日本企業における株主重視のコーポレートガバナンス改革推進の是非 【否定派】2015 年 7 月 10 日 海老沼 紙崎 花島 山本 主張① ROE 重視の経営は日本経済に寄与しない! 主張② 株主は経営に興味がない! 主張③ 従業員主権の方が合理的である! 以上3点より 日本企業における株主重視のコーポレートガバナンス改革推進 に反対します! コーポレートガバナンス = 企業統治 株主や銀行、債権者、取締役、従業員など企業を取り巻くさまざまな ステークホルダー(利害関係者)が企業活動を監視して、 健全かつ効率的な経営を達成するための仕組み。 議論の背景と日本の現状 日本においては長らくステークホルダー全体の利益、特に従業員重視の経営が行われていた。 しかし、日本型コーポレートガバナンスの効率の悪さから、アメリカ型の株主重視の経営が注目 されるようになった。 日本においては、いまだに、従業員重視の経営が主流である。 株主重視の経営になると、どのようなことが起こるのか? 株主重視の経営に合理性はあるのか? 【参考文献】 ・伊丹敬之(2000)『日本型コーポレートガバナンス 従業員主権企業の論理と改革』日本経済新聞社 花崎正晴(2014)『コーポレート・ガバナンス』岩波新書 ・宮川壽夫(2014)「ROE 重視は日本の企業価値を拡大するのか」月刊資本市場 ・日本製粉 HP ・株式会社グンセ HP ・富士通 HP ・株式会社新和 HP 1 主張① ROE重視の経営は、日本経済に寄与しない! 図1 内部留保に反比例し、人件費は低下傾向にあ る ROE重視にすると、企業は人件 費をさらに削減してしまう!! 図2 株式保有割合推移 配当圧力が強まれば、内部留保が 外国人投資家に流出する恐れ 図3 図4 労働市場の流動性が低い状態で 解雇を行うと失業者が増加する!! 自社株買い 配当増加 レバレッジ ROE向上 しかし 企業価値 は貸借対照表の左側の資産によって決まるのであって、 その資産を購入するために企業が調達する負債と資本の比率で決まるのではない。 ROE重視の経営は、企業価値を高めない! 2 主張② 株主は経営に興味がない! HP や IR サイトへの関心の薄さ 積極的に情報を集めよう という意思がない! 図5HP を見たことがあるか 日本製粉 図6 HP を見る頻度 グンゼ株式会社 図8 いちばん重要と考えている情報 すら知らない! 図表7 最も会社に求めること 日本製粉 図9,10 FUJITSU 図10 図9 995.3%が 企業への興味関心、 当事者意識、 出席経験 議決権行使を 株主アンケートより なし なし していない 図表12 株式会社グンゼ 企業について知りたい情報 人材育成、研究開発がおろそかになり パフォーマンスの低下へ 図11 株式会社新和 株主アンケートより 従業員のモチベーションも下がってしまう! 3 主張③ 従業員主権の方が合理的である! Ⅰ 公平性の観点から → 従業員主権の方が合理的! A.貢献の本質性 B.コミットメント 「退出可能性」は ◇企業の競争力の源泉は? → 技術、ノウハウ、信用、etc 従業員より株主の方が高い! → 株主よりも従業員の方が 大きなコミットメントを持っている! → つまり従業員でありカネではない! ◇希少性に関して → カネの方が代替可能性大きい! → 従業員の方が希少性高い! C.リスク負担 従業員 → 非自発的失業というリスク ⇒ 分散投資(労働)不可能 株主 → 分散投資でリスク軽減可能 Ⅱ 効率性の観点から → 従業員主権の方が合理的! A.インセンティブ効率 従業員の利害と企業の利害 株主重視⇒「利害の不一致」 従業員重視⇒「利害の一致」 利害の一致により、 従業員の企業活動への 参加意欲が高まる! B.情報効率 企業の意思決定に必要な情報の持ち主は? → 従業員! → そもそも、従業員主権の方が 情報効率がいい! Ⅲ そもそも従業員は「見えざる出資者」である! 年功序列型賃金体系 若年時 → 自分の生産性 > 賃金 若年時の過小支払い分は企業の内部留保として蓄積され、その資金が投資に回される! ⇒ 従業員は「見えざる出資者」である つまり従業員は資本の実質的拠出者として株主に近い性格を有している! 公平性、効率性の観点から、従業員重視の方が合理的である! さらに、従業員は資本の実質的拠出者である! 以上3点より、従業員主権の経済合理性は非常に高いのである!!! 4
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