誇るべき日本の伝統:その 1:察する心「明察功過」 このコーナーでいつも

誇るべき日本の伝統:その 1:察する心「明察功過」
このコーナーでいつも述べている事ですが、日本は世界で一番人気があります。アニメ、
日本食、自然の美しさ、科学技術、伝統文化等々、数え上げればきりがありません。訪れ
た外国人が日本を離れる前に「日本のどこが一番良かったか」のインタビューでは、たく
さんの人が、
「日本人」と答えています。日本に生まれて日本人の中だけで成長した皆さん
は、
「日本人」のどこがそんなに良いのか理解できないと思います。
今回は、皆さんが気づいていない、そんな私達の長所の一つをわかりやすく説明してみた
いと思います。若い人達が自分自身を知る事が、日本を取り戻す事になり、廿日市の医療
が良くなる事だと思うからです。
今から、1400 年前、聖徳太子は国民に対する道徳的規範として十七条憲法を創りました。
その第一条は、皆さんよく御存知の「和をもって貴しとなす」です。自由とか正義とか幸
福追求とか・・・とか、そんな価値観よりも、一番大切な事は「和」ですよ、「チームワー
ク」を一番大事にしなさいよ、と教えたのです。この考え方は、皆さん、よく御存知と思
いますので今回はパスします。
今回は、十七条憲法、第十一条「明察功過」について説明したいと思います。いい事(功)
も悪いこと(過)も明らかに察しなさい(明察)という意味です。
日本人は昔から、相手にはっきりと物を言いません。断る場合にも相手を傷つけないよう
に「ゴメンナサイ、察して下さい」という言い方をします。「和」が一番大切だからです。
ところが、欧米では、イエス、ノーをはっきり言います。それをしない日本人はダメだと
非難します。日本人自身もそれが欠点だと勘違いし、よけいに引っ込み思案となります。
思い当たる方も多いと思いますが、それは決して欠点ではありません。長所なのです。物
事をはっきり言う欧米では、結果として、ケンカばかりして、あげくは訴訟沙汰となり、
最後は殺し合いです。察する心を優先する日本は、おかげで、犯罪も少なく非常に優しい
社会なのです。
愛の表現においても、
「愛してます!愛してます!」なんて、武田鉄矢以外は繰り返しませ
ん。シラけてしまって、百年の恋も一瞬で醒めてしまいます。やはり心にジーンと響くの
は、山口百恵の「秋桜」とか、さだまさしの「風に立つライオン」のように、情景描写の
みで、聞く者に想像させる手法です。寅さんでさえ、「それを言っちゃーお終めーよ」と、
察する心を一番大切にしているじゃないですか。ところが、欧米では、
「I love you」で味も
素っ気もありません。異民族同士ですから、口で言わなければ解らないからです。日本人
は、
「I love you」を言わずに愛を表現する事で、更に強く、相手の心に愛が響いていく効果
を知っています。
柔道、剣道も同様です。常に相手の動きを読む事が大切とされています。達人同士の対戦
では、ほとんど動きがありません。
「後の先」と言って、相手が動く寸前に、動きの方向を
察して、その逆を攻撃するのです。合気道、空手も、更に、相手の動きに合わせて動き、
相手の力を利用して相手を組み伏せる究極の技です。まさに専守防衛です。話が脱線しま
したが、要するに、小さい頃から常に相手の動きを見つめ、相手の心の動きまでを無条件
で察する訓練をするのです。だからこそ、殺気を敏感に感じとることができるようになり
ます。これこそ、明察功過、災いを避ける極意です。全世界の格闘家達が日本に来て修行
する目的は、この、殺気を感じ取る能力を磨くためなのです。
大工、左官等の職人世界での修行も、師匠はほとんど口では言いません。
「アレをナニして
ナニをせい!」というだけです。手術室でも優秀な器械出しのナースは「アレ」と言えば
すぐに必要な道具が出てきます。洗練されればされるほど、相手の意図を察する癖がつく
のです。日本人にとっては当たり前の習慣なのですが、外国に行くとそうはいきません。
言わないと解らないのです。しかも、言ったことしかしません。いい製品ができる訳があ
りません。
これら察する力(明察功過)は、私達にとってはごく普通の事なのですが、世界から見れ
ば特別なのです。なぜ、このような能力が身についたかと言えば、聖徳太子のおかげ、別
の言い方をすれば、日本の伝統文化のおかげなのです。十七条憲法が施行されて 1400 年、
この心は日本人の体に浸み込んで、私達の生活のあらゆる所に影響し、質を向上させてい
ます。だから、外国人がくると、日本人の強さ、優しさに圧倒されるのです。若い人達に
は、そんな日本人の特徴を、欠点とはとらえず、長所ととらえて、私達はすばらしい伝統
の下に生まれて来たのだという幸運を知って欲しいし、その事に誇りを持って、更に伝統
文化を大切にして欲しいのです。
医療においても、この人は「転倒しそうだな」とか「誤嚥しそうだな」とかを、あらかじ
め察して、予防策を講じておく能力です。また、年寄りの気持ち、家族の気持ちを、推し
量って、どのような治療、介護を行うべきかを、それぞれの部門で、日本人らしく行って
いただければ、必ずや、世界に誇るべき日本の医療システムができると信じています。
くれぐれも、K.Y.
(空気読めない)とならないように、お願いします。