平成 27 年 10 月 夏期山岳遭難事故発生状況 (平成 27 年7月~8月) 静 地 岡 域 県 部 警 察 地 本 域 部 課 1 概況 平成 27 年夏期(7~8月)の山岳遭難事故は、発生件数 62 件、事故者 68 人(行方不 明1人、重傷9人、軽傷 17 人、無事救出 41 人)で、昨年に引き続き前年を下回った。 (表 1参照) 区分 発生件数 死 亡 行方不明 年別 2 平成27年 62件 平成26年 65件 1人 増 減 -3件 -1人 負 重 傷 1人 +1人 傷 軽 傷 無事救出 遭難者計 9人 17人 41人 68人 14人 13人 43人 71人 -5人 +4人 -2人 -3人 今夏の山岳遭難事故の特徴 平成 27 年夏期に発生した山岳遭難事故の特徴は、次のとおりである。 ○ 発生件数は 62 件で昨年とほぼ同じであったが、8月中旬までは昨年を大きく上回っ ており、その後の天候不順が影響して結果的には減少したものと思われる。 ○ 山系別では、全体の 81 パーセントに当たる 50 件が富士山において発生した。 (表2 参照) ○ 目的別では、富士山への観光登山が 50 件で最多であった。(表3参照) ※ 観光登山とは、必須装備品の欠如や体力不足等高山に登る準備ができていない登山 者を一般的な登山と区別する意味で区分。 ○ 態様別では、転倒が 19 件(31 パーセント)と最も多い。また、次に多いのは発病の 17 件で高山病の他、低体温症などが多い。この多くは、急激な気圧変化や気温の低下、 弾丸登山等が原因によるもので、17 件中 16 件が富士山での発生であった。 (表4参照) ※ 弾丸登山とは、山小屋へ宿泊することなく、夜間に五合目を登り始め、日の出を 山頂で迎える0泊2日の登山形態を指す。 ○ 期間別では、昨年は7月初旬から8月下旬まで、富士山での発生が切れ間なく続いた が、今年は昨年以上に天候不順が続き、登山者が大きく減少したこともあって、8月 21 日以降9月に入るまで、10 日間は発生がなかった。(表5参照) ○ 曜日別では、月曜日が 14 件(22 パーセント)で最も多く、次いで土曜日 13 件(21 パーセント)、日曜日 11 件(18 パーセント)と週末の3日間で 61 パーセントを占めて いる。 (表6参照) ○ パーティー(人員)別では、行方不明者を含む 13 件が単独登山によるもので、複数 に比べ死亡や行方不明に至るリスクが非常に高いことが伺える。 (表7参照) ○ 男女別では、依然として男性の事故者が過半数を占めているが、今夏は女性が 32 人 (47 パーセント)と昨年に比べ 13 パーセントも増加している。(表8参照) ○ 警察署別では、富士山を管轄する富士宮警察署管内で 27 件、御殿場警察署管内で 23 件、南アルプスを管轄する静岡中央警察署管内で 10 件、その他で2件が発生し、山岳 遭難救助隊員等が救助に当たった。 (表9参照) ○ 年齢別では、南アルプスやその他の山では、全国と同様 60 歳以上の登山者が多くを 占めたが、富士山においては 30 人(24 パーセント)と昨年の全国割合 50 パーセント を大きく下回っている。また、富士登山の特徴として家族や職場等のグループによる観 光登山が多く、事故者も 10 歳未満から 75 歳以上まで、全年齢層にわたっている。(表 10 参照) ○ 居住地別では、全事故者のうち 88 パーセントに当たる 60 人が県外居住者・外国人 であり、県内居住者は8人(12 パーセント)であった。特に全国各地から登山者が訪 れる富士山では、天候が悪化した場合や体調不良を感じた場合でも、無理に登山を継続 して遭難するケースが多く見られた。(表 11 参照) 表 1 過去 10 年間の発生状況 区分 発生 死亡 件数 月別 平 成 18 年 18件 平 成 19 年 21件 平 成 20 年 42件 3人 平 成 21 年 41件 5人 平 成 22 年 48件 1人 平 成 23 年 49件 4人 平 成 24 年 49件 1人 平 成 25 年 94件 3人 平 成 26 年 65件 1人 平 成 27 年 62件 行方 不明 1人 2人 1人 1人 負 傷 無事 重傷 軽傷 救出 1人 16人 7人 2人 13人 10人 8人 15人 22人 2人 18人 22人 3人 15人 36人 5人 16人 24人 3人 18人 47人 11人 24人 57人 14人 13人 43人 9人 17人 41人 天候不順と昨年9月の御嶽山噴火や今年5月以降の火山噴火の影響等から、登山者の 減少とともに発生件数も減少したものと思われる。 表2 山系別発生状況 区分 発生 件数 山系別 計 死亡 負 傷 無事 重傷 軽傷 救出 1人 9人 17人 41人 行方 不明 62件 富士宮口 26件 2人 7人 19人 須 走 口 15件 1人 5人 11人 御殿場口 7件 2人 6人 そ の 他 2件 2人 計 50件 5人 14人 36人 3人 3人 3人 富 士 山 南 ア ル プ ス そ の 10件 他 1人 2件 1人 2人 全体の 81 パーセントに当たる 50 件が富士山で発生。 富士山の登山口別の事故傾向 富 士 宮 口 発病 11 件(7)、転倒 9 件、疲労 5 件、その他 1 件 須 転倒 6 件、疲労 4、発病 2 件(0)、道迷い 2 件、その他 1 件 走 口 御 殿 場 口 発病 3 件(1)、転倒 1 件、疲労 1 件、道迷い 1 件、その他 1 件 そ 転倒 1 件、滑落 1 件 の 他 その他は、上記3登山道以外での発生。( )は高山病で内数。 五合目以上の標高が高い地点ほど、高山病による事故者が多い。 表3 目的別 月別 計 登 山 観光登山 業 62件 負 傷 無事 山 系 別 発 生 件 数 重傷 軽傷 救出 富士山 南アルプス その他 1人 9人 17人 41人 50件 10件 2件 12件 1人 区分 発生 件数 務 死亡 行方 不明 4人 3人 5人 1件 49件 4人 14人 36人 49件 1件 1人 9件 2件 1件 富士山での事故者は、いずれも必須装備や体力の欠如、高山に関する知識不足など 3,000 メートル峰を登山する準備や心構えができていない者が多く、一般的な登山と区 別する意味で「観光登山」としている。 表4 態様別発生状況 区分 発生 件数 態様別 計 転 62件 つまずき 4件 スリップ 6件 バランス崩し 倒 死亡 負 傷 無事 山 系 別 発 生 件 数 重傷 軽傷 救出 富士山 南アルプス その他 1人 9人 17人 41人 50件 10件 2件 行方 不明 4人 3件 1件 2人 4人 6件 9件 2人 7人 8件 1件 19件 4人 15人 17件 2件 1件 そ の 他 小 計 高 山 病 9件 9人 8件 低体温症 4件 4人 4件 熱 中 症 2件 2人 2件 心 疾 患 1件 1人 1件 そ の 他 1件 1人 1件 17件 17人 16件 1件 体力不足 10件 10人 8件 2件 関 節 痛 1件 2人 そ の 他 2件 2人 2件 13件 14人 10件 道 地理不案内 迷 そ の 他 い 小 計 1件 1人 1件 2件 3人 2件 3件 4人 3件 転 ・ 滑 落 5件 4人 1人 発 病 小 計 疲 1件 労 小 計 落 石 1件 不 明 1件 そ の 他 3件 1人 1件 2件 1件 3件 1件 1件 1人 1件 1人 6人 3件 昨年の冷夏に引き続き、今年も事故態様では同じような傾向を示しているが、昨年 は8件だった疲労が今年は 13 件、またいずれの態様にも該当しないその他が 3 件と 安易な救助要請が多くなっているように認められる。 表5 期間別発生状況 区分 発生 行方 負 傷 無事 山 系 別 発 生 件 数 死亡 件数 不明 重傷 軽傷 救出 富士山 南アルプス その他 計 62件 1人 9人 17人 41人 50件 10件 2件 月別 7 月 31件 8 月 31件 月別 7/1 7/7 7/14 7/21 7/28 8/4 8/11 8/18 8/25 計 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ 1人 5人 8人 20人 26件 3件 4人 9人 21人 24件 7件 2件 区分 発生 負 傷 行方 無事 山 系 別 発 生 件 数 死亡 件数 不明 重傷 軽傷 救出 富士山 南アルプス その他 62件 1人 9人 17人 41人 50件 10件 2件 7/6 7/13 4件 1人 1人 2人 4件 7/20 11件 1人 1人 3人 8人 10件 1件 7/27 11件 3人 3人 5人 9件 1件 1件 8/3 5件 1人 5人 3件 1件 1件 8/10 10件 4人 6人 8件 2件 8/17 12件 2人 4人 8人 10件 2件 8/24 9件 2人 1人 7人 6件 3件 8/31 今年は台風や大雨など、8月下旬に天候不順が続き、登山者の減少とともに遭難も発 生がなかった。 表6 曜日別発生状況 曜日別発生状況 日 18% 日 23% 土 21% 土 22% 金 10% 内:平成25 内:平成25年 25年 外:平成26 外:平成26年 26年 金 8% 月 18% 木4% 木 6% 水 12% 水 10% 月 22% 火 11% 火 13% 昨年同様、遭難が週末に集中する傾向が見られた。 日 月 火 水 木 金 土 計 26年 27年 15件 11件 12件 14件 7件 8件 8件 6件 4件 4件 5件 6件 14件 13件 65件 62件 表7 パーティー別発生状況 区分 発生 件数 態様別 計 62件 負 傷 無事 山 系 別 発 生 件 数 重傷 軽傷 救出 富士山 南アルプス その他 1人 9人 17人 41人 50件 10件 2件 1人 単 独 13件 2 人 3 死亡 行方 不明 1人 3人 8人 12件 1件 20件 4人 4人 14人 15件 3件 人 4件 1人 5人 4件 4 ~ 9人 13件 5人 10人 10件 3件 10人以上 12件 5人 4人 9件 3件 3人 2件 単独登山が、行方不明等の重大事故に至る割合が高い。 表8 男女別発生状況 区分 り災 人員 態様別 計 68人 負 傷 無事 山 系 別 り 災 人 員 重傷 軽傷 救出 富士山 南アルプス その他 1人 9人 17人 41人 55人 10人 3人 1人 男 性 36人 女 性 32人 死亡 行方 不明 6人 6人 23人 29人 5人 2人 3人 11人 18人 26人 5人 1人 昨年に引き続き、事故者に占める女性の割合が 47 パーセントと前年に比べ 13 パー セント増加し、依然高い水準を示している。特に南アルプスでは、事故者に占める女性 の割合が、昨年の 46 パーセントから 50 パーセントへと増加している。 表9 警察署別発生状況 平 成 27 年 発 死 負 救 状 生 亡 傷 助 年別 平 成 26 年 発 死 負 救 生 亡 傷 助 前 年 対 比 発 死 負 救 生 亡 傷 助 態 署別 別 (件) (人) (人) (人) (件) (人) (人) (人) (件) (人) (人) (人) 合 計 62 1 26 41 65 1 27 43 -3 -1 -2 下 田 大 仁 三 島 伊 東 熱 海 1 3 -1 -3 15 9 6 2 21 -10 -6 -2 沼 津 裾 野 御殿場 23 9 17 14 3 27 10 19 37 16 6 3 12 1 2 1 富 士 富士宮 清 水 静岡中央 10 1 1 8 3 -2 -2 1 1 1 静岡南 藤 枝 焼 津 島 田 2 1 牧之原 菊 川 掛 川 森 磐 田 天 竜 浜松中央 浜松東 浜 北 新 居 細 江 ※ 行方不明は死亡に含む。 富士山を管轄する御殿場及び富士宮の2署で全体の 81 パーセント(50 件)を占めて いる。 表 10 年齢層別発生状況 区分 り災 人員 計 68人 負 傷 無事 山 系 別 り 災 人 員 重傷 軽傷 救出 富士山 南アルプス その他 1人 9人 17人 41人 55人 10人 3人 60歳以上 21人 1人 1 0 歳 未 満 6人 10歳~14歳 2人 15歳~19歳 2人 20歳~24歳 4人 25歳~29歳 態様別 死亡 行方 不明 4人 5人 11人 13人 6人 6人 2人 1人 2人 2人 1人 2人 2人 4人 13人 3人 10人 13人 30歳~34歳 7人 4人 3人 7人 35歳~39歳 3人 3人 2人 40歳~44歳 1人 1人 45歳~49歳 2人 1人 50歳~54歳 6人 3人 55歳~59歳 1人 1人 1人 1人 1人 2人 4人 1人 1人 1人 60歳~64歳 1人 1人 1人 65歳~69歳 10人 70歳~74歳 8人 7 5 歳 以 上 2人 1人 7人 1人 1人 2人 2人 3人 4人 5人 4人 2人 2人 4人 5人 3人 2人 2人 1人 ※ 上下2段の上は総計、下は60歳以上 事故者のうち 60 歳以上の登山者が占める割合は 31 パーセント(21 人)で、全国平 均の 74 パーセントを大きく下回っている。これは若年層事故者の多い富士山を含むた めで、富士山を除けば、本県の中高年事故者割合も全国同様に高く、このことからも富 士山が他の山岳と異なる特徴を持つことが裏付けられている。 特に 20 歳未満の事故が 16.1 パーセントと昨年の全国平均 5.5 パーセントを大きく 上回っている。 表 11 居住地別発生状況 区分 り災 人員 態様別 計 死亡 68人 静 岡 県 8人 東 京 都 8人 神 奈 川 県 負 傷 無事 山 系 別 り 災 人 員 重傷 軽傷 救出 富士山 南アルプス その他 1人 9人 17人 41人 55人 10人 3人 行方 不明 1人 1人 6人 2人 6人 6人 2人 4人 6人 2人 1人 5人 5人 1人 3人 埼 玉 県 5人 1人 1人 3人 2人 千 葉 県 3人 1人 1人 1人 3人 茨 城 県 1人 1人 1人 愛 知 県 8人 1人 7人 7人 岐 阜 県 1人 1人 三 重 県 1人 大 阪 府 5人 1人 京 都 府 1人 1人 奈 良 県 1人 1人 福 岡 県 2人 1人 3人 1人 1人 1人 1人 1人 4人 1人 1人 1人 1人 1人 3人 3人 1人 4人 1人 1人 鹿 児 島 県 3人 アメリカ 4人 メキシコ 1人 ブラジル 1人 イ ン ド 1人 1人 1人 国 インドネシア 1人 1人 1人 中 国 5人 1人 台 湾 韓 小 1人 2人 2人 1人 外 1人 1人 4人 5人 1人 1人 1人 国 1人 1人 1人 計 15人 8人 15人 人 2人 5人 ※ 外国人は居住地でなく国籍とした ○ 事故者総数に占める県外居住者の割合は 88 パーセントと前年よりも7パーセント増加 した。 ○ 事故者総数に占める外国人の割合が 22 パーセントと前年よりも 11 パーセント増加した。
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