12/4 ジャーナリズム研究会 コミュニティネットワークと社会 ~大ナゴヤ大学から社会を考える~ M1 内山 裕幾 あなたが持っている「コミュニティ」または「ネットワーク」で 思いつくものは何ですか? 各人が持つ様々なコミュニティ 家族、学校、自治体(地域コミュニティ)、サークル、部活、 会社etc・・・ ⇒各人は様々なコミュニティを持ち、その中で生きている。 コミュニティを持たないと人間は生きていけない。 近所の人と親しくしていますか? 自治体の活動に参加していますか? 現代のコミュニティに対する吉見俊哉の知見① *NHK放送文化研究所が1973年から5年おきに実施した「日本人の意 識調査」を素材に分析。 血縁、地縁(近隣)、職場の3つにおいて人々が全面的な付き合いと 部分的な付き合いのどちらを志向するかの調査を分析。 ↓ 70年代後半から一貫して全面的な付き合いへの志向が弱体化。 職場において「何かにつけて相談し、助け合う」関係の支持は 73年⇒59% 93年⇒38% (団塊の世代を境に「濃い」関係を忌避する傾向) ⇒密度の濃い、全人格的な付き合いが厭われるようになり、家族、会社、 地域の結合力が弱まっていった。 『ポスト戦後社会』 岩波新書、2009年より 現代のコミュニティに対する吉見俊哉の知見② 電話機の位置からみる家族の溶解 「家族の共同性が営まれるべき場としての家庭は、物理的には閉じてい ても電子的には広域的なネットワークの端末群を構成していく。」P98 共同体の崩壊を象徴する事件 ①80年代末の宮崎勤の幼女連続殺人事件⇒ 近隣の伝統的な結びつきがなく、コミュニケートする人間が祖父のみ。 「醒めない夢を見て、その夢の中でやったような気がする」 ②神戸児童連続殺傷事件⇒ 「他者がいて、自分とは異なる他者たちの関係性において社会が存在し ているという感覚そのものの喪失」 『不可能性の時代』、大澤真幸、岩波書店、 2008 ⇒他者との関係が希薄になり、コミュニケーション不全となる若者の増加。 ・NEET問題 NEET問題の実際 若者自立塾 杉浦さんの話 杉浦陽之助氏 NPO法人ICDS理事。合宿形式で引きこもりの若者を社会復帰させる 活動を行っている。 若者自立塾NEETの若者を支援する事業 ⇒ 今回の事業仕分けで廃止となる。 東浩紀の時代認識 東によれば現代は ソ連の崩壊による「右翼と左翼の対立」の終焉と、「高度経済成長」「消 費社会」という「大きな物語」の終焉により、社会の細分化が進行してい る時代。 その事例としてあげられるのが「オタク」という存在。オタクは自分の趣 味を追求し、同じ趣向を持った人間で群れる。ミクシーなどによりその 傾向は促進され、いわゆるオフ会などが頻繁に催されるようになった。 『動物化するポストモダン オタクから見た日本社会』2001 講談社現代新書 *宮台真司の「島宇宙化」理論。 人は匿名の高い集団ではなく、内輪の気心の知れた人たちで、コードを 共有したコミュニケーションしか望まなくなった。 コミュニティから見えるものは・・・ 誰もがいくつかのサークルを持ち、その中で「自分」というものを規定 している。 コミュニティのあり方を辿ることにより、時代の一側面が見える。 今回取り上げる題材 ⇒大ナゴヤ大学、反貧困ネットワーク 反貧困ネットワーク 湯浅誠の主張 ホームレスが家を借りることが出来ないのは、多くの場合が連帯保証人を探し 出すことが出来ないため。 ⇒湯浅の活動母体「もやい」が連帯保証人となると、問題はほぼ解決。 湯浅は、問題の本質は、連帯保証人一人見つけることが出来ないその「人間関 係の貧しさ」にあると分析。路上にいた時は助け合い、融通し合って他者と交流 する機会があった高齢者が、アパートに入ったために誰とも話さなくなり、引きこ もりになってしまったという事例をあげ、「居場所づくり」にも力をいれ、「溜め」を 作る努力を行う。 「人間関係の貧困も貧困問題である。」と打ち出す。 ふと入って雑談が出来る喫茶店などを、居場所として設置している。 派遣村という社会問題 11月29日付の毎日新聞3面「派遣村 繰り返すな」 30日。「貧困・困窮支援チーム」(湯浅誠内閣府参与)が 立案したワンストップ・サービスの実施。 派遣村⇒年を越せないホームレスなどが、日比谷に開設。 一人で寂しい人間を集め、政治的な行動も起こす。 ⇒「貧困」という共通した要素を持つ人間が、社会で問題に なる程に増加したということ。 大ナゴヤ大学・・・シブヤ大学・・・ 活動の一番初めは東京の「シブヤ大学」。 シブヤ大学は「街全体がキャンパスというコンセプトで学校を作るとした らどんな感じになるだろう?」という考えからスタートし、2006年に開校。 「新しい学びの場」として、これまでのべ1万人の授業参加者を数え、運 動は全国へ広がりつつある。 大ナゴヤ大学はそのナゴヤ版で、2009年の9月に開校。 学生は約800人。 ⇒資料1(パンフレット) 学長インタビュー① 大ナゴヤ大学に関して 加藤慎康さん 1972年生まれ。実家は名古屋市中川区で床屋。 成蹊大学からリンナイへ入社。営業企画から物流改善、マーケティン グ、商品企画などを体験。 湯沸し器事故対策本部を経験し、「モノづくりと人の生き方に関わり たい」と 一念発起し起業を決意。多くの学びの場を見る中でシブヤ 大学を知り強い魅力と可能性を感じ、ナゴヤでの開校プロジェクトの 代表として名乗りを上げる。09年2月、大ナゴヤ大学設立準備室事 務局代表に就任。 実家は"床屋さん"で、小さな頃からコミュニティーの中で育ち、今こそ 地域コミュニティーの再生が大事だと感じている。 インタビュー①感想 学校で「興味のある事柄について勉強する」という事柄か ら「社会問題の解決」へと結びつけて考えることに違和感 があったが、今なら納得できる。 参加者たちの集合知を上手く活かして街を活性化させよ うという大きな意図を持った活動団体であるという印象を 受ける。 大ナゴヤ大学の授業形式 HP上で学生登録(無料) 気に入った授業に応募 参加⇒10~30人ほどでフィールドワーク・ディスカッショ ン。 成果の発表、盛り上がればゼミを発足して継続して取り 組む。 参加者の声 実際に自分が参加して。(参加者の声と反響) ・参加理由 「知らない人に会える」 「知らないことを深く知れる」 「面白い方と会うことができる。」 ⇒未知の人間とのコミュニケーション ・感想 「非常に楽しかった。」 「ディスカッションでは、とても充実感があった」 ⇒同じ系統の趣味を持つこともできる。 ⇒HP上でのコメントの盛り上がり。 学長インタビュー② 学長インタビュー② 大ナゴヤ大学というものが市民に受け入れられる背景に ついて。 キーワードは 「ゆるいつながり」 「コミュニティの希薄化」 「社会の安全の確保」 「地域資源の発見」 インタビュー②の感想 「ゆるい繋がり」がウけているのは、それまでの「濃い」関係に対して の嫌悪感からきていると考えられる。しかし一方で、「繋がりたい」と いう気持ちを満たす要素も大ナゴヤ大学は持ち合わせているのでは ないか。 コミュニティの希薄化というものは、多くの現代社会の問題に関係し ていると思われる。 ①の感想と被るが、「地域の安全、安心の確保」を目指しているとい う射程の長さと盛り上がりはこの活動のこれからを期待させる。 反貧困と大ナゴヤ大学の共通点 湯浅によれば、社会に無関心であることや、社会に出てこられない 人間は、「自己責任」なのではなく。社会の方に問題がある。 「繋がり」を回復し、ホームレスが世から消えることは社会全体が活 性化することにつながる。 2つの活動は似て非なるものと考えられるかもしれないが、「コミュニ ティ」の重要性を訴える点では全く同じ。 つまり、現在の社会問題の根の一つが「繋がり」が希薄化したことで あるという認識を持つ。両方の活動人も、その「繋がり」を再構築し、 社会の活性化を図ることを目的の一つにあげている。 大ナゴヤ大学という存在が意味するもの 共同体の中で、意思疎通を行い、皆のパワーで何かを起こすことは、 街の活性化につながり、人材資源を有効に使うことになる。 このコミュニティが地方自治に活かされることがあれば、本来的な自 治(自ら治める)が復活するかもしれないという可能性。⇒実際にそ の動きがある。 先に分析した現代における若者の実態 「ゆるい繋がりを求める」傾向と、「同じ趣向」の人で集まる 傾向との両方に答え、なお且つ地域活性化の可能性を秘 めた活動とは言えないだろうか。 ありがとうございました。 ディスカッションに移ります。
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