「損益計算書オリジナル・フォーム」で 「収益性」と「安定性」が可視化される! 図表Ⅲ-5の P3 地点は,固定客の売上高で総費用を回収し,固定営業利益の黒字化 を表しているが,固定営業利益は図表Ⅲ-6のような「損益計算書オリジナル・フォー ム」で計算される。横軸には「顧客セグメント」を新規客・固定客・非固定客・離反客 の 4 つに分け,縦軸には「商品セグメント」による商品群を配している(顧客セグメン トと商品セグメントについては次節で詳細を述べる) 。 顧客セグメント別の売上高に売上原価を算入すると,それぞれの売上総利益が算出さ れる。費用はセグメント個別変動費・セグメント個別固定費・セグメント共通固定費の 3 つに分類されている。売上総利益から個別変動費を引くと限界利益,限界利益から個 別固定費を差し引くと貢献利益を求めることができる。そして顧客セグメント別の貢献 利益をみると「どの顧客セグメントが利益に寄与しているのか」,という顧客セグメン トごとの収益性がすぐに分かるのである。 図表Ⅲ-6 固定収益会計 「損益計算書 オリジナル・フォーム」 合計 新規客 非固定客 固定客 離反客 商品A 商品B 商品C 合計 売上高 売上原価 売上総利益 ② セグメント個別変動費 ① 限界利益 ③ セグメント個別固定費 貢献利益 ④ セグメント共通固定費 営業利益 固定営業利益 =①-(②+③+④) ⑤ 固定客の売上総利益(図表Ⅲ-6の①)からセグメント個別変動費の総合計(図表Ⅲ -6の②) ,セグメント個別固定費の総合計(図表Ⅲ-6の③),セグメント共通固定費 の総合計(図表Ⅲ-6の④)を差し引くと,固定営業利益(図表Ⅲ-6の⑤)を求める ことができる。要するに,固定客の粗利からすべての費用を差し引いても,営業利益が プラスの場合は,理想的な経営の「安定性」を示しているのである。 このオリジナル・フォームからみえてくることは,固定客から得られる利益をいか に最大化することができるのか,という示唆である。そのためには既存固定客にたい する収益性の向上だけではなく,固定客の顧客数も増やさなければならない。固定客 が増えれば,固定客のセグメントから得られる収益が上がるからである。さらに将来 の固定客の予備軍として,新規客を 1 社でも多く増やす事も必要となってくる。この 正のサイクルを戦略に落とし込めれば,会社は強くなるのである。 ●5 つの利益 ・売上総利益・・・売上から,商品代金などの仕入原価を引いた金額。 ・限界利益・・・・売上総利益から,売上のためにかかった交通費・会議費・物流費 など,変動的な費用を差し引いた金額。 ・貢献利益・・・・限界利益から,売上のためにかかった営業人件費など,固定的な 費用を差し引いた金額。 ・営業利益(損失)・・・・売上総利益から本社費用なども含めた総費用を差し引い た金額。 ・固定営業利益(損失) ・・固定客だけの売上総利益から,総費用を差し引いた金額。
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