男性の尿もれの実態と「おもい」

くらしの現場レポート
2015 年 9 月
50代以上の3人に1人に症状あり
男性の尿もれの実態と「おもい」
生活者研究センター
主任研究員 青木 基
2015年2月の『くらしの現場レポート』では、
「 女性の軽失禁の実態とおもい」
について報告。
「 ショック」
「恥ずかしい」
というおもいを抱えながら、改善のためのセルフケアに前向きに取り組む姿を紹介しました。
軽い尿もれが女性に多いことは比較的知られています。しかし、男性にも多いことや、その実態や意識につ
いては、あまり知られていません。
今回、生活者研究センターでは、尿もれ症状のある50∼60代男性のインタビュー調査を行い、その実態
と対処法や背景にある複雑なおもいに迫りました。
トピックス
●尿もれ症状のある男性は50∼70代の3割、約900万人!
●気になるけれど認めたくない複雑な男ゴコロ
●男のプライドがあるから、誰にも話したくない・話せない
●誰にでも起こりうるという認識が広まれば、心のハードルも下がる
【調査概要】
「軽失禁 実態調査」
「軽失禁症状を持つ男性の実態とそのおもい」
調査期間:2013年5月
調査期間:2014年4月
調査方法:郵送調査
調査対象:30∼79歳男女
調査方法:家庭訪問インタビュー調査
回答者数:男性657人、女性658人
対象者数:8人
調査対象:首都圏在住50∼60代男性
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くらしの現場レポート
尿もれ症状のある男性は
50∼70代の3割、約900万人!
2013年に花王が行った実態調査では、50∼70代男性の約3割に尿もれの症状があり、50∼60代では
女性とほぼ同等であることが明らかになりました
(図1)。人口比に当てはめると、50歳以上の男性の尿もれ
人口は約900万人と推測されます。
男性は女性の場合と異なり、尿をした後、尿道内に残ったものが出てしまう男性特有の「排尿後尿滴下」
で軽い尿もれ症状を自覚する場合が多いと言われています。そのほか、前立腺肥大症などによる
「過活動
膀胱*」
も見られます。
*過活動膀胱…急に我慢できないような尿意(尿意切迫感)をもよおし、我慢できずに尿がもれてしまうなどの症候群。排尿筋(膀胱
の筋肉)が過敏に活動することによって起こる。
50%
男性
45
女性
40
28
30
20
18 18
32
38
34
31
36
21
10
0
30代
50代
40代
60代
70代
30∼79歳 男性657人 女性658人(花王調べ)
(図1)年代別の尿もれ有症率
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くらしの現場レポート
気になるけれど認めたくない複雑な男ゴコロ
男性の尿もれ事情を把握するために、50∼60代男性8人に家庭訪問を行い、インタビュー調査を実施し
ました。この8人では、尿もれの程度や感じ方によって、
「 症状は軽いし気にしない」
「 症状は軽くても気にな
る」
「 症状は進行しているが認めたくない」の3つに分かれました。
症状
対処法
症状は軽いし気にしない
症状は軽くても気になる
症状は進行しているが認めたくない
●キレが悪くなり、放尿後、ちょっと
●放尿後、下着に染みた。トイレに
●トイレまで我慢できないことがあ
もれて下着に染みた。
●ベルトをはずして下着を下ろし、
しっかり出す。
●よく振ってしつこく切る。
●トイレへこまめに行く。
●ズボンに消臭剤をスプレーする。
●ゆっくり絞り出す。
で拭く。
●軽失禁用布パンツを利用する。
恥ずかしい。妻にも誰にも言え
出し切ってなかったかな。
不衛生だ。ズボンが臭くなる
失敗したかな。
特に気にしない。痛くもない
し、すぐに乾くし、におうほど
る。ズボンがビショビショに。
●ティッシュやトイレットペーパー
多少下着が汚れるのは、男な
ら当然。
おもい
間に合わなかった時もある。
ない。
し、ニオイも気になる。
人に不快感を与えるのは嫌だ。
●トイレに駆け込む。
ショック。認めたくない。
嫌だ。自分ごととして受け入れ
たくない。まだ対岸の火事だ。
手足がちゃんと動くうちは、
ト
イレに駆け込めばすむこと。
失禁用品には頼りたくない。
でもない。
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くらしの現場レポート
∼それぞれの尿もれ事情 2つの事例を紹介します∼
「症状は軽くても気になる」事例 キレの悪さは自覚。でも、もうちょっと若ぶっていたい
40代の初めにある日突然始まった。あんなに絞ったはずなのに、
たまに
「ポタンポタン」
と落ちてくる。恥ずかしくて、妻にも誰にも話せない。
Aさん(56歳)会社員 家族構成:妻(53歳)、子ども2人
暮らしぶり
●通勤時間は1時間。週休2日だが、
たまに休日出勤することもある。
●平日の晩酌が楽しみ。休みの日には家族で外出、
外食をする。
●健康情報の収集はこまめに。健康維持のためにサプリメントも飲む。
尿もれの実態
きっかけ
●40代の初め頃に自覚。尿を全部出したはずなのに、パンツが濡れちゃった!熱いのがポロッとこぼれた感じ。
現状
●
「あ、また」
という感じ。量はちょっともれるくらい。
●最初の頃は1日に何回もあったけど、最近は対処しているので週に1∼2回程度に減った。
対処法
●注意深くしっかり
「切る」。よく
「振る」。
●排尿後はトイレットペーパーで拭く。
おもい
●濡れている下着を履いているのは嫌。
●ズボンにシミができていないか、ニオイがしないかが
気になる。
●尿もれはジジ臭くて嫌だ。
「恥ずかしいこと」
だと思う。
●意識して出さないといけない歳なんだなと思った。
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くらしの現場レポート
「症状は進行しているが認めたくない」事例 突然やってくる尿意。我慢できない、止められない
トイレに行こうと思ったのに、間に合わずにズボンを濡らしてしまった。
ショックだし認めたくない。青春が終わる。受け入れたくない!
Bさん(66歳)講師 家族構成:妻(62歳)
暮らしぶり
●授業があるときだけ学校へ行く。 ●血圧高め、
血糖値も高めで1日1回薬を服用。
●テニス、
ダンス、
ゴルフなど日常的なスポーツやカラオケも楽しむ。
●友人との外食も楽しむが、
1日の摂取カロリーには気を遣い、
体重管理も欠かさない。
尿もれの実態
きっかけ
●若い頃から1∼2滴もれるくらいは、男なら当たり前だと思っていた。
●本格的に症状が出てきたのはこの3∼4年。昔なら我慢できたのに辛抱できなくなった。
現状
●車に乗っているときなど、
すぐにトイレに行けないような状況で起こる。車から降
りると急に尿意をもよおし、
トイレに間に合わず、
ズボンがびっしょり濡れてしまっ
たことも……。
●就寝から起床までに3回トイレに起きる。日中は1日4回くらい。
対処法
●こまめにトイレに行く。1時間行けないと思ったら先に行っておく。
●外出などで万が一“もれ”が気になるときは厚手の下着を履く。
●コーヒーやお茶は、外出前や寝る前には控える。
●放尿後はよく絞り出して振る。家ではティッシュで拭き取る。
おもい
●ズボンまで濡らしたときはショックだった。
●もっとひどくなったら介護用紙パンツなども考えなければいけないが、今はまだ認めたくない。でも、生活
は変えたくないので、いざとなったら考える。
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くらしの現場レポート
男のプライドがあるから、
誰にも話したくない・話せない
女性の尿もれを報告した『くらしの現場レポート』では、尿もれを「介護」や「寝たきり」の入口と捉える人
が多く、
「 受け入れたくない」
「 人に話せない」
というおもいにつながっていましたが、男性も同じようなおも
いを抱えていました。女性は
「出産」などをきっかけに、尿もれが起こることがありますが、男性はこうした経
験をふむことがなく、女性以上に自分ごととして向き合いたくないというおもいが強いと考えられます。専
門医に相談する機会もなかなかなく、自分から調べることもないという傾向が見られました。
「恥ずかしい」
「 みっともない」
という思いや、
「 弱みを見せたくない」などのプライドから、誰にも話せず、
一人で悶々としている様子が見られました。一方で、男性の尿もれが「オープンに話せるようになってほし
い」
と、望む声も聞かれました。
誰にも話せない
みっともない。
奥さんにも恥ずかしくて
「へえ、あの人ってそうなんだ」
男としてのプライドが
と思われるのが嫌だから
話していない。
ある。
(67歳)
話さない。
(56歳)
誰も知らない。
(59歳)
健康診断で、
お酒やタバコのことは
妻には話さないが、黄ばんだ
聞かれるけど、尿もれのことは
パンツを妻が廃棄しているので、
聞かれないし話さない。
(66歳)
気づいているようだ。
(64歳)
当たり前のことと認識してほしい
話題が出たら
「お前もかよ」
男性の尿もれも、当然の空気に
と自分も言えるのに。
(66歳)
なって、一般的なことと認識される
ようになればいいのに。
(59歳)
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女性の尿もれは、人気タレントの
CM効果もあるし、ある程度の
年齢になれば誰でも起こること
と知られている。
(53歳)
くらしの現場レポート
誰にでも起こりうるという認識が広まれば、
心のハードルも下がる
今回のインタビュー調査から、男性の尿もれが女性以上に閉ざされた状況にあることがわかりました。男
性に多くみられる
「ちょいもれ」、いわゆる
「排尿後尿滴下」
や、加齢とともに多くなる
「過活動膀胱」
といった
症状は、誰にでも起こりうることです。こうした認識が広まることで心のハードルも下がり、もう少し前向き
に受け入れられるようになるのではないでしょうか。
【しっかり対策すれば、毎日が快適に】
●毎日の生活に支障があるようなら専門医に相談を!
尿もれの原因がわかれば、それに見合った治療や対策で症状が改善されることもあります。気になる症
状があったら、恥ずかしがらずに泌尿器科に相談してみましょう。
●セルフケアで改善!
「ちょいもれ」である排尿後尿滴下や、過活動膀胱などは、女性と同様に骨盤底筋体操が有効だと言わ
れています。セルフケアで改善することもあるので、試してみてください。
▶詳しくはこちら http://www.kao.co.jp/freeday/qa/q2_01.html
●外出時もこれで安心!
トイレの後の気になるズボンのシミやニオイ。もしもに備えて、消臭効果のある男性用の吸水ガードを
使えば、不安や悩みが解消されます。
▶スマートガード http://www.kao.co.jp/smartguard/
●お問い合わせ・ご意見は
花王株式会社 生活者研究センター
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