2. 心筋PET/CTの近年の進化

Nuclear
Medicine
Today
2015
Ⅳ 循環器領域における最新動向
2.心筋 PET/CT の近年の進化
─心筋血流 PET と新規イメージング製剤
福島 賢慈 東京女子医科大学病院画像診断・核医学科
心 臓 核 医 学 においては, 心 筋 血 流
要としない。そのため,PET カメラさえ
心筋血流 PET
SPECT は長らく中心的存在であり,虚
血心筋の検出,リスク層別化など豊富な
あれば,ジェネレータと自動注入器を導
入することで一般の施設でも心筋血流
エビデンスを提供してきた。古くは欧米で
現在,国内外で研究および臨床で使
PET を行える。82 Rb は物理学的半減期
の多施設共同研究に始まり,日本でも予
用されている心 筋 血 流 P E T 製 剤を,
が約 70 秒と非常に短く,安静 負荷の
後評価および実臨床にてそれらのエビデン
SPECT 製剤との対比も併せて表 1 に示
1 日 2 回撮像においては検査時間短縮に
スを踏まえた十分な診療貢献がある。しか
す。臨床で主に使用されているのは Rb
しながら,SPECT には少なからずデメリッ
82
貢献できる反面,手作業による静注では
間に合わないため,ジェネレータを内蔵
(主に米国)
,13 N-ammonia である。
トも経験される。安静 負荷の撮像時間
心筋血流 PET は,研究レベルでは欧
できる自動注入器を PET カメラ脇に設
や低エネルギー γ 線による減衰などは,
米を中心に 1970 年代から始まり,多く
置して行うのが実際である。半減期が短
撮像機器の進歩により画質改善の試みは
のデータ蓄積があった。しかしながら,
いため,被検者の体格によっては 1 回で
進んでいるが,依然として日常臨床の妨
核種の半減期が短く自施設にサイクロト
40 ∼ 50 mCi 程度が必要になる。
げとなる問題である。当院でも SPECT/
ロンが必要なため,規模の大きな施設で
本邦では,13 N-ammonia が 2012 年よ
CT や最新コリメータを導入しているが,
しか導入できないデメリットがあった。
り保険認可され,サイクロトロンを有し
それでもアーチファクトの排除は難しい。
それでも,欧米人の大きな体格から正確
ている施設であれば保険診療として心筋
PET はほかのセクションでも紹介されて
な γ カウントを得るためには,SPECT
血流 PET を行えるようになった。82 Rb
いるとおり,高エネルギー γ 線の短半減
核種では不十分な場合が多く,米国で
に比べて半減期が長く検査時間の延長
期核種および CT 導入を含む技術革新に
は 1990 年代に心筋血流製剤として Rb
があるが,メタボリックトラッピングによ
より,SPECT で問題となる減衰アーチファ
が保険認可された。82 Rb は動態が 201 Tl
り心筋内安定性が高く,血流追従性が
クトはまず見られることがなく,SPECT
に類似し,ストロンチウム(82 Sr)の崩
82
と比して診断に苦慮することは経験されな
壊から得られる核種であるため
そのほか,15 O など血流追従性の高い
い。また,分解能の向上およびカウント収
82
集の安定性は画質改善のみならず,再現
したがって,施設内サイクロトロンを必
82
82
Sr/
Rb ジェネレータによって提供される 1)。
Rb と比して高いことがメリットである。
トレーサーが研究分野では広く使用され
ているが,現在,米国では FDA 認可直
性のある定量評価を提供し,灌流情報の
みだけでなく診断に役立つ付加価値情報
表 1 心臓核医学で用いられる主な心筋血流製剤
も多く得ることができる。
心筋血流製剤
本稿では,PET を用いた虚血性心疾患
CardioGen- 82
の診断における新たな展開と今後の展望
NH 3
を紹介したい。
PET 製剤
半減期
Rb
75 秒
13
N
9 . 965 分
H2 O
15
O
122 . 24 秒
Flurpiridaz
18
F
109 . 77 分
塩化タリウム
201
Tl
73 . 1 時間
マイオビュー
(tetrofosmin)
99 m
Tc
6 . 006 時間
カーディオライト* 2
(sestamibi)
99 m
Tc
6 . 006 時間
*1
SPECT 製剤
核 種
82
* 1 日本メジフィジックス社製 * 2 富士フイルム RI ファーマ社製
〈0913-8919/15/¥300/ 論文 /JCOPY〉
INNERVISION (30・12) 2015 29