開業形態の検討

大都市中心部での物件選定および開業の注意点は?
都市中心部での開業を検討しています。ビル診療が多いみたいですが、 物件選定の注意
点を教えてください。 また、ビル診療所とする場合、対象患者層を考えて、診療形態はどうし
たらよいでしょうか?
都市中心部での開業は、土地取得費が高いこと、および物件そのものがないという理由でビル診療
が主流になります。
競合も多く、ビル自体の認知度や看板掲出が出来るか、ビル自体の入り口が判り易いか、エレベータ
ー設置がされているか、駐車場の確保等の注意点があります。
また、夜間診療を行なえるようなビルの管理体制や入店他社の業種や営業時間にも注視しましょう。
導入する医療機械によっては、重量があるため、床の構造と耐久性も調査しなければいけません。給
排水設備のチェックや共有部分のトイレもポイントです。
メディカルビルや事務所ビル、雑居ビルによって設備や管理が違います。医療の設備工事やマーケ
ティングの専門家のアドバイスを受けることも必要です。
ビル診療所開業で最も重要なポイントは、テナント料(賃料)です。開業資金のうちで最も大きな割合
を占める保証金は、「 坪単価賃料 × 床面積 」 で算出されるため、テナント料の高低は初期投資
の行方を握っているともいえますが、金額の適正度を測るには、ビルの立地条件や外観、周囲の環境
なども考慮することが必要です。
物件選定の
物件選定の具体的なポイント
具体的なポイント
① 認知度
場所の認知度が高いか否かは、開業後の患者吸引力に大きく左右します。
② 周辺環境
医療提供の場として適切かどうか、利便性と都市開発の方向性も考慮します。調剤薬局との距離
や位置関係も重要になります。
③ 入居中テナントの
入居中テナントの業職種
テナントの業職種
共同ビルに入居中の他テナントの業職種は、ビル自体の集客力、ひいては飛び込み新規患者獲
得率にも影響します。メディカルビルであれば、連携可能性の観点から標榜診療科が重要な要素で
す。
④ 広告上の
広告上の制限
美観保護の観点から、看板の掲出を制限しているビルや地区などもあり、広告戦略策定のうえで
も確認と検討が必要です。
⑤ テナント料
テナント料の適正度
初期投資を含む資金計画上、その規模に見合う金額かを、上記の立地条件と総合して検討しな
ければなりません。
また、都市中心部でのビル診開業とした場合、対象患者層としては、近隣の就業人口と中心部へ出
てくる買い物客が中心となります。その為、勤務時間外の診療時間を検討する必要があります。昼休み
時間帯の診療や、夜間診療を行なう等、就業労働者の行動を推測し、診療形態を決めなくてはいけま
せん。また、中心部は競合医院も多いため、他医院との差別化も必要です。
検査体制や病院との連携による病床の確保、そして他科医院と連携をし、患者様のニーズに対応で
きる地域医療ネットワーク体制の構築が必要です。
地方都市での開業の際に、患者層に関しての注意点は?
また、ビル開業と戸建診療所ではどちらが良いのでしょうか?
地方都市で開業するのを検討しています。どんな点に注意をしたら良いですか? 土地取得がいいの
か、ビル診開業がいいのかを教えてください。
地方都市での開業を計画するにあたっては、マーケティングの要素となる対象患者層と診療圏が都
市部とは違います。
診療スタイルとしては地域密着型となり、幼児から高齢者、事業従事者から主婦層まで、全ての住民
が対象患者になります。また、都市部のように狭い範囲の診療圏ではなく、地方都市近郊の村落の住
民までが対象となるため、認知活動は広範囲に行なう必要があります。
地方都市ほど「かかりつけ医」といった認識が強く、評判が大きな影響力を持ち、成功している診療所
は口コミでの紹介が多い状況です。他科との連携を行い、患者様との生活密着型の診療が求められる
でしょう。
地方都市の規模にもよりますが、基本的には物件取得が主流になると思われます。地方都市の患者
様がビル内の診療所に慣れてないこと、また広範囲からの通院となり、自家用車の利用が大部分と予
想されることから、駐車場を確保した戸建て診療所が有効でしょう。
充分な広さの駐車場確保と遠距離からの患者様への認知度アップを図るため、看板を立てられる敷
地を購入し、物件選定には充分な注意のもと、遠距離の患者様へ判りやすく、通院しやすい場所の選
定がポイントです。主婦層も乗用車での通院が主流となりますので、駐車場の誘導路も配慮が必要で
す。
開業形態の選択肢
自己所有土地なし
自己所有土地なし
① 土地購入 + 自宅共有
② 土地購入 + 施設建築
自己あるいは
自己あるいは家族
あるいは家族・
家族・親戚所有土地あり
親戚所有土地あり
③ 土地所有 + 自宅共有 (事業承継のケースを含む)
④ 土地所有 + 施設建築
自己所有不動産なし
自己所有不動産なし、
なし、購入予定なし
購入予定なし
⑤ 賃借一戸建て
⑥ 賃借ビルテナント (いわゆる「ビル診」)
「一戸建診療所」
一戸建診療所」と「ビル診療所
ビル診療所」
診療所」の比較
一戸建診療所
ビル診療所
(所有地あるいは借地)
建物のデザイン、採用医療機器等の自由
初期投資の抑制
度が高い
集患面で有利(メディカルビル)
建物を担保として開業資金借入が可能
職住分離
多額の初期投資・借入金が必要
確保できる面積が狭い
家庭生活と診療の区分が困難
建物利用の制約
将来の改築費用
駐車場確保が必要
初期投資
建物建築費用 他
敷金(保証金)、内装費用 他
継続負担
税金、保険料、修繕費、借入金返済
賃料、内部修繕費 他
メリット
デメリット