項3、請求項4、請求項5および請求
項6に示された変換関数は、いずれも請求項2の要請を
実際に満たす関数であり、請求項2に対して記載した効
果が実現可能である。また、請求項3および請求項5記
載の変換関数は、逆関数を容易に求められるという利点
がある。さらに、請求項4記載の変換関数は、xの小さ
いところとxの大きいところとをともにバランスよく表
現するため、請求項2に記載した効果がより確実に実現
可能である。
【0024】請求項7記載の本発明は、請求項2、請求
項3、請求項4、請求項5または請求項6記載の半導体
素子の電流電圧特性のフィッティング方法において、x
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=0となる付近では、前述の半導体素子の電流電圧特性
のフィッティング方法が行われず、電流値が電圧値の多
項式で表されることを特徴とする、請求項2、請求項
3、請求項4、請求項5または請求項6記載の半導体素
子の電流電圧特性のフィッティング方法である。
【0025】請求項8記載の本発明は、 x=0となる
付近では、電流値が電圧値の2次多項式で表されること
を特徴とする、請求項7記載の半導体素子の電流電圧特
性のフィッティング方法である。
【0026】請求項7および請求項8によれば、実施例
の中で詳述する、x=0付近での異常な現象を、回避す
ることが可能である。さらに、請求項8では、2次多項
式であることにより、計算の容易さと、回路シミュレー
ションに必要とされる電圧値に対する電流値、電圧値に
対する電流値の1次微分が連続関数であるという要請
が、同時に実現できる。
【0027】請求項9記載の本発明は、 nをある自然
数として、電圧値に対する電流値、電圧値に対する電流
値の1次微分、電圧値に対する電流値の2次微分、・・
・・・・、および電圧値に対する電流値のn次微分が、
連続関数であることを特徴とする、請求項1記載の半導
体素子の電流電圧特性のフィッティング方法である。
【0028】本請求項によれば、回路シミュレーション
に必要とされる、電圧値に対する電流値、電圧値に対す
る電流値の1次微分、あるいはそれらのみならず、さら
に電圧値に対する電流値の多次微分が、連続関数である
ことにより、回路シミュレーション時の収束性が向上す
る。
【0029】請求項10記載の本発明は、半導体素子が
電界効果型トランジスタで、ドレイン電流がドレイン電
圧とゲート電圧の関数であり、前記電流電圧特性が、出
力特性(ドレイン電圧に対するドレイン電流)および伝
達特性(ゲート電圧に対するドレイン電流)であること
を特徴とする、請求項1記載の半導体素子の電流電圧特
性のフィッティング方法である。
【0030】請求項11記載の本発明は、半導体素子が
薄膜トランジスタであることを特徴とする、請求項10
記載の半導体素子の電流電圧特性のフィッティング方法
である。
【0031】請求項10および請求項11によれば、そ
れぞれ、電界効果型トランジスタおよび薄膜トランジス
タに対して、請求項1に対して期待される効果が実現可
能である。
【0032】請求項12記載の本発明は、請求項1から
請求項11までに記載の半導体素子の電流電圧特性のフ
ィッティング方法を用いて作成した回路シミュレーショ
ン用モデルで回路シミュレーションを行い、回路設計さ
れた電子回路である。
【0033】本請求項によれば、高精度のフィッティン
グにより実現された高精度の回路シミュレーションの結
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果を用いることによって、最適設計、限界設計された電
子回路が、短期間、低コストで作成可能である。
【0034】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を、図面
に基づいて説明する。
【0035】(実施例1)図1に、本実施例における半
導体素子の電流電圧特性のフィッティング方法を示す。
(1)離散的な電流値2を、変換関数y=f(x)によ
り変換3し、離散的な変換値4を得て、(2)離散的な
変換値4に対して、スプライン関数フィッティング5を
実行し、連続的な変換値6を得て、(3)連続的な変換
値6を、変換関数y=f(x)に対する逆変換関数x=
g(y)により逆変換7し、連続的な電流値8を得る。
本実施例では、変換関数として、y=log(x/x
0)を用いている。ただし、この関数はx=0のとき発
散するので、変換前に微小量(?)を加えている。ま
た、x0=?であった。
【0036】図2(a)に、本実施例における半導体素
子の電流電圧特性のフィッティング方法による、出力特
性のフィッティング結果を、図2(b)に、本実施例に
おける半導体素子の電流電圧特性のフィッティング方法
による、伝達特性のフィッティング結果を示す。出力特
性では、測定値間の振動11が表れているものの、伝達
特性では、全領域にわたって、うまくフィッティングで
きていることがわかる。故に、出力特性での測定値間の
振動11が表れている電圧領域を使わない動作に関して
は、高精度の回路シミュレーションが実現できる。
【0037】(実施例2)従来の半導体素子の電流電圧
特性のフィッティング方法によれば、出力特性に関し
て、すなわち電流量が大きいところでは、全領域にわた
って、うまくフィッティングできていることがわかる。
一方、実施例1における半導体素子の電流電圧特性のフ
ィッティング方法によれば、伝達特性に関して、すなわ
ち電流量が小さいところでも、全領域にわたって、うま
くフィッティングできていることがわかる。
【0038】そこで、これら両方について、その変換関
数を比較したのが、図3である。従来の方法では、無変
換であるが、あえて書くならば、y=x/x0である
(以降の議論で整合性をとるためにx0で規格化してあ
る。)実施例1の方法では、y=log(x/x0)で
ある。なお、この関数は、請求項2で述べたように、あ
るx1、x2に対して、x1<x2、およびf′(x
1)> f′(x2) (f′(x)は変換関数f
(x)のxに関する微分を表す)、が成立する。これに
より、相対的に、xの小さいところではyはそれを拡大
したものとなり、xの大きいところではyはそれを縮小
したものとなっている。図3で、xの小さいところでは
y=log(x/x0)に近く、xの大きいところでは
y=x/x0に近い変換関数があれば、その変換関数を
使うことにより、xの小さいところから大きいところま
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で、うまくフィッティングできることになる。図3をみ
ればわかるように、 y=x/x0+log(x/x
0)ならば、この要求を満たす。
【0039】図4(a)に、変換関数として、y=x/
x0+log(x/x0)を用いたときの、出力特性の
フィッティング結果を、図4(b)に、伝達特性のフィ
ッティング結果を示す。出力特性、伝達特性ともに、ほ
ぼ全領域にわたって、うまくフィッティングできている
ことがわかる。故に、高精度の回路シミュレーションが
実現できる。
【0040】なお、本実施例で用いた変換関数y=x/
x0+log(x/x0)以外でも、例えば、 y=x
/x0−x0/xや、y=x/x0−(x0/x)^m
(mはある自然数)等により、同様の効果が期待でき
る。
【0041】(実施例3)図4(a)を見ると、電流値
=0となる付近、すなわちVd=0となる付近で、フィ
ッティングに異常が表れている。(以降これをx=0付
近の異常12と呼ぶ。)この異常の原因は、次のような
ものである。
【0042】変換関数y=f(x)の両辺をVで微分す
ると、dy/dV=f‘(x)・(dx/dV)。故
に、 dx/dV=(dy/dV)/ f‘(x)。請求
項2からも示唆されることだが、xの小さいところを拡
大するために、xが0に近づくとき、 f‘(x)は極
めて大きくなり、 dx/dVは0に近づく。これが、
x=0付近の異常12の原因である。x=0付近を拡大
してフィッティングする場合には、避けられない現象で
ある。
【0043】そこで、本実施例では、Vd=1V以上で
のみフィッティングを行い、Vd=0から1Vの範囲で
は、Vd=1V以上でのフィッティングを、2次多項式
で補外するという方法をとった。フィッティングの変換
関数としては、実施例2と同じく、y=x/x0+lo
g(x/x0)を用いた。また、2次多項式の係数は、
(1)Vd=0でId=0、(2)Vd=1Vでフィッ
ティング結果とIdが連続、(3)Vd=1Vでフィッ
ティング結果とdId/dVd(IdのVdに関する微
分)が連続、という3条件で決定した。
【0044】図5(a)に、本実施例における半導体素
子の電流電圧特性のフィッティング方法による、出力特
性のフィッティング結果を、図5(b)に、本実施例に
おける半導体素子の電流電圧特性のフィッティング方法
による、伝達特性のフィッティング結果を示す。 x=
0付近の異常12が解消し、出力特性、伝達特性とも
に、全領域にわたって、うまくフィッティングできてい
ることがわかる。故に、本実施例におけるフィッティン
グ方法を用いれば、全領域にわたって、高精度の回路シ
ミュレーションが実現できる。
【図面の簡単な説明】
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【図1】実施例1における半導体素子の電流電圧特性の
* (b)従来のフィッティング方法による、伝達特性のフ
フィッティング方法を示す図。
ィッティング結果を示す図。
【図2】(a)実施例1のフィッティング方法による、
【図8】(a)従来のフィッティング方法による、伝達
出力特性のフィッティング結果を示す図。
特性のフィッティング結果(線形軸)を示す図。
(b)実施例1のフィッティング方法による、伝達特性
(b)従来のフィッティング方法による、伝達特性のフ
のフィッティング結果を示す図。
ィッティング結果(線形軸)を拡大したものを示す図。
【図3】変換関数の比較を示す図。
【符号の説明】
【図4】(a)実施例2のフィッティング方法による、
1 Start
出力特性のフィッティング結果を示す図。
2 離散的な電流値
(b)実施例2のフィッティング方法による、伝達特性 10 3 変換:変換関数 y=f(x)
のフィッティング結果を示す図。
4 離散的な変換値
【図5】(a)実施例3のフィッティング方法による、
5 スプライン関数フィッティング
出力特性のフィッティング結果を示す図。
6 連続的な変換値
(b)実施例3のフィッティング方法による、伝達特性
7 逆変換:逆変換関数 x=g(y)
のフィッティング結果を示す図。
8 連続的な電流値
【図6】従来の半導体素子の電流電圧特性のフィッティ
9 End
ング方法を示す図。
11 測定値間の振動
【図7】(a)従来のフィッティング方法による、出力
12 x=0付近での異常
特性のフィッティング結果を示す図。
*
【図6】
【図1】
(7)
【図2】
特許3491132
【図3】
【図5】
【図4】
(8)
【図7】
特許3491132
【図8】