電気分解

本科 / 実戦トレーニング期 / Z Study 添削問題編 /
必修テーマ/ 東大コース 化学
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XCAR4A-Z1J1-06
2
電気分解
CHECK11 電気分解
電解質の水溶液などに外部から電気エネルギーを与えて,強制
的に酸化還元反応を起こさせること。電解ともいう。
暗記
陰極(-)
外部電源の負極につないだ電極。
電子が流れ込み,還元反応が起こる。
陽極(+)
外部電源の正極につないだ電極。
電子が流れ出し,酸化反応が起こる。
CHECK12 電気分解における陰極と陽極での反応
暗記
水溶液中の陽イオン
電極での反応
Li ,K ,Na ,Al などのイオン化傾向 2 H2O + 2 e
H2 + 2 OH- 水素が発生
が大きい金属の陽イオンのみ存在する場合
+
+
+
3+
陰極
H+(酸性の水溶液)
-
2 H+ + 2 e-
H2
Cu や Ag などのイオン化傾向が小さい (例)Cu + 2 e
金属の陽イオンが存在する場合
Ag+ + e2+
+
2+
電極物質・水溶液中の陰イオン
Cu
Ag
金属単体
として析出
電極での反応
Cl- や I- などのハロゲン化物イ (例)2 Clが存在する場合 2 Iオン
(F- を除く)
陽極
陽極が白 SO42- や NO3- などの酸化され
2 H 2O
金や炭素 にくい陰イオンのみが存在する
の場合
場合
OH-(塩基性の水溶液)
-
Cl2 + 2 eI2 + 2 e-
O2 + 4 H+ + 4 e-
ハロゲン単
体が生成
酸素が発生
4 OHO2 + 2 H2O + 4 e-
陽極として,銅や銀など,白金・金以外の (例)Cu
Ag
金属を使っている場合
Cu2+ + 2 eAg+ + e-
陽極が溶解
※水溶液中に金属イオンが存在しない場合も,陰極では水(水素イオン)が還元される。
※陽極における陰イオンの酸化のされやすさの順は,I->Br->Cl->H2O>NO3-,SO42- である。
実際に,炭素棒を電極に用いた CuCl2 水溶液の電気分解におけ
る陰極と陽極での反応を,上の表を見ながら考えてみよう。電気分
解の各極の反応を考えるときには,簡潔な図を描くとよい。このと
き,陽極と陰極に用いた物質,電解液を明記すると,どのような反
応が起こるか整理できる。また,電池の負極→陰極,正極→陽極の
接続と電子の流れを明記しておけば,各極で起こる反応を逆にして
しまうといったミスを防ぐことができる。
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陰極 電池の負極から電子が流れ込むので,還元反応が起こる。ここでは,Cu2+ が還元され,
単体の Cu が析出する。
Cu2+ + 2 e-
Cu
陽極 電池の正極へと電子が流れ出るので,酸化反応が起こる。ここでは,Cl- が酸化され,単
体の Cl2 が発生する。
2 Cl-
Cl2 + 2 e-
陰極では最も還元されやすい物質が電子を受け取ること,逆に,陽極では最も酸化されやすい物
質が電子を失うことを押さえておこう。
TRY3
次の電気分解の陰極および陽極では,それぞれどのような反応が起こるか。電子 e- を含む
イオン反応式で表せ。
問 1 陰極に鉄,陽極に炭素を用いて塩化ナトリウム水溶液の電気分解を行う。
問 2 各極に銀を用いて硝酸銀水溶液の電気分解を行う。
問 3 各極に白金を用いて水酸化ナトリウム水溶液の電気分解を行う。
〔解答欄〕
問 1 陰極; 陽極; 問 2 陰極; 陽極; 問 3 陰極; 陽極; 解 答
問 1 陰極の鉄,陽極の炭素は反応しない。塩化ナトリウムは水溶
CHECK12
液中で電離して Na+,Cl- を生じる。
陰極 Na+ は水溶液中では還元されず,水が還元される。
答 2 H2O + 2 e- H2 + 2 OH陽極 ハロゲン化物イオンの Cl- が酸化される。
答 2 Cl- Cl2 + 2 e問 2 硝酸銀は水溶液中で電離して Ag+,NO3- を生じる。
CHECK12
陰極 イオン化傾向の小さい Ag+ が還元される。
答 Ag+ + e- Ag
陽極 電極に銀を用いているので,Ag が酸化され,イオンと
なって溶け出す。
答 Ag Ag + e
+
-
NO3- は水溶液中で安定であ
り酸化されにくい。
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問 3 各極の白金は反応しない。水酸化ナトリウムは水溶液中で電
CHECK12
離して Na ,OH を生じる。
+
-
陰極 Na+ は水溶液中では還元されず,水が還元される。
答 2 H2O + 2 e- H2 + 2 OH陽極 水溶液中に多く存在する OH- が酸化され,酸素が発生
する。
答 4 OH- O2 + 2 H2O + 4 e CHECK13 電気分解の量的関係
1 つの電解槽の陰極と陽極に流れる電子の物質量
(または,電気量)
は必ず等しい。また,陰極ま
たは陽極で変化する物質の量は,流れた電気量に比例する
(ファラデーの法則)
。
ところで,前ページで示した「CuCl2 水溶液の電気分解における陰極と陽極での反応」は,次の
通りであった。
陰極 Cu2+ + 2 e陽極 2 Cl
-
Cu
Cl2 + 2 e-
1 つの電解槽の陰極と陽極に流れる電子の物質量は等しく,また,電子 e- を含むイオン反応式
の係数から,各極で変化する物質の物質量の比を求めることができる。たとえば,この電解槽に
2 mol の電子が流れたとすると,陰極では 1 mol の銅が析出し,陽極では 1 mol の塩素が発生する
ことになる。
CHECK14 電気量
暗記
電気量 Q〔C〕= 電流 I〔A〕* 時間 t〔s〕
アンペア
クーロン
1 A の電流が 1 秒
(s)
間流れたときの電気量が 1 C である。
CHECK15 ファラデー定数 F 〔C/mol〕
F = 9.65 * 104 C/mol
電子 1 mol 当たりの電気量の大きさ。
TRY4
白金電極を用いて硝酸銀水溶液の電気分解を行ったところ,陰極に 2.16 * 10-2 g の金属が
析出した。次の問 1 ∼問 3 に答えよ。ただし,原子量は Ag = 108,ファラデー定数は F =
9.65 * 104 C/mol とし,問 2 ,問 3 は有効数字 3 桁で答えよ。
問 1 陰極および陽極では,それぞれどのような反応が起こるか。電子 e- を含むイオン反応
式で表せ。
問 2 この電気分解で流れた電子の物質量は何 mol か。また,流れた電気量は何 C か。
問 3 陽極で発生した気体の物質量は何 mol か。また,その体積は標準状態では何 L になるか。
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〔考え方〕
〔解答欄〕
問 1 陰極; 陽極; 問 2 電子の物質量; 電気量; 問 3 気体の物質量; 体積; 解 答
問 1 各極の白金は反応しない。硝酸銀は水溶液中で電離して Ag+,
CHECK12
NO3 を生じる。
-
陰極 Ag+ が電子を受け取り,Ag が析出する。
答 Ag+ + e- Ag ① 陽極 水が電子を放出し,酸素が発生する。
答 2 H2O O2 + 4 H+ + 4 e- ② 問 2 陰極では,電子 1 mol が流れると 1 mol の Ag が析出する。
CHECK13
したがって,析出した Ag の物質量と流れた電子の物質量は等し
いから,次式が成り立つ。
2.16 * 10-2
= 2.00 * 10-4〔mol〕
108
答 電子の物質量;2.00 * 10-4 mol
電子 1 mol がもつ電気量の値は,ファラデー定数に等しく
CHECK15
9.65 * 10 C である。したがって,求める電気量は
4
9.65 * 104 * 2.00 * 10-4 = 19.3〔C〕
答 電気量;19.3 C
問 3 陽極で発生する気体は酸素である。②式の係数より,電子
1 mol が流れると
CHECK13
1
mol の酸素が生じる。したがって,発生した
4
酸素の物質量を ≈〔mol〕とすると,次式が成り立つ。
1:
1
= 2.00 * 10-4:≈ ∴ ≈ = 5.00 * 10-5〔mol〕
4
答 気体の物質量;5.00 * 10-5 mol
標準状態での気体 1 mol の体積は 22.4 L であることから,求め
る体積は
22.4 * 5.00 * 10-5 = 1.12 * 10-3〔L〕
答 体積;1.12 * 10-3 L
(電子の物質量〔mol〕):(酸
素の物質量〔mol〕)
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TRY5
ある直列回路に 0.80 A の電流を 5 時間21分40秒間流したとき,この回路に流れた電子の物質
量は何 mol か。有効数字 2 桁で答えよ。ただし,ファラデー定数は F = 9.65 * 104 C/mol と
する。
〔考え方〕
〔解答欄〕
解 答
5 時間21分40秒 = 5 * 60 * 60 + 21 * 60 + 40
= 1.93 * 104〔秒〕
よって,流れた電子の物質量を n〔mol〕とすると,次式が成り
CHECK14
立つ。
4
n〔mol〕* 9.65 * 10〔C/mol〕
CHECK15
= 0.80〔A〕* 1.93 * 10〔秒〕
4
∴ n = 0.16〔mol〕
コラム
答 0.16 mol
正極と陽極,負極と陰極って,何が違うの?
右図に示す通り,電池の負極と電気分解の陰極,電池の正極と電気
分解の陽極では,酸化と還元が逆になっている。それぞれ似た名称で
紛らわしいが,起こる反応は大きく異なるので,混同しないようにす
ること!
もう少し具体的にいうと
・電池の負極では電子を放出する反応
(酸化)
が起こるが,電気分解の
陰極では電子を受け取る反応
(還元)
が起こる。
・電池の正極では電子を受け取る反応
(還元)
が起こるが,電気分解の
陽極では電子を放出する反応
(酸化)
が起こる。