地雷の話 ◇はじめに あなたは、地面を踏みしめたとき、命の危険を感じたことはありますか? あなたの友達の中に通学の途中、地面が突然爆発し、足を失った人はいませんか? 日本ではこのような質問をすると、不思議に思う人が多いでしょうね。 あなたは、カンボジアという国を知っていますか? 東南アジアに位置する農業国で、 アンコールワットの遺跡に代表されるクメール文明の発祥地。大変歴史のある国です。 ところがこの半世紀、この国で大変悲しい出来事が相次いで起こりました。長期にわ たる内戦が原因で、飢えと虐殺が起こり、100 万人以上の死者が出たのです。そして、 今でも内戦の爪痕が大きな問題になっているのです。それは、地雷です。 内戦時代に埋められた地雷が今でもたくさん残っているのです。800∼1000 万個の 地雷が今でもカンボジアの大地に埋まっています。そして、その地雷を誤って踏んでし まい、足の切断を余儀なくされた人が 25000 人もいます。 そうした人たちは、もともと貧しい人々です。地雷がたくさん埋まっている危険な土 地は、とても安く手に入れることができるからです。そして、彼らが誤って地雷を踏ん でしまうと、片足を失うなど大きな怪我をして働くことが難しくなります。すると、ま すます貧しくなってしまうという悪循環が起こってしまうのです。 ◇地雷とはどんな兵器か? 地雷は、地上または地中に設置され、人や車両の接近や接触によって爆発し、危害を 加える兵器です。地雷にはいろいろな種類のものがあります。大きく分けると、人を狙っ た対人地雷と戦車などを狙った対車両地雷があります。カンボジアの足を失った人々は、 主に対人地雷の被害者です。対人地雷は、わざと人を殺さない程度に火薬の量が調整さ れています。理由が分かりますか? 1つの理由は、安く製造できるということがあります。もう1つの理由は、戦場では 敵の兵士を1人すぐに殺してしまうよりも、重傷を負わせて動けなくしたほうがいいの です。それは、その兵士が死んでしまうと、兵力が1人減るだけでが、重傷を負わせる と、その人を手当したり、前線よりも後方に負傷兵を送り届ける兵士を確保しなければ ならず、前線での敵兵力を2名以上減らすことができるからです。 また、後々まで傷の治療や後遺症のケアのためにお金や人手が必要になります。この ように敵陣営に二重、三重の負担を強いることを目的にしているのが対人地雷なのです。 (ところで、子どもが地雷を踏んだ場合、少ない火薬でも被害が内臓まで達し、死に至 ることも普通にあるそうです。) ◇地雷被害の実態 ところでみなさんは、カンボジア以外に、今の世界の国々の中で、何カ国くらい対人 地雷が埋められていると思いますか? 世界中に埋められている対人地雷の総数は、推定で1億 1000 万個。世界の3分の1、 約 60 カ国に地雷が設置されていると言われています。そして、対人地雷により死傷す る人の数は年間 2 万 5000 人以上。約 20 分に一人の命、手足、あるいは視力が失われ ています。 対人地雷の被害国 アンゴラ 地雷数 1500 万個 足の切断者数 3 万人 イラク 地雷数 1000 万個 足の切断者数 2 万人 アフガニスタン 地雷数 1000 万個 足の切断者数 2 万人 カンボジア 地雷数 1000 万個 足の切断者数 2 万 5000 人 クロアチア 地雷数 600 万個 足の切断者数不明 その他、エリトリア、エチオピア、モザンビーク、ソマリア、スーダン、ミャン マー、ボスニア・ヘルツェコビナ、ベトナムなどがあげられます。 赤十字国際委員会、UNICEF の資料(1996 年) ◇この問題の解決は難しい 地雷は、戦闘員(兵士)と非戦闘員(民間人)を区別することなく死傷させる兵器で す。赤十字国際委員会は、早くから地雷という兵器の持つ非人道性を訴えてきました。 赤十字が中心になって整備してきた「国際人道法(戦争をルールによって制限しよう とする法律)」の中に、『区別の原則』があり、「戦闘員以外の人を攻撃対象にしては いけない」とはっきり定めています。この『区別の原則』に対人地雷は明らかに違反す るのです。そこで、赤十字だけでなく、世界中の多くの人々が対人地雷の残酷さ、非人 道性を国際世論に呼びかけてきました。そして、1997 年にカナダのオタワで「対人地 雷の使用、貯蔵、生産及び移譲の禁止並びに破棄に関する条約」(オタワ条約)の条約 署名式が行われ、日本をはじめ 121 カ国が署名しました。日本は、2003 年までに、そ れまで所有していた 100 万個の地雷を、訓練用を除いてすべて処分しました。しかし、 アメリカ、中国、ロシアをはじめとする約 50 カ国がまだこの条約に調印しておらず、 今も毎年数万個の対人地雷が新たに埋められています。 ◇地雷除去作業 このような状況の中で、少しづつ地雷の除去作業が進められています。世界中の様々 な NGO、政府の団体、軍によって、1つ1つ手作業で行われています。中には、金属 探知機で感知されないプラスチック製のものや少し傾けただけで爆発する地雷もあり、 大変危険が伴う作業です。たくさんの費用がかかるし、何しろ数が多いので大変なので す。現在の除去作業のペースで世界中から地雷がすべて撤去されるのに 1000 年以上は かかると言われています。 ◇ある日本人の挑戦 地雷のことが少し分かっていただけたでしょうか? これから番組を見ます。カンボジアで地雷問題の解決に取り組んでいる日本人エンジ ニアの話です。その人はどんな方法で地雷問題の解決に取り組んでいると思いますか。 時間があれば予想を出し合ってみてください。
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