訳者まえがき 本書は, による“ ” ! "##$ の訳であ る。すでに時系列分析に関する本は,初期の段階におけるデータの変動の スペクトル分解を用いた分析方法に始まり,% & の有名な本や ' の“ ”(沖本竜義・井上智夫訳『時系列解析』 (上下) ,"##(,シーエーピー出版)など,単変量,多変量のデータの性質に 基づく推定・検定の統計的理論や方法だけでなく,工学,経済学などへの応 用を中心とした分野でも数多く出版されている。最近では経営学,ファイナ ンス,マーケティング・サイエンスなど,いろいろな分野への応用に関する ものも多い。本書で扱っている状態空間モデルを利用した時系列分析は,そ れ自体簡潔なモデルであるが,非常に一般的で数多くのモデルが含まれる。 このモデルが経済学や社会科学の分野での応用に用いられるようになったの は最近である。そして,特に経済学の分野では最近の分析対象と分析方法の 進歩とともに,この状態空間モデルを利用した自由なモデリングの方法が多 くの人々に注目されるようになった。 しかしながら,状態空間モデルを用いて時系列分析を説明した本は少 ないが,なかでも ' “) * + ”(,-.-)などはよく知られており,同じ著者による / “ *+” (和合肇・松田安昌訳『状態空間モデルによる時系列分析入門』 "##0,シー エーピー出版)では,非ガウス型と非線形型のいろいろなモデルを含めてあ る程度詳しくこのモデルを扱っている上級の教科書である。本書は前書に続 いて,統計以外の分野で働く実務家と研究者を読者の対象にして入門的に書 かれた時系列の本である。状態空間モデリングの方法をやさしく説明した点 に特徴があり,このモデルは構造時系列モデルとしても知られている観測さ れない要素()時系列モデルに使われていることから,最新の計量分析 に使用できることが期待できる。 本書を翻訳するきっかけは,訳者がオランダのアムステルダムに 氏を訪ねた折,「最近状態空間を利用した入門レベルの時系列の本を書いた ので,これも前書に続いてぜひ日本の読者向けに出してみては」とすすめら れたことによる。本書は計量経済学や統計学の基礎的な時系列コース用の補 助教科書(参考書)としても役立ち,また本書に使われているデータとモデ ルを使って プログラムを使うと同じ結果を簡単に得ることができること から,計算統計の演習にも補助的に使え,計量経済分析の実習にも最適であ る。本書は第 " 章から第 ( 章で状態空間モデルにおいて要素を , つずつ加 える方法を段階的に説明し,第 $ 章で実際の分析に使えるモデリングに到達 する。そして,回帰モデルとの関係を第 . 章で説明し,第 - 章で多変量モデ ルを,第 ,# 章ではよく知られたボックス1ジェンキンス型のモデルと比較し ている。最後に第 ,, 章で というソフトウェアを用いて実際的なモ デリングを行う方法を説明する。本書の特徴は,このように段階的に状態空 間モデルを構築し,最終的にこのモデルを実際に使えるようにするまでを同 じデータセットを使って,要領よく説明されている点であろう。まだまだ一 般的にはなじみがないが,広範囲の利用分野が可能な状態空間型のモデリン グを利用すれば,複雑現象を容易にモデル化することが可能になり,読者の これからの時系列データを用いた分析の理解に大いに役立つと思われる。 和合 肇 まえがき 本書は,構造時系列モデルとしても知られている観測されない要素() 時系列モデルに使われる状態空間法の入門的な説明である。この本は最初に が状態空間法について学んでいるときに気づき,理解したこと についての個人的なノートを集めたものであった。同僚や友人たちもこれら のノートが役立ち,有用であることがわかったとき,それらを一般に公開し ようと考えた。 は,オランダの 2+ の 34 道路安全 研究所における非常に楽しい共同事業の一部として,この本のプロジェクト について と協力を始めた。 ' (,-.-)および / ("##,)は,時系列分析に関す る大学院課程や上級学部課程に適した上級レベルでの状態空間法のトピッ クを扱っている。他方,初級の時系列分析の本は,観測されない要素モデル の話題をほとんど扱っていない。ほとんどのトピックスは,時系列分析の %1& 法に向けられている。 本書が意図した対象読者は統計以外の分野で働く実務家と研究者である。 彼らは社会科学,数量史,生物学および医学のような分野で日単位の時系列 を使用している。本書では,トレンド(傾向) ,季節,不規則要素のような時 系列中の顕著な特徴の分析に対して段階的アプローチをとっている。予測や 欠測値処理のような実際的問題は,いくらか詳細に扱っている。さらに学部 学生のレベルでは,本書は計量経済学や統計学の基礎的な時系列コース用の 補助教科書(参考書)としても役立つであろう。 著者の , 人 は,本書の出版にあたり,34 道路安全研究 所の同僚と経営陣からの精神面・資金面での援助に対して謝意を表したい。 本書は,34 研究プログラム "##56"##( の一端を担うものである。 また,なかでも %7 に負うところが少なくない。彼の状態空間 法への飽くことのないまた衰えることのない熱意に,大いに触発された。ま た, のあらゆる質問に喜んで答え,状態空間法が提供する多く の弾力的モデルの開発に貢献した。 著者は,本の初期のドラフト段階での肯定的なコメントに対してレフェ リーに感謝する。多くの建設的なコメントによって本書はかなり改善され た。いかなる誤りや抜けている話題もあるとすれば,それは著者だけの責任 である。 は,さらに時系列分析()に対する国際的協力会 員(何人かは前会員)に感謝したい。! +,8+ %), 9&:&, 4 %+,; 3, ')),3 41 ,!+ ;,* , : <: たちの助言によ り,時系列分析についての細部にわたる検討ができ,またこの本の初期のド ラフトに対する彼らの言葉は大きな励ましになった。 は,アムステルダムの 47 の計量経済学部におけ る同僚に,本書にかかわる機会を与えてくれたことを感謝したい。 本書は *= システム(+>::: & ))を用いた 2 ?= で書か れた。われわれは 2 ?= システムをセット・アップする際に, %7 の援助を感謝する。使用したデータと同様に本書で議論された分析を行う ための と !& コードは と からダウンロードすることができる。 目 次 訳者まえがき まえがき 第章 はじめに 第章 ローカル・レベル・モデル " , 確定的レベル ……………………………………………………… ,# " " 確率的レベル ……………………………………………………… ,@ " 5 ローカル・レベル・モデルとノルウェイの事故 ……………… ,. 第章 ローカル線型トレンド・モデル 5 , 確定的レベルと確定的傾き ……………………………………… "" 5 " 確率的レベルと確率的傾き ……………………………………… "0 5 5 確率的レベルと確定的傾き ……………………………………… "$ 5 0 ローカル線型トレンド・モデルとフィンランドの事故 ……… "- 第章 季節要素のあるローカル・レベル・モデル 0 , 確定的レベルと確定的季節要素 ………………………………… 5( 0 " 確率的レベルと確率的季節要素 ………………………………… 0# 0 5 確率的レベルと確定的季節要素 ………………………………… 00 0 0 ローカル・レベルと季節モデルと英国インフレーション …… 0@ 第章 説明変数のあるローカル・レベル・モデル @ , 確定的レベルと説明変数 ………………………………………… @# @ " 確率的レベルと説明変数 ………………………………………… @0 第章 ( , 干渉変数のあるローカル・レベル・モデル 確定的レベルと干渉変数 ………………………………………… @. ( " 第 章 確率的レベルと干渉変数 ………………………………………… (" 英国シートベルト法とインフレーション・モデル $ , 確定的レベルと確定的季節要素 ………………………………… (( $ " 確率的レベルと確率的季節要素 ………………………………… ($ $ 5 確率的レベルと確定的季節要素 ………………………………… $# $ 0 英国インフレーション・モデル ………………………………… $5 第章 単変量状態空間モデルの一般的な取り扱い . , 単変量モデルの状態空間表現A ………………………………… $$ . " 回帰効果を含めるA ……………………………………………… ." . 5 信頼区間 …………………………………………………………… .@ . 0 フィルタリングと予測 …………………………………………… .( . @ 診断テスト ………………………………………………………… -0 . ( 予 測 ……………………………………………………………… ,#" . $ 欠測観測値 ………………………………………………………… ,#. 第章 多変量時系列分析 - , 多変量モデルの状態空間表現 …………………………………… ,,5 - " 回帰効果のある多変量トレンド・モデル ……………………… ,,0 - 5 共通レベルと傾き ………………………………………………… ,,$ - 0 多変量状態空間分析の例 ………………………………………… ,,- 第 章 ,# , 時系列分析に対する状態空間法とボックスジェンキンス法 定常過程と関連する概念 ………………………………………… ,"- ,# , , 定常過程 …………………………………………………… ,5# ,# , " 確率過程 …………………………………………………… ,5# ,# , 5 移動平均過程 ……………………………………………… ,5" ,# , 0 自己回帰過程 ……………………………………………… ,5@ ,# , @ 自己回帰移動平均過程 …………………………………… ,5( ,# " 非定常 8* モデル …………………………………………… ,5$ ,# 5 観測されない要素と 8* …………………………………… ,0# 目 ,# 0 第 章 次 状態空間法 対 8* 法………………………………………… ,0, 実践的な状態空間モデリング ,, , プログラムと ………………………………… ,00 ,, " での状態空間表現A …………………………………… ,0@ ,, 5 回帰効果と干渉効果を含めるA ………………………………… ,0. ,, 0 でのモデル推定A ……………………………………… ,@, ,, 0 , を用いた尤度評価 …………………………… ,@5 ,, 0 " スコア・ベクトル ………………………………………… ,@( ,, 0 5 での尤度の数値最大化………………………………… ,@,, 0 0 ?* アルゴリズム ………………………………………… ,(# ,, 0 @ でのいくつかの例……………………………………… ,(, ,, @ 第 章 ," , 予測,フィルタリング,平滑化A ……………………………… ,(@ おわりに さらなる読み物 …………………………………………………… ,$, 付録 英国ドライバー死傷者数と石油価格 付録 ノルウェイとフィンランドの道路交通事故 付録 英国の前席と後席乗客の死傷者数 付録 英国の物価変動 参考文献 索引
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