1 □ 現職教育 現職教育テーマ 心を大切にした言語活動の在り方による自尊感情の育成 □ テーマ設定について 1 今日的課題から 確かな学力,豊かな人間性,健やかな体といった知・徳・体のバランスのとれた力である 「生きる力」をより一層はぐくむことを目指して,新学習指導要領が全面実施となって3年 目の今,「知識・技能」を活用して,課題の解決に必要な「思考力・判断力・表現力等」の 育成に向け,言語活動の充実を図った授業改善が求められている。平成 20 年1月の中央教 育審議会答申においては「言語は,知的活動(論理や思考)だけではなく,・・・コミュニ ケーションや感性・情緒の基盤である。」と示されており,豊かな心を育むうえでも大切な ものである。この言語の役割を踏まえ,言語活動の在り方を研究することを通して,子ども たちの心を育てていくことができるのではないかと考え,テーマを設定した。 2 本校の研究の歩みから 平成 23 年度は,「子どもの規範意識の醸成」や「人権・同和教育の一層の充実」が課題と なり,平成 23 年度・24 年度の 2 年間,テーマを「心の教育(人権・同和教育)を核とした 協働研修の充実 」と設定して,課題解決に向けて,共通理解を図りながら,実践を積んだ。 学年別人権・同和教育目標や年間計画を見直し,各学年団ごとに授業研究を全体に公開し, 全体討議をして,成果と課題を明らかにした。公開していない授業については,冊子にまと めて,情報交換をする場をもった。このことは,低学年のうちから系統立てて,心の教育を 推進していこうという共通理解・共通実践につながり,協働体制を進めることができたと考 える。 平成 24 年度は,心の教育を一歩進めるために,自尊感情の育成に焦点を当て,サブテー マを「心を大切にした言語活動の在り方による自尊感情の育成」とした。安心感のある学級 づくりをもとに,ペアやグループでの活動を積極的に取り入れて,交流を大切にした授業づ くりに取り組んだ。子どもたちどうしの言葉のやりとりだけでなく,教師が子どもにかける 言葉をこれまで以上に大切にし,自尊感情を高める言葉について考え,意識して実践するよ うに努めた。 また,授業以外でも委員会活動や異学年交流を中心に活動を工夫したり,校内人権週間の 活動を充実させたりして,自尊感情を高めることに取り組んできた。一方,積極的に情報を 発信して家庭や地域との連携を進めた。 しかし,教職員アンケートをみると「心を大切にした言語活動」や「自尊感情」のとらえ 方が十分に共通理解できていたとはいえない。あわせて,子どもの変容や自尊感情の高まっ た状態についてどのように把握するかといった評価についての研究も深まっていない。 そこで本年度もテーマを踏襲して,心の教育についての研究を深めていく必要があると考 えた。今後,平成 27 年度の全国人権・同和教育研究発表会での発表もふまえ,教職員の協 働体制を一層強くして,実践・研究を進めていきたいと考える。 3 本校の児童の実態から 学校生活アンケート(昨年12月実施)によると,自尊感情にかかわる項目の一つである 「自分にはよいところがある」に「よくあてはまる」「あてはまる」と肯定的に答えた児童 は1年88.7%,2年94.5%,3年93.6%,4年85.4%,5年95.1%, 6年91.2%で,昨年度(4年87。4%,5年78.3%,6年67.7%)と比較す るとよい傾向がみられる。「みんなで何かをするのは楽しい」といった協同にかかわる項目 はどの学年も約9割と高く,学級や異学年の活動などの取組の成果ととらえられる。また, コミュニケーションの基本である「自分からあいさつができている」をみてみると,肯定的 に答えた児童はどの学年も約8割(昨年約7割)とややよくなっているが,「よくあてはま る」と答える児童が学年が進むほどに減り,高学年になると 4 割と低くなっているのが課題 である。学校と家庭,地域と連携を大切にしながら心を育てていくことが必要である。 また,学力の面においては,県学習状況調査の結果を全体的にみると,算数では伸びがみ られたが国語では「言語についての知識・理解・技能」は県平均をやや上回るが,「話す・ 聞 く」「 書く 」「読 む 」 の観 点 で は ,や や 下回 っ た 。言 語 の 能 力が 不 足し て い るこ とに よ る 他教科への影響もみられ,要点をまとめながら聞いたり,目的に応じて読んだり,それらを 活用して自分の考えをもち記述したり,理由や例を挙げて話したりといった力をつけていく ことが必要である。更に,学力の二極化の解消が学校の課題となっており,一人ひとりをみ ると自尊感情が低い子どもがいる。どの子も楽しく分かる授業といった視点から,これまで の言語活動の在り方を見直し,工夫をしていくことで子どもたちの自尊感情を高めていきた い。 -1- □ 研究仮説について 研究仮説 ① 言語活動を工夫していくことは,授業改善につながり,子どもたちの学習意欲を 高め,分かる・できる学習につながり,自尊感情を高めることができるだろう。 (新) 今,言われている言語活動と本校の目指す子ども像から 言語は 「 生きる力」 「確かな学力」 「 思考力・判断力,表現力 」 ・ 知的活動(論理や思考)の基盤 ・ コミュニケーションや感性・情緒の基盤 豊かな心を育むうえでも 言語に関する能力を高めていくことが重要 ↓ 言語活動の充実 各教科を貫く改善の視点として位置づけられた 各教科の内容の改善へ 各教科の指導のねらいを十分実現するうえで、 言語活動の充実を図った授業改善が大切 以上 H 22.12 文科省 「言語活動の充実に関する指導事例集」 言語活動を取り入れた授業改善の基本の流れ ① 学習課題をはっきりとつかみ,見通しをもつ。 ② 自分の考えをノートに書く。 ③ それを基に友だちと話し合う。(考え合う・高め合う) ④ 自己評価・相互評価をする。 ×手を挙げる子ども優先の授業 人の話を聞いたり,自分の意見を言ったりして,聞きながら自分の考えを練り上 げる。その考えを相手に伝えて協同して何かをつくり上げる。 考える子 (自主) 本校の求める子ども像と関連 助け合う子 感じとる子 (共生) (感性) やりぬく子 (忍耐) 本校の子どもや教師の実態と言語活動の関連から 二極化にみる子どもの姿から 自分に自信がもてない子 分からない,できないと感じている。 知識や技能があっても語れない。活用できない。 思考力・判断力,表現力が足りない。 自分を大切に思えない子 友だちを大切にしない子 思っても,実践力に結びつかない。 互いに伸びよう,高めようとしていない子 教師の姿から 研究授業からみえたこと・ステップアップしたいことは ・ 子どもたちの話し合いが伝え合うことだけになっていないか。 ・ 子どもたちが見通しをもった授業になっているか。 今していることは 何のために 何をめざしているのか ・ どの子にも分かるものであったか。 ・ 学習形態は一人一人にあったものか。 ・ 子どもたちが手にする具体物は効果的であるか。 ・ 教育機器・図書など環境作りは効果的であるか。 ↓ 大切にしたいこと ・ 学習意欲・学力の向上 ・ 言語の力をつける ・ 安心感のある教室の中で高め合うこと そのために 教師の指導力を高める 授業改善の必要性 特に交流のさせ方 自尊感情の育成に向けての実践研究 -2- 研究仮説 ② (昨年度から) 安心感のある学級づくりをもとに,心を大切にした言語活動を充実した授業を することにより,自尊感情が高まるだろう。 心を大切にした言語活動と人権・同和教育との関連から 人権の共存の考えを基盤に,「自分の大切さと共に他人の大切さを認めること」ができるとい う人権感覚を教師も子どもも身につけたいという考えから,次の 3 点を言語活動の在り方を工夫 していくうえでの考え方の基本とする。 ① 相手の立場に立って,気持ちを想像しながら聞く力 ② 伝えたいことを的確に伝えることができるコミュニケーションの技能 ③ 一方的に主張するのではなく,相手の立場や気持ちを考えながら主張する,非攻 撃的主張ができること。 (人権教育の指導方法等の在り方について H 20 人権教育の指導方法に関する調査研究会議 第 3 次とりまとめ) 参考 話す・聞くことから 「だれかと言葉を介してかかわりたい」という気持ち 人とのかかわりのあたたかさを十分に味わい,また味わいたいという気持ちを育んでいく ・・・人権・同和教育の視点 あたたかな聞き方 ・・・本気で聞く 心(で)を聞く やさしい話し方 ・・・相手に分かるように話す やさしく話す 教室というコミュニティーの場・・・子どもどうし、教師も →人の話がきちんと聞けて,あたたかな聞き方やさしい話し方ができる教室 ・・・ 人権・同和教育の視点 ↓ 自尊感情の高まり 書くこと 書くことにより自分と向き合うことができる。 ・・・ 人権・同和教育の視点 「自分で考えて,ここまではできたよ。」 授業の中で,自分の考えを書く・友だちと交流した後に書く,振り返って書く。 行事・日常の場で自分の思いを書く。 ↓ 自尊感情の高まり 交流する 「そこまでは,わたしもそう思っているけれど,そこから先は少し違うよ。」 「○○さんの~な考えはすばらしいな。」 よさや違いを認め合う 「みんなで考えると,こんなことまで分かった。」 ↓ 自己肯定感・達成感 ↓ 自尊感情の高まり -3- 考え合う・ 高めあう・練り上げる 協同してつくる ・・・ 人権・同和教育の視点 研究仮説 ③ (昨年度から) 委員会活動や異学年交流を中心に活動内容を工夫したり,積極的に情報を 発信して家庭や地域との連携を進めたりすることで,自尊感情を高めることが できるだろう。 授業で学んだことや耕した心が他でも生きる・・・実践力との関連から 授業と授業以外の学校生活との結びつきによる効果 ・人権(ハートフル)委員会や児童委員会による校内啓発 (あいさつ運動 ) ・ペア活動による異学年交流の充実 (名刺交換・ふれあい給食・ペア読書・運動会・プール開きなど) ・言語環境の整備(心を耕す読書活動・調べ学習のための準備,校内掲示による啓発) 委員会活動でみんなの役に立つ活動をしようという意欲とその実践 異学年活交流で自分は大切にされているという感情や年下の友だちを思いやる心とその実践 コミュニケーションの基本であるあいさつの重要性の理解とその実践 ↓ 評価(自己評価・相互評価・教師による評価)) ↓ 自尊感情の高まり 学校と家庭や地域との連携による効果 学年だより,学校だより,読書だより,学校ホームページを活用した保護者啓発 学校の取組や子どもの様子を伝えたり,家庭や地域の意見を聴いたりする。 理解・協力を得ながら教育活動を進めることによる子どもへの効果。 ともに子どもの成長を願う。 家庭や地域の中で大事にされ,守られているという感情。 学校が好き,家族が好き,地域が好きという感情。 家庭での自分の役割が分かる。 地域のために自分ができることを考える。 ↓ 自尊感情の高まり -4- □ 研究内容と方法 仮説① 授業の中で言語活動をどのように工夫したら,子どもたちの学習意欲が高まり,どのよう に力がついていくかを研究実践していく。 ・ ・ ・ 授業で自分の考えを書いたり,紹介したり,話し合いをしたりする活動を大切にする 学習形態や交流のもち方を工夫し,考えを高め合うことをねらう。 ユニバーサルデザインの考え方を取り入れ,支援や板書・発問の仕方を考える。 仮説② 学級づくりをもとに,言語活動をどのように工夫したら、自尊感情が高まっていくかを研究 実践していく。 ・ ・ ・ 自尊感情を高めるための効果的な声掛けや評価の仕方を実践する。 あたたかな聞き方,やさしい話し方ができるよう話型を子どもたちと考える。 グループワークトレーニング(話しにくい子どもたちの心を開く楽しい活動) 仮説③ ・ ・ ・ ・ 校務分掌担当中心に協力のもと実践していく。 人権(ハートフル)委員会による校内啓発 ペア活動による異学年交流の充実 言語環境の整備(心を耕す読書活動・調べ学習のための準備,校内掲示による啓発) 学年だより,学校だより,読書だより,学校ホームページを活用した保護者啓発 (その他) ・ 現教の時間は,仮説①と②に重点を置く。まとめには仮説③も入れる・ ・ 各学年1回,研究授業をし,全体で討議する。研究授業に向けて日頃の実践を積み重ねる。 授業者や提案者・討議の司会・記録は学年内で分担する。学年部会を開き,事前研修を行う。 授業改善の視点とその活用による授業討議を行う。 討議後は,研究授業での実践を継続したり,他の授業に生かす。 ・ 全体会の主な内容 1 学期 児童理解・生徒指導について 学級づくりの工夫の情報交換 研究授業の討議のポイントについて 自尊感情の評価の仕方について 2 学期 研究授業 ( 児童理解も討議におりまぜて ) 3 学期 まとめ 学校評価 全体会の内容など,細かい計画は,月計画で知らせる。 ・ 三部会はつくらない。 現教の日やその他の日の放課後も,時間的にとりにくいため,現教推進委員会→全体会→ 学年部会→全体会へと話し合いを進めていくことを基本とする。 -5- □ 〈 研究の基本構想 目指す子ども像 〉 考える子 (自主) 〈 基本方針 助け合う子 (共生) 感じとる子 (感性) やりぬく子 (忍耐) 〉 学校教育活動全体を通じた人権教育の推進 ・全職員の人権感覚の高揚・共通理解と協働 知 徳 体 確かな学力の確立と一ひとり 人権感覚を高め,自分を大切 の 能 力 や 個 性 ・ 創 造 性 を 伸 ば す にし,友だちのよさをを認め, 工夫 高め合う子どもの育成 健康でたくましい体の育成 子どもの人間力を高める (知・徳・体のバランスのとれた教育の推進) 現職教育テーマ ~心を大切にした言語活動の在り方による自尊感情の育成~ 心を大切にした言語活動の工夫 授業改善による 分かる・できる授業 話すこと・聞くこと あたたかな聞き方・・・本気で聞く 心で聞く 心を聞く やさしい話し方 ・・・ 相手に分かるように話す・相手の気持ちを考えながら主張する 書くこと 授業の中で 見通しをもち,自分の考えを書く。 友だちと交流する前や後に書く。 振り返って書く。 行事や日常の場で自分の思いを書く。 交流の工夫 人の話を聞いたり, 自分の考えを言ったり,聞きながら自分の考えを練り上げる。 協同して何かを作り上げる。 言語環境の充実 読書活動の充実・家庭啓発 基礎・基本の定着 朝活動・家庭学習・月末テスト・マイスタディ 教室というコミュニティの場(子どもどうし・教師も) 人の話がきちんと聞ける教室 安心感のある学級づくり 委員会活動・異学年交流活動の工夫 家庭・地域との連携 自尊感情の高まり -6-
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