安全の原点~指差呼称で確認~

出光タンカー株式会社
三等機関士
櫟本 大希
安全の原点~指差呼称で確認~
私たち船員は、孤立無援の海の上で生活し、仕事をしています。動揺するなかで何百
kg もの重量物を移動させて取り付けたり、高電圧の電気配線を修理したり、蒸気配管
の取り付け等々、一つ間違えば大怪我に至る作業も多々あります。当然手当てをする医
者も救急車もいません。陸上の人間にとってはなんて危険な仕事なのだろうかと感じる
方も多いと思います。そして、私たち船員も同様にそう思い乗船しています。しかし、
長期間生活し仕事をしていく間に、その環境に慣れ、生活に慣れ、仕事に慣れていくう
ちにその“危険”にも慣れてしまうのです。その“慣れ”により危機感が薄れ、ミスに
繋がり、最悪の場合には事故に至ってしまいます。
以前に読んだ記事よると、船内作業での事故やミスを起こした人の割合は新人よりも
ある程度経験年数があるものに多く、かつ、原因の大半が知識不足、技量不足や機器の
不良などでなく、規則や手順の逸脱、確認不足といったものでした。つまり慣れによる
ミスがほとんどだと言えます。
私も今回の乗船で、バルブの開閉確認忘れなどがあり、初乗船時のような初歩的ミス
を何度も起こしてしまいました。今回のミスと初乗船時の頃のミスの原因を比較してみ
ると、初乗船のころは明らかに作業の不慣れが原因によるミスでした。しかし、今回の
ミスは各作業が流れ作業となり確認を怠ったことによるミスが大半でした。つまり慣れ
による確認不足が原因でのミスが大半だったと言えます。
そこで私は“慣れ”によるミスを減らしたいと考え、まずは安全の原点である指差呼
称から始めようと考えました。バルブの開閉やスイッチの切り替え後では、すぐに立ち
去らず、一呼吸おいて、軽く指を差して“ヨシ”と言い確認してからその場を去るよう
に心掛けました。すると、時間は多少掛かりますが、誤操作や確認忘れが無くなりまし
た。更に、一呼吸置くことで情報が整理され、次の操作やその操作ライン上の状況を考
慮する余裕が出来て、バルブ操作ひとつとっても、あそこのレベルはどうだ?スイッチ
はAUTOに切り替えたか?などを思い起こすことが出来るようになり、安全意識を更
に高めることが出来ました。
このように、ごくごく簡単なことでミスは減らすことが可能であり、安全意識を高め、
さらに先のことや、関連することを思い起こすことで、安全の先取りまですることが可
能です。船内での仕事は忙しく、速さを求められることも多々ありますが、私は、今一
度原点に立ち返って、作業では指差呼称でひとつひとつ確認することを常に心掛けたい
と考えています。
さあみんなで Touch and call
“Let’s go for zero accident. OK!”
以上