ASP、新規構築、既存サイト利用 3つの構築手法ごとに長短所を検証

実践 編
数値で効果が見える
サイトの創り方
第3回
ASP、新規構築、既存サイト利用
3つの構築手法ごとに長短所を検証
FAQ サイトの構築手法は、大きく① ASP サービスの活用、②自社で新規構築
する、③既存サイトの継続利用─ の3通りがある。コストや導入期間、カスタ
マイズ性、ブランドイメージの統一感など、いずれの手法にも検討すべきメリッ
ト/デメリットが存在し、それらの優先順位を決定しなければ、使い勝手のよい
サイトにはならない。それぞれの手法について詳述する。
PROFILE
大矢 聡
プラスアルファ・コンサルティング
見える化エンジン事業部
2006 年から 2013 年まで、
リクルート(現リクルートコ
ミュニケーションズ)CS 推進
室チーフ。主に FAQ サイトの
改革に従事し「FAQ を活用し
た 問 い 合 わ せ 削 減 と VOC 活
動」でコンタクトセンターア
ワード 2011・テクノロジー
部門最優秀賞受賞。講演や社内外でのべ 55 サイ
トの運営に携わる。海外留学を経て、運用・シス
テム両面から FAQ 改革を推進したいと 2015 年
1月からプラスアルファ・コンサルティング入社
い。また、設計から動作確認まで
自社で行うため、リリースまでの
期間も数カ月単位で見込んでおく
必要がある。
構築する際に大切なことは、解
決したい課 題、実 現したい姿を
明確にしてから機能選別すること
だ。例えば、社内利用の現場メン
バーが、容易に FAQ を作成した
FAQ の利用価値は、顧客に公
を専門的に扱っているコンサルタ
実装すべきか」を検討する。十分
いのであれば簡易 FAQ 作成機能
開するだけで得られるものではな
ントから運用アドバイスを得るこ
な予算を確保するのは難しいと思
を搭載する、または VO Cも含め
い。運用サイクルをうまく回してい
ともできる。定期的に機能がアッ
うが、例えば低価格で実装できる
た運用を実現したいのなら、利用
る企業の多くは、社内利用と併用
プデートされる際も、追加費用な
ように社内エンジニアに依頼する
状況の分析機能も搭載しなけれ
している。まずは社内で活用する
く新しい汎用機能を利用できるこ
か、それとも外部に委託するかを
ばならない。
方が運用検証がしやすく、成功体
とも大きなメリットだ。
検討しよう。その上で、FAQサイト
験を積み重ねやすい。
一方、デメリットは企業ごとの
に必要な機能のうち、何を実装す
具体 的な利用シーンと現実に
カスタマイズができない点だろう。
るか、優先順位が高いのは何か、
直面している課題がマッチングし
機能全体では実現可能な範囲は
たときが取り組みを開始すべき時
図 コストを掛けずに運用で改善できる 8 項目
冷蔵庫イメージ
FAQ イメージ
期待できる効果
目立つところに
冷蔵庫がある
FAQ サイトへのリンクが
すぐに見つかる
FAQ が見つからない不満を減少させ、
電話の問い合わせを減少する
部屋の内装に
合っている
FAQ サイトもサイト全体の
デザインに合わせてある
FAQ サイトだけ違うデザインになっている
など、カスタマーの戸惑いを無くす
冷蔵庫が
キッチンにある
問い合わせは必ず FAQ サイトを
経由している
まずは問い合わせをする、というケースを
減少させる
必要な食材は
揃っている
よく入る問い合わせの内容は
FAQ で網羅されている
知りたい情報が必ずある、という安心感を
作ることができる
よく使う食材は
手前へ
よく参照される FAQ は
トップページに表出されている
手間を掛けずに知りたい情報へ誘導する
ことができる
ジャンルごとに
分かれている
FAQ は分類ごとに
カテゴライズされている
メンテナンスのしやすい FAQ サイトを
実現できる
野菜は野菜室へ
探しやすい名称・並び順で
カテゴリが構成されている
知りたい情報が探しやすい FAQ サイトを
作ることができる
中身が分かる
商品名である
正しい言葉・サービス名で
FAQ が作成されている
ワード検索の精度が向上し、自己解決まで
のアクションが明確になる
運用モデル改善が必須条件
既存サイトの継続利用
合、運用のみでカバーするのは難
て、得られたコスト削減効果で5
しい。不可能ではないが、結局は
年後に自社サイト構築に移行する
その費用などの設計が必要だ。
一般的にコールセンター運営に
A S P サービスを導入する以上の
という方法もある。社内利用は既
広がっているが、カスタマイズが
新 規サイト構 築のメリットは、
おいて、システム投資の予算確保
手間とコストが掛かる。
存システムを、公開サイトは A S P
期となる。では、いかなる方法でス
可能な場合でも有償対応になる
A S P のデメリットでもあった「自
は非常に困難だ。そのため、FAQ
既存サイトを利用する際は、運
サービスを利用して複数サイトを
タートを切ることがベターなのか
のが一 般 的だ。また他 企業との
由にカスタマイズできること」にあ
サイトの改善が検討された際も、
用サイクルのイメージを充分に練る
横断しつつ管理する方法もある。
─どの交通手段を使って目的地
共用になるため、サーバーなどの
る。デザインも機能も指定できる
必要がある。運用の範囲に限界が
最近では、A S P サービス導入
を目指すか─を整理する。
インフラに問題が 発生した場 合
ため、社内セキュリティ基準に沿
る」という決断が多いだろう。
生じた結果、課題が残ったままで
か、既存サイトの継続利用のケー
は、一様に影響を受ける。
うことも容易で他部署との調整も
既存サイト利用のメリットは、導
運用し、仕組みそのものが陳腐化
スが多いと思われる。前者では、
ASPサービス以外には、新規サ
簡単だ。さらにデザインをブランド
入に掛かるシステム構築費、人件
することも多い。
FAQ の導入効果イメージができ
イト構築、既存サイト利用を検討
イメージと統一することもできる。
費が掛からないため、運用の見直
コストとスピードの観点で便利
する場 合がある。その際もA S P
サービスや商品、ブランドによっ
しに注力できる点だ。機能追加し
な方法は、
「 A S P サービス」の利
サービスと比較検討するケースが
て FAQ サイトの見栄えが変わら
なくても運用改善だけで得られる
用だ。検索や分析機能まで搭載さ
多いので、まずは主要なASPサー
ないことは、カスタマーの戸惑い
効果も多い
(図参照)。
どの方法にもメリット/デメリッ
一方、既存サイトの利用は、運
れたものも多く、しかも月額で利
ビスの内容は押さえておこう。
を防ぐことにつながる。
デメリットは、解決したい課題
トは あ る。何 を 選 ぶ べ きか は、
用イメージができていないケース
デメリットは費用面だ。自然文
が 明 確であっても、その方 法が
中・長期的な視 点で考察すべき
での追加コスト発生案件が多い。
検索(あいまい検索)機能、簡易
機能に依存する場合、諦めざるを
だ。例えれば、FAQ 運用を“日帰
実情に合った交通手段を選択し、
FAQ 登 録機能など、欲しいと思
えない点だ。例えば、FAQコンテ
り旅行”と思わず、目的地までの
その乗り心地を試して欲しい。
コスト、スピード面でメリット
ASP サービスの利用
用料が設定されている。リリース
までのスピードが求められている
昨今、数週間程度で導入できる点
カスタマイズ性が魅力
自社でのサイト構築
「今あるサイトを継続して利用す
メリット/デメリットを
中・長期視点で見定める
やすく、人材1名の採用コストより
格段に安いケースが多い。自社サ
イト構築のケースも同様だ。
も重宝されている。
自社で新サイトを構築する場合
う機能を列挙すると、あっという
ンツに添 付しているファイル(音
交通手段を組み合わせながら設
次回は、FAQ の効果をどのよう
また、サービスによっては、FAQ
は、まず「予算に対してどの機能を
間に数百万円を超えるケースも多
声や画像など)も検索させたい場
計しよう。A S P サービスから始め
に数値化できるかを伝える。
52
Computer TELEPHONY 2015.8
Computer TELEPHONY 2015.8
53