こちら - 京都府立医科大学

式
辞
春の陽気が輝き、桜の開花も間近に感ずるこの良き日に、医学部医学科卒業
生101名、看護学科卒業生85名、大学院医学研究科博士課程修了者19名、
修士課程修了10名、及び保健看護研究科修士課程修了者7名 合計222名
の皆様、ご卒業、誠におめでとうございます。ご父兄の皆様にも、謹んでお祝
いを申し上げます。
また、年度末の大変御多忙の折にも関わらず、御臨席賜りました、
岡西
康博(おかにし
やすひろ)京都府副知事 様
多賀
久雄(たが ひさお)京都府議会議長 様
をはじめ、多くのご来賓の方々に厚く御礼申し上げますと共に、御出席いただ
きました教員、職員及び在学生の皆様にも厚く御礼申し上げます。
さて、昨年は、新しいがん分子標的薬のスクリーニング法を用いて発見され
た、新規の分子標的抗がん剤がわが校で発見され、臨床応用が始まりました。
また、日本電産の永守会長・社長のご寄附により、最先端がん治療研究センタ
ーの設立が決まりました。ここでは、体にやさしい低侵襲の、陽子線によるが
ん治療を核に、最新鋭の放射線治療装置を設置し、がんの局所療法、免疫、抗
体療法などの世界初の集学的な最先端がん治療を行うつもりです。皆さんが臨
床経験を積むにふさわしい、素晴らしい場を提供できるものと思います。
一方で、医療の国際化が急速に進みつつあります。わが大学、病院もこ
の流れに沿ってベトナムなどの医科大学、病院など、多くの機関との学術、臨
床交流協定を結び、今年に国際認証を受けるべく準備を整えているところです。
こうした変化の中で、諸君は卒業し、医師あるいは看護師としての一歩
を踏み出されるわけですが、最先端の知識と技術を身に付けるだけでなく、国
際人としての語学やマナーなども兼ね備えた、知的エリートとして活躍してほ
しいと思います。門出に当たり、鎌倉時代初期の禅僧であり、日本における曹
洞宗の開祖である道元禅師の言葉を伝えたいと思います。道元禅師の言行録で
ある正法眼蔵随聞記(しょうぼうげんぞうずいもんき)には、「無益のことを
行じて徒(いたずら)に時を失うことなかれ」、と書かれています。諸君たち
のように有能な人物が、毎日毎日の貴重な時間を無駄に使うのは、あたかも最
上の財産を失うようなものであると教えています。日々の切磋琢磨を心がけ、
充実した医療人としての人生を歩んでください。
また、「球(たま)は琢磨(たくま)によりて器(き)となる、人は練
磨により仁(じん)となる、何(いずく)の玉か はじめより光有る、誰人(た
れびと)か初心より利なる。必ずみがくべし、すべからく練(ね)るべし。自
ら卑下して学道をゆるくする事なかれ。」と説いています。球は磨(みが)く
ことで初めてひかり、価値が出るのです。人も同じで、自らを磨(みが)き鍛
錬して初めて素晴らしい人になるのです。最初から素晴らしい働きが出来る人
などはいないのです。能力が劣っているなどと自分を卑下して学ぶ努力をおこ
たってはなりません。経験や知識が十分にないからといって、気後れする必要
はなく、素晴らしい医療人となるために、長い間の懸命な努力によって初心を
貫いてください。
諸君たちが選んだ道は、人の命を救うという崇高な理念に裏付けられた
職業です。努力に努力を重ね、粘りと信念、自信をもって仕事に邁進してくだ
さい。頭はいつも全回転、体力の続く限り、一分の隙もみせずに医療に打ち込
んでください。君たちの一生は勉強であり、その時間はあっという間に過ぎ去
ってゆきます。医療人にとって、まさしく「生は短く、術は長し」であります。
仕事に情熱を傾け、貴重な時間を無駄に過ごさないように心がけてください。
学長として、君たちをここに送り出す名誉を今、かみしめています。日本屈
指の歴史を有する京都府立医科大学の卒業生としてその伝統を受け継ぎ、発展
させ、誇りを持ってすばらしい人生を送ってください。
結びに当たり、卒業生の皆さんにはくれぐれも健康に留意され、医師・看護師・
研究者として人のためになる立派な医療人に成長されますことを切に願いま
すとともに、本日御臨席をいただきました皆様の御健勝と御多幸を祈念いたし
まして式辞といたします。本日は、誠におめでとうございます。
平成27年3月6日
京都府立医科大学長
吉川 敏一