TS効果を考慮したプレビームの有効剛性の検討 ~より正確な

技術紹介 TS 効果を考慮したプレビームの有効剛性の検討
技術紹介
TS 効果を考慮したプレビームの有効剛性の検討
~より正確なプレビームの挙動の把握について~
The Tension Stiffening Effect of PREBEAM
清水 良平 *1
Ryouhei SHIMIZU
藤林 博明 *2
Hiroaki FUJIBAYASHI
野呂 直樹 *3
Naoki NORO
1.目的
プレビーム合成桁(以下,プレビーム)は,鋼桁,下
フランジコンクリートおよび床版コンクリートからなる
高い剛性を有する合理的な橋梁形式です。供用時のたわ
中立軸:V2
中立軸:V1
acl2
み量を評価する際,従来は,図 1 に示すとおり,前述の
部材を全て有効とした場合(状態Ⅰ)と,供用時に引張
応力が生じる下フランジコンクリート断面を無視した場
合(状態Ⅱ)の 2 つの状態より,ACI318-71 式(Building
(状態Ⅰ)
Code Requirements for Reinforced Concrete,以下,ACI
図1
(状態Ⅱ)
抵抗断面概要
式)を用いて有効剛性を算出しています。
一方,近年では,コンクリートのテンションスティフ
ニングの効果(以下,TS 効果)を考慮することにより,
一方,TS 効果を考慮した場合,安定ひび割れ状態以降
の曲げ剛性は,次のように求められます。
ひび割れ発生後のコンクリート部材のより正確な挙動が
明らかにされつつあります。そこで,本文では,コンク
E s  I v 2,TS 
リートの TS 効果を考慮した有効剛性の評価式(以下,TS
式)の誘導と数値計算を実施し,従来の設計方法と比較
Es  I v 2
Es  I v 2

- - - - ( 2)
M v ,TS
  f ctm  Acl  acl 2
1
1
Mv
Mv
なお, M v,TS    f ctm  Acl  acl 2
は,安定ひび割れ状態
を行い,プレビームにおける TS 式の有効性を検討した結
での下フランジコンクリートの分担曲げモーメントを示
果を報告します。
します。
2.曲げ剛性の算出式
ここに、
現行のプレビーム橋設計施工指針(以下,PB 指針)で
は,ひび割れ発生後の曲げ剛性は, E・
s I e で表わされま
す。
3
3



 
M cr
M cr
 

 ・I g  1  
 ・I cr - - - - (1)
I e  
M

M
M

M
0 

0  
 l i
  l i

M v :合成断面に作用する外力モーメント(N・mm)
I v 2 :合成断面の断面二次モーメント(mm 4)
I v 2,TS:TS効果を考慮した換算断面二次モーメント(mm 4)
M s 2,TS:
M v ,TS:
I e :換算断面二次モーメント(mm4)
I g :全断面有効時の断面二次モーメント(mm4)
M cr :ひび割れ発生モーメント(N・mm)
M l i :衝撃を含んだ活荷重モーメント(N・mm)
M 0 :ひび割れ開口モーメント(N・mm)
安定ひび割れ状態での下フランジ
コンクリートの分担曲げモーメント(N・mm)
E s :鋼材のヤング係数(N/mm2)
断面二次モーメント(mm 4)
鋼桁に作用する分担断面力(N・mm)
〃
 :鉄筋とコンクリートの付着の程度を表す係数(=0.4)
f ctm :コンクリートの引張強度(N/mm 2)
Acl :下フランジコンクリートの断面積(mm2)
acl 2:
〃
の重心とV 2 との間の距離(mm)
ここに、
I cr :下フランジコンクリート無視の場合の
〃
ここで,TS 効果を考慮したときの曲げモーメントと曲
率φの関係を図 2 に示します。
3.断面二次モーメントの変化
図 3 に示す橋梁条件で,TS 式による断面二次モーメン
トの変化を計算し,従来の設計法である ACI 式での値と
*1 川田テクノシステム㈱設計部設計三課 係長
*2 川田工業㈱鋼構造事業部技術統括部技術部大阪技術課 主幹
*3 川田工業㈱鋼構造事業部技術統括部技術部大阪技術課 係長
技術紹介 11-1
川 田 技 報 Vol.34 2015
技術紹介 TS 効果を考慮したプレビームの有効剛性の検討
比較した結果を図 4 に示します。
の差異が増大するので更なる検討が必要となります。
なお,断面二次モーメントは I cr で,曲げモーメント
は M cr で除して無次元化した値を用いました。また,一
影響を考慮したひび割れ幅評価式の誘導を行い,数値計
般に,死荷重載荷状態の下フランジコンクリートは,圧
算を実施するとともに実験による検証を行う所存です。
今後は,プレビーム固有の下フランジ鋼板や TS 効果の
2
縮応力度 0.5~1.0N/mm 程度のプレストレスを残存させ
6.おわりに
ますが,本検討ではこれを無視しています。
=1.6 までの TS 式による結果は,
本論文の作成にあたり,大阪工業大学 八幡工学実験場
ACI 式による結果よりも剛性を小さく評価しますが,そ
栗田章光 特任教授に多大なご指導をいただきました。こ
れ以降では剛性が逆転することがわかります。TS 式およ
の場をお借りして,お礼を申し上げます。
図 4 より,
び ACI 式による剛性は,下フランジコンクリート無視の
剛性と比較して,活荷重載荷状態でそれぞれ 1.16 倍およ
び 1.20 倍に,降伏設計荷重でそれぞれ 1.08 倍および
1.02 倍の値を示しています。
4.TS 式の実用性
TS 式による剛性は,現行の PB 指針の ACI 式の剛性よ
りも,活荷重載荷状態で 3%小さいが,その差は少ないの
で,ほぼ同等であるといえます。また,TS 式による剛性
は,
=1.6 以降では ACI 式によるものより大き
くなっていることから,TS 式を用いて設計を行えば,変
形の評価に対し有利な結果を与えることがわかりました。
図2
5.まとめ
TS効果を期待したプレビームのM-φの関係
本論文では,TS 式を用いて数値計算を実施し,現行の
7500
RC床版 t=180mm
PB 指針による方法である ACI 式と剛性を比較することで,
式による剛性を設計に導入することにより,経済性の向
800
300
した。特に,活荷重載荷以降の荷重載荷においては,TS
999~1216
プレビームにおいて TS 式が有効であることを確認しま
上が期待できることがわかりました。
G1
なお,条件が異なり,活荷重が比較的小さい場合,活
G2
650
G3
4 x 1550 = 6200
荷重載荷状態での作用曲げモーメントは安定ひび割れ状
支間長 35.4m
態に近づき,TS 式による剛性と現行の ACI 式による剛性
図3
図4
G4
G5
650
A活荷重
試算条件
断面二次モーメントの変化比較
技術紹介 11-2
川 田 技 報 Vol.34 2015