アジア理解講座 2015 年度は、昨年度に引き続き北九州市立八幡西図書館および NPO 法人市民塾 21 と共 催で八幡西図書館にて学会主催の「アジア共生学会の専門家が語るアジア理解講座」を開 催した。開催状況は以下の通りである。 アジア理解講座の開催実績 開催日時 10 月 4 日(日) 10 時 30 分~ 12 時 11 月 8 日(日) 10 時 30 分~ 12 時 講師 堀川 恵氏 (アジア共生学会会員) 中田博己氏 (北九州総合デザイナー協 会副理事長) 西田和昭氏 (日本映画批評家大賞事務 局長・俳優・プロデュー サー) 12 月 6 日(日) 中野洋一氏 10 時 30 分~ (アジア共生学会会長) 12 時 テーマ NATO 加盟の親日国トルコ -欧州とアジアの交点からア ジアの共生を考える- アジアの映画と、北九州発「市 民参加型のチャレンジ映画」 を考えるトーク!」 (映画上映あり) 会場 八幡西図書館 参加者 22 名 中国の原発産業の現状と問題 八幡西図書館 参加者 21 名 八幡西図書館 参加者 20 名 3 名の講師の講演要旨は以下の通りである。 なお、中野洋一会長の講演は、6 月 13 日(土)開催の第 1 回研究会での内容と同様であ る。 1 第1回アジア理解講座 2 3 第2回アジア理解講座 アジアの映画と、北九州発「市民参加型のチャレンジ映画」を考えるトーク! 北九州総合デザイナー協会副理事長 中田博己 日本映画批評家大賞事務局長・俳優 西田和昭 アジア共生学会・2015 年第 2 回アジア理解講座は「アジアの映画と、北九州市民参加型の チャレンジ映画」を考えるトークとして開催。学会の中田博己会員と日本映画批評家大賞事 務局代表理事の西田和昭氏が対談した。西田氏は日本映画批評家大賞運営に 23 年間携 わり、俳優、プロデューサー、パントマイマーなどで世界を駆けまわるマルチタレント。水野晴 郎氏と歩み続け「シベリア超特急」では俳優出演。現在、超特急でシリーズ最新作を制作中。 「島田洋七の佐賀のがばいばあちゃん」などプロデュース多数。実績を活かし、今回北九州 オールロケ映画「グッバイエレジー」をプロデュースし、市民から名実ともに「北九州は映画の まち」と言われる映画づくりに奮闘している。(トークを基に一部加筆) 1 アジア映画の一端の、最近の動き 1)日本の映画について…全体的に堅調な伸び! 映画館数/3364 スクリーン(101.3%)、公開本数/1184 本(105.9%)、邦画 615 本 (104.0%)、洋画 569 本(108.1%)、入場人数/161116(千人)(103.4%)、興行収入/計 207034(106.6%)~邦画 120715(102.6%)、洋画 86319(112.8%)(百万円) (*カッコ内数字 は前年比率)(2015 年 1 月発表・日本映画製作者連盟「2014 年全国映画概況」より) 2)アジアの映画について・・・インド、中国、日本、韓国がビッグ4 ①「アジア映画製作本数」について 国 日本 イラン インド インドネシア 韓国 タイ 中国 トルコ パキスタン フィリピン 香港 マレーシア レバノン (総務省統計局・世界の統計 2015 の「15-8 映画(2011 年)」より) 製作本 映画館数 入 場 回 数 数/1 人 総数 屋内 スクリーン数 当 8~ 2~ 1 441 … 665 236 218 211 1.3 76 … 345 … a40 a186 a 0.3 1255 … … … … … b 2.5 84 … … … … … 0.1 216 … b300 b238 3.5 49 … … … … … 0.5 584 … a1687 … … … 0.3 70 … 520 c24 c189 c89 0.6 27 233 228 13 215 … 78 c211 c211 c18 c124 c69 0.6 53 b3.4 49 107 c10 c41 c17 2.3 14 a59 a48 a5 a22 a15 1.5 a/2009 年 b/2010 年 c/2006 年 ②インドの映画…言語が多く、その分吹替版も多いのが特徴。その吹替版も本数カウント。 2013 年度中央映画検定局通過映画は 40 言語 1966 本で過去最高といわれる。 ③中国の映画館…製作本数 584、映画館数 1687 だが今では約 23000 との見方も。上映施 設の多様性とカウントの仕方等が差異として出ていると思われる。 4 ④韓国のスクリーンクォータ制度 自国作品を保護する制度。1967 年開始、米は自由貿易協定(FTA)で外国枠拡大要求。韓 国では俳優などによる反対デモに発展。2006 年 7 月から韓国映画上映日数年間 40%146 日⇒73 日へ縮小。現在、8 カ国(韓国、スペイン、ブラジル、フランスなど)で実施とされてい る。 ⑤各国の映画事情・・・日本と同一の仕組、基準ではない 海外の映画の動向を見る場合、映画業界の仕組等がそれぞれ異なり、データ比較に当た ってはカウントの基準などの違いも考慮する必要がある。 2 日本映画批評家大賞~映画でつながるアジアとの共生 日本映画批評家大賞は、一般社団法人日本映画批評家大賞機構(東京都渋谷区)が運 営。アカデミー賞など映画業界での映画賞と違い、年間 250 本を観る映画評論家たちによる 映画賞として独自路線を歩み、今年は 24 回目。各賞が発表された会場では、北九州市の松 永文庫(門司区)の映画資料が展示され注目を集めた。 批評家賞は、数は少ないが世界各地域にある。アジアでは韓国映画評論家協会賞が有名。 日本映画批評家大賞は韓国とは姉妹関係にあり交流を続けている。現在、「アジア批評家大 賞」設立の動きがある。日本、韓国、中国、タイ、ベトナム、インドなどアジアの批評家が一堂 に会し、代表作を出品・上映しながら映画賞を決め、国際交流を図ろうというもの。名古屋を 拠点にした展開を計画している。 3 市民が主人公の「映画のまち北九州」について 最近「映画のまち北九州」を耳にすることが多い。市内で派手な爆破シーンなどが撮影さ れ、「MOZU 市」なども飛び出した。「図書館戦争」も美術館で激戦が繰り広げられた。北九州 フィルムコミッション(FC)は設立されて以来、これまで数多くの映画やテレビドラマ、CM 撮影 地を誘致してきた。全国的に見てもその実績は映画業界からも高く評価されている。「どんな シーンでも撮影できる」「それを可能にしてくれる FC が存在する」との理由からである。この FC の存在は「映画のまち」である構成要素の大きな一つである。が、すべてではない。問題 は、誘致の先に映画の財産が残り、そこで育ち、発展し、市民も、市域外からの観光者も企 業も、肌で感じる「映画のまち」があるかどうかだろう。 仮に観光客が北九州市に降り立った場合、「映画のまちだ」と感じられるか。JR 小倉駅、北 九州空港、新門司フェリーターミナルといった玄関口ではモニュメントやサイン、印刷物など でビジュアル的アピールが常態化されているか。インフォメーションでロケ地案内や北九州独 自の映画情報が的確に紹介できているか。一歩まち中に入った場合、映画のまちとしての形 跡がみられるか。これまでのロケ地としての実績を踏まえ、まち中で映画のまちとしての具体 化をすべきである。映画誘致の場合、多くの映画関係者がやってきて交通費、宿泊費、飲食 費、制作費など直接経費が投下され、さらに宣伝費換算などでの間接的な経済的波及効果 が注目されるところだが、現実的に高効率効果があるのはオール北九州ロケ映画である。他 都市の一部としてのロケでは滞在日数も少ない、人数も少ない。実際上映において北九州 市は出てこないことが多い。エンドロールで出るくらい。宣伝的な発信力は弱い。 映画人の人材育成がなされているか。一連の映画制作の過程の中で、監督、脚本家、撮 5 影監督、美術、助監督、プロデューサーなどがやってくる。誘致の度にそれを捉え映画講座 企画などを立案し、マスコミを活用し広く市民に呼びかけ開催し、映画人の卵を育てていく。 また、映画制作に必要なエキストラ以外での役者、助手、衣装、メーク、宣伝物などでも、でき るだけ地元の人材、劇団、専門家、企業への参加・発注を恒常化する。一体的に進める映画 学校やネットワーク協議会などがあってもいいだろう。そして映画産業が育つまちへと発展し なければならない。ある映画関係者との座談で九州全体をアジアに開かれた映画村にしては どうかという案が出た。その中核に北九州がなり、国内外からの映画制作の多様なニーズに 対して、ネットワーク化した各県が持つ特有のロケ素材で対応するというものだ。FC の九州ネ ットも存在し、さらに機能すれば「アジアのゲートウエイとしての北九州映画のまち」も見えてく る。そのためにも市民が主役の映画が息づく風土づくりが必要である。 4 既存の映画の財産を大切に、市民目線の映画のまちづくりへ あなたのイメージする「映画のまち」とは? 変化、多様化する今日の映画づくり。その中での動きとして、地方発、スローシネマが注目 されている。劇場公開だけに頼らず、 ひとつひとつの県・市・町・村などで実行委員会を立ち 上げ、 数年をかけてゆっくりと各地のホールや公共施設で地域上映会を行っていくスタイル。 例えば、「ラジオの恋」。広島発信、ラジオへの愛が全国を包み込んだ映画として評価された。 「じんじん」は「絵本の里」で知られる北海道剣淵町が舞台で、期待に応えて新作が進行中で ある。 このような映画作りの様々な魅力と可能性を秘めた映画作りが、いま北九州で進んでいる。 小倉出身の三村順一監督・脚本の映画「グッバイエレジー」。親友の死をきっかけに数十年 ぶりにふるさと北九州を訪れた男同士の哀歌を描く物語である。できるだけ地元参加、地元 発注を考えた映画を作りあげて全国に魅力を発信する北九州オールロケ映画として準備が 進む。会場には三村監督も見えて挨拶があった。スパンの長い映画のまち北九州を展望した 映画村構想、システムづくりを展開しながら、その中に今回の映画制作を位置づけている。こ の映画作りを契機に、映画のまちとしての多くの新しい姿の具体化が期待されている。 映画のまち北九州の底ぢから 最後に、映画のまち北九州の底ぢからの一面を紹介。かつての北九州も、映画館数、撮 影ロケなどで湧く全国有数の映画のまちだった。多くの映画館がひしめき合い、地元の興行 会社が経営し、純粋に地元映画産業が発展したまちだった。今では全国チェーン組織のシ ネコンが幅を利かせ、個人館は生き残りをかけて独自の路線と企画力、営業力で興行してい る。しかし、シネコンの多さも北九州の今日的特徴となっているが、名物映画館や一目置かれ る映画資料館の存在、映画好きによる地道な映画上映会や映画祭の開催などは北九州なら ではの「映画のまち」としての重要な顔である。監督や俳優などの映画人、関係者も多数存在 する。このような映画のまちの財産を大切にし、市民から湧き上がってくる小さな映画活動を 行政も積極的に支援し育てていく。市民が主役の、市民参加型の映画づくりである。市民目 線の仕掛けやイベントが身近な存在として多くあるほど、日常の中で市民が映画に接する機 会が増え、肌で感じる本物の「映画のまち北九州」が実現する。目先の一過性の華やかな現 6 象だけにとどまらず、映画のまちづくりには短・中期の構想と現実的な事業計画、持続可能な 体制づくりとマンパワーが要る。今、その覚悟が問われている。 さて、あなたが考える「映画のまち」とはどんなイメージでしょうか。 以下、北九州圏内「映画の顔」を紹介。 1)映画上映館:6シネコン(Tジョイ・リバーウオーク北九州=8、シネプレックス小倉=10、 小倉コロナシネマワールド=10、イオンシネマ戸畑=8、ユナイテッド・シネマなかま 16=16、 シネマサンシャイン下関=8)3 劇場(昭和館=2、前田有楽劇場=1、小倉駅前名画座=2) *数字はスクリーン数 2)映画祭 「北九州市民映画祭」…北九州しねま研究会の主催。2015 年の 5 回目の今回は 11 月 6 日、7 日昭和館で北九州市出身タナダユキ監督を迎えての特集映画祭を開催した。 「東田シネマ」…日本のドキュメンタリー映画を北九州市環境ミュージアムを会場に毎月上 映。昨年 10 月に旗揚げ。11 月は27日~29日、綿井健陽監督作品『イラク~チグリスに浮か ぶ平和』上映。(TEL:093-663-6751)。12 月は 19、20 日『石川文洋を旅する』(大宮浩一監督 作品) 上映時間(開場13:00)①13:30②15:45③18:00 3) 「北九州映画サークル協議会」…映画大好きによる上映会。今年は創立 61 年目。会費 月 900 円で年間 12 作品上映。毎月機関誌『泉』を発行し活動中。 4) 「松永文庫」…戦後の昭和 20 年以降、松永氏が収集した 1 万 2 千点超の貴重な映画 関連の宣伝資料を一般公開展示する門司港にある資料館。 5)北九州フィルムコミッション…全国 140 余のFC団体の草分け的存在。1989 年、広 報室イメージアップ班として発足。映画など誘致で数多くの実績を誇る。 (2015.11.8 アジア共生学会・アジア理解講座資料、会員:中田博己) 7
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