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平成23年度 奈良県立大学地域創造学部 一般入学試験(前期日程) 小論文 問題(その 1)
第1問
次の英文を読み、以下の問1と問2に答えなさい。
①American sociologist George Ritzer1) argues that in the contemporary world the
fast-food restaurant is a more appropriate model for the influence of rationalization2).
In 1991, it was estimated that the leading one hundred restaurant chains operated
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110,000 outlets in the US alone ‒ that is, one per 2250 Americans. According to Ritzer,
the success of these chains is based on the four key elements of
McDonaldisation3)
:
● Efficiency: economies of scale, assembly-line production of food and limited menus
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cut costs and facilitate4) the rapid processing of customers.
● Calculability5): every aspect of the food production and consumption process is
measured and evaluated6) on the basis of rational calculation.
(出典)Tony Bilton et al.“Introductory Sociology 4th Edition”
● Predictability7):
(中略) in a rational society people prefer to know what to expect
Palgrave Macmillan, 2002, pp.31-32
in all settings at all times.(中略) ②Enter a McDonald s anywhere in the world and
not only will the menu be the same but you can guarantee that the french fries will
be 9/32s of an inch thick and the hamburgers 3 3/48) inches in diameter.
● Control: McDonald s exercises rigid control over its employees, taking skills
and autonomy9) away from individual workers and investing it in the organisation10)
of production, so that, instead of a chef, there is a food production line. Technology
plays an important part in this: people serving drinks, for example, have no
discretion11) over how much they pour ‒ this is determined by automatic dispensers12).
(出典)Tony Bilton et al. Introductory Sociology 4th Edition
Palgrave Macmillan, 2002, pp.31-32
注
1) George Ritzer:ジョージ・リッツァ(人名) 2) rationalization:合理化
3) McDonaldisation:マクドナルド化
4) facilitate:促進する
5) Calculability:計算可能性
6) evaluate:評価する
7) Predictability:予測可能性
8) 3 3/4:3 と 4 分の 3
9) autonomy:自律性
10) organisation:organaization と同意
11) discretion:自由な裁量
12) automatic dispensers:自動販売機
問1
下線部①を日本語に訳しなさい。
問2
下線部②を日本語に訳しなさい。
平成23年度
奈良県立大学 地域創造学部一般入学試験(前期日程)小論文問題(その2)
第2問 次の文章を読んで下の問に答えなさい。
(A)本という文化、読書という文化の特性は、ゆっくり、ということです。
本のように古い古い文化はそうそうありませんが、決定的な変化を手にするまでこれほどゆ
っくり時間をかけ、変わったら、またこれほど頑固なまでに、その変化をゆっくり確実にして
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きたというような文化もまた、他にあまりありません。
ゆっくりなのは、本がみずから長い時間を耐えられる、そういうちからをもつものだからで
す。古代にのこされた言葉が、いまこのときにも新鮮な言葉でありうる。古くても新しい。そ
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うした形容が矛盾なく、嘘でなく、ためらわず使えるのが、本というメディアです。
本がいつの時代にも、本を手にとる一人一人に証してきたのは、特に目新しいことではあり
ません。たとえ読まれずに忘れられたままになった本であっても、いつか読者に出会うまです
すんでページを閉じたまま、本はどんなに長い時間も待つことができる、ということです。
二十世紀の哲学者ルートウィヒ・ウィトゲンシュタインの伝記のなかに、第一次世界大戦下
(長田弘「本を読む。ゆっくり読む。」『本は、これから』所収。岩波書店(2010))
にあって入隊した若い哲学者ウィトゲンシュタインが自殺を考えるところがでてきます。その
とき戦争に行った若い哲学者を自殺から救ったのは一冊の小さな本だった、と。
前線のガリツィアの小さな町で、哲学者は町の本屋にたった一冊しかなかった本、トルスト
イの『要約福音書』を見つけます。
「その本が彼を捉えた。その本が彼の一種のお守りとなっ
た。彼は行くところどこでもそれを携行し、繰り返し繰り返し読んだので、その全文を暗記す
るまでになった。彼は福音書をもった男として仲間たちに知られるようになった」
。
退却をつづける部隊にあって、そのとき若い哲学者がついていた任務は、独りで行なう任務、
夜間サーチライトの任務でした。ウィトゲンシュタインは後に問われて、
『要約福音書』につ
いて「もしあなたがその本をご存じなければ、それがどのような影響を人間に与えるのか想像
もつかないでしょう」と答えています。
トルストイが『要約福音書』を書いたのは、第一次大戦の前線の町で若い哲学者が手にする
ほぼ三十五年前。スターリンのロシア時代を生き延びた不抜の批評家ヴィクトル・シクロフス
キイの『トルストイ伝』によれば、
『要約福音書』は小さな本ながら、同時代の世にひろく知
られ、トルストイが最晩年の生き方へ出てゆくドアともなったものでした。
(中略)
そして、二十一世紀になってまもないある日、立ち寄った神田神保町の静かな古書店で、わ
たしがなにげなく手にとった一冊の白い本が、『簡易聖書』として出ていた、日本語版の『要
約福音書』でした。一九二二(大正十一)年初版、一九二七(昭和二)年三十五版、高谷道男
訳、春秋社刊。ペーパーナイフが必要なアンカット版で、一ページも切られないままに、ほぼ
八十年の歳月を経た本でした。
(中略)
少なくとも当初五年間に三十五版をかさねたほどの、この『要約福音書』の日本語版の一冊
が、その後に震災、戦争、疎開、空襲、敗戦、占領、戦後、復興、経済成長など転変著しい時
代にもまったく読まれることなく、出来上がりのときの柔らかなつくりそのまま、八十年あま
りの空白をおいて、二十一世紀の古書店の棚にぽそっと置かれているという、本の在りよう。
『要約福音書』という一冊の本を例に確かめたかったことは、こんなふうに一冊の本という
のは、ただ単に中身だけがすべてなのでなく、どの本を、いつ、どこで、誰が、どのようにし
て、という読者一人一人の経験が入ってきて、本という文化、読書という文化はそれぞれのあ
いだに深くかたちづくられてきたのだ、という事実です。
みずからハードウェアにしてソフトウェアであり、ソフトウェアにしてハードウェアである
という、シンプルな在りようこそ、綴じられて、めくられる紙の本のつくってきた、言ってみ
れば、あたりまえの奇跡でした。電子技術の急速な革新とともに語られるようになった電子書
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籍の考え方は、このような綴じられて、めくられる紙の本が育んできた、本という文化、読書
という文化のつくってきた、あたりまえの奇跡とは、考え方が異なります。
しかし、ハードウェアとソフトウェアとを切り離して、日進月歩の革新を追求するハードウ
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ェアの、とどまることのない技術的変容だけを元手としている、電子書籍という新しい考え方
の先には、本という文化、読書という文化がつくってきた、ゆっくり、という時間をどう設計
してゆくかという見通しが、まだどうしようもなく欠落しています。
何かを得れば何かを失うということから言えば、綴じられて、めくられる紙の本の時代にな
(長田弘「本を読む。ゆっくり読む。」『本は、これから』所収。岩波書店(2010))
って失われていった本の在りようというのは、古代の本では普通だった、巻物(スクロール)
としての本の在りようです。本は持ち歩くもの。古代の巻物としての本は、一巻はほぼ五メー
トル、幅はそれを乗せる太ももの長さにひとしい二、三十センチの、今で言うモバイル。
(中略)
それでも、
巻物の本がある日いきなり、綴じられて、めくられる紙の本になったのではなく、
一つの革命にほかならなかったと言われる、綴じられて、めくられる紙の本が、巻物の本にと
ってかわるまでには、実に幾世紀もの年月が必要だったし、巻物の本は印刷術が発明されるま
さにそのときまで重要さを失わなかったと、フランスの歴史家は記しています。
本という文化、読書という文化は、革命的に変化してゆくときにさえも、ゆっくり、としか
変わってゆかない。本をめぐる今日の難問は、わたしたちが、本のもつ、その、ゆっくり、と
いう時間を生きることが、いつのまにかとても難しくなってきているということに尽きるかも
しれません。とっさの時間以上の長い時間が、いまは一日の時間に少なくなっているのです。
ゆっくり読む。ゆっくり声にだして読む。そうして、ゆっくり開かれてゆく時間をたもつ。
どんな本にも可能とは言えなくとも、そうした自分を自由にできる、本との付き合いを一人一
人が日々につくれなければ、新しい本の在りようもまた見えてこない。そう思うのです。
(長田 弘「本を読む。ゆっくり読む。」
『本は、これから』所収。岩波書店(2010)
)
問1 下線部(A)で「本という文化、読書という文化の特性は、ゆっくり、ということです」
とありますが、筆者はなぜ本や読書にまつわる文化はゆっくりとしたものになりうると考える
のでしょうか。本文の内容を参考にしながら、その理由を 100 字から 130 字以内で述べなさ
い。
問2
本文中で、筆者は、本をゆっくりとしか変化しないメディアとしてとらえていますが、
この点についてあなたの考えを述べなさい。また、その考えをふまえたうえで、あなたは、今
後、本というものがどのような在りようになると考えますか。そして、そのような本に対し、
あなたはどのように接していこうと思いますか。以上の点について、500 字から 600 字以内
で論じなさい。