ヒト、モノ、カネが仮想化されてラスト 10 メートルまでくる

人口減少、超高齢化、少子化、領土問題、中東問題、サイバー戦争など、日本を取
り巻くさまざまな社会問題に対して、悲観的な未来を描く人は決して少なくないはず
だ。こうした未来に対して「日本は再びくる」と力強く語るのは、日経 BP 未来研究所
アドバイザーをつとめ、国内はもちろん、アジア各国の政府機関からの招聘を受け、
研究開発戦略や商品開発戦略などのコンサルティングも行っている株式会社盛之
助 代表取締役社長 川口盛之助氏だ。近著『メガトレンド』では、精緻で広範な未来
予測分析を行い、自民党の国家戦略本部「2030 年の日本」プロジェクトにも反映さ
れた。同氏に、2030 年に向けたメガトレンドを聞いた。
ヒト、モノ、カネが仮 想 化 されてラスト 10 メートルまでくる
川口盛之助 氏
1 9 6 1 年 、 兵 庫 県 生 まれ 。 慶 応 義 塾 大 学 工 学 部 卒 、米 イ リ ノ イ 大 学 理 学 部 修 士 課 程 修 了 。 技 術 と
イ ノ ベー シ ョ ン と サ ブ カ ル チ ャ ー を 体 系 化 した 、ユ ニ ー ク な 方 法 論 を 展 開 す る 。そ の 代 表 的 著 作 『 オ タ
ク で 女 の 子 な国 の モ ノづ く り 』 は 、 「 日 経 B i z T e c h 図 書 賞 」 を 受 賞 し 、 海 外 4 か 国 語 に 翻 訳 さ れ る 。
T E D x T o k y o に お け る T o i l e t T a l k は 4 0 万 回 再 生 とい う 異 例 の 反 響 を 得 て おり 、 Y a h o o J a p a n
の 動 画 サ イ ト では 世 界 の 傑 作 プ レ ゼ ン テ ー シ ョン ・ ベ ス ト 5 に 選 ば れ る 。 戦 略 コ ン サ ル テ ィ ン グ フ ァ ー ム
の ア ー サ ー ・ D ・ リ ト ル ・ ジ ャ パ ン で ア ソ シ エ ー ト ・ デ ィ レ ク ター を 務 め た の ち に ( 株 ) 盛 之 助 を 設 立 。 ア ジ
ア 各 国 の 政 府 機 関 か ら の 招 聘 を 受 け 、ブ ラン デ ィ ン グ など の 支 援 を行 う。 2 0 1 4 年 に は マ レ ー シ ア ・ マ
ハ テ ィー ル 元 首 相 の 財 団 A s i a P a c i f i c B ra n d s F o u n d a t i o n か ら B ra n d L a u r e a t e A wa r d を 授 与
さ れ る 。 近 著 『 メガ ト レ ン ド 』 で は 、 精 緻 で 広 範 な未 来 予 測 分 析 を行 い 、自 民 党 の 国 家 戦 略 本 部
「 2 0 3 0 年 の 日 本 」 プ ロ ジ ェ ク ト に も 反 映 され てい る 。
──さまざまな形 で未 来 予 測 分 析 をなさってきたと思 います が、我 々にはい
ったいどのような未 来 が待 ち受 けているのでしょうか?
人 文 科 学 、社 会 科 学 、自 然 科 学 のどの視 点 から見 るかによって変 わると
思 いますが、社 会 科 学 的 には、「つながる世 界 」と表 現 できると思 います。ラ
スト 10 メートルまで、ヒト、モノ、カネを利 用 できる土 管 がやってくるイメージ
です。たとえば、都 内 であれば、自 分 の周 囲 500 メートル以 内 にクルマをシ
ェアできるサービスが複 数 あります。移 動 手 段 をオンデマンドで調 達 できる
のです。土 管 が太 くなって、自 動 車 という蛇 口 が、そこまできているのです。
コンビニも同 じです。離 島 や雪 深 い山 村 に住 んでいれば、食 料 を何 週 間
分 も購 入 して冷 蔵 庫 に保 存 しておかなければなりませんが、コンビニが近 く
にあれば、とりあえずビール 1 本 入 っていれば事 足 ります。どうしても 2 本 目
が飲 みたければ、買 いに行 けばいいのです。コンビニには自 分 のほしい銘
柄 もあるし、賞 味 期 限 管 理 もやってくれています。これは、その地 域 の住 民
全 員 で、ビールを仮 想 化 して持 っている状 態 だといえます。
これが人 になればフリーランスになりますし、工 場 だったらファブになります。
お金 でさえもクラウドファンディングやレンディングになってく ると、商 用 銀 行
というバッファも不 要 になってきます。つまり、ヒト、モノ、カネがすべてクラウ
ドソーシングの対 象 のモジュールになって、オンデマンドに調 達 できる単 位 と
なる。その間 にいた中 間 業 者 はいらなくなるのです。この流 れは止 めようが
ないと思 います。
──人 の働 き方 も変 わっていくということですか。
日 本 だと「非 正 規 雇 用 」といいますが、米 国 だと「フリーエージェント」といっ
て、もっと前 向 きにとらえていますよね。米 国 では、全 就 業 人 口 の 4 人 に 1
人 はすでにフリーエージェントです。なぜなら、仮 想 化 したほうが自 分 の専 門
性 の稼 働 率 が高 まるからです。
通 常 、専 門 性 を上 げると稼 働 率 は下 がります。会 社 にとって、特 殊 な機 能
は年 に数 回 しか必 要 ないでしょう。したがって、専 門 家 は真 っ先 にレイオフさ
れます。しかし、年 に数 回 は必 ず必 要 ですから、専 門 家 を同 業 他 社 でシェア
することになります。そうすれば、その専 門 家 も自 分 の専 門 性 をもっと磨 けま
す。
──ビッグデータの活 用 によって、専 門 家 へのニーズも危 うくなるのではない
でしょうか。
確 かに、機 械 に追 いつかれるかもしれないですね。ただ、その前 にアジア
の安 い労 働 力 に追 いつかれるかもしれませ ん。たとえば、東 大 法 学 部 を出
て重 役 候 補 で入 ってきても、シンガポール大 学 を出 たベトナム人 に勝 てない
かもしれません。社 会 科 学 の分 野 では、シンガポール大 学 の国 際 評 価 ラン
キングは東 大 よりはるかに高 いですからね。
オープンな世 界 では星 一 徹 はちゃぶ台 をひっくり返 せない
「オープン」もキーワードになると思 います。オープンな世 界 では、不 条 理 な
権 威 は生 きていけません。『巨 人 の星 』で星 一 徹 がちゃぶ台 をひっくり返 しま
すよね。年 長 であるとか、親 であるとか、男 だからという理 由 で、なぜか突 然
切 れてちゃぶ台 をひっくり返 しても文 句 をいわれない。
「情 報 の非 対 称 性 」が権 威 の根 源 なのですが、ビッグデータの出 現 でそれ
が崩 れると、権 威 は失 墜 します。たとえば部 長 同 士 で囲 っていた秘 密 の情
報 もなくなり、部 長 の権 威 もなくなるわけです。
そして、このプロジェクトのこのステータスでは A さんがリーダーだけれど、
次 のフェーズでは B さんの方 が専 門 性 が高 いので B さんがリーダーになる、
といったことが起 きるわけです。
こういうと「それは理 屈 にすぎない」という人 がいますが、それはそうではな
い古 いシステムで偉 くなった人 がいるから、本 能 的 に自 己 防 衛 しているだけ
でしょう。
──IT の世 界 では、確 かに情 報 の非 対 称 性 が失 われ、組 織 がフラットにな
っている傾 向 が強 いと思 いますが、他 の分 野 では、世 代 が替 わらない限 り、
こうした変 化 はなかなか起 きないのではないでし ょうか。
団 塊 の世 代 的 なものが決 裁 権 を持 っているかぎり、それは業 界 問 わずあ
ると思 います。もう 1 つは日 本 語 の壁 でしょう。日 本 語 の壁 に守 られている
ので、優 秀 なベトナム人 がやってこない。
しかし、もう少 し AI が発 達 して自 動 翻 訳 が優 秀 になったら、それもなくなる
はずです。そもそも、IT やサイエンスの分 野 では言 語 は無 関 係 です。日 本
は言 語 と無 関 係 な分 野 は強 いですよ。サイエンスもエンジニアもそうですし、
マンガもそうです。21 世 紀 になってからノーベル賞 を取 った数 は、アメリカに
次 いで 2 位 ですから。自 然 科 学 はとても強 いのです。
これから伸 びる分 野 はバイオと脳 。人 間 はどんどん因 数 分 解 される
──自 然 科 学 分 野 で注 目 すべき分 野 はどこでしょうか。
バイオと脳 です。この分 野 は、トランジスタが開 発 された 1950 年 代 と似 て
います。1950 年 代 にトランジスタが開 発 されたことで、その後 、日 本 は大 い
に儲 けることができました。しかし、いまはそれがモジュール化 、デジタル化 し、
中 国 でも組 める時 代 になり、日 本 はその部 品 を作 るしかなくなってしまいま
した。
しかし、バイオと脳 は違 います。バイオ分 野 はいまが萌 芽 期 なので、 iPS
細 胞 のような要 素 技 術 がどんどん出 てきます。すると、それを使 ったトランジ
スタのようなものが出 てきて、これから 50 年 で S 字 カープを描 いて成 長 する
でしょう。
脳 も同 じです。これまで心 理 学 や哲 学 が扱 ってきた分 野 に計 算 科 学 で挑
もうとしているので、ブレイクスルー感 が非 常 に強 い。たとえば、顧 客 の満 足
度 を計 測 できるようになれば、ビジネスの考 え方 そのものが変 わってくるでし
ょう。
ウェアラブルが注 目 されている理 由 もそこにあります。外 部 の情 報 をデジタ
ル化 して内 部 に入 れ、内 部 の情 報 を自 分 で把 握 して自 らの状 態 を把 握 す
るには、ウェアラブルが必 要 だからです。フィジカルもそうですが、心 の健 康
管 理 も含 めて、今 後 、人 間 はどんどん因 数 分 解 されていくでしょう。
川口盛之助氏インタビュー 「世界人口が 100 億人になったら
日本化せざるをえない」
さまざまな社会課題を抱える日本。日本の未来はどうなるのか?前編では、日経
BP 未来研究所アドバイザーの川口盛之助氏に 2030 年までのメガトレンドを聞いた。
社会科学の分野では人の働き方が変化し、自然科学の分野ではバイオと脳が注目
分野だという。後編では、日本のものづくりがどうなっていくのか?また、世界の中で
日本はどのように戦っていくべきかについて話を聞いた。
前 編 :20 30 年 の未 来 はどうなる?ヒト・ モノ・カ ネは 仮 想 化 、人 間 は どんどん 因 数 分
解 される
ものづくりのオープン化 が進 めば小 さい組 織 が救 われる
川口盛之助氏
──これまで日 本 が得 意 としていた製 造 業 の分 野 はどうなるでしょうか。
部 品 がどんどんコモディティ化 すれば、重 要 になるのは、部 品 を組 み合 わ
せて新 しい価 値 を生 み出 すことだけになります。パーツやツール、ライブラリ
がたくさんあって、それを組 み合 わせてモノを作 るレゴのブロックのようになる
わけです。しかも、どんどんショートサイクルになって、小 ロットになっていく。
これはつまり、ロングテールそのものです。
3D プリンタがわかりやいと思 います。3D プリンタはオープン化 された生 産
装 置 です。生 産 技 術 そのものがオープン化 されたわけですから、あとは「何
を作 るか」だけで競 うことになります。
イケアなどもそれに近 いかもしれません。設 計 図 と必 要 最 小 限 の部 品 だけ
が送 られてきて、現 地 で組 んでくださいというわけですね。もしかしたら、部
品 の一 部 は家 庭 や近 くのホームセンターのようなところで現 地 調 達 してくだ
さいとなるかもしれません。その方 が梱 包 も楽 ですし、配 送 も早 い。効 率 が
いいのです。
それがオープンなモノ作 りの世 界 です。なぜオープンかというと、 稼 働 率 が
高 いからです。稼 働 率 や流 動 性 、回 転 率 は、会 社 経 営 の 1 ページ目 にのっ
ている概 念 ですね。
──しかし、そういったモノ作 りの世 界 が到 来 して、人 は幸 せになれるのでし
ょうか。
なれますよ。なぜなら、大 企 業 は 10 台 しか売 れないようなモノは絶 対 に作
らない。しかし、オープンなモノ作 りの世 界 では、年 に 10 台 売 れれば十 分 と
いう 会 社 でもやっ ていけます。製 品 を 組 む 装 置 や材 料 かすぐに手 に入 れば、
あとはアイデアと誰 が組 むかだけですから。
それには、日 本 の大 企 業 が抱 えている膨 大 な特 許 はぜひオープンにすべ
きだと思 います。大 企 業 には、ライバルの開 発 を阻 害 する目 的 のためだけ
に取 得 した不 毛 な防 衛 特 許 が山 ほどあります。そのせいで、アイデアの稼
働 率 が非 常 に悪 いのです。優 れた企 画 書 も死 蔵 文 書 と化 して山 積 みにな
っています。すべてをオープンにして、大 企 業 は 3 割 とかいわないで、1 厘 く
らいのマージンをとればいい。
そうすれば、多 くの人 がロングテールのプロシューマになれます。アイデア
があり、必 要 なリソースがすべてオンデマンドで手 に入 り、お客 さんのリスト
があれば、小 さい組 織 が救 われます。
──ソフトウェアの世 界 で起 きていることが 、現 実 の世 界 で、即 ちハードウェ
アでも起 きるということですね。それでは大 企 業 はどうなるのでしょうか。
大 企 業 はプラットフォーマ―として最 大 公 約 数 的 なところで技 術 を磨 くこと
になります。モノ作 りがオープン化 しても、パーツは必 ず必 要 になりますか
ら。
オープンな世 界 ではレイトスターターほど黄 金 期 は短 い
──中 国 や韓 国 などの新 興 国 の動 向 はどう見 ていますか。
中 国 に関 しては、労 働 人 口 が頭 打 ちになって、今 後 、オーバーヘッドがど
んどん重 くなっていくので、厳 しいのではないかと思 います。韓 国 も苦 しんで
いますね。
そもそも、オープン化 がすすむと、人 も活 発 に動 きますから、これまで 10 年
かかっていたものが、どんどんドッグイヤーになり、コモディティ化 していきま
す。日 本 がアメリカに追 いついて、そのあと韓 国 、中 国 など新 興 国 が成 長 す
ると言 われてきましたが、そ もそもレイトスタ ーターほど黄 金 期 は短 いのです。
早 く追 いついたということは、自 らはもっと早 く追 いつかれることを意 味 してい
るからです。韓 国 も日 本 に対 して比 較 的 容 易 に追 いつける部 分 はもう使 い
果 たしてしまった感 があります。その部 分 は中 国 やアセアンに追 いつかれる
のも時 間 の問 題 です。
あとになるほど、ケーススタディが多 く、ベンチマークをとる手 法 も確 立 して
くるので、まねをするのが容 易 になります。しかもオープンになっているので、
人 も資 本 も簡 単 に動 く。すると、あっという間 に城 郭 はできるのですが、滅 び
るのも早 い。すぐに追 いつかれるのです。
その意 味 では、日 本 は恵 まれていました。明 治 時 代 からコツコツやってき
たので、町 工 場 のような産 業 集 積 を作 れたのです。この蓄 積 は大 きい。ゆっ
くり成 長 できた最 後 の新 興 国 、そして最 後 の先 進 国 が日 本 かもしれませ
ん。
圧 倒 的 に強 いアメリカはこれからもリーダーであり続 ける
──アメリカはどうでしょうか。また、アメリカと日 本 の関 係 はどうでしょう。
アメリカは別 格 です。挑 戦 しようなんて考 えない方 がいいくらい強 い。これ
からもチャンピオンであり続 けると思 います。アメリカは何 でもシステムで解
決 します。日 本 は、ウォークマンやハイブリッドカーのように、ときどきホーム
ランを打 ってアメリカに一 矢 報 いますが、一 矢 報 いることができるのは、日 本
くらいだと思 います。
日 本 は野 球 でいえば長 嶋 タイプです。一 種 の天 才 です。なぜかしらないけ
れどできちゃったと。ただし、論 理 的 に説 明 ができない。なので、職 場 の雰 囲
気 を尊 びますよね。自 由 闊 達 で車 座 になって赤 提 灯 で、と。
これは、養 生 する場 の定 義 だけをしておけば、あとはブラックボックスでい
いという考 え方 です。環 境 だけ確 保 しておけば、キノコが湧 いてくるように優
れた人 やアイデアが自 然 発 生 するという方 式 です。しかし、アメリカはすべて
をベンチマークして分 解 する。したがって、初 回 は負 けても、二 回 目 は絶 対
に負 けないのです。
私 も、アメリカの企 業 をさんざんベンチマークしましたが、ほとんど参 考 にな
りません。IBM になろうとか、GE になろうとか考 えない方 がいい。無 理 です。
日 本 は、長 嶋 のような天 才 肌 の人 をどうやってマネージするかを考 えた方 が
いいと思 います。
サステナブルな世 界 では、世 界 が日 本 化 せざるをえない
──将 来 の日 本 には、暗 い展 望 を持 つ人 が多 いですね。
そんなことはないと思 います。これから、日 本 はきますよ。なぜなら、サステ
ナブルな社 会 は、日 本 的 なものでしか生 き残 れないからです。日 本 は島 国
ですが、世 界 の人 口 が 100 億 人 になったら、地 球 そのものが島 国 みたいな
ものです。限 られたリソースをどう分 け合 っていくかを考 えなければ、世 界 は
もちません。したがって、世 界 は「日 本 化 」していかざるをえません。 日 本 も
グローバル化 するのですが、世 界 も日 本 化 していくのです。
そもそも、これまでに人 口 増 加 を止 めることに成 功 した文 明 は日 本 だけで
す。新 田 開 発 が止 まった江 戸 時 代 の前 半 あたりから、人 口 増 加 は止 まって
います。幕 藩 体 制 で人 の移 動 を止 めて、内 側 のエコシステムだけですべて
をまかなうことで止 めたのです。
──「サステナブル」と言 われはじめたのは、ここ 10 年 くらいですね。
新 興 国 が爆 発 的 な成 長 をはじめた途 端 、これではマズいとなって「サステ
ナブル」という言 葉 が出 てきたのです。文 化 人 類 学 で、閉 鎖 系 の島 嶼 (とう
しょ)の文 化 についての研 究 があります。
そこでは、社 会 の価 値 観 を決 める最 も基 本 となるのは、娘 を嫁 がせる親 が
結 婚 相 手 に求 める条 件 だといいます。若 い女 性 は、その社 会 の未 来 を託
す重 要 な存 在 です。したがって、「娘 をどんな男 性 に嫁 がせたいか」というの
は、その文 明 を知 るうえでとてもよい質 問 なのです。
どこでも共 通 しているのは「お金 持 ち」です。その研 究 でも、その島 でお金
持 ちであることを表 わす「飼 っている山 羊 の数 が多 い家 」という答 えだったそ
うですが、そこには「その事 実 を口 にしない」という条 件 が付 きます。自 分 の
財 産 を自 慢 する家 には絶 対 に嫁 がせたくないという忌 避 感 があるのです。
非 常 に日 本 的 だと思 いませんか。
これは、財 産 を自 慢 するような家 に嫁 がせると、村 が発 散 系 に陥 って、い
ず れ は崩 壊 し てしまうからです。いま、世 界 は完 全 に発 散 系 になっています。
したがって、どこかでは止 まらざるをえない。それが 100 億 人 だといわれてい
ますが、だからこそ、1700 年 代 に人 口 を止 めた日 本 の役 割 は大 きいと思 い
ます。
──3 月 6 日 のセミナーでは、こうした未 来 に向 けて今 、日 本 企 業 が、そして
日 本 企 業 につとめる人 々が何 をすべきかについてお話 いただければと思 い
ます。本 日 はありがとうございました。