産経新聞 27.3.6 【安倍政権考】渋谷区「同性パートナー条例」に「国が分裂する」 自民政務官が鳴ら した警鐘は波紋を広げるか 東京都渋谷区が区内に住む 20 歳以上の同性カップルを「結婚に相当する関係」と認め、証明書を発行 する条例案を提出することを決めた。他の自治体からも同様の動きが出ている。これに対し、政府・自民 党から異議が出ている。 「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し…」としている憲法 24 条に反しかねな いのが理由だ。地方分権のあり方も問われそうだ。 ◆世界に“追随” 渋谷区の桑原敏武区長がこの条例案を発表したのは 2 月 12 日。 「多様性のある社会をつくることが活 力を生む。渋谷区からの発信が国を変えていくかもしれない」と語った。同性同士をパートナーとして証 明する条例案は 3 月区議会に提出する予定で、全国初の試みとなる。 同性カップルがアパートの入居や病院での面会を、家族ではないことを理由に断られるケースがある のを踏まえたという。条例は法的拘束力を持たないが、区は不動産業者や病院などに、証明書をもつ同性 カップルを夫婦と同等に扱うよう求める方針だ。 区がホームページで公表している条例案の概要には参考資料もついており、世界各国の状況を明らか にしている。それによると、パートナーシップ(何らかの夫婦に準じる権利)を認めているのはドイツ、 イタリアなど 25 カ国、同性婚(同性同士の婚姻を認めること)はオランダ、スペインなど 19 カ国が認め ている。世界に“追随”することで条例案の正当性を訴えようとしているのは間違いない。 ◆「憲法違反の自覚は?」 この条例案に異議を唱えたのが、赤池誠章文部科学政務官(自民)だ。 赤池氏は自らのブログで「法や条例は憲法に違反することはできません。その自覚がおありになるの でしょうか。私は地方分権が進みすぎてしまい、国が分裂混乱してしまうことを懸念しております」と問 題点を提起した。 国の制度を無視した地方分権は、ことの次第では「国家分裂」に陥りかねないというわけだ。 外国人への地方参政権付与をめぐる問題でも、憲法 15 条は参政権を「国民固有の権利」としている。 そんな中、一部自治体は外国人の住民投票を認めている。政策判断に日本国籍を持たない外国人の関与が 強くなれば「国家分裂」になりかねない。 ◆「同性婚」は今国会でも話題になっている。 日本を元気にする会の松田公太代表が 2 月 18 日の参院本会議で「憲法 24 条は同性婚を認める上で問 題となると考えるか。なると考える場合は、憲法改正の候補として検討してはいかがか」と質問した。安 倍晋三首相は「現行憲法の下では同性カップルに婚姻の成立を認めることは想定されていない。同性婚を 認めるために憲法改正を検討すべきか否かは、わが国の家庭のあり方の根幹に関わる問題であり、極めて 慎重な検討を要する」と答弁し、同性婚を認めるための憲法改正について慎重姿勢を示した。自民党も、 一部を除いて、日本の家族制度にかかわる問題だとして首相に賛同する意見が多い。 ◆ところで、桑原氏とはどんな人物なのか。 平成 15 年に区助役から初当選し、現在 3 期目。今期限りの引退を決めている。自民、公明両党推薦候 補として区長選を戦ってきたが、自民党からは「聞く耳をもたず独裁だ」(都連幹部)との批判が漏れる。 自民党との距離は広がるばかりで、別の都連幹部は条例案について「成立はあり得ない。成立したら、次 期区長が条例を廃止にする」と突き放す。 ◆他の自治体に波及 もっとも条例案が否決されても、渋谷区に追随しそうな動きはすでに出ており、横浜市の林文子市長 は 2 月 18 日の記者会見で「強い結び付きをもっている同性カップルは少なくない。社会の一員として受け 入れていくのは大事だ」と述べ、支援の形を検討する考えを表明した。世田谷区の保坂展人区長もすでに 独自の支援策の検討を進めている。 (政治部 坂井広志)
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