幾何学入門第8回 距離空間と開集合

1
幾何学入門第8回
距離空間と開集合
山本修身
名城大学理工学部情報工学科
2
今回学ぶこと
y
x
�
d(x, y)
(xx − yx )2 + (xy − yy )2
我々は比較的良
く知っている
距離空間の性質(定義)
位相空間の性質(定義)
距離空間の「近さ」だ
けを抽象化したもの
授業資料の p. 34∼36を参照
数の個数はいくつでも良いのですが,有限個であるとし
1 , x2 , . . . , xn ) と書きましょう.ここで考えている集合は
ユークリッド空間とは
ユークリッド空間
, x2 , . . . , xn3.1
) と書きましょう.ここで考えている集合は
n
R = {(x1 , x2 , . . . , xn ) | xi ∈ R}
3
実数を組とする座標によって表現される点を集め
n
R = {(x1 , x2 , . . . , xn ) | xi ∈ R}
にする実数の個数はいくつでも良いのですが,有限
とができます.ただし,ここで
R
は実数の集合を表しま
n次元のユークリッド空間 (Euclidean space) とは
•
れを,
(x
,
x
,
.
.
.
,
x
)
と書きましょう.ここで考え
1
2
n
n個の要素よる座標
とができます.ただし,ここで
(x1 , x2 ,R.をつぎのように定義し
.は実数の集合を表しま
. , xn ) で表現さ
の空間の点同士の距離 (metric)
れる点の集合でその2つ要素 p, q の間の距離を以
の空間の点同士の距離
n をつぎのように定義し
. , qn )Rの間の距離
d(p,
q)
は
2 , . . . , pn ), q = (q1 , q2 , . .(metric)
= {(x1 , x2 , . . . , xn ) | xi ∈
下のように測る.
�
,
.
.
.
,
p
),
q
=
(q
,
q
,
.
.
.
, qn ) の間の距離 d(p, q) は
2
n
1 2
p, qの距離
�
n
�
�
と書くことができます.ただし,ここで
R
は実数の
2
d(p, q) = �
|p
−
q
|
i
� n i
��
とき,この空間の点同士の距離
(metric) をつぎの
i=1
d(p, q) = �
|pi − qi |2
p = (p1 , p2 , . . . , pn ),i=1
q = (q1 , q2 , . . . , qn ) の間の距離
n
4
ピタゴラスの定理
•
ピタゴラスの定理はユークリッド空間の定義そのもの
b
a
a
b
c
c
z
y
c
c
a
b
x
a
2
2
z =x +y
2
2
b
2
(a + b) = 2ab + c
5
横高さをもつ空間は3次元ユークリッド空間ということになります.こ
距離空間とは
では特に高次元のユークリッド空間を考えることはありませんので,せ
ぜい,3次元ユークリッド空間を考えて頂ければ十分です.
距離空間 (metric space)とは集合で,そこに含ま
•
距離が上記で定義したものである必然性はありません.距離はある条
れる要素(これを点と呼ぶ)の間に以下の性質を満
を満たせば,どのようなものでも構いません.
「ある条件」とはつぎの条
です:
たす距離 d が定義されている:
1. 任意の点 p, q, r ∈ Rn について d(p, q) ≤ d(p, r) + d(r, q).
三角不等式
2. d(p, q) = 0 ⇔ p = q.
距離が0 同じ点
3. d(p, q) = d(q, p)
対称性
この条件を満たす距離は色々存在します.
6
普通でない距離の測り方
•
ユークリッド空間での距離の定義と異なる定義
•
マンハッタン距離
d(p, q) =
n
!
|pi − qi |
i=1
•
∞-ノルム
d(p, q) = max |pi − qi |
i=1,...,n
空間(とりあえず2次元ユークリッド空間
7
集合のことを「図形」と呼ぶことにします
ユークリッド空間における近傍とは
についてその ε-近傍 Nε (p) とは,
•
近傍とは与えられた点の「近く」のこと
Nε (p) = {x ∈ R | d(x, p) < ε}
n
ただし,ε >
ε
0 であるとします.この
ε-近傍
p
ε>0
を定義してみます.我々が普段「開集合」
図 3.1: 区間 (1, 2) とそれに含まれる ε 近傍
ある集合 X が開集合であるということは,任意の点 p ∈ X について,あ
8
ユークリッド空間における開集合
•
図 (open
3.1: 区間
(1, 2)とは,…
とそれに含まれる ε 近傍
開集合
set)
ある集合 X が開集合であるということは,任意の点 p ∈ X について,あ
る ε が存在して,Nε (p) ⊂ X となるものが常にとれると定義します.この
ように定義したときに我々の直感と一致するかどうかを確かめてみます.
∀p ∈ X, ∃ε > 0, N (p) ⊂ X
まず,区間 I = (1, 2) は開集合であると我々は信じています.この定義に
ε
照らし合わせてそうなっているでしょうか.ある数 1 < p < 2 をとってみ
p
ます.このとき,ε = min{2 − p, p − 1}/2 と定義すれば,
ε Nε (p) ⊂ I とな
ります(図 3.1 参照).
Nε (p)
ここでまず,ε 近傍について考えてみます.これ自体開集合でしょうか.
実は ε 近傍は開集合です.一般の「近傍」を定義していませんので,厳密
が存在して,
N
(p)
⊂
X
となるものが常にとれ
ε
常にとれると定義します.この
9
区間
(1,
2)
はなぜ開集合か?
に定義したときに我々の直感と一致するかどう
ということは,任意の点 p ∈ X について,あ
るかどうかを確かめてみます.
ず,区間
I区間=(1,(1,
2)
は開集合であると我々は信じ
となるものが常にとれると定義します.この
々は信じています.この定義に
2) が開集合であることの証明
•
(開区間)
し合わせてそうなっているでしょうか.ある数
直感と一致するかどうかを確かめてみます.
.ある数
1 < p < 2 をとってみ
.このとき,ε =
p, p − 1}/2 と定義す
集合であると我々は信じています.この定義に
と定義すれば,
Nεmin{2
(p) ⊂ I−とな
す(図
3.1 参照)
.
るでしょうか.ある数
1
<
p
<
2
をとってみ
I
−
p, p − 1}/2
と定義すれば,Nε (p) ⊂ I とな
こでまず,
ε 近傍について考えてみます.これ
.これ自体開集合でしょうか.
端点を含まない
ε 近傍は開集合です.一般の「近傍」を定義し
を定義していませんので,厳密
図 3.1: 区間 (1, 2) とそれに含まれる ε 近傍
合になっている近傍を開近傍と呼びます
10
なっている近傍を開近傍と呼びます.つぎの性質が成り立ちます.
ε 近傍は開集合である.
性質 5 ε 近傍は開集
ε近傍は開集合か?(性質5)
性質 5 ε 近傍は開集合である.
5 ε 近傍は開集合である.
性質を証明してみます.実は,この証明は前述の区間の議
この性質を証明して
ε近傍は開集合であることの証明
η
この性質を証明してみます.実は,こ
の性質を証明してみます.実は,この証明は前述の区間の議論と
んど同じです.まず,
じです.まず,適当な点
q ∈ Nε (p) をとりますと,これに
q
んど同じです.まず,適当な点
q
∈
N
同じです.まず,適当な点
q ∈ Nε (p) をとりますと,これに対し
p− d(q,
= (ε
p))/2
と
d(q, p))/2 と置きます.これより,Nηη(q)
の点
r
と
p
の距
ε
− d(q, p))/2 と置きます.これより,
Nη (q)と置きます.これよ
の点 r と p の距離を
η = (ε − d(q, p))/2
ますと,
,
と,r ∈ Nη (q) と仮定すると
ますと,
d(r, p) ≤
d(r, p) ≤ d(r, q) + d(q, p) ≤ (ε − d(p, q))/2 + d(p, q)
d(r, p) ≤ d(r, q) + d(q, p) ≤ (ε − d(p, q))/2 + d(p, q)
d(r, p) ≤ d(r, q) + d(q, p)
≤
=
== ε/2
+ d(p,
d(p,q)/2
q)/2<<ε/2
ε/2
ε/2 +
++
ε/2ε/2
= ε= ε
(
= ε/2 + d(p, q)/2 <
となり,
r
∈
N
とな
ε
は開集合
Nε (p)
N (q) ⊂ N (p)
η
ε
11
ユークリッド空間の性質
図 3.2: 2つの開集合の和集合
さらに,一般のユークリッド空間の中の図形(集合)についてつぎの性
ユークリッド空間についてつぎの性質が成り立つ.
•
質が成り立ちます.
性質 6 X を適当なユークリッド空間であるとする.
1. X はそれ自体は開集合である.
2. 空集合 ∅ は開集合である.
3. 2つの集合 A, B が開集合であれば,その共通部分 A ∩ B は開集合で
ある.
4. 任意個の開集合 Aλ (λ ∈ Λ) の和集合
�
Aλ は開集合である.
λ∈Λ
これらの性質のうち最初の2つは自明です.空集合が開集合であるのは,
12
性質6-1と6-2について
•
Xをユークリッド空間とする.Xは開集合である.
•
任意の点 X をとると,そのε近傍は当然Xに含ま
れる.→ Xは開集合
•
空集合についてはいかなる点をとることもできな
い.したがって,
p ∈ ∅ ⇒ Nε (p) ⊂ ∅
は正しい命題となる.
これは成り立たない
13
性質6-3について
•
集合A, Bが開集合であれば,AとBの共通部分は開集
合である.
p∈A∩B
p∈A
Nε (p) ⊂ A となるεが存在
Nε (p) ⊂ A図 ∩
B
3.2: 2つの開集合の和集合
となるεが存在
Nε (p) ⊂ B となるεが存在
さらに,一般のユークリッド空間の中の図形(集合)についてつぎの性
図 3.3:
3. 3.2つの集合
A,A,
B無限個の開集合の和集合
2つの集合
Bが開集合であれば,その共通部分
が開集合であれば,その共通部分AA∩
14
ある.
ある.
性質6-4について
ります.p は A ∩ B の中で任意にとりましたので,A ∩ B は開集合
�
�
ことになります(図
3.2
参照)
.
4. 4.任意個の開集合
AA
∈∈Λ)Λ)の和集合
任意個の開集合
の和集合 AA
は開集
λ λ(λ(λ
λ λは開集合
• 任意個の開集合 の和集合 λ∈Λ
た,最後の性質ですが,これは上の話と違い,連続無限を含めた任
λ∈Λ
は開集合である.
�
開集合の和集合を考えます.
p
∈
A
とすれば,
p
を含むような
と仮定する
λ
は,いくらでも和集合を作
これらの性質のうち最初の2つは自明です.空集合が開集
これらの性質のうち最初の2つは自明です.空集合が開集
λ∈Λ
本当に無限個の開集合の
が少なくとも一つ選択できます.この集合を
B としますと,もちろ
そこから元をとることができないからです.3つ目の性質
そこから元をとることができないからです.3つ目の性質に
しょうか.実はあります.
列として,
p
∈
B
となるBを選択できる
開集合でありますので,それに含まれている
p
を中心とする
B
に含
えてみます.
となる任意のp pについて,その
について,その
ε
えてみます.
p p∈ ∈AA
∩ ∩BBとなる任意の
ε
近
X
=
!
i
開近傍 Nε (p) をとることができます.この開近傍はもとの和集合の
Aλ
Nε (p) ⊂ B ⊂ と定義します.これらの区
ます.
はそれぞれ開集合であるから,
に含ま
ます.
A,A,B Bはそれぞれ開集合であるから,
AAややBBに含まれ
λ∈Λ
合にもなっていますので,p の取り方が任意であったことから,和集
とることが可能です.その2つの近傍のうち,小さいほうの
とることが可能です.その2つの近傍のうち,小さいほうの
とします.Y は開集合でし
となるεが存在
集合であることになります (図 3.3 参照)
.
なぜならば,1A
∈ X∩である
それは
A,
B
共通の近傍ということになり,これは
B
それは
A,
B
共通の近傍ということになり,これは
A
∩
B
に
図 3.3: 無限個の開集合の和集合
こで3つ目と4つ目の違いは非常に大きいことに注意してください.
きなところまで範囲として
i
うか.まず,1 ∈ Y であることがわかります.
に無限個の開集合の共通部分が開集合にならなくなる例があるの
15
,いくらでも和集合を作ってよろしいということになります.
か.実はあります.また,
1 次元の区間の話に戻りましょう.区間
らです.すべての i について
X は 1 よりも大
i
無限個の開集合の共通部分は開集合か?
本当に無限個の開集合の共通部分が開集合にならなくなる例があるので
て,
っていますので,当然
1
はそれぞれの集合に
ょうか.実はあります.また,1 次元の区間の話に戻りましょう.区間の
Xi = (0, 1 + 1/i)
(i = 1, 2, · · ·)
れらの共通部分である
Y にも含まれます.こ
として, • 反例:
(3.
します.これらの区間の共通部分
Y
を考えます.すなわち,
X = (0, 1 + 1/i) (i = 1, 2, · · ·)
(3.5)
えます.ある ε > 0 を適当に選んで,
Nε (1) を
∞
i
�
定義します.これらの区間の共通部分
Y を考えます.すなわち, (3.
Y
=
X
i
� としたときの集合 Xi に含まれません.すな
∞
i=1
�
Y =
Xi NO!
(3.6)
Yは開集合か?
てもそれは,
Y に含まれません.これより,
Y
す.Y は開集合でしょうか.まず,
1
∈
Y
であることがわかります
i=1
らば,
1∈
i について
Xi は 1 よりも
りました.実際,
Y = (0, 1] となります.
である
i であるからです.すべての
します.
YX
は開集合でしょうか.まず,
1∈Y
であることがわかります.
ころまで範囲としてとっていますので,当然
1 はそれぞれの集合
ぜならば,1 ∈ Xi であるからです.すべての i について
Xi は 1 よりも大
なところまで範囲としてとっていますので,当然Y1 はそれぞれの集合に
ます.したがって,これらの共通部分である
にも含まれます.
まれます.したがって,これらの共通部分である Y にも含まれます.こ
16
ここまでのスキームとここからのスキーム
•
距離空間→ε近傍→開集合
•
集合+開集合の集合(これが位相空間)→近傍
近さだけを表現したい.
距離という概念はいらない!
17
一般の位相空間
いでしょうか.じつはそれが「位相」です.
を導入したい場合どうしたらよいでしょうか.じつはそれが「位相」です.
つながりだけを問題にします.
•
位相空間 (topological space)とはある集合でその
位相は与えられた集合の要素のつながりだけを問題にします.
んが,実は前節で導出した結果を,約束事
集合の部分集合族(部分集合の集合)で次の性質を
難しく聞こえるかもしれませんが,実は前節で導出した結果を,約束事
として,流用することによって位相(
topology) を定義することができま
満たすものが定義されているものである.
位相(topology) を定義することができま
す.ある集合 X が位相空間であるとは,X の開集合の集合 O が定義でき
の満たすべき性質
るとは,
X の開集合の集合 O が定義でき
て,つぎの性質を満たすことです:
す:
1. 空間 X と空集合は ∅ は O に含まれる.
2. 有限個の集合 A1 , A2 , . . . , An が O に含まれれば,共通部分
に含まれる.
O に含まれる.
n
�
i=1
n
�
�
An が O に含まれれば,共通部分
3. 無限個の集合 Aλ (λ ∈ Λ) の和集合 AAiλは
は O に含まれる.
λ∈Λ
i=1
Ai は
λ∈Λ
O = {X, ∅}
18
(3.
合 O がこの性質を満たすとき,集合の組 (X, O) のことを位相
特殊な位相空間
のがあります.この位相の場合,イメージとしては,
「X の
ます.また,開集合の集合のことを位相と呼ぶことがあります.
はベタベタにくっついている」ということになります.こ
位相空間は位相としては,
•
密着位相(dense topology)
何も分離できない
密着位相 (dense topology) と呼びます.この位相の対極
ベタベタ
O = {X, ∅}
(3.7)
ぎに示す開集合の集合です:
離散位相(discrete topology)
•
ものがあります.この位相の場合,イメージとしては,
「X の中
O
=
P(X)
(3.
Xのべき集合
点はベタベタにくっついている」ということになります.この
を密着位相 (dense topology) と呼びます.この位相の対極に
サラサラ
は集合 X のベキ集合です(この辺が曖昧な人は最初の章を
つぎに示す開集合の集合です:
何でも分離することができる
.すなわち,X のあらゆる部分集合は開集合となります.
O = topology)
P(X)
(3.8)
を離散位相 (discrete
と呼びます.この位相の
19
一般の位相空間の近傍とは何か
•
「点pの近傍Nである」とは,N⊃M⊃{p}となる開集合
Mが存在するような部分集合Nのことである.
Nが開集合であ
る必要はない
N
M
p
20
密着位相空間の場合
•
•
任意の点pの近傍は全体集合Xのみ
N⊃X⊃{p}
Xの開集合はXか空集合である.Xを含む集合はXの
みである.
X
pを含む開集
合はXのみ
p
21
離散位相空間の場合
•
ある点pを含むどのような集合も近傍となる
•
どのようなXの部分集合も開集合なので,そのう
ちpを含むものはすべてpの近傍となる.
X
どのような部分集
合も近傍となる
{p}
{p}はpの近傍である
{q}
q
p
ハウスドルフ空間
異なる2点はすべてそれぞれの近傍で
分離することができる
22
閉集合とは
•
補集合が開集合となる集合を閉集合 (closed set)と
呼ぶ.
•
C
空間全体Xや空集合は開集合であり,Xc = Φ, Φc=X
なのでこれらは閉集合であり開集合である.
A, B ∈ C ⇒ A ∪ B ∈ C
�
Aλ ∈ C (λ ∈ Λ) ⇒
Aλ ∈ C
λ∈Λ
23
連結性について
•
空間Xが連結であるとは,Xのある部分集合Aで閉集
合でありかつ開集合であるものがとれないことであ
る.ただし,Aは空集合でもX自身ではない.
A∪ Ac = X
A
密着位相 連結
Ac
離散位相 1点以外のどのよ
うな部分空間も連結ではない
ユークリッド空間の位相は
24
どのように定めるか
•
我々の良く知っているユークリッド空間の位相はど
のように定義するか.
•
ユークリッド空間の開集合とは,開区間の和集合
によって表現されるものの全体.ただし,開区間
とは,
{(x1 , x2 , . . . , xn ) | a1 < x1 < b1 , . . . , an < xn < bn }
と表現できる部分集合のこと.
これのことを「基」という
25
チャレンジ問題
•
ユークリッド平面上の周を含まない円盤が開集合で
あることを証明せよ.
26
チャレンジ問題(解答編)
•
原点を中心とする半径1の円盤Uはつぎのように表
現できる:
$
#
! "
U=
(x, y) | |x| < t, |y| < 1 − t2
0≤t≤1
1
y
1 x
0
27
の良く知っているユークリッド空間は位相空間です.ユーク
部分空間の位相
開集合が何であるのかという部分についてはここでは深く考
します.常識的に,
「端を含まない集合は開集合である」と考
•
空間全体について議論するだけでは,議論できる空
ましょう.間の範囲が狭い.ある位相空間の一部を切り取った
ような空間の位相はどのように定めるか考えてみ
では,ある位相空間の部分集合が位相空間になれるかどうか
る.
てみます.たとえば,ユークリッド空間の部分集合である正
たとえば,つぎの空間の位相はどのように決める
•
る点の集合は位相空間でしょうか.
か?
R = {(x, y) ∈ R | 0 ≤ x, y ≤ 1}
2
正方形
集合は位相空間になれるでしょうか.もちろん「位相空間にな
28
部分空間の位相
•
ある位相空間Xの部分集合Yの開集合をつぎのように
定めることができる.
OY = {m ∩ Y | m ∈ OX }
Xの開集合
Yの開集合
Y ⊂X
29
前述の開集合族は開集合の定義を満たすか(1)
•
•
この集合族は空集合と全体集合 (Y)を含む
Yの2つの開集合はつぎのように書ける.
m1 = n1 ∩ Y, m2 = n2 ∩ Y
よって,
m1 ∩ m2 = (n1 ∩ Y ) ∩ (n2 ∩ Y ) = (n1 ∩ n2 ) ∩ Y
これはYの開集合
30
前述の開集合族は開集合の定義を満たすか(2)
無限個のYの開集合はつぎのように書くことができる.
mλ = n λ ∩ Y
したがって,
!
λ∈Λ
mλ =
!
(nλ ∩ Y ) =
λ∈Λ
"
!
λ∈Λ
nλ
#
∩Y
以上より,この方法で定義される
開集合族は定義に矛盾しない
これはYの開集合
31
正方形の開集合族
•
正方形の場合,以下のような矩形領域(境界を含ま
ない)とYの共通部分をいくつか(無限個でも良
い)和集合をとったものが開集合族となる.
32
残された問題
•
•
•
和集合の位相は定義できるか? できる
直積集合の位相は定義できるか? できる
商集合の位相は定義できるか?
これは後述する(第8回)
「位相空間の貼り合わせ」
33
練習問題
•
ユークリッド平面の半平面 H = {(x, y) | x > 0}が開集合
であることを証明せよ
•
一般の半平面 H = {(x, y) | ax + by > 0} が開集合である
ことを証明せよ.ただし,a = b = 0ではない.
ヒント:開集合の和集合は開集合である.
34
まとめ
•
集合とその集合の開集合族を定義することによって
位相空間を定義することができる.
•
位相空間では距離は定義されないが,「近さ」の目
安となる近傍を定義することができる.
•
もとの集合に位相が定義されていれば,その部分集
合にその位相を用いて位相を定義することできる.