2015/07/11 本日の内容 • 計算論的識別不可能性 – 1サンプルvs多サンプル – ハイブリッド法 暗号基盤特論 計算論的識別不可能性とハイブリッド法 (M43160) • 非一様計算モデル – 計算論的識別不可能性 – 非一様帰着 8 July, 2015 小柴健史 1 2 距離 統計的距離 X n }nn∈・ • { , :確率分布族の統計的距離 ∈N {Yn }n n∈ ∈・N 距離の公理 Δ( X ,Y ) = – Δ( X , Y ) = 0 ⇔ X = Y – Δ( X , Y ) ≥ 0 Δ( X , Y ) = Δ(Y , X ) – – Δ( X , Y ) + Δ(Y , Z ) ≥ Δ( X , Z ) (三角不等式) 1 ∑ Pr[ X n = α ]− Pr[Yn = α ] 2 α • αの種類の次元を持つベクトルと考える • たとえば d k ∑x −y i k i i=1 3 統計的距離 確率分布族 I :可算インデックス集合 • • { X :確率変数の系列 i }i∈I • 具体例 – 普通のサイコロ X (1 6,1 6,1 6,1 6,1 6,1 6) – 1の目が出易いサイコロ Y • 多くの場合,可算インデックス集合は (1 2,1 10,1 10,1 10,1 10,1 10) – 自然数集合 – の部分集合 {0,1}* – その統計的距離 1 ⎛ ⎛ 1 1 ⎞ ⎛ 1 1 ⎞ ⎞ 1 Δ( X , Y ) = ⎜ ⎜ − ⎟ + 5 ⎜ − ⎟ ⎟ = 2 ⎝ ⎝ 2 6 ⎠ ⎝ 6 10 ⎠ ⎠ 3 つまり、確率変数の値域の大きさの次元のベク トルに対する 距離 1 4 5 6 1 2015/07/11 多項式時間識別不可能 ハードコア関数,再訪 X n }nn∈・ Yn }nn∈・ • { , :確率分布族が多項式時 ∈N { ∈N 間識別不可能であるとは,任意の確率的多 項式時間アルゴリズム に対して以下の D 値が無視できるときをいう Pr[ D( X n ,1n ) = 1] − Pr[ D(Yn ,1n ) = 1] • 前回と別の言葉で定義を与える f h が のハードコア関数であるとは • {( f (U n ), h(U n ))}n∈・ と {( f (U n ), U lʹ′( n ) ))}nn∈∈・N ∈N が計算論的識別不可能であるときをいう • 計算論的識別不可能ともいう 7 識別不可能性 8 多項式時間サンプラブル • 統計的識別不可能とは,統計的距離が無 視できるときをいう • 計算論的識別不可能とは,任意の確率的 アルゴリズム を適用した後の D D( X n ) と とが統計的に識別不可能なことを D(Yn ) いう X = { X n }nn∈∈・N • が多項式時間サンプラブルで あるとは確率的多項式時間アルゴリズム S が存在して,すべての で と と S (1n ) X n n が統計的距離0であるときをいう。 9 10 多項式個サンプリング 1サンプル vs 多サンプル • と が多項式時間サ X = { X n }nn∈∈・N Y = {Yn }n∈∈・N ンプラブルであるとする.多項式個サンプ リングによって識別不可能であるとは,任 意の確率的多項式時間アルゴリズム と D m 任意の多項式 に対して,以下が無視で きるときをいう = { X n }n∈・ Y = {Yn }n∈・ • X と を多項式時間サン プラブルであるとすると,以下は同値 – X , Yが計算論的識別不可能 – X , Yが多項式時間サンプリングによって も計算論的識別不可能 Pr[ D( X n(1) ,..., X n( m( n)) ) = 1] − Pr[ D(Yn(1) ,..., Yn( m( n)) ) = 1] X n(1) ,..., X n( m ( n )) X n( i ) • ただし は独立で,各 は 確率分布として と一致する(i.i.d.) Xn 11 12 2 2015/07/11 証明 D • あるアルゴリズム と多項式 が存在 m, p Pr[ D( X n(1) ,..., X n( m( n )) ) = 1] − Pr[ D(Yn(1) ,..., Yn( m( n )) ) = 1] > • ここで,以下の分布を導入する 混合分布 1 p ( n) H nk = ( X n(1) ,..., X n(k ) ,Yn(k+1) ,...,Yn(m) ) • このとき, H n6 Xn Xn Xn Xn Xn Xn H n4 Xn Xn Xn Xn Yn Yn どれか一つは 距離d/3以上 距離d H nm = ( X n(1) ,..., X n( m ) ) H n2 H n0 = (Yn(1) ,..., Yn( m) ) • つまり, は中間的な分布になっている H nk (ハイブリッドアーギュメント) 13 H n0 Xn Xn Yn Yn Yn Yn Yn Yn Yn Yn Yn Yn 証明 証明 Dʹ′ • アルゴリズム オブザベーション – 目的:1サンプルを区別する – 入力:α ← X n or Yn k ∈ {0,..., m − 1} – を一様に選択 x1 ,..., xk ← ( X n ) k , yk + 2 ,..., ym ← (Yn ) m−k −1 – D( x1 ,..., xk , α , yk +2 ,..., ym ) – を呼び,そのまま出力 Dʹ′ 14 1 m −1 ∑ Pr[ D( H nk +1 ) = 1] m k =0 1 m −1 Pr[ Dʹ′(Yn ) = 1] = ∑ Pr[ D( H nk ) = 1] m k =0 Pr[ Dʹ′( X n ) = 1] = D Xn α ← X n or Yn Yn 15 証明 ハイブリッド法 このとき • 確率分布間には距離が定義されている • 中間確率分布の個数は少ない(多項式個) • 各中間確率分布の差は非常に小さい • 中間確率分布をうまく設定することによ り証明が成立するようにできる Pr[ Dʹ′( X n ) = 1] − Pr[ Dʹ′(Yn ) = 1] = 1 m m −1 ∑ Pr[ D( H k +1 n 16 ) = 1] − Pr[ D( H nk ) = 1] k =0 1 = Pr[ D( H nm ) = 1] − Pr[ D( H n0 ) = 1] m 1 ≥ mp (n) – 今回の例は非常に単純な構成方法! 17 18 3 2015/07/11 非一様計算 非一様計算 • 通常のアルゴリズムは一様計算と呼ばれ る • 論理回路における基本素子 – 問題のサイズに依存しないため • 一方,問題のサイズごとに問題を解く方 法が変化することが許容される場合,非一 様計算アルゴリズムと呼ばれる – 例えば,n変数ブール関数を計算する場合,変 数の個数毎にブール関数を計算する論理回路 Cn が存在してもいい.アルゴリズムと対比する 意味でも,回路の族 として表記され {Cn }nn∈・∈N る 19 AND素子 OR素子 x y x ∧ y x ∧ y x y x∨ y 0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 0 1 0 1 0 0 1 1 x y 1 1 1 1 1 1 NOT素子 x ¬x 0 1 回路族 1 0 x∨ y x y ¬x x 20 回路族とアルゴリズム (1 ) • A の出力が の記述であるとき,族 {Cn }nn∈・ Cn ∈N は一様回路族と呼ばれる – が多項式アルゴリズムであるとき のサイズは Cn A n Cn Cn +1 多項式になる.また,その評価(回路値の計算) は多項式時間で可能 – 多項式時間一様な多項式サイズ回路族は多項式時 間アルゴリズムと等価 ‥‥ ‥‥ ‥‥ n 変数 ‥‥ n +1 変数 • 単に多項式サイズ回路族といった場合,多項 式時間アルゴリズムよりも能力が高い 21 回路族とアルゴリズム – 暗号理論においては,敵対者の能力は多項式サイ ズ回路族であることを想定する場合も多い 22 回路族とアルゴリズム • 確率的多項式時間アルゴリズムとの対比から, 乱数入力多項式サイズ回路族という概念もあ る • ただし,通常の多項式サイズ回路族と能力は 同等である – 最も,多くの割合の入力に対して計算が正しくな るような乱数が存在する – 上記のよい乱数入力を回路に直接ハードワイヤー することにより,乱数部分を固定化できる 23 • 今 か否かを判定したいとする x∈L • 一様計算では となる の存在性 A( x) = χ L A や の用いる資源を議論する A • 非一様計算では, となる A( x, a(| x |)) = χ L アルゴリズム や入力の長さだけで決まる A a 助言関数 の存在性を議論する – は長さ 専用の回路の記述 a (| x |) |x| A – は回路値の計算アルゴリズム – の計算資源は問わない a 24 4 2015/07/11 回路族とアルゴリズム 多項式時間識別不可能 x∈L • 今 か否かを判定したいとする • 一様計算では となる が多項式 A A( x) = χ L 時間で動作するとき,この判定問題は計算 量クラスPに属する A( x, a(| x |)) = χ L • 非一様計算では, となる多 項式時間アルゴリズム と入力の長さだけ A a で決まる多項式長の助言関数 が存在する とき,この判定問題は計算量クラスP/ polyに属する X n }nn∈・ Yn }nn∈・ • { , :確率分布族が多項式時間 ∈N { ∈N 識別不可能であるとは,任意の確率的多項 式時間アルゴリズム に対して以下の値 D が無視できるときをいう Pr[ D( X n ,1n ) = 1] − Pr[ D(Yn ,1n ) = 1] • 計算論的識別不可能ともいう – 多項式サイズ回路計算可能な判定問題のクラ スはP/polyに一致する 25 多項式サイズ回路族識別不可能 X n }nn∈・ Yn }nn∈・ • { , :確率分布族が多項式サイ ∈N { ∈N ズ回路族識別不可能であるとは,任意の多 項式サイズ回路族 に対して以下の {Dn }nn∈・ ∈N 値が無視できるときをいう Pr[ Dn ( X n ) = 1] − Pr[ Dn (Yn ) = 1] 26 多項式個サンプリング X = { X n }nn∈∈・N Y = {Yn }nn∈∈・N • と が確率分布族と する.多項式個サンプリングによって非一 様計算識別不可能であるとは,任意の多項 {Dn }nn∈・ 式サイズ回路族 と任意の多項式 m ∈N に対して,以下が無視できるときをいう Pr[ Dn ( X n(1) ,..., X n( m( n)) ) = 1] − Pr[ Dn (Yn(1) ,..., Yn( m( n)) ) = 1] • これを非一様計算論的識別不可能と呼ぼ う(一般的な呼称ではない) • ただし, は独立で、各 は X n(1) ,..., X n( m ( n )) X n( i ) 確率分布として と一致する Xn 27 1サンプル vs 多サンプル 28 証明の概略 X = { X n }nn∈∈・N Y = {Yn }nn∈∈・N • と を確率分布族と する.このとき,以下は同値 – X , Yが非一様計算論的識別不可能 – X , Yが多項式個サンプリングによっても • ある多項式サイズ回路族 と多項 {Dn }nn∈・ ∈N m, p 式 が存在し Pr[ Dn ( X n(1) ,..., X n( m( n )) ) = 1] − Pr[ Dn (Yn(1) ,..., Yn( m ( n )) ) = 1] > 非一様計算論的識別不可能 1 p ( n) • また,以前に定義した中間確率分布で Pr[ D( H nk +1 ) = 1] − Pr[ D( H nk ) = 1] の値が最も大きくなる を とおく k kn 29 30 5 2015/07/11 証明の概略 まとめ • 回路 Dnʹ′ – 目的:1サンプルを区別する – 入力:α ← X n or Yn – 以下の確率の差 非一様帰着 Pr[ D( H nkn +1 ) = 1] − Pr[ D( H nkn ) = 1] • 計算論的識別不可能性 • 1サンプルvs多サンプル • ハイブリッド法 • 非一様計算 が最も大きくなるような x1 ,..., xkn ∈ supp(X n )kn , ykn +2 ,..., ym ∈ supp(Yn )m−kn −1 について Dn ( x1 ,..., xkn , α , ykn + 2 ,..., ym ) を計算する回路が である Dnʹ′ 31 32 6
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