台形 CSG ダムの大規模地震時挙動解析

土木学会第68回年次学術講演会(平成25年9月)
Ⅰ-018
台形 CSG ダムの大規模地震時挙動解析
独立行政法人土木研究所
正会員
○志田孝之、金銅将史、切無沢徹、佐々木隆
1.はじめに
8m
CSG
0.9H
的に進んでいる.台形 CSG ダムは現地発生材を基本的に分級せ
ずに、簡易な施設でセメントと水を混合した CSG(Cemented Sand
H=50m
経済性や環境に配慮した新形式の台形 CSG ダムの建設が本格
1:0.8
1:0.8
L
2H
and Gravel)を堤体材料に用いるダムである。本形式のダムは設計
基礎岩盤
5L
で考慮すべき地震動に対して滑動、転倒、および内部応力の面で
十分な安定性を有するよう設計 1)されており、その手法は概ね確
図-1 台形ダムモデル形状
(基礎岩盤の側方、底面は粘性境界)
立されている.
保護コンクリート
一方で、大規模地震に対する構造物の耐震性能への社会的関心
の高まりから、大規模地震に対するダムの耐震性能照査
2)
の試行
CSG
が始まっている.本報では、台形 CSG ダムの大規模地震時の耐震
性能照査に資するため、線形動的解析により得られる堤体内応力
富配合 CSG
止水・構造用コンクリート
台形 CSG ダムの内部構造を反映したモデル
(堤体部)
図-2
から、大規模地震時に台形 CSG ダムにおいて想定される損傷形態
表-1
等を検討した結果を報告する.
物性値
堤体
物性値
2.検討方法
本検討は、ダム堤体横断面形状を基礎岩盤とともに有限要素で
モデル化し、線形動的解析を行った.解析は台形ダムモデル(図
密度
(kg/m3)
弾性係数
(N/mm2)
ルダムの堤高や CSG の物性は、台形 CSG ダムの設計・施工例 3)を
参考に設定した。また、台形 CSG ダムの内部構造を考慮したモデ
ル(図-2、以下、
「台形ダム詳細モデル」とする.)についても解析
を実施した.
加速度応答スペクトル(gal)
-1)を用い、CSG の物性(表-1)を一様に与えて実施した.モデ
下限加速度応答スペクトル 2)(図-3)に適合するように調整した波
形(図-4、最大水平加速度 341gal)を用いた.
解析結果より、地震時の最大最小主応力の分布を常時(非地震時)
400
300
200
100
0
‐100
‐200
‐300
‐400
400
300
200
100
0
‐100
‐200
‐300
‐400
の応力分布とともに図-5 に示す.地震時応力を見ると、本解析の
条件下での大規模地震時の最大引張応力は、CSG の引張強度を
2,300
2,300
2,300
2,300
2,300
2,000
2,000
4,000
25,000
2,000
減衰定数 5%
照査用下限加速度応答スペクトル
図-3
3.検討結果
①堤体内応力
コンクリート
10
0.01
加速度(gal)
大規模地震に対するダムの耐震性能照査で考慮されている照査用
富配合 CSG
100
加速度(gal)
の際に、震源近傍のダム基礎部で観測された加速度時刻歴波形を、
CSG
1000
大規模地震を想定した入力地震動は、1995 年の兵庫県南部地震
図-4
岩盤
内部構造考慮
均一
0.1 周期(sec)
1
10
照査用下限加速度応答スペクトル 2)
最大水平加速度 341gal
0
1
2
3
4
5 6 7
時間(sec)
8
9
10 11
0
1
2
3
4
5 6 7
時間(sec)
8
9
10 11
入力地震動(上:水平方向、下:鉛直方向)
0.3N/mm2(施工事例での圧縮強度試験で得られた弾性領域強度の 1/71)、以下同じ.)と仮定した場合、その引
張強度を上回る.堤高が高いほど堤体材料として用いる CSG の強度は大きく設定することとなるが、ここで
の検討結果から、地震動の大きさ次第では、上流端部において堤体の損傷が生じる可能性があると考えられる.
また、下流端において局所的ではあるが圧縮応力が大きくなることから、用いる CSG の強度と地震動規模に
キーワード 台形 CSG ダム,耐震性能,大規模地震,FEM 解析
連絡先
〒305-8516
茨城県つくば市南原 1-6 土木研究所水工研究グループ水工構造物チーム
-35-
TEL029-879-6781
な応力の発生する局所には、部分的に
大きい強度の CSG を用いることで損
堤高H
貯水
主応力
50m
有り(0.9H)
σ1
常時
-1.62
0
1.19
-3.32
図-5
-1.0 -3.0
(MPa)
図-6
貯水位と鉛直応力、せん断応力、揚圧
モデル
堤高H
貯水
主応力
台形ダムモデル
50m
有り(0.9H)
σ1
σ3
貯水位が低下した場合、鉛直応力はほ
とんど変化しないが、せん断応力、お
5
10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
堤敷全体の合力 (MN)
貯水位が異なる条件での解析結果
σ1
凡例
σ3
CSG:-0.81
引張
常時
σ1 σ3
1.0 3.0
0.5 1.5
-1.62
示す.
富配合CSG:0.11
富配合CSG:-0.83
コンクリート:0.40
コンクリート:-5.74
CSG:0.14
※CSG:0.10
0
0
CSG:-1.41
-0.5 -1.5
圧縮
水位が高いほど小さくなる.これは、
4
鉛直応力
揚圧力
せん断応力
CSG:0.02
に対する水平力の比)の関係を図-6 に
堤敷全体の滑動に対する安全率は貯
2
3
滑動安全率
台形ダム詳細モデル
50m
有り(0.9H)
力、および堤敷の滑動安全率(粘着力
0、摩擦係数 1.0 と仮定した摩擦抵抗力
1
0
台形ダムモデル解析結果
た解析を実施し、滑動に対する安定性
への影響を検討した.解析結果より、
1
0.9
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
0
-0.5 -1.5
地震時
最大
水位条件(0.9H:H=堤高)を変化させ
0
圧縮
図-1 の台形ダムモデルについて、貯
σ1 σ3
1.0 3.0
1
0.9
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
0.5 1.5
傷が生じないよう対応がなされている.
②滑動に対する安定性と貯水位の影響
凡例
σ3
引張
なお、既設の台形 CSG ダムでは、大き
貯水位(堤高に対する比)
よっては塑性化が生じる可能性がある.
貯水位(堤高に対する比)
土木学会第68回年次学術講演会(平成25年9月)
Ⅰ-018
地震時
最大
-1.0 -3.0
(MPa)
1.19
-3.32
富配合CSG:0.51
コンクリート:3.68
富配合CSG:-1.16
コンクリート:-12.1
図-7 内部構造を考慮した台形ダム詳細モデルの解析結果
(※は堤体内部 CSG と止水・構造用コンクリートの境界部の応力)
よび揚圧力は低減するためである.
③堤体内部構造を考慮した場合の堤体内応力
台形ダム詳細モデル(図-2)を用いた解析の結果(常時および地震時の最大最小主応力の分布)を、台形ダ
ムモデル(図-1)での結果とともに図-7 に示す.
堤体内構造を考慮すれば、堤体内 CSG 部の応力は台形ダムモデルと比較して小さく算出されることがわか
る.ただし、堤体の CSG とコンクリートの変形性の違いにより、止水・構造用コンクリート部と CSG 部の境
界部において応力が集中しやすく、引張応力が生じている.この応力は本検討で考慮した地震動の場合には、
CSG およびコンクリートの強度に対して小さいものの、より大きな地震動を想定した場合、当該箇所への影
響に着目する必要があると考えられる.
4.まとめ
・ 地震時に台形 CSG ダムの堤体内に発生する応力は、地震動の規模によっては CSG の引張強度や圧縮強度
(弾性領域強度)を上回る可能性がある.このため、同形式ダムの耐震性能照査では、必要に応じ CSG
の引張軟化や塑性化を考慮する必要がある.
・ 本研究の解析条件では、台形 CSG ダムの滑動に対する安全率は貯水位が高い場合の方が小さくなった.
・ 堤体内部構造を考慮した場合、堤体内の CSG 部に発生する最大応力は、均一の物性(CSG)とした場合
より小さくなるが、大規模地震時を想定した耐震性能の照査では、堤体内部の CSG と上流側の止水・構
造用コンクリートの境界部への影響に注意する必要がある.
今後は、堤体の損傷過程を考慮する非線形解析を行い、大規模地震時に対する台形 CSG ダムの耐震性能を
照査する手法について検討を継続する.
参考文献
1) 台形 CSG ダム設計・施工・品質管理技術資料,財団法人ダム技術センター,2012.6
2) 三石真也,島本和仁,大規模地震に対するダム耐震性能照査について,ダム技術 No.274,p14,2009.7
3) 台形 CSG ダム等の設計・施工事例,ダム技術 No.216,p59,2004.9
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