国立大学法人 東北大学 臨床研究中核病院整備事業 縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチーに対するシアル酸療法 プロジェクト責任者:青木 正志 研究概要 縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチーは、シアル酸生合成経路の酵素であるGNE/MNKをコードする GNE遺伝子に変異があることが原因で、多くは10代後半~30代に発症し、前脛骨筋が最初に侵され、 平均10~15年で車椅子生活となります。日本では100人程度しか患者が確認されていない疾患です。 患者を対象に、海外ではN-アセチルノイラミン酸の第Ⅱ相試験を実施し長期投与での有効性と安全 性を検討していますが、この間海外で治験中の徐放製剤を使用して医師主導治験として追加第Ⅰ相試 験を実施し、1日6gまでの安全性と薬物動態を確認しました。海外では第Ⅱ相試験の結果を受けて、 2015年より国際共同第Ⅲ相試験を開始予定であり、我々もこれに参加し第Ⅲ相試験を開始すること を検討しています。 薬効薬理試験・薬物動態試験 薬効薬理試験 薬物動態試験 方法 モデルマウスにN-アセチルノイラミン酸、そ の前駆体であるN-アセチルマンノサミン、 シアリル乳糖をそれぞれ20mg/kg/日、生 後10~20週から54~57週まで投与 ラットに14C-N-アセチルノイラミン酸 (20mg/kg)を静脈内投与 結果 生存率上昇、筋組織のN-アセチルノイラミン酸含量増加、 筋重量、筋力が改善 東北大学大学院 医学系研究科神経内科 青木 正志 毒性試験及び安全性薬理試験 試験 静脈内投与後N-アセチルノイラミン酸は多くが速やかに 尿より排泄された 一部は比較的速やかに代謝を受け筋肉を含む各組織に 取り込まれることが確認された 投与経路 投与量(mg/kg/日) ウサギ・生殖(ICH study3) 経口 600, 2000 ラット・生殖(ICH study1) 経口 200, 600, 2000 ラット・生殖(ICH study2) 経口 200, 600, 2000 東北大学病院において、第Ⅰ相試験を実施(H22.11~H23.6) 対象 投与量、症例数 結果 20~40歳の縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチーの患者(GNE遺伝子の変異を確認できているもの) 通常製剤を使用、第1段階:800mg単回、800mg×3回/日:各3例(計6例)、第2段階:800mg×3回/日×5日:3例(第1段階の6例の一部) 安全性に問題なし。明らかな血清中総N-アセチルノイラミン酸濃度の上昇は認めず、尿中排泄量は僅かだが明らかに増加した。 米国において、第Ⅰ相試験を実施(H23.8~H24.2) 対象 投与量、症例数 結果 18~70歳の縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチーの患者(GNE遺伝子の変異を確認できているもの) 徐放製剤を使用、単回投与:650、1,950、2,925、4,875、6,000mg(空腹時及び食後):各4~6例、反復投与:1,950、2,950、4,875、6,000mg(分3)×7日:各5~8例 安全性に問題なし。反復投与により、健康成人の濃度を超える血清中遊離N-アセチルノイラミン酸濃度の増加が24時間にわたり認められ、高用量2群(4,875及び6,000mgでは 非投与時の3倍の血清中遊離N-アセチルノイラミン酸濃度が認められた。 米国において、第Ⅱ相試験を実施(H24.6~) 対象 投与量、症例数 結果 18~65歳の縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチーの患者(GNE遺伝子の変異を確認できているもの) 徐放製剤を使用、プラセボ、3g、6g(分3)を24週、その後プラセボのみ3g又は6gに変更、48週まで投与、さらに12gのオープン試験(24週以上) (24週時)安全性に問題なし。一部の筋肉群で小さいがプラセボと比較して用量依存の筋力の改善が認められた(特に6g投与の上肢にて)。これらの変化は統計学的に有意あ るいは有意傾向にあり、また、投与前の歩行能力の高い患者でより大きかった。 (48週時)有害事象は軽度~中等度で、安全性に問題なし。胃腸症状が最も多かった。事前に定義した上肢混成筋力は6g投与で3gより有意に改善。投与前の歩行能力の高い 患者で差がより大きかった。GNEミオパチー機能活動尺度、坐位立位変換試験で3gに比べ6gで改善傾向あり。 (12gオープン試験)血中薬物濃度は増えるも、有効性の増強は確認できなかった。⇒6gにて国際共同治験を準備中 東北大学病院において、追加第Ⅰ相試験を実施(H25.10~H27.1) 対象 投与量、症例数 結果 20~40歳の縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチーの患者(GNE遺伝子の変異を確認できているもの) 徐放製剤を使用、第1段階:2000mg単回、2000mg×3回/日:各3例(計6例)、第2段階:2000mg×3回/日×7日:3例(第1段階の6例の一部) 安全性に問題なし。明らかな血清中遊離N-アセチルノイラミン酸濃度の上昇を認め、尿中排泄量は僅かだが概ね増加した。 国際共同第Ⅲ相試験を準備中(H26.12~) 対象 20~50歳の縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチーの患者(GNE遺伝子の変異を確認できて いるもの) 試験方法 無作為化二重盲検プラセボ対照 施設 全世界で15施設まで 治験薬 500mg徐放錠及びそのプラセボ錠 投与量他 1日6g(分3)、48週間、計80例(実薬:プラセボ=1:1) 評価 筋力計で測定した上肢筋力の合計値、GMEM-FASを使用した上肢スコア等、安全性、血 清中遊離N-アセチルノイラミン酸濃度、CK値他 平成25年度 平成26年度 平成27年度 平成28年度 原薬・製剤 安定性試験 非臨床試験 ラット生殖毒性 (ICH study1,2) 第Ⅰ相試験(追加) プロトコル 治験届出 治験実施 総括報告書 第Ⅱ/Ⅲ相試験 プロトコル 治験届出 治験実施 総括報告書 ◎ ◎ ★
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